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第2章
第1話
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翌日。アンジーが目を覚ましたのは昼前だった。重たい身体を起こして、目をこする。
怠さの残る身体を動かしていると、サイドテーブルの上にメモが置いてあることに気づいた。メモには短く『起きたらベルを鳴らせ』と書いてあった。メモの近くにはベルがあるので、これのことだろう。
アンジーはベルを見つめて、手を伸ばす。だが、今の自分の格好を思い出して、手を引っ込めた。
「まずは服を着なくちゃ……」
慌てて下着と服を拾って、身に着ける。慌てて身に着けたため、衣服にはしわがついていた。しかし、気にしている余裕はない。
何度か深呼吸をして、ベルを鳴らす。少しして、足音が聞こえた。足音は寝室の前で止まり、次にノックの音が聞こえた。
「アンジーさま。入ってもよろしいでしょうか?」
「えぇ、大丈夫よ」
できるだけ冷静を装って返事をすると、扉が開く。現れたのはオパールだ。彼女の顔を見て、自然とほっと息を吐いた。
「こんな時間まで眠ってしまってごめんなさい」
「いえ、お気になさらず。昨日は慌ただしかったでしょうし、当然ですよ」
彼女の言葉を聞いて、胸の中に安堵が広がった。
「ご所望でしたら、湯あみの準備をさせていただきます」
「じゃあ、お願い」
アンジーの返答を聞いオパールは、頭を下げて寝室の扉の一つを開けた。どうやら、あそこが浴室らしい。
(私室にも個人の浴室があったのに、ここにもあるのね)
なんと贅沢なことだろう。
アンジーが感心していると、オパールが戻ってきた。彼女はワゴンを押し、寝台のほうにやってくる。
「お顔を洗いましょう。目が覚めますよ」
深めの器にはぬるま湯が張られていた。アンジーは手を伸ばして、そのぬるま湯で顔を洗う。差し出されたタオルで顔を拭くと、まだ夢見心地だった意識が覚醒していく。
「……陛下は、どうされているの?」
アンジーが起きたときにはすでに、寝台にぬくもりはなかった。ということは、彼はアンジーより相当早く目覚めたということだろう。
(イライアスさまにとって、私を抱くのは義務だもの。起きるときまで一緒にいてほしいなんて望んではいけないわ)
これは政略結婚なのだ。自分たちは利害の一致で結婚した。
そして、彼だって言っていた。アンジーに求めることは世継ぎを産むことだけだと。
「陛下でしたら、来賓の方々をもてなしていらっしゃいます。本日帰国される方も多いので」
昨日の結婚式には、国内外の重鎮がたくさん参列していた。彼らをもてなすのも王族の仕事だ。
「で、では、私がこんなゆっくりしている場合では……」
アンジーだって王女の生まれだ。外交がどれだけ大切なのかは理解しているつもりである。
自分だけ寝台の上でのんびり過ごすわけにはいかない――と思っていると。オパールに止められてしまった。
「よろしいのですよ。挙式の翌日に妃殿下の出席を促すほうが不躾というものです」
「……けど」
「むしろ、欠席されるほうがよろしいのです。はじめから不仲説が流れてしまいます」
確かにオパールの言葉は一理ある。納得したアンジーは寝台にぽふんと腰かける。
「ですから、本日は自由に好きなことをしてお過ごしになってくださいね」
これはオパールなりの気遣いだ。いやというほどにわかるから、アンジーは素直に従うしかできない。
「さぁ、そろそろお湯が張れたはずです。浴室に行きましょう」
空気を変えるようなオパールの言葉に、アンジーは静かにうなずいた。
彼女に連れられて、浴室に向かう。身体を洗ってもらってから、湯につかった。
「なにかありましたらお呼びくださいませ」
オパールが退室し、アンジーは一人になる。
「……私、なにやってるんだろう」
少しして、言葉がこぼれた。
怠さの残る身体を動かしていると、サイドテーブルの上にメモが置いてあることに気づいた。メモには短く『起きたらベルを鳴らせ』と書いてあった。メモの近くにはベルがあるので、これのことだろう。
アンジーはベルを見つめて、手を伸ばす。だが、今の自分の格好を思い出して、手を引っ込めた。
「まずは服を着なくちゃ……」
慌てて下着と服を拾って、身に着ける。慌てて身に着けたため、衣服にはしわがついていた。しかし、気にしている余裕はない。
何度か深呼吸をして、ベルを鳴らす。少しして、足音が聞こえた。足音は寝室の前で止まり、次にノックの音が聞こえた。
「アンジーさま。入ってもよろしいでしょうか?」
「えぇ、大丈夫よ」
できるだけ冷静を装って返事をすると、扉が開く。現れたのはオパールだ。彼女の顔を見て、自然とほっと息を吐いた。
「こんな時間まで眠ってしまってごめんなさい」
「いえ、お気になさらず。昨日は慌ただしかったでしょうし、当然ですよ」
彼女の言葉を聞いて、胸の中に安堵が広がった。
「ご所望でしたら、湯あみの準備をさせていただきます」
「じゃあ、お願い」
アンジーの返答を聞いオパールは、頭を下げて寝室の扉の一つを開けた。どうやら、あそこが浴室らしい。
(私室にも個人の浴室があったのに、ここにもあるのね)
なんと贅沢なことだろう。
アンジーが感心していると、オパールが戻ってきた。彼女はワゴンを押し、寝台のほうにやってくる。
「お顔を洗いましょう。目が覚めますよ」
深めの器にはぬるま湯が張られていた。アンジーは手を伸ばして、そのぬるま湯で顔を洗う。差し出されたタオルで顔を拭くと、まだ夢見心地だった意識が覚醒していく。
「……陛下は、どうされているの?」
アンジーが起きたときにはすでに、寝台にぬくもりはなかった。ということは、彼はアンジーより相当早く目覚めたということだろう。
(イライアスさまにとって、私を抱くのは義務だもの。起きるときまで一緒にいてほしいなんて望んではいけないわ)
これは政略結婚なのだ。自分たちは利害の一致で結婚した。
そして、彼だって言っていた。アンジーに求めることは世継ぎを産むことだけだと。
「陛下でしたら、来賓の方々をもてなしていらっしゃいます。本日帰国される方も多いので」
昨日の結婚式には、国内外の重鎮がたくさん参列していた。彼らをもてなすのも王族の仕事だ。
「で、では、私がこんなゆっくりしている場合では……」
アンジーだって王女の生まれだ。外交がどれだけ大切なのかは理解しているつもりである。
自分だけ寝台の上でのんびり過ごすわけにはいかない――と思っていると。オパールに止められてしまった。
「よろしいのですよ。挙式の翌日に妃殿下の出席を促すほうが不躾というものです」
「……けど」
「むしろ、欠席されるほうがよろしいのです。はじめから不仲説が流れてしまいます」
確かにオパールの言葉は一理ある。納得したアンジーは寝台にぽふんと腰かける。
「ですから、本日は自由に好きなことをしてお過ごしになってくださいね」
これはオパールなりの気遣いだ。いやというほどにわかるから、アンジーは素直に従うしかできない。
「さぁ、そろそろお湯が張れたはずです。浴室に行きましょう」
空気を変えるようなオパールの言葉に、アンジーは静かにうなずいた。
彼女に連れられて、浴室に向かう。身体を洗ってもらってから、湯につかった。
「なにかありましたらお呼びくださいませ」
オパールが退室し、アンジーは一人になる。
「……私、なにやってるんだろう」
少しして、言葉がこぼれた。
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