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第1部 第6章 嘘と傷痕、そして墓標
③
シデリス殿下が王都に戻るのを見送った僕たちは、各々街を見て回ることとなった。
エカードさんは大剣の手入れをすると、鍛冶屋などがある方面へ。キリアンも渋々エカードさんについていくこととなった。
「お前の剣も手入れをしたほうがいい。行くぞ」
強引にキリアンを引きずったエカードさんは、僕に向かって口パクで伝えてくる。
『こいつはしばらく預かっておく』
どうやら、エカードさんは僕の気が休まっていないと思ったようだ。
別に気が休まっていないわけではないけど、個人で調べたいことがあったから、彼の気遣いに甘えておくことにした。
(……まず、知るべきは僕の両親が本当の両親なのか)
僕には魔族の血が入っているという。両親は生粋の人間――のはず。じゃあ、僕は一体なんなのか。
(先祖返りとかそういうものの可能性もある……んだけど)
やっぱり一番高い可能性は僕は両親の実子ではないということ。
もしも、もしもだよ。僕に本当の両親がいるのなら――会ってみたいと、思ってしまう。
(たくさん尋ねたいことがあるんだ)
こぶしを握って、僕は芸術家のアトリエがある通りに足を向けてみた。
大通りは今まで何度か通ったし、今回は小道に行ってみようと思ったのだ。
アトリエがたくさん建ち並ぶ通りはしぃんとしていた。かといって、活気がないわけじゃない。
人はそれなりに通っているし、話し声も聞こえてくる。ただ、雰囲気が独特だった。そして、僕はこの雰囲気が嫌いじゃない。
「……すごいなぁ」
自然と言葉がこぼれていた。芸術家たちのアトリエはとても独創的。あと、お店らしき建物もあった。
お店の中を覗いてみると、たくさんの芸術品や工芸品が並んでいる。
店主の「いらっしゃい」という声が遠くから聞こえる。視線を向けると、店主らしきご老人がお金を数えているみたいだ。
(木工品が多いのかな。このオブジェも木で出来ているみたい)
だからなのか温かみがあって、見ていて心が安らぐ。
少しの間店内を見回ってみる。完全に冷やかしだけど、見ていて楽しかったのだ。
(店主さんに、聞いてみてもいいけど……)
けど、どう聞けばいい? 僕の両親を知りませんかって聞くのは違うような気がする。
工芸品を見つつ頭を悩ませていると、店主さんがいたほうからガシャーンと大きな音が聞こえてきた。
僕が慌ててそちらに顔を向ける。店主さんは、僕を見て口をパクパクと動かしていた。
「――クラーラさんかい?」
「クラーラ?」
馴染みのない名前に、僕が眉間にしわを寄せた。店主さんは慌てて眼鏡をかけた。少しして落胆したように肩を落とす。
「あぁ、ごめん。人違いだったよ。ごめんねぇ」
店主さんが何度も謝ってくる。僕はゆるゆると首を横に振った。謝ってもらうようなことじゃなかったから。
僕はゆっくりと店主さんのほうに近づいた。店主さんは僕の顔をまじまじと見て、「そっくりだねぇ」と声を上げた。
「まるで生き写しじゃないか」
感極まったような声に、僕は戸惑う。でも、これはチャンスだと思った。
「あの、クラーラさんという人のこと、教えていただけませんか?」
僕の声は震えていた。
「僕、ジェリーって言います」
ちょっとでも警戒心を解いてほしくて、僕は必死に言葉を探した。
店主さんは目を瞬かせていたけど、「いいよぉ」と了承してくれた。
「とりあえず、そこに座ったらいいよ。今、お茶を淹れてくるからねぇ」
「い、いえ、お構いなく……」
「いいんだよ。若者とお話しするのも、楽しいから」
お店の奥に入っていく店主さんを見送って、僕は自分の心臓が大きく音を鳴らしていることに気が付いた。
もしかしたら、僕の出自に関わることが知れるかもしれない――という、期待があったのだ。
エカードさんは大剣の手入れをすると、鍛冶屋などがある方面へ。キリアンも渋々エカードさんについていくこととなった。
「お前の剣も手入れをしたほうがいい。行くぞ」
強引にキリアンを引きずったエカードさんは、僕に向かって口パクで伝えてくる。
『こいつはしばらく預かっておく』
どうやら、エカードさんは僕の気が休まっていないと思ったようだ。
別に気が休まっていないわけではないけど、個人で調べたいことがあったから、彼の気遣いに甘えておくことにした。
(……まず、知るべきは僕の両親が本当の両親なのか)
僕には魔族の血が入っているという。両親は生粋の人間――のはず。じゃあ、僕は一体なんなのか。
(先祖返りとかそういうものの可能性もある……んだけど)
やっぱり一番高い可能性は僕は両親の実子ではないということ。
もしも、もしもだよ。僕に本当の両親がいるのなら――会ってみたいと、思ってしまう。
(たくさん尋ねたいことがあるんだ)
こぶしを握って、僕は芸術家のアトリエがある通りに足を向けてみた。
大通りは今まで何度か通ったし、今回は小道に行ってみようと思ったのだ。
アトリエがたくさん建ち並ぶ通りはしぃんとしていた。かといって、活気がないわけじゃない。
人はそれなりに通っているし、話し声も聞こえてくる。ただ、雰囲気が独特だった。そして、僕はこの雰囲気が嫌いじゃない。
「……すごいなぁ」
自然と言葉がこぼれていた。芸術家たちのアトリエはとても独創的。あと、お店らしき建物もあった。
お店の中を覗いてみると、たくさんの芸術品や工芸品が並んでいる。
店主の「いらっしゃい」という声が遠くから聞こえる。視線を向けると、店主らしきご老人がお金を数えているみたいだ。
(木工品が多いのかな。このオブジェも木で出来ているみたい)
だからなのか温かみがあって、見ていて心が安らぐ。
少しの間店内を見回ってみる。完全に冷やかしだけど、見ていて楽しかったのだ。
(店主さんに、聞いてみてもいいけど……)
けど、どう聞けばいい? 僕の両親を知りませんかって聞くのは違うような気がする。
工芸品を見つつ頭を悩ませていると、店主さんがいたほうからガシャーンと大きな音が聞こえてきた。
僕が慌ててそちらに顔を向ける。店主さんは、僕を見て口をパクパクと動かしていた。
「――クラーラさんかい?」
「クラーラ?」
馴染みのない名前に、僕が眉間にしわを寄せた。店主さんは慌てて眼鏡をかけた。少しして落胆したように肩を落とす。
「あぁ、ごめん。人違いだったよ。ごめんねぇ」
店主さんが何度も謝ってくる。僕はゆるゆると首を横に振った。謝ってもらうようなことじゃなかったから。
僕はゆっくりと店主さんのほうに近づいた。店主さんは僕の顔をまじまじと見て、「そっくりだねぇ」と声を上げた。
「まるで生き写しじゃないか」
感極まったような声に、僕は戸惑う。でも、これはチャンスだと思った。
「あの、クラーラさんという人のこと、教えていただけませんか?」
僕の声は震えていた。
「僕、ジェリーって言います」
ちょっとでも警戒心を解いてほしくて、僕は必死に言葉を探した。
店主さんは目を瞬かせていたけど、「いいよぉ」と了承してくれた。
「とりあえず、そこに座ったらいいよ。今、お茶を淹れてくるからねぇ」
「い、いえ、お構いなく……」
「いいんだよ。若者とお話しするのも、楽しいから」
お店の奥に入っていく店主さんを見送って、僕は自分の心臓が大きく音を鳴らしていることに気が付いた。
もしかしたら、僕の出自に関わることが知れるかもしれない――という、期待があったのだ。
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