20 / 73
第1部 第3章 優しい人、不思議な気持ち
④
僕がキリアンに引っ張られてやってきたのは、大通りの端っこにある薬屋だった。
なんでも治療をする際に使う道具なんかも売っているらしくて、僕は店内で棚を見ながら必要になりそうなものを籠に放り込んでいく。
(っと)
僕はあんまり背丈が高くないから、高い位置にあるものを取るときはつま先立ちになるしかない。
この状態で手を伸ばして、なんとか目的のものを取ろうとする。でも、ぎりぎり届かない。
「んっ」
脚がぷるぷると震えている。さすがに誰かに取ってもらおうか――と思ったとき。
後ろから誰かが僕の欲しいものを手に取った。
「これか」
視線を動かすと、キリアンだった。彼は先ほど手に取ったものを僕に差し出して、問いかけてくる。
僕がキリアンの手から商品を受け取ると、彼は不思議そうな表情を浮かべた。
「これは?」
あんまり馴染みがないものみたいだ。
「これはね、魔法使いが魔力を補充する際に使う薬だよ」
透明な瓶の中には色とりどりの飴玉のようなものが入っている。
見ているだけでも楽しいこれは、いわば魔力の塊。摂取しやすいように形状を飴玉のようにしているのだ。
「美味いのか?」
「全然」
僕は首を横に振って答える。
形状こそ飴玉に似ているけど、味は美味しくない。甘いよりも苦いし。好きな人もいるかもだけど、僕は苦手だ。
「あと、普通の人でも魔力が枯渇しちゃった際に使えるんだ」
「ふぅん。それで一般販売してるのか」
魔法使いの中には自分好みの魔力補充の薬を作る者もいる。師匠もそうだった。
――と言っても、師匠の場合はいかに効率的に摂取できるかということに重点を置いていたので、味はそれはもうひどいものだったけど。
(お店で販売しているものも大概だけど、師匠が作ったもののほうがもっと不味いんだよね……)
師匠に言ったら最後「今後は自分でなんとかするんだね」と言われるから、言わないけど。
キリアンの視線は未だに瓶に注がれていた。相当気になるんだろうか。
「味見、してみる?」
きょとんとしつつ問いかけると、キリアンは少し迷った末に頷いた。
「ちょっと待っててね。お会計をしてくるから」
僕は言葉を残して、店員さんを捕まえてお会計をしてもらう。
治療道具と先ほどの魔力補充の薬。あとは塗り薬とかを購入。お金は全然余裕。
「ありがとうございました」
男性の店員さんが頭を下げる。僕も軽く会釈をして、お店の前で待っているキリアンの元に駆け寄った。
「お待たせ」
「あぁ」
キリアンの言葉は素っ気ないけど、僕は気にもしない。実はちょっと、いいことがあったから。
「さっきのお店の人がね、試作品をくれたんだ」
なんでも、このお店の店主は魔力補充の薬が不味いことに関して不満を抱いているらしい。だから、色々な改良を重ねていると。
(味がマシになったら、きっともっとたくさん売れるだろうしね)
今まで味が改良されてこなかったのは、量産するにあたってコストがかかるから。安価で量産できるほうが、利益につながるのは誰だってわかることだ。研究費だってバカにはならない。
「丁度ね、お連れさんと……って、二つくれたんだ」
「そうか」
僕は包みの一つをキリアンに手渡す。
もう一つの包みを開けて、僕はその真っ赤な飴玉のような薬を口に入れてみた。
(うん、味は……今までよりはマシかな)
お世辞にもまだまだ美味しいとは言えないけど、今までよりはマシだ。
控えめな甘さの中に、小さな酸味。まるで味の薄いフルーツを食べているみたい。
(あ、でも効果はきちんとありそう)
味以外にも重要なのが、魔力補充の効果が確かかどうかだ。魔力がふわっと身体の中に吸収されているのが微かにわかる。
「ジェリー」
飴玉を舌で転がしていると、キリアンが僕の名前を呼んだ。僕は彼に視線を向ける。
彼は包みを開けることなく、僕のことを凝視していた。
(もしかして、不安なのかな?)
そりゃあ、誰だって初めて口にするものは不安だろう。
その気持ちがわかるから、僕は「大丈夫だよ」と伝えるつもりで口を開いた――のだけど。
(――え!?)
キリアンの精悍な顔が僕の顔に近づいてきて、視界いっぱいに広がった。
そして、僕が抗議する間もなくキリアンの唇が僕の唇に重なる。
なんでも治療をする際に使う道具なんかも売っているらしくて、僕は店内で棚を見ながら必要になりそうなものを籠に放り込んでいく。
(っと)
僕はあんまり背丈が高くないから、高い位置にあるものを取るときはつま先立ちになるしかない。
この状態で手を伸ばして、なんとか目的のものを取ろうとする。でも、ぎりぎり届かない。
「んっ」
脚がぷるぷると震えている。さすがに誰かに取ってもらおうか――と思ったとき。
後ろから誰かが僕の欲しいものを手に取った。
「これか」
視線を動かすと、キリアンだった。彼は先ほど手に取ったものを僕に差し出して、問いかけてくる。
僕がキリアンの手から商品を受け取ると、彼は不思議そうな表情を浮かべた。
「これは?」
あんまり馴染みがないものみたいだ。
「これはね、魔法使いが魔力を補充する際に使う薬だよ」
透明な瓶の中には色とりどりの飴玉のようなものが入っている。
見ているだけでも楽しいこれは、いわば魔力の塊。摂取しやすいように形状を飴玉のようにしているのだ。
「美味いのか?」
「全然」
僕は首を横に振って答える。
形状こそ飴玉に似ているけど、味は美味しくない。甘いよりも苦いし。好きな人もいるかもだけど、僕は苦手だ。
「あと、普通の人でも魔力が枯渇しちゃった際に使えるんだ」
「ふぅん。それで一般販売してるのか」
魔法使いの中には自分好みの魔力補充の薬を作る者もいる。師匠もそうだった。
――と言っても、師匠の場合はいかに効率的に摂取できるかということに重点を置いていたので、味はそれはもうひどいものだったけど。
(お店で販売しているものも大概だけど、師匠が作ったもののほうがもっと不味いんだよね……)
師匠に言ったら最後「今後は自分でなんとかするんだね」と言われるから、言わないけど。
キリアンの視線は未だに瓶に注がれていた。相当気になるんだろうか。
「味見、してみる?」
きょとんとしつつ問いかけると、キリアンは少し迷った末に頷いた。
「ちょっと待っててね。お会計をしてくるから」
僕は言葉を残して、店員さんを捕まえてお会計をしてもらう。
治療道具と先ほどの魔力補充の薬。あとは塗り薬とかを購入。お金は全然余裕。
「ありがとうございました」
男性の店員さんが頭を下げる。僕も軽く会釈をして、お店の前で待っているキリアンの元に駆け寄った。
「お待たせ」
「あぁ」
キリアンの言葉は素っ気ないけど、僕は気にもしない。実はちょっと、いいことがあったから。
「さっきのお店の人がね、試作品をくれたんだ」
なんでも、このお店の店主は魔力補充の薬が不味いことに関して不満を抱いているらしい。だから、色々な改良を重ねていると。
(味がマシになったら、きっともっとたくさん売れるだろうしね)
今まで味が改良されてこなかったのは、量産するにあたってコストがかかるから。安価で量産できるほうが、利益につながるのは誰だってわかることだ。研究費だってバカにはならない。
「丁度ね、お連れさんと……って、二つくれたんだ」
「そうか」
僕は包みの一つをキリアンに手渡す。
もう一つの包みを開けて、僕はその真っ赤な飴玉のような薬を口に入れてみた。
(うん、味は……今までよりはマシかな)
お世辞にもまだまだ美味しいとは言えないけど、今までよりはマシだ。
控えめな甘さの中に、小さな酸味。まるで味の薄いフルーツを食べているみたい。
(あ、でも効果はきちんとありそう)
味以外にも重要なのが、魔力補充の効果が確かかどうかだ。魔力がふわっと身体の中に吸収されているのが微かにわかる。
「ジェリー」
飴玉を舌で転がしていると、キリアンが僕の名前を呼んだ。僕は彼に視線を向ける。
彼は包みを開けることなく、僕のことを凝視していた。
(もしかして、不安なのかな?)
そりゃあ、誰だって初めて口にするものは不安だろう。
その気持ちがわかるから、僕は「大丈夫だよ」と伝えるつもりで口を開いた――のだけど。
(――え!?)
キリアンの精悍な顔が僕の顔に近づいてきて、視界いっぱいに広がった。
そして、僕が抗議する間もなくキリアンの唇が僕の唇に重なる。
あなたにおすすめの小説
【完結】召喚された勇者は贄として、魔王に美味しく頂かれました
綾雅(りょうが)要らない悪役令嬢
BL
美しき異形の魔王×勇者の名目で召喚された生贄、執着激しいヤンデレの愛の行方は?
最初から贄として召喚するなんて、ひどいんじゃないか?
人生に何の不満もなく生きてきた俺は、突然異世界に召喚された。
よくある話なのか? 正直帰りたい。勇者として呼ばれたのに、碌な装備もないまま魔王を鎮める贄として差し出され、美味しく頂かれてしまった。美しい異形の魔王はなぜか俺に執着し、閉じ込めて溺愛し始める。ひたすら優しい魔王に、徐々に俺も絆されていく。もういっか、帰れなくても……。
ハッピーエンド確定
※は性的描写あり
【完結】2021/10/31
【同時掲載】 小説家になろう、アルファポリス、エブリスタ
2021/10/03 エブリスタ、BLカテゴリー 1位
イケメン後輩のスマホを拾ったらロック画が俺でした
天埜鳩愛
BL
☆本編番外編 完結済✨ 感想嬉しいです!
元バスケ部の俺が拾ったスマホのロック画は、ユニフォーム姿の“俺”。
持ち主は、顔面国宝の一年生。
なんで俺の写真? なんでロック画?
問い詰める間もなく「この人が最優先なんで」って宣言されて、女子の悲鳴の中、肩を掴まれて連行された。……俺、ただスマホ届けに来ただけなんだけど。
頼られたら嫌とは言えない南澤燈真は高校二年生。クールなイケメン後輩、北門唯が置き忘れたスマホを手に取ってみると、ロック画が何故か中学時代の燈真だった! 北門はモテ男ゆえに女子からしつこくされ、燈真が助けることに。その日から学年を越え急激に仲良くなる二人。燈真は誰にも言えなかった悩みを北門にだけ打ち明けて……。一途なメロ後輩 × 絆され男前先輩の、救いすくわれ・持ちつ持たれつラブ!
☆ノベマ!の青春BLコンテスト最終選考作品に加筆&新エピソードを加えたアルファポリス版です。
俺以外美形なバンドメンバー、なぜか全員俺のことが好き
toki
BL
美形揃いのバンドメンバーの中で唯一平凡な主人公・神崎。しかし突然メンバー全員から告白されてしまった!
※美形×平凡、総受けものです。激重美形バンドマン3人に平凡くんが愛されまくるお話。
pixiv/ムーンライトノベルズでも同タイトルで投稿しています。
もしよろしければ感想などいただけましたら大変励みになります✿
感想(匿名)➡ https://odaibako.net/u/toki_doki_
Twitter➡ https://twitter.com/toki_doki109
素敵な表紙お借りしました!
https://www.pixiv.net/artworks/100148872
人気アイドルの俺、なぜかメンバー全員に好かれてます
七瀬
BL
デビュー4年目の人気アイドルグループ「ECLIPSE(エクリプス)」に所属する芹沢 美澄(せりざわみすみ)は、昔からどこか抜けていてマイペースな性格。
歌もダンスも決して一番ではないはずなのに、なぜかファンからもメンバーからも目を離されない存在だった。
世話焼きな幼なじみ、明るく距離の近い同い年、しっかり者で面倒見のいい年上、掴みどころのない自由人、そして無言で隣にいるリーダー——。
気づけば、美澄の周りにはいつも誰かがいて、当たり前のように甘やかされていく。
【完結】気が付いたらマッチョなblゲーの主人公になっていた件
白井のわ
BL
雄っぱいが大好きな俺は、気が付いたら大好きなblゲーの主人公になっていた。
最初から好感度MAXのマッチョな攻略対象達に迫られて正直心臓がもちそうもない。
いつも俺を第一に考えてくれる幼なじみ、優しいイケオジの先生、憧れの先輩、皆とのイチャイチャハーレムエンドを目指す俺の学園生活が今始まる。
穏やかに生きたい(隠れ)夢魔の俺が、癖強イケメンたちに執着されてます。〜平穏な学園生活はどこにありますか?〜
春凪アラシ
BL
「平穏に生きたい」だけなのに、
癖強イケメンたちが俺を狙ってくるのは、なぜ!?
トラブルを避ける為、夢魔の血を隠して学園生活を送るフレン(2年)。
彼は見た目は天使、でも本人はごく平凡に過ごしたい穏健派。
なのに、登校初日から出会ったのは最凶の邪竜後輩(1年)!?
他にも幼馴染で完璧すぎる優等生騎士(3年)に、不良だけど面倒見のいい悪友ワーウルフ(同級生)まで……なぜか異種族イケメンたちが次々と接近してきて――
運命の2人を繋ぐ「刻印制度」なんて知らない!
恋愛感情もまだわからない!
それでも、騒がしい日々の中で、少しずつ何かが変わっていく。
個性バラバラな異種族イケメンたちに囲まれて、フレンの学園生活は今日も波乱の予感!?
甘くて可笑しい、そして時々執着も見え隠れする
愛され体質な主人公の青春ファンタジー学園BLラブコメディ!
月、水、金、日曜日更新予定!(番外編は更新とは別枠で不定期更新)
基本的にフレン視点、他キャラ視点の話はside〇〇って表記にしてます!
人気アイドルグループのリーダーは、気苦労が絶えない
タタミ
BL
大人気5人組アイドルグループ・JETのリーダーである矢代頼は、気苦労が絶えない。
対メンバー、対事務所、対仕事の全てにおいて潤滑剤役を果たす日々を送る最中、矢代は人気2トップの御厨と立花が『仲が良い』では片付けられない距離感になっていることが気にかかり──
【完結】異世界から来た鬼っ子を育てたら、ガッチリ男前に育って食べられた(性的に)
てんつぶ
BL
ある日、僕の住んでいるユノスの森に子供が一人で泣いていた。
言葉の通じないこのちいさな子と始まった共同生活。力の弱い僕を助けてくれる優しい子供はどんどん大きく育ち―――
大柄な鬼っ子(男前)×育ての親(平凡)
20201216 ランキング1位&応援ありがとうごございました!