【R18】気弱魔法使いはこのたび激重勇者に捕獲されました~最強の勇者さんは僕を愛してやみません~

すめらぎかなめ

文字の大きさ
51 / 73
第1部 第5章 違和感と謎の人

 キリアンが予約をしたという宿は、小さなところだった。

 部屋は当然のように一緒。この間と違うのは、きちんとした寝台が二つあることだろうか。

 宿の女将さんが作ってくれた夕飯を食べて、僕たちは部屋でくつろいでいた。

「ねぇ、キリアン。星がすっごくきれいだよ」

 僕は窓の外を見つめて、寝台で横になっていたキリアンに声をかけてみる。彼は起き上がって僕のほうに来てくれた。

「王都じゃこうはいかないな」

 キリアンがつぶやいた。確かにそれはそうかも。

「僕が住んでたのは辺境だったんだけど、そこよりもずっときれいだよ」

 というか、師匠と僕の住んでいた場所は木々が生い茂っていたから、ここまで星がきれいには見えなかった。

 今思えば、あそこは辺境の中でも屈指の辺境だった。

「師匠、元気かな……」

 ついついぼそっと零してしまった。

 師匠は生活能力が皆無だ。弟子入り当初から僕は師匠の身の回りの世話をしていた。

 ……師匠、きちんと生活出来ていたらいいなぁって。

「なぁ、ジェリー」

 僕を後ろから抱きしめたキリアンが、声をかけてくる。

「お前の師匠は、どういう人物だったんだ?」
「ほぇ?」
「そういや、聞いたことなかったなって」

 キリアンが問いかけてくる。話したことなかったっけ?

「師匠は元々王家お抱えの魔法使いだったんだ。けど、ずっと前に引退して今は辺境の主をしてるよ」

 師匠は王家お抱えの魔法使いをしていた際に、たんまりとお金をもらったと言っていた。

 だから、今は働く必要もなく、のんびりと好きなことを研究して暮らしているのだとも。

「引退理由って?」
「権力争いに疲れたんだって。多分、表向きだけど」

 星空に視線を向けたまま、僕はキリアンに師匠のことを話す。

 いかにすごい魔法使いだったか。比べ生活能力は皆無で、人との関わることが苦手。むしろ、嫌いの域に足を突っ込んでいるとか。

「師匠はね、王都が嫌いなの。……なにか、あったんだろうね」

 王都に報告に行く師匠は、嫌悪感を丸出しにしている。ただ、それ以上に寂しそうだった。

「ふぅん、そうか」

 キリアンは興味なさそうだった。じゃあ、どうして聞いたんだって話なんだけど。

「ねぇ、キリアン。師匠のことに興味ないなら、どうして聞いたの?」

 背中に体温を感じつつ、尋ねてみる。キリアンは「嫉妬してるから」と答えた。

「ジェリーに心配してもらえて、うらやましいなって」
「なにそれ」

 彼は想像以上に嫉妬深かった。……なのに、彼の嫉妬がうれしいって思っちゃう僕も大概だ。

「ジェリーは、師匠が好きか――?」
「好き、だよ」

 師匠のことは大好き。

「でもね、師匠に対する好きは……その。親愛みたいなものなんだ」

 恋愛感情じゃない。だって、師匠のことを思ってもドキドキなんてしないから。

(僕がドキドキするのは、キリアンだけなんだよ)

 と、言えるわけもなく。

 言えないのは僕自身もこの感情をうまく理解できていないから。キスとかえっちしたから好きだって思っているんじゃないかって、考えちゃう。

(そうだったとしたら、この感情は錯覚だもんね)

 もしも、それが正しかったら。

 ――キリアンに伝えるわけにはいかない。

「そうか」

 キリアンは僕の言葉に短く返事をしてくれた。

「じゃあ、全然構わない。ジェリーの師匠――えっと、名前は」
「師匠はアクセルっていう名前だよ。アクセル・ヴァルスっていうの」

 なんてことない風に師匠の名前を口にすると、キリアンが固まったのがわかった。

「アクセル・ヴァルス――?」

 キリアンが師匠の名前を繰り返す。僕はうなずいた。

「え、なにか、あるの?」
「あぁ。元々王家のお抱え魔法使いのアクセル・ヴァルスだろ?」

 どうしてそこまで確認するんだろうか。僕はもう一度うなずく。

「師匠って、なにかあるの?」

 僕の問いかけに少し黙って、キリアンは口を開いた。

「お前、アクセル・ヴァルスといえば現国王陛下の元恋人だって貴族の世界じゃ有名なんだよ」
感想 2

あなたにおすすめの小説

【完結】召喚された勇者は贄として、魔王に美味しく頂かれました

綾雅(りょうが)要らない悪役令嬢
BL
美しき異形の魔王×勇者の名目で召喚された生贄、執着激しいヤンデレの愛の行方は? 最初から贄として召喚するなんて、ひどいんじゃないか? 人生に何の不満もなく生きてきた俺は、突然異世界に召喚された。 よくある話なのか? 正直帰りたい。勇者として呼ばれたのに、碌な装備もないまま魔王を鎮める贄として差し出され、美味しく頂かれてしまった。美しい異形の魔王はなぜか俺に執着し、閉じ込めて溺愛し始める。ひたすら優しい魔王に、徐々に俺も絆されていく。もういっか、帰れなくても……。 ハッピーエンド確定 ※は性的描写あり 【完結】2021/10/31 【同時掲載】 小説家になろう、アルファポリス、エブリスタ 2021/10/03  エブリスタ、BLカテゴリー 1位

イケメン後輩のスマホを拾ったらロック画が俺でした

天埜鳩愛
BL
☆本編番外編 完結済✨ 感想嬉しいです! 元バスケ部の俺が拾ったスマホのロック画は、ユニフォーム姿の“俺”。 持ち主は、顔面国宝の一年生。 なんで俺の写真? なんでロック画? 問い詰める間もなく「この人が最優先なんで」って宣言されて、女子の悲鳴の中、肩を掴まれて連行された。……俺、ただスマホ届けに来ただけなんだけど。 頼られたら嫌とは言えない南澤燈真は高校二年生。クールなイケメン後輩、北門唯が置き忘れたスマホを手に取ってみると、ロック画が何故か中学時代の燈真だった! 北門はモテ男ゆえに女子からしつこくされ、燈真が助けることに。その日から学年を越え急激に仲良くなる二人。燈真は誰にも言えなかった悩みを北門にだけ打ち明けて……。一途なメロ後輩 × 絆され男前先輩の、救いすくわれ・持ちつ持たれつラブ! ☆ノベマ!の青春BLコンテスト最終選考作品に加筆&新エピソードを加えたアルファポリス版です。

俺以外美形なバンドメンバー、なぜか全員俺のことが好き

toki
BL
美形揃いのバンドメンバーの中で唯一平凡な主人公・神崎。しかし突然メンバー全員から告白されてしまった! ※美形×平凡、総受けものです。激重美形バンドマン3人に平凡くんが愛されまくるお話。 pixiv/ムーンライトノベルズでも同タイトルで投稿しています。 もしよろしければ感想などいただけましたら大変励みになります✿ 感想(匿名)➡ https://odaibako.net/u/toki_doki_ Twitter➡ https://twitter.com/toki_doki109 素敵な表紙お借りしました! https://www.pixiv.net/artworks/100148872

人気アイドルの俺、なぜかメンバー全員に好かれてます

七瀬
BL
デビュー4年目の人気アイドルグループ「ECLIPSE(エクリプス)」に所属する芹沢 美澄(せりざわみすみ)は、昔からどこか抜けていてマイペースな性格。 歌もダンスも決して一番ではないはずなのに、なぜかファンからもメンバーからも目を離されない存在だった。 世話焼きな幼なじみ、明るく距離の近い同い年、しっかり者で面倒見のいい年上、掴みどころのない自由人、そして無言で隣にいるリーダー——。 気づけば、美澄の周りにはいつも誰かがいて、当たり前のように甘やかされていく。

【完結】気が付いたらマッチョなblゲーの主人公になっていた件

白井のわ
BL
雄っぱいが大好きな俺は、気が付いたら大好きなblゲーの主人公になっていた。 最初から好感度MAXのマッチョな攻略対象達に迫られて正直心臓がもちそうもない。 いつも俺を第一に考えてくれる幼なじみ、優しいイケオジの先生、憧れの先輩、皆とのイチャイチャハーレムエンドを目指す俺の学園生活が今始まる。

穏やかに生きたい(隠れ)夢魔の俺が、癖強イケメンたちに執着されてます。〜平穏な学園生活はどこにありますか?〜

春凪アラシ
BL
「平穏に生きたい」だけなのに、 癖強イケメンたちが俺を狙ってくるのは、なぜ!? トラブルを避ける為、夢魔の血を隠して学園生活を送るフレン(2年)。 彼は見た目は天使、でも本人はごく平凡に過ごしたい穏健派。
なのに、登校初日から出会ったのは最凶の邪竜後輩(1年)!? 
他にも幼馴染で完璧すぎる優等生騎士(3年)に、不良だけど面倒見のいい悪友ワーウルフ(同級生)まで……なぜか異種族イケメンたちが次々と接近してきて―― 運命の2人を繋ぐ「刻印制度」なんて知らない! 恋愛感情もまだわからない! 
それでも、騒がしい日々の中で、少しずつ何かが変わっていく。 個性バラバラな異種族イケメンたちに囲まれて、フレンの学園生活は今日も波乱の予感!? 
甘くて可笑しい、そして時々執着も見え隠れする 愛され体質な主人公の青春ファンタジー学園BLラブコメディ! 月、水、金、日曜日更新予定!(番外編は更新とは別枠で不定期更新) 基本的にフレン視点、他キャラ視点の話はside〇〇って表記にしてます!

人気アイドルグループのリーダーは、気苦労が絶えない

タタミ
BL
大人気5人組アイドルグループ・JETのリーダーである矢代頼は、気苦労が絶えない。 対メンバー、対事務所、対仕事の全てにおいて潤滑剤役を果たす日々を送る最中、矢代は人気2トップの御厨と立花が『仲が良い』では片付けられない距離感になっていることが気にかかり──

【完結】異世界から来た鬼っ子を育てたら、ガッチリ男前に育って食べられた(性的に)

てんつぶ
BL
ある日、僕の住んでいるユノスの森に子供が一人で泣いていた。 言葉の通じないこのちいさな子と始まった共同生活。力の弱い僕を助けてくれる優しい子供はどんどん大きく育ち――― 大柄な鬼っ子(男前)×育ての親(平凡) 20201216 ランキング1位&応援ありがとうごございました!