【R18】気弱魔法使いはこのたび激重勇者に捕獲されました~最強の勇者さんは僕を愛してやみません~

すめらぎかなめ

文字の大きさ
52 / 73
第1部 第5章 違和感と謎の人

「――え?」

 キリアンの言葉がすぐには理解できなかった。

(師匠が、現国王陛下の元恋人!?)

 確かに師匠はきれいだし、老若男女問わずモテるとは思う。

 かといって、国の最高権力者の元恋人なんて――ありえない、とは言い切れなかった。

(確かに陛下に対する扱いは雑だったしそれに、不敬なこともよく言ってて……)

 思い返せば、師匠の国王陛下に対する距離は異様なまでに近かった。

「それに、その男はどこぞの貴族の出身だったはずだ」
「え、えぇ……」

 次々と明かされていく、師匠の新事実。

 そりゃあ、仕草がすっごくきれいだなぁとか思ってた。だから、貴族だって言われて納得する部分もある。

 ただ、それ以上に僕の心を悔しいという感情が支配する。

(どうして、師匠は僕に過去のことを教えてくれなかったんだろう)

 師匠は僕のことを『一番弟子』だと言ってくれていたし、それなりに可愛がってくれてもいた。

 けど、師匠は過去のことをなに一つとして話そうとはしなかった。

 きっと嫌なことがあったんだ――って、自分に言い聞かせて、納得させようとしていた。

(僕は師匠にとって、信頼に値しない人物だったのかな)

 過去を話せないほど、信頼できなかったのか。もしくは、師匠にとって僕は出逢った当初の子供のままだったのか。

 真実はわからないけど、師匠の過去は師匠の口から聞きたかったと思ってしまう。

「――ジェリー」

 キリアンが僕の身体を強く抱きしめる。僕が落ち込んでいるのを、察してくれたんだろう。

「『アクセル・ヴァルス』という男はお前が大切なんだろう」

 下手ななぐさめなんていらないのに。

「なぐさめないでよ。僕は師匠にとって、信頼するに値しない人物だったってことでしょ?」
「――違うと思うぞ」

 卑屈になる僕を、キリアンは強く強く抱きしめる。

「ジェリーは、家族にいい思い出がないんだよな?」

 突然話題が変わっていた。

「……その、『アクセル・ヴァルス』の家族仲も、相当悪かったみたいだぞ」

 その言葉を聞いて、僕は師匠の言動を思い出した。

「異母兄との仲がかなり悪くて、家出同然で実家を飛び出し、王城で魔法使いになったらしい」
「う、ん」
「いきなり姿を消したと一時期はニュースになっていたくらいだ。……まさか、辺境で暮らしているなんてな」

 身体に回されたキリアンの手に、僕は自分の手を重ねた。

「あのな、ジェリー。人間っていうのは面倒なんだ」
「……キリアン?」
「好きなやつや大切なやつには、自分の薄暗い過去を話したくないんだ」

 声がすごくしんみりとしていた。キリアンは僕を抱きしめたまま、言葉を続ける。

「もしもそれが原因で嫌われたらどうしよう――って、気持ちが付きまとってくる。隠し通せるなら、隠せたほうがずっといい」

 キリアンの言葉が今度はすんなりと胸に吸い込まれていく。

 僕だって同じだったじゃないか。

(家族から虐げられてきたことを、キリアンには知られたくない。僕だって確かにそう思ってた)

 僕は自分のことを棚に上げて、勝手に苦しんで勝手に悲しんでいたんだ――って、気が付いた。

「キリアンには、ね」
「……あぁ」
「誰にも知られたくない過去が、あるの?」

 口が勝手に動いて問いかけていた。キリアンはしばしの間を置いて「あぁ」と答えをくれる。

「俺も知られたくない。ジェリーには特に」
「それは、僕に嫌われたくないから?」

 自分でも思いあがった尋ね方だってわかっていた。

 ……尋ねる言葉がこれしか出てこなかったんだけど。

「それもある。けどな、一番は――俺に、幻滅してほしくない」
「幻滅?」
「俺は過去に一生をかけても償えないことをしてしまった。……だから、俺は自分を犠牲にしなくちゃならないんだ」
感想 2

あなたにおすすめの小説

【完結】召喚された勇者は贄として、魔王に美味しく頂かれました

綾雅(りょうが)要らない悪役令嬢
BL
美しき異形の魔王×勇者の名目で召喚された生贄、執着激しいヤンデレの愛の行方は? 最初から贄として召喚するなんて、ひどいんじゃないか? 人生に何の不満もなく生きてきた俺は、突然異世界に召喚された。 よくある話なのか? 正直帰りたい。勇者として呼ばれたのに、碌な装備もないまま魔王を鎮める贄として差し出され、美味しく頂かれてしまった。美しい異形の魔王はなぜか俺に執着し、閉じ込めて溺愛し始める。ひたすら優しい魔王に、徐々に俺も絆されていく。もういっか、帰れなくても……。 ハッピーエンド確定 ※は性的描写あり 【完結】2021/10/31 【同時掲載】 小説家になろう、アルファポリス、エブリスタ 2021/10/03  エブリスタ、BLカテゴリー 1位

イケメン後輩のスマホを拾ったらロック画が俺でした

天埜鳩愛
BL
☆本編番外編 完結済✨ 感想嬉しいです! 元バスケ部の俺が拾ったスマホのロック画は、ユニフォーム姿の“俺”。 持ち主は、顔面国宝の一年生。 なんで俺の写真? なんでロック画? 問い詰める間もなく「この人が最優先なんで」って宣言されて、女子の悲鳴の中、肩を掴まれて連行された。……俺、ただスマホ届けに来ただけなんだけど。 頼られたら嫌とは言えない南澤燈真は高校二年生。クールなイケメン後輩、北門唯が置き忘れたスマホを手に取ってみると、ロック画が何故か中学時代の燈真だった! 北門はモテ男ゆえに女子からしつこくされ、燈真が助けることに。その日から学年を越え急激に仲良くなる二人。燈真は誰にも言えなかった悩みを北門にだけ打ち明けて……。一途なメロ後輩 × 絆され男前先輩の、救いすくわれ・持ちつ持たれつラブ! ☆ノベマ!の青春BLコンテスト最終選考作品に加筆&新エピソードを加えたアルファポリス版です。

俺以外美形なバンドメンバー、なぜか全員俺のことが好き

toki
BL
美形揃いのバンドメンバーの中で唯一平凡な主人公・神崎。しかし突然メンバー全員から告白されてしまった! ※美形×平凡、総受けものです。激重美形バンドマン3人に平凡くんが愛されまくるお話。 pixiv/ムーンライトノベルズでも同タイトルで投稿しています。 もしよろしければ感想などいただけましたら大変励みになります✿ 感想(匿名)➡ https://odaibako.net/u/toki_doki_ Twitter➡ https://twitter.com/toki_doki109 素敵な表紙お借りしました! https://www.pixiv.net/artworks/100148872

人気アイドルの俺、なぜかメンバー全員に好かれてます

七瀬
BL
デビュー4年目の人気アイドルグループ「ECLIPSE(エクリプス)」に所属する芹沢 美澄(せりざわみすみ)は、昔からどこか抜けていてマイペースな性格。 歌もダンスも決して一番ではないはずなのに、なぜかファンからもメンバーからも目を離されない存在だった。 世話焼きな幼なじみ、明るく距離の近い同い年、しっかり者で面倒見のいい年上、掴みどころのない自由人、そして無言で隣にいるリーダー——。 気づけば、美澄の周りにはいつも誰かがいて、当たり前のように甘やかされていく。

【完結】気が付いたらマッチョなblゲーの主人公になっていた件

白井のわ
BL
雄っぱいが大好きな俺は、気が付いたら大好きなblゲーの主人公になっていた。 最初から好感度MAXのマッチョな攻略対象達に迫られて正直心臓がもちそうもない。 いつも俺を第一に考えてくれる幼なじみ、優しいイケオジの先生、憧れの先輩、皆とのイチャイチャハーレムエンドを目指す俺の学園生活が今始まる。

穏やかに生きたい(隠れ)夢魔の俺が、癖強イケメンたちに執着されてます。〜平穏な学園生活はどこにありますか?〜

春凪アラシ
BL
「平穏に生きたい」だけなのに、 癖強イケメンたちが俺を狙ってくるのは、なぜ!? トラブルを避ける為、夢魔の血を隠して学園生活を送るフレン(2年)。 彼は見た目は天使、でも本人はごく平凡に過ごしたい穏健派。
なのに、登校初日から出会ったのは最凶の邪竜後輩(1年)!? 
他にも幼馴染で完璧すぎる優等生騎士(3年)に、不良だけど面倒見のいい悪友ワーウルフ(同級生)まで……なぜか異種族イケメンたちが次々と接近してきて―― 運命の2人を繋ぐ「刻印制度」なんて知らない! 恋愛感情もまだわからない! 
それでも、騒がしい日々の中で、少しずつ何かが変わっていく。 個性バラバラな異種族イケメンたちに囲まれて、フレンの学園生活は今日も波乱の予感!? 
甘くて可笑しい、そして時々執着も見え隠れする 愛され体質な主人公の青春ファンタジー学園BLラブコメディ! 月、水、金、日曜日更新予定!(番外編は更新とは別枠で不定期更新) 基本的にフレン視点、他キャラ視点の話はside〇〇って表記にしてます!

人気アイドルグループのリーダーは、気苦労が絶えない

タタミ
BL
大人気5人組アイドルグループ・JETのリーダーである矢代頼は、気苦労が絶えない。 対メンバー、対事務所、対仕事の全てにおいて潤滑剤役を果たす日々を送る最中、矢代は人気2トップの御厨と立花が『仲が良い』では片付けられない距離感になっていることが気にかかり──

【完結】異世界から来た鬼っ子を育てたら、ガッチリ男前に育って食べられた(性的に)

てんつぶ
BL
ある日、僕の住んでいるユノスの森に子供が一人で泣いていた。 言葉の通じないこのちいさな子と始まった共同生活。力の弱い僕を助けてくれる優しい子供はどんどん大きく育ち――― 大柄な鬼っ子(男前)×育ての親(平凡) 20201216 ランキング1位&応援ありがとうごございました!