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第1部 第4章 最悪とハジメテ
④
「――と、いうわけで。僕の役割はわかってもらえただろう。そして、僕は今からしばらくキリアンたちと行動を共にする」
シデリス殿下は表情を崩さずに、はっきりと言いきった。
――共に行動。それって伝達係の意味はなくないだろうか?
「伝達係とはいっても、僕がするのは父上からの伝言が主だ。クレメンスのやつは、僕が間に入った以上慎重になるはずだからね」
僕に向かってウィンクを飛ばすシデリス殿下。それはきっと、「いいよね?」という意味なんだろう。
僕のような存在が断れるわけがないというのに。
「ぼ、僕的には――その」
正直、シデリス殿下と行動を共にするなんて、恐れ多くて気絶しそうだ。
あと、純粋にかなり緊張してしまいそうだった。僕の心臓が今でさえバクバクとしているのだから。
エカードさんに助けを求めるように彼にもう一度視線を向けると、彼はいかにも「お手上げだ」とばかりに両手を挙げていた。
全然役に立ってくれない。
(っていうか、こういう場を取り仕切るのはキリアンの役目――)
僕とエカードさんはあくまでもお供だ。仕切るのはキリアンの役目だと思う。
だから、キリアンがどういう風に出るのか。それが大事なんだけど……。
「別にいいぞ」
彼は悩む間もなく、シデリス殿下の無茶ぶりを受け入れた。
「ふぅん、キミにしては珍しい」
「お前はいつだって駄々をこねるからな。面倒なことは避けたい。それに、お前は戦えるだろ」
「まぁね」
自信満々とばかりににんまりと笑うシデリス殿下。
「ご存じの通り、僕の母上は騎士の家系の出身でね。子供のころから鍛え上げられてきたさ」
「というわけだ。お荷物になる可能性は低いだろ」
キリアンの言葉の節々には、確かな信頼がこもっている。
キリアンはシデリス殿下をなんだかんだ言いつつも信頼している。昨夜も思ったけど、その信頼に間違いはない。口では散々なことを言っているけどさ。
「俺はキリアンが許可を出すならば全然いいぞ」
エカードさんがキリアンを一瞥して、言い切った。
残るのは僕の意見――なんだけど。
「僕は全部任せる――よ」
僕の意思なんてあってないようなものだろう。
それがよくわかるから、僕は首を縦に振って答える。
「じゃあ、そういうことで僕も同行しよう。お荷物にもお邪魔にもならないように気を付けるから、安心してくれたまえ」
「お前の存在自体が鬱陶しいけどな」
「まったく、キリアンは素直じゃない。さっきは僕の言葉を受け入れてくれたというのに」
「お前が鬱陶しいからだろ。面倒ごとは避けたいと言ったはずだ。――ジェリーとの間を邪魔したら、許さない」
側で繰り広げられていく、幼馴染二人の軽口。
僕は彼らの言葉を聞くたびに、心がきゅうっと締め付けられるような感覚に襲われていた。
(どうして、こう思うんだろ……)
これは王子殿下が同行することに対する不安? 不満?
いや、ちょっと違う。たとえシデリス殿下が王族ではなかったとしても。
――キリアンと親しくしているのに、モヤモヤとしてしまうだろう。
僕にはキリアンしか友人がいないのに。一番の友人を横から掻っ攫われたみたいだ。
今僕が抱いている気持ちは、それで説明がつくような気がした。
(心の狭い男になっちゃダメだ。僕だって交友関係を広げればいい)
ほかにも友人が出来たら、僕のキリアンに対する依存心にも似た感情を昇華できるはず。
このときの僕は間違いなくそう思っていた。
――キリアンの本当の気持ちなんて、少しも知らずに。
シデリス殿下は表情を崩さずに、はっきりと言いきった。
――共に行動。それって伝達係の意味はなくないだろうか?
「伝達係とはいっても、僕がするのは父上からの伝言が主だ。クレメンスのやつは、僕が間に入った以上慎重になるはずだからね」
僕に向かってウィンクを飛ばすシデリス殿下。それはきっと、「いいよね?」という意味なんだろう。
僕のような存在が断れるわけがないというのに。
「ぼ、僕的には――その」
正直、シデリス殿下と行動を共にするなんて、恐れ多くて気絶しそうだ。
あと、純粋にかなり緊張してしまいそうだった。僕の心臓が今でさえバクバクとしているのだから。
エカードさんに助けを求めるように彼にもう一度視線を向けると、彼はいかにも「お手上げだ」とばかりに両手を挙げていた。
全然役に立ってくれない。
(っていうか、こういう場を取り仕切るのはキリアンの役目――)
僕とエカードさんはあくまでもお供だ。仕切るのはキリアンの役目だと思う。
だから、キリアンがどういう風に出るのか。それが大事なんだけど……。
「別にいいぞ」
彼は悩む間もなく、シデリス殿下の無茶ぶりを受け入れた。
「ふぅん、キミにしては珍しい」
「お前はいつだって駄々をこねるからな。面倒なことは避けたい。それに、お前は戦えるだろ」
「まぁね」
自信満々とばかりににんまりと笑うシデリス殿下。
「ご存じの通り、僕の母上は騎士の家系の出身でね。子供のころから鍛え上げられてきたさ」
「というわけだ。お荷物になる可能性は低いだろ」
キリアンの言葉の節々には、確かな信頼がこもっている。
キリアンはシデリス殿下をなんだかんだ言いつつも信頼している。昨夜も思ったけど、その信頼に間違いはない。口では散々なことを言っているけどさ。
「俺はキリアンが許可を出すならば全然いいぞ」
エカードさんがキリアンを一瞥して、言い切った。
残るのは僕の意見――なんだけど。
「僕は全部任せる――よ」
僕の意思なんてあってないようなものだろう。
それがよくわかるから、僕は首を縦に振って答える。
「じゃあ、そういうことで僕も同行しよう。お荷物にもお邪魔にもならないように気を付けるから、安心してくれたまえ」
「お前の存在自体が鬱陶しいけどな」
「まったく、キリアンは素直じゃない。さっきは僕の言葉を受け入れてくれたというのに」
「お前が鬱陶しいからだろ。面倒ごとは避けたいと言ったはずだ。――ジェリーとの間を邪魔したら、許さない」
側で繰り広げられていく、幼馴染二人の軽口。
僕は彼らの言葉を聞くたびに、心がきゅうっと締め付けられるような感覚に襲われていた。
(どうして、こう思うんだろ……)
これは王子殿下が同行することに対する不安? 不満?
いや、ちょっと違う。たとえシデリス殿下が王族ではなかったとしても。
――キリアンと親しくしているのに、モヤモヤとしてしまうだろう。
僕にはキリアンしか友人がいないのに。一番の友人を横から掻っ攫われたみたいだ。
今僕が抱いている気持ちは、それで説明がつくような気がした。
(心の狭い男になっちゃダメだ。僕だって交友関係を広げればいい)
ほかにも友人が出来たら、僕のキリアンに対する依存心にも似た感情を昇華できるはず。
このときの僕は間違いなくそう思っていた。
――キリアンの本当の気持ちなんて、少しも知らずに。
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