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第1部 第5章 違和感と謎の人
⑯
唇が震える。涙で視界が歪んだ。
僕をじっと見下ろすキリアンの顔を見ることさえ出来なくて、僕は両手で顔を覆う。
「ジェリー、あのな」
キリアンが僕から少し距離を取ろうとした。
わずかに離れるのも嫌で、怖くて。僕は駄々をこねる子供のように首をぶんぶんと横に振った。
「嫌だ、ねぇ、僕のことめちゃくちゃにしてもいいから――!」
自分でもなにを言っているのか、なにを伝えたいのか。一つとしてわからない。
支離滅裂な言葉をうわごとのように繰り返し、嗚咽を漏らした。
これじゃあ本当に駄々っ子だって、頭の冷静な部分が吐き捨てた。
「ジェリー。不安も怖いのも分かる。だから、落ち着け。――俺は、ここにいるから」
キリアンが僕の腕を引いた。自身の腕の中に僕の身体を閉じ込めて、ゆっくりと背中を撫でてくれる。
「今日は休むぞ。不安なら、抱きしめるから」
「……えっち、しないの?」
戸惑いつつも問いかけると、キリアンはうなずいた。
やっぱり僕じゃダメだったんだろうか。僕の身体じゃ、キリアンを満足させることが出来なかった?
「今日はしない。お前が冷静じゃないのに、襲うなんて出来るわけがない。最低な男にはなりたくない」
僕を抱きしめる腕に力がこもったのがわかった。
「お前が冷静なら、めちゃくちゃに抱きたい。ただ、今のお前は自棄になっているだけだ。傷口に付け込むように抱いても、それは所詮性欲解消にしかならない」
彼の腕が僕の後頭部に回った。ぽんぽんと数回たたかれて、僕は顔を歪めてしまう。
「俺はジェリーを大切にしたい。性欲のはけ口になんてしたくないんだ」
僕の胸にキリアンが発した言葉が、一言一句残らずにしみこんでいくのがわかった。
「愛している証拠が欲しいなら、抱く以外に証明する方法だっていくつもある。言葉なんて薄っぺらいかもしれない。キスなんて気休めにしかならないかもしれない。だが、お前が望むのならばいくらだってする」
視界がさらに歪んだ。僕の顔はきっとぐしゃぐしゃに歪んでいて、見るに堪えない顔になっているはずだ。
「俺はお前の側にいる。絶対に離れない」
「僕を置いて、どこかに行ったりしない――?」
「あぁ、約束する」
もう限界だった。涙があふれて止まらなくなる。
声を上げて泣いてしまう。大人なのに、みっともないってわかっているのに。
「お前は俺が守る。そして、勝手に死んだりしない。お前を一人になんて、しない」
僕を強く強く抱きしめて、キリアンが僕の耳元でささやいた。
「お前が俺に生きていてほしいと言うなら、俺はお前が死ぬまで側にいる。死ぬときは一緒――いや、死んでも一緒だ」
言葉なんてものは信じる価値もないものかもしれない。簡単に撤回することもできるし、もしかしたら嘘かもしれない。
わかっていても、僕はキリアンを信じたかった。彼の言葉を受け入れたかった。
「キリアン。僕も、キリアンとずっと一緒にいたい」
臆病で、気が弱い。いつだって人の目を見て僕はおどおどとしていた。
そんな僕がこんなにも心の底から一緒にいたいと思える人物は――後にも先にもキリアンだけだ。
「キリアンとたくさんいろんなところに行って、いろんなものを見たい。僕はキリアンが――好きだよ」
僕一人じゃ抱えきることが出来そうにないほどの重たい感情。僕は導かれるように「好き」を口にした。
「好き、大好き――愛してるよ」
僕をじっと見下ろすキリアンの顔を見ることさえ出来なくて、僕は両手で顔を覆う。
「ジェリー、あのな」
キリアンが僕から少し距離を取ろうとした。
わずかに離れるのも嫌で、怖くて。僕は駄々をこねる子供のように首をぶんぶんと横に振った。
「嫌だ、ねぇ、僕のことめちゃくちゃにしてもいいから――!」
自分でもなにを言っているのか、なにを伝えたいのか。一つとしてわからない。
支離滅裂な言葉をうわごとのように繰り返し、嗚咽を漏らした。
これじゃあ本当に駄々っ子だって、頭の冷静な部分が吐き捨てた。
「ジェリー。不安も怖いのも分かる。だから、落ち着け。――俺は、ここにいるから」
キリアンが僕の腕を引いた。自身の腕の中に僕の身体を閉じ込めて、ゆっくりと背中を撫でてくれる。
「今日は休むぞ。不安なら、抱きしめるから」
「……えっち、しないの?」
戸惑いつつも問いかけると、キリアンはうなずいた。
やっぱり僕じゃダメだったんだろうか。僕の身体じゃ、キリアンを満足させることが出来なかった?
「今日はしない。お前が冷静じゃないのに、襲うなんて出来るわけがない。最低な男にはなりたくない」
僕を抱きしめる腕に力がこもったのがわかった。
「お前が冷静なら、めちゃくちゃに抱きたい。ただ、今のお前は自棄になっているだけだ。傷口に付け込むように抱いても、それは所詮性欲解消にしかならない」
彼の腕が僕の後頭部に回った。ぽんぽんと数回たたかれて、僕は顔を歪めてしまう。
「俺はジェリーを大切にしたい。性欲のはけ口になんてしたくないんだ」
僕の胸にキリアンが発した言葉が、一言一句残らずにしみこんでいくのがわかった。
「愛している証拠が欲しいなら、抱く以外に証明する方法だっていくつもある。言葉なんて薄っぺらいかもしれない。キスなんて気休めにしかならないかもしれない。だが、お前が望むのならばいくらだってする」
視界がさらに歪んだ。僕の顔はきっとぐしゃぐしゃに歪んでいて、見るに堪えない顔になっているはずだ。
「俺はお前の側にいる。絶対に離れない」
「僕を置いて、どこかに行ったりしない――?」
「あぁ、約束する」
もう限界だった。涙があふれて止まらなくなる。
声を上げて泣いてしまう。大人なのに、みっともないってわかっているのに。
「お前は俺が守る。そして、勝手に死んだりしない。お前を一人になんて、しない」
僕を強く強く抱きしめて、キリアンが僕の耳元でささやいた。
「お前が俺に生きていてほしいと言うなら、俺はお前が死ぬまで側にいる。死ぬときは一緒――いや、死んでも一緒だ」
言葉なんてものは信じる価値もないものかもしれない。簡単に撤回することもできるし、もしかしたら嘘かもしれない。
わかっていても、僕はキリアンを信じたかった。彼の言葉を受け入れたかった。
「キリアン。僕も、キリアンとずっと一緒にいたい」
臆病で、気が弱い。いつだって人の目を見て僕はおどおどとしていた。
そんな僕がこんなにも心の底から一緒にいたいと思える人物は――後にも先にもキリアンだけだ。
「キリアンとたくさんいろんなところに行って、いろんなものを見たい。僕はキリアンが――好きだよ」
僕一人じゃ抱えきることが出来そうにないほどの重たい感情。僕は導かれるように「好き」を口にした。
「好き、大好き――愛してるよ」
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