【R18】気弱魔法使いはこのたび激重勇者に捕獲されました~最強の勇者さんは僕を愛してやみません~

すめらぎかなめ

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第1部 第5章 違和感と謎の人

 翌朝。

 雨は夜のうちに止んで、きらきらとした陽の光が辺りを照らしている。

 僕が起きたとき、キリアンは側にいなかった。一抹の寂しさを覚えたものの、自身の身体の違和感に顔を歪めてしまう。

(……腰が、痛い)

 キリアンは後始末とかはしてくれていたらしく、僕の身は清められていて。衣服も雑だけど着せられていた。

 ローブは毛布の代わりにかけられていて、衣服を正した後、僕はそれを身にまとう。

「あぁ、起きたか」

 少しして、キリアンが洞窟に戻って来た。僕は彼に駆け寄ろうとしたけど、腰が鈍く痛んでそれは叶わない。

「おい、大丈夫――じゃ、ないよな」

 キリアンが気まずそうな表情を浮かべて、僕の身体を抱き留めてくれた。

 申し訳なくて、恥ずかしくて。僕が身を縮めていると、キリアンが頭を撫でてくれる。

「昨夜は無茶をさせたからな。今日は、存分に俺に甘えろ」

 僕の身体をぎゅうっと抱きしめて、キリアンがささやく。そして、流れるように僕の頭のてっぺんにキスを落とす。

 洞窟内に漂う甘さを含んだ空気。胸焼けしそうで、僕は誤魔化すように顔を上げた。

「ね、ねぇ、どこに行ってたの――?」

 気になっていたことを尋ねてみると、キリアンは「あぁ」と言って入り口のほうを見つめる。

「日が昇ったから、ここがどこか確認しておこうと思ってな」
「あ、そ、そうだよね」

 昨夜は雨がひどくて確認する余裕もなかったし……。

(そもそも、それは僕もするべきことだったよね)

 キリアンに頼りっぱなしで、本当に申し訳ない。

 肩を落とす僕を見て、キリアンが「気にするな」と声をかけてくれた。

「昨夜のことがあるからな。ジェリーの身体には負担がかかってただろ」

 それはまぁ、そうなんだけど。

「あぁいう行為は受け入れるほうに負担がかかる。だから、俺があれこれ動くのは当然だ」
「う、うん」
「だから、気にするな」

 そうは言われても、後始末も全部キリアンがやってくれていた。僕はなにひとつとして役に立っていない。

「本当に気に病むな。ジェリーだって、たくさん役に立ってるだろ」
「……そんなこと」
「川に落ちることが出来るように咄嗟に機転を利かせたのはジェリーだ。俺たちが生きているのは、ジェリーのおかげだ」

 ネガティブな僕に根気強く付き合ってくれるキリアンは、本当に優しい。

 あと、そういう風に言ってくれるのが純粋にとってもありがたくて。僕はふんわりと笑って「ありがとう」と言っていた。

「とにかく。ここらは王都ではなく、辺境のようだな」

 僕が立ち直ったのに気が付いてか、キリアンが言う。

「でかめの木に登って見渡したら、東の方角に街があった。今はそこを目指そう」
「そ、そうだね」

 木に登ったとか、ちょっと聞き捨てならないことは聞こえたけど、今は無視だ。

 きっと、必要だったということだろうから。

(キリアンがいてくれてよかった。僕一人だったら、きっともう挫けてたよ……)

 一人じゃない。キリアンがいてくれる。

 これだけで、僕は希望を持つことが出来る。

「キリアン」
「うん?」
「一緒にいてくれて、ありがとう」

 あふれ出した気持ちを伝えてみると、彼は驚いたようだったけど、笑ってくれた。

 大きな手のひらが僕の頬を挟み込んで、額をこつんとぶつけられる。

「俺のほうこそ、ジェリーの役に立てて嬉しい」

 女性だったら卒倒しそうなほどにかっこいい笑みを浮かべて、キリアンが告げてくる。

 ……僕の心臓も、はち切れそうなほどにうるさいけど。

「ジェリー」

 キリアンが僕の名前を呼んで、唇を重ねてくる。

 朝からなにをしているんだって思われそうだけど、僕はキリアンからの口づけに応える。

「んんっ、んんぅ――」

 初めは触れ合うだけだった口づけは、どんどん深くなって、また舌を絡め合って。

 互いの口元を銀色の糸が伝うほどに口づけて、僕たちは笑い合った。
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