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第1章
第14話【※】
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イライアスが一瞬だけ戸惑いの様子を見せる。
瞳の奥に宿った感情に、アンジーはがっかりした。だが、同時に納得もできる。
彼にとって自分は世継ぎを産むためだけの存在。愛なんて、恋なんて。求めていないのだから。
そもそも、これ以上なにを求めるのだろう。抱きしめてくれて、キスをしてくれた。それで満足したらいいのに……。
「ぁ、あっ」
身体の痛みが心に伝染していくみたいだ。
悲しくて、苦しくて。嗚咽を漏らす。
涙がこぼれる。少しして、頬に温かいなにかが触れた。
「どうして、そんなことを求めるんだ」
「ど、うしてって」
「そんな言葉があったところで、なにが変わるんだ」
また、頬に温かいものが触れる。これはイライアスの舌のようだ。彼の舌はアンジーの涙を丁寧になめとっていく。
「突然夫になった男の言葉など、嬉しくはないだろう」
確かに、それはそうだ。では、なぜアンジーは彼からの言葉を求めたのだろうか。
(抱きしめてほしい。キスをしてほしい。これは痛みをごまかすために効果的なこと。……対して、言葉なんて)
気休めでしかない。
その言葉が愛している人からなら、気休め以上の意味はあるだろう。
だが、自分たちは政略結婚だ。アンジーだって、割り切っていた……はず、なのだ。
(愛し合う男女の真似事がしたい――というのは、間違いないわ)
でも、それだけではない気がする。
アンジーが考え込んだのを見て、イライアスが大きく息を吐く。
そういえば、今は考え込むような状況ではなかった。
「それでも必要ならば、いくらでも言ってやる」
視線を絡ませ、彼がつぶやく。
「心のない言葉一つで喜ぶのなら、いくらでも――」
刺々しい言葉だ。なのに、アンジーの肌を撫でる手つきは優しい。ちぐはぐさに、混乱してしまいそうになる。
「――どうしてほしい?」
じっと瞳を見つめられ、アンジーは口を開いた。
「言って、ください。好きって、私のことを愛してるって――」
強く目をつむる。目尻にたまった涙を吸い上げられ、イライアスの唇が耳元に移動する。
耳朶を軽く噛まれて、身体が跳ねる。彼のモノをぐっと押し込まれ、怖いほどの圧迫感に襲われた。
「アンジー」
しかし、耳元で名前を呼ばれると、恐怖が和らぐ。手のひらが肌の上をすべるたびに、余計な力が抜けていくのがわかった。
「――す、きだ」
途中で途切れたものの、はっきり聞こえた。
「俺は、アンジーが好きだ、愛してる」
嘘だってわかっているのに、心が揺さぶられた。
(偽りの言葉で喜ぶなんて、単純な女……)
なんて思っても、気持ちを抑えることができなかった。
だって、本当に嬉しいのだ。これが愛し合う男女の真似事でしかないとわかっていても。
「だから、大丈夫」
安心させるように何度も何度も「大丈夫」とささやかれた。
恐る恐る手を伸ばして、イライアスの背中に腕を回す。抱き着いても、咎められることはなかった。
「イライアス、さま」
「……あぁ」
「私も、好き」
自然と言葉が出ていた。
「好き、好き。大好き――あいして、ます」
心からの言葉じゃない。でまかせなのに、口にすると満たされていくような気がした。
「そうか」
彼がつぶやくと同時に、動きが止まった。どうやら、最後まで挿ったらしい。
「……痛いか?」
心配を宿した瞳で見つめられ、問いかけられた。
確かに身体は痛い。けど、なぜか心は満たされていた。
「いいえ、とっても、うれしいです」
はにかむと、イライアスは目を見開く。そして、そっと視線を逸らした。
顔は真っ赤だ。照れているのだろう。
「私のお願い、聞いてくれてありがとうございます」
「……あぁ」
短い会話だったが、アンジーの気持ちは伝わったはずだ。
少しの間無言で見つめ合って、イライアスが動き始める。もう、苦しくはなかった。
瞳の奥に宿った感情に、アンジーはがっかりした。だが、同時に納得もできる。
彼にとって自分は世継ぎを産むためだけの存在。愛なんて、恋なんて。求めていないのだから。
そもそも、これ以上なにを求めるのだろう。抱きしめてくれて、キスをしてくれた。それで満足したらいいのに……。
「ぁ、あっ」
身体の痛みが心に伝染していくみたいだ。
悲しくて、苦しくて。嗚咽を漏らす。
涙がこぼれる。少しして、頬に温かいなにかが触れた。
「どうして、そんなことを求めるんだ」
「ど、うしてって」
「そんな言葉があったところで、なにが変わるんだ」
また、頬に温かいものが触れる。これはイライアスの舌のようだ。彼の舌はアンジーの涙を丁寧になめとっていく。
「突然夫になった男の言葉など、嬉しくはないだろう」
確かに、それはそうだ。では、なぜアンジーは彼からの言葉を求めたのだろうか。
(抱きしめてほしい。キスをしてほしい。これは痛みをごまかすために効果的なこと。……対して、言葉なんて)
気休めでしかない。
その言葉が愛している人からなら、気休め以上の意味はあるだろう。
だが、自分たちは政略結婚だ。アンジーだって、割り切っていた……はず、なのだ。
(愛し合う男女の真似事がしたい――というのは、間違いないわ)
でも、それだけではない気がする。
アンジーが考え込んだのを見て、イライアスが大きく息を吐く。
そういえば、今は考え込むような状況ではなかった。
「それでも必要ならば、いくらでも言ってやる」
視線を絡ませ、彼がつぶやく。
「心のない言葉一つで喜ぶのなら、いくらでも――」
刺々しい言葉だ。なのに、アンジーの肌を撫でる手つきは優しい。ちぐはぐさに、混乱してしまいそうになる。
「――どうしてほしい?」
じっと瞳を見つめられ、アンジーは口を開いた。
「言って、ください。好きって、私のことを愛してるって――」
強く目をつむる。目尻にたまった涙を吸い上げられ、イライアスの唇が耳元に移動する。
耳朶を軽く噛まれて、身体が跳ねる。彼のモノをぐっと押し込まれ、怖いほどの圧迫感に襲われた。
「アンジー」
しかし、耳元で名前を呼ばれると、恐怖が和らぐ。手のひらが肌の上をすべるたびに、余計な力が抜けていくのがわかった。
「――す、きだ」
途中で途切れたものの、はっきり聞こえた。
「俺は、アンジーが好きだ、愛してる」
嘘だってわかっているのに、心が揺さぶられた。
(偽りの言葉で喜ぶなんて、単純な女……)
なんて思っても、気持ちを抑えることができなかった。
だって、本当に嬉しいのだ。これが愛し合う男女の真似事でしかないとわかっていても。
「だから、大丈夫」
安心させるように何度も何度も「大丈夫」とささやかれた。
恐る恐る手を伸ばして、イライアスの背中に腕を回す。抱き着いても、咎められることはなかった。
「イライアス、さま」
「……あぁ」
「私も、好き」
自然と言葉が出ていた。
「好き、好き。大好き――あいして、ます」
心からの言葉じゃない。でまかせなのに、口にすると満たされていくような気がした。
「そうか」
彼がつぶやくと同時に、動きが止まった。どうやら、最後まで挿ったらしい。
「……痛いか?」
心配を宿した瞳で見つめられ、問いかけられた。
確かに身体は痛い。けど、なぜか心は満たされていた。
「いいえ、とっても、うれしいです」
はにかむと、イライアスは目を見開く。そして、そっと視線を逸らした。
顔は真っ赤だ。照れているのだろう。
「私のお願い、聞いてくれてありがとうございます」
「……あぁ」
短い会話だったが、アンジーの気持ちは伝わったはずだ。
少しの間無言で見つめ合って、イライアスが動き始める。もう、苦しくはなかった。
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