【R18】気弱魔法使いはこのたび激重勇者に捕獲されました~最強の勇者さんは僕を愛してやみません~

すめらぎかなめ

文字の大きさ
60 / 73
第1部 第5章 違和感と謎の人

「僕は――」

 正直なところ、知るのが怖い。

 今まで知らなかった僕自身のことを突き付けられる。誰だって怖いはず。

(けど、僕は知らなくちゃならない。今後、僕が前を向いて生きていくためにも)

 僕は決めた。キリアンと生きるって。彼の傍に僕はいたい。

 気持ちを込めた目で師匠を見つめると、師匠は口元を緩めた。僕に向かって優しく微笑む。

「強くなったものだな、ジェリー。私の期待以上だ」

 師匠が長い脚を組んで、頬杖をついた。

「まず、ジェリーが魔族の血を引いていることは間違いない。キミの異様なまでの魔法の才能は、魔族の血が入っているからだろう」

 息をのんだ。

 やっぱり、僕は魔族の血を引いているんだ。

「そして、キミの持つ雰囲気――いわば、魔力の器はデルリーン家のもので間違いない。キミはデルリーン家の血もきちんと引いている」

 どういうことなんだろうか。

 デルリーン家の血を引いている。でも、僕の両親はともに人間。どちらかが魔族ならば、兄弟にも表れていないとおかしい。

「ここからは私の憶測にすぎない。話半分で聞いてほしい」

 とんとんと机を指でたたき、師匠が僕を見る。こんなはっきりと言葉をつむがない師匠はちょっと不気味だった。いや、今はそんなことを考えている場合じゃない。

「キミがデルリーン家の血を引いていることは間違いない。ということは、キミは両親の実子ではない可能性が高い」

 実子ではない――ということは。

「僕は親族の子で、両親に引き取られたということですか?」

 僕の問いかけに師匠は静かにうなずいた。

 ありえない話ではない。ただ、両親が僕を引き取った理由がわからない。彼らは僕に愛情を持っていなかった。いっそ、捨ててくれたほうがマシだと思うほどに。

「キミの両親がキミを引き取ったのには、深い理由があるのかもしれない。ま、結局は私の推測にすぎないけどね」

 立ち上がった師匠は僕のほうに近づいた。そして、その大きな手のひらが僕の頭を撫でる。優しく、いつくしむように。

「立派になったね。もう、キミに私は必要なさそうだ」

 違う。今の僕があるのは、全部師匠のおかげだ。師匠が必要ないなんてこと、絶対にない。

「師匠は僕にとって、一番の恩人です。必要ないなんて、言わないでください」
「おやおや、私の弟子は生意気にもなってしまったようだ」

 わざとらしく肩をすくめた師匠は、僕の額を小突いた。

「残念ながら、私にもやるべきことがあってね。キミに付きっきりになっている場合ではないんだ」

 自身の唇に指を押し当て、笑う師匠のことがはかなく見えてしまったのは、気のせいじゃないはず。

「キミが一人立ちをしたならば、私にも未練などない。私は私のやるべきことをやるさ」

 まるで死地に赴くような言葉に、僕の心臓が嫌な音を立てる。

 もしかして師匠は――自分の命をかけて、なにかをしようとしているんじゃないか。背中を嫌な汗が伝って、僕は師匠に手を伸ばす。

「師匠――」
「――血がつながっているからといって、必ず分かり合えるなんてありえない。夢物語は終わりにしよう」

 眉を下げた師匠が流れるような動きで僕の手から逃れた。いやだ、嫌だ。師匠がいないなんて、嫌だ――!

「師匠!」
「キリアン・レヴィン。どうか、ジェリーを頼むよ。私の代わりに、守ってやってくれ」
「……はい」

 どうしてキリアンは納得しているの?

 キリアンだって師匠が僕にとって大切な存在だって、知っているはずなのに。

 師匠のほうに駆けだそうとする僕を、キリアンが止めた。たくましい腕に包み込まれると、身動きもできない。

「キリアン!」

 キリアンを強くにらみつけると、キリアンが唇をかんだのがわかった。

「悪いが、俺にはお前の師匠の考えが、わかってしまうんだ」

 僕をぎゅうっと抱きしめて、キリアンが声を上げる。切なくて胸にしみわたるような声。

「キミが案外物分かりのいい男で助かったよ。ジェリー、どうか幸せにね」

 僕の鼻腔にふわりとした花の香りが届いた。師匠が好きだと言っていた――国花にもなっている花の香りだった。
感想 2

あなたにおすすめの小説

【完結】召喚された勇者は贄として、魔王に美味しく頂かれました

綾雅(りょうが)要らない悪役令嬢
BL
美しき異形の魔王×勇者の名目で召喚された生贄、執着激しいヤンデレの愛の行方は? 最初から贄として召喚するなんて、ひどいんじゃないか? 人生に何の不満もなく生きてきた俺は、突然異世界に召喚された。 よくある話なのか? 正直帰りたい。勇者として呼ばれたのに、碌な装備もないまま魔王を鎮める贄として差し出され、美味しく頂かれてしまった。美しい異形の魔王はなぜか俺に執着し、閉じ込めて溺愛し始める。ひたすら優しい魔王に、徐々に俺も絆されていく。もういっか、帰れなくても……。 ハッピーエンド確定 ※は性的描写あり 【完結】2021/10/31 【同時掲載】 小説家になろう、アルファポリス、エブリスタ 2021/10/03  エブリスタ、BLカテゴリー 1位

イケメン後輩のスマホを拾ったらロック画が俺でした

天埜鳩愛
BL
☆本編番外編 完結済✨ 感想嬉しいです! 元バスケ部の俺が拾ったスマホのロック画は、ユニフォーム姿の“俺”。 持ち主は、顔面国宝の一年生。 なんで俺の写真? なんでロック画? 問い詰める間もなく「この人が最優先なんで」って宣言されて、女子の悲鳴の中、肩を掴まれて連行された。……俺、ただスマホ届けに来ただけなんだけど。 頼られたら嫌とは言えない南澤燈真は高校二年生。クールなイケメン後輩、北門唯が置き忘れたスマホを手に取ってみると、ロック画が何故か中学時代の燈真だった! 北門はモテ男ゆえに女子からしつこくされ、燈真が助けることに。その日から学年を越え急激に仲良くなる二人。燈真は誰にも言えなかった悩みを北門にだけ打ち明けて……。一途なメロ後輩 × 絆され男前先輩の、救いすくわれ・持ちつ持たれつラブ! ☆ノベマ!の青春BLコンテスト最終選考作品に加筆&新エピソードを加えたアルファポリス版です。

俺以外美形なバンドメンバー、なぜか全員俺のことが好き

toki
BL
美形揃いのバンドメンバーの中で唯一平凡な主人公・神崎。しかし突然メンバー全員から告白されてしまった! ※美形×平凡、総受けものです。激重美形バンドマン3人に平凡くんが愛されまくるお話。 pixiv/ムーンライトノベルズでも同タイトルで投稿しています。 もしよろしければ感想などいただけましたら大変励みになります✿ 感想(匿名)➡ https://odaibako.net/u/toki_doki_ Twitter➡ https://twitter.com/toki_doki109 素敵な表紙お借りしました! https://www.pixiv.net/artworks/100148872

人気アイドルの俺、なぜかメンバー全員に好かれてます

七瀬
BL
デビュー4年目の人気アイドルグループ「ECLIPSE(エクリプス)」に所属する芹沢 美澄(せりざわみすみ)は、昔からどこか抜けていてマイペースな性格。 歌もダンスも決して一番ではないはずなのに、なぜかファンからもメンバーからも目を離されない存在だった。 世話焼きな幼なじみ、明るく距離の近い同い年、しっかり者で面倒見のいい年上、掴みどころのない自由人、そして無言で隣にいるリーダー——。 気づけば、美澄の周りにはいつも誰かがいて、当たり前のように甘やかされていく。

【完結】気が付いたらマッチョなblゲーの主人公になっていた件

白井のわ
BL
雄っぱいが大好きな俺は、気が付いたら大好きなblゲーの主人公になっていた。 最初から好感度MAXのマッチョな攻略対象達に迫られて正直心臓がもちそうもない。 いつも俺を第一に考えてくれる幼なじみ、優しいイケオジの先生、憧れの先輩、皆とのイチャイチャハーレムエンドを目指す俺の学園生活が今始まる。

穏やかに生きたい(隠れ)夢魔の俺が、癖強イケメンたちに執着されてます。〜平穏な学園生活はどこにありますか?〜

春凪アラシ
BL
「平穏に生きたい」だけなのに、 癖強イケメンたちが俺を狙ってくるのは、なぜ!? トラブルを避ける為、夢魔の血を隠して学園生活を送るフレン(2年)。 彼は見た目は天使、でも本人はごく平凡に過ごしたい穏健派。
なのに、登校初日から出会ったのは最凶の邪竜後輩(1年)!? 
他にも幼馴染で完璧すぎる優等生騎士(3年)に、不良だけど面倒見のいい悪友ワーウルフ(同級生)まで……なぜか異種族イケメンたちが次々と接近してきて―― 運命の2人を繋ぐ「刻印制度」なんて知らない! 恋愛感情もまだわからない! 
それでも、騒がしい日々の中で、少しずつ何かが変わっていく。 個性バラバラな異種族イケメンたちに囲まれて、フレンの学園生活は今日も波乱の予感!? 
甘くて可笑しい、そして時々執着も見え隠れする 愛され体質な主人公の青春ファンタジー学園BLラブコメディ! 月、水、金、日曜日更新予定!(番外編は更新とは別枠で不定期更新) 基本的にフレン視点、他キャラ視点の話はside〇〇って表記にしてます!

人気アイドルグループのリーダーは、気苦労が絶えない

タタミ
BL
大人気5人組アイドルグループ・JETのリーダーである矢代頼は、気苦労が絶えない。 対メンバー、対事務所、対仕事の全てにおいて潤滑剤役を果たす日々を送る最中、矢代は人気2トップの御厨と立花が『仲が良い』では片付けられない距離感になっていることが気にかかり──

【完結】異世界から来た鬼っ子を育てたら、ガッチリ男前に育って食べられた(性的に)

てんつぶ
BL
ある日、僕の住んでいるユノスの森に子供が一人で泣いていた。 言葉の通じないこのちいさな子と始まった共同生活。力の弱い僕を助けてくれる優しい子供はどんどん大きく育ち――― 大柄な鬼っ子(男前)×育ての親(平凡) 20201216 ランキング1位&応援ありがとうごございました!