【R18】政略結婚した夫が、妃の私に求めるのは世継ぎを産むことだけ……のはずだった。あれ? なんだか夫の様子がおかしいのですが?

すめらぎかなめ

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第3章

第1話

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 挙式から一週間も経つと、アンジーはすっかり城に馴染んでいた。

 兄を見送ったときは心細かったものの、城の人たちが気にかけてくれるため、想像していたより寂しくはない。

 使用人たちとの関わり方も悩んだが、結局グリーナウェイにいたころと同じようなものに落ち着いた。はじめこそ彼らは驚いていたが、今では世間話をしたり、うわさ話を教えてくれるメイドもできた。

 夫のイライアスもわかりにくいが気遣ってくれる。初夜以来、身体を重ねてはいないが。

「アンジーさま。そろそろお茶会を開いてもよいかと思います」

 昼食を終え、部屋に戻ろうとしたアンジーに声をかけてきたのはイーノスだった。彼は真剣な眼差しでアンジーを見つめてくる。

「お茶会とは、貴族の女性たちを招いて交流する場所――で、間違いないわね?」
「はい」

 静かにうなずいたイーノスを見て、アンジーは悩んだ。

 妃である以上、貴族の女性たちとの交流は必要不可欠だ。いつかは開く必要がある。

(でも、私に主催なんてできるかしら……)

 王女としてお茶会を主催したことはない。主催はいつも母だった。

 グリーナウェイでは王家が催す茶会はすべて王妃の主催となるのが常。王女が主催をすることはあり得ないことだったためだ。

「アンジーさま?」

 黙り込んでしまったアンジーを見て、イーノスが不安そうな表情になる。

 はっとして、顔をあげる。ごまかすような笑みを浮かべて、口を開いた。

「前向きに考えるわね。返事は少し待ってもらえる?」
「それは構いませんが……」

 あまり追及されたくなくて、アンジーは早足で部屋に向かった。

 部屋に入ると、中では若いメイドが掃除の仕上げをしていた。突然の主の帰室に驚くものの、彼女は深々と頭を下げる。

「申し訳ございません。すぐに退室しますので……」

 掃除道具を片付けていくメイドの顔には見覚えがあった。彼女とは先日ちょっぴり言葉を交わした。といっても、恐縮してばかりの彼女はあまり言葉をくれなかったが。

「ねぇ、ちょっといいかしら?」

 アンジーの声に反応して、彼女の肩がびくんと跳ねた。可哀そうになるくらいの驚き具合に、申し訳なさがこみあげてくる。

「社交のことで悩んでいることがあって。もし相談に適任な人を知っているのなら、教えてほしいの」

 この国に来て日が浅いため、おかしなことを言ったとは思われないはず。

 社交には国ごとに独特のルールがある。あくまでもこの国のルールが知りたい――という風に問いかけてみる。

「私はこの国の文化をすべて知っているわけではないわ。グリーナウェイでの文化が、この国では不適切ということもあるでしょう?」

 付け足した言葉に納得したようで、彼女はうなずいた。

 少しの間うなって、突然手をぽんっとたたいた。

「でしたら、私の祖母などどうでしょうか」
「あなたのお祖母さま?」

 繰り返すと今度は力強くうなずくのが見えた。

「私の祖母は伯爵家の生まれで、若いころは社交界を牛耳っていたそうです」
「それは、大丈夫なの? もちろん、悪い意味ではないわよ」
「はい。祖母はとても明るい人で、祖母と話すと気分が晴れる――と今でも評判なのです」

 だったら、大丈夫――だろう。

「あの人は天性の人たらしですから。祖母に牛耳っているという自覚はなくて、周囲が一時期勝手に言っているだけですし」

 あきれたような態度の彼女を見ていると、なぜか元気が出てきた。そして、彼女がここまで言う祖母に会ってみたいと心から思う。

「お祖母さまに会ってみたいわ。連絡できる?」
「はい、お任せください――と、あ、申し訳ございません!」

 いきなり頭を下げられて、きょとんとしてしまった。

 先ほどまできちんと会話が出来ていたのに――と。

「で、出過ぎた真似をしました! 本当に、本当に申し訳ございません!」

 今にも額を床に押し付けてしまいそうな様子に、今度はアンジーが困ってしまった。
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