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第3章
第1話
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挙式から一週間も経つと、アンジーはすっかり城に馴染んでいた。
兄を見送ったときは心細かったものの、城の人たちが気にかけてくれるため、想像していたより寂しくはない。
使用人たちとの関わり方も悩んだが、結局グリーナウェイにいたころと同じようなものに落ち着いた。はじめこそ彼らは驚いていたが、今では世間話をしたり、うわさ話を教えてくれるメイドもできた。
夫のイライアスもわかりにくいが気遣ってくれる。初夜以来、身体を重ねてはいないが。
「アンジーさま。そろそろお茶会を開いてもよいかと思います」
昼食を終え、部屋に戻ろうとしたアンジーに声をかけてきたのはイーノスだった。彼は真剣な眼差しでアンジーを見つめてくる。
「お茶会とは、貴族の女性たちを招いて交流する場所――で、間違いないわね?」
「はい」
静かにうなずいたイーノスを見て、アンジーは悩んだ。
妃である以上、貴族の女性たちとの交流は必要不可欠だ。いつかは開く必要がある。
(でも、私に主催なんてできるかしら……)
王女としてお茶会を主催したことはない。主催はいつも母だった。
グリーナウェイでは王家が催す茶会はすべて王妃の主催となるのが常。王女が主催をすることはあり得ないことだったためだ。
「アンジーさま?」
黙り込んでしまったアンジーを見て、イーノスが不安そうな表情になる。
はっとして、顔をあげる。ごまかすような笑みを浮かべて、口を開いた。
「前向きに考えるわね。返事は少し待ってもらえる?」
「それは構いませんが……」
あまり追及されたくなくて、アンジーは早足で部屋に向かった。
部屋に入ると、中では若いメイドが掃除の仕上げをしていた。突然の主の帰室に驚くものの、彼女は深々と頭を下げる。
「申し訳ございません。すぐに退室しますので……」
掃除道具を片付けていくメイドの顔には見覚えがあった。彼女とは先日ちょっぴり言葉を交わした。といっても、恐縮してばかりの彼女はあまり言葉をくれなかったが。
「ねぇ、ちょっといいかしら?」
アンジーの声に反応して、彼女の肩がびくんと跳ねた。可哀そうになるくらいの驚き具合に、申し訳なさがこみあげてくる。
「社交のことで悩んでいることがあって。もし相談に適任な人を知っているのなら、教えてほしいの」
この国に来て日が浅いため、おかしなことを言ったとは思われないはず。
社交には国ごとに独特のルールがある。あくまでもこの国のルールが知りたい――という風に問いかけてみる。
「私はこの国の文化をすべて知っているわけではないわ。グリーナウェイでの文化が、この国では不適切ということもあるでしょう?」
付け足した言葉に納得したようで、彼女はうなずいた。
少しの間うなって、突然手をぽんっとたたいた。
「でしたら、私の祖母などどうでしょうか」
「あなたのお祖母さま?」
繰り返すと今度は力強くうなずくのが見えた。
「私の祖母は伯爵家の生まれで、若いころは社交界を牛耳っていたそうです」
「それは、大丈夫なの? もちろん、悪い意味ではないわよ」
「はい。祖母はとても明るい人で、祖母と話すと気分が晴れる――と今でも評判なのです」
だったら、大丈夫――だろう。
「あの人は天性の人たらしですから。祖母に牛耳っているという自覚はなくて、周囲が一時期勝手に言っているだけですし」
あきれたような態度の彼女を見ていると、なぜか元気が出てきた。そして、彼女がここまで言う祖母に会ってみたいと心から思う。
「お祖母さまに会ってみたいわ。連絡できる?」
「はい、お任せください――と、あ、申し訳ございません!」
いきなり頭を下げられて、きょとんとしてしまった。
先ほどまできちんと会話が出来ていたのに――と。
「で、出過ぎた真似をしました! 本当に、本当に申し訳ございません!」
今にも額を床に押し付けてしまいそうな様子に、今度はアンジーが困ってしまった。
兄を見送ったときは心細かったものの、城の人たちが気にかけてくれるため、想像していたより寂しくはない。
使用人たちとの関わり方も悩んだが、結局グリーナウェイにいたころと同じようなものに落ち着いた。はじめこそ彼らは驚いていたが、今では世間話をしたり、うわさ話を教えてくれるメイドもできた。
夫のイライアスもわかりにくいが気遣ってくれる。初夜以来、身体を重ねてはいないが。
「アンジーさま。そろそろお茶会を開いてもよいかと思います」
昼食を終え、部屋に戻ろうとしたアンジーに声をかけてきたのはイーノスだった。彼は真剣な眼差しでアンジーを見つめてくる。
「お茶会とは、貴族の女性たちを招いて交流する場所――で、間違いないわね?」
「はい」
静かにうなずいたイーノスを見て、アンジーは悩んだ。
妃である以上、貴族の女性たちとの交流は必要不可欠だ。いつかは開く必要がある。
(でも、私に主催なんてできるかしら……)
王女としてお茶会を主催したことはない。主催はいつも母だった。
グリーナウェイでは王家が催す茶会はすべて王妃の主催となるのが常。王女が主催をすることはあり得ないことだったためだ。
「アンジーさま?」
黙り込んでしまったアンジーを見て、イーノスが不安そうな表情になる。
はっとして、顔をあげる。ごまかすような笑みを浮かべて、口を開いた。
「前向きに考えるわね。返事は少し待ってもらえる?」
「それは構いませんが……」
あまり追及されたくなくて、アンジーは早足で部屋に向かった。
部屋に入ると、中では若いメイドが掃除の仕上げをしていた。突然の主の帰室に驚くものの、彼女は深々と頭を下げる。
「申し訳ございません。すぐに退室しますので……」
掃除道具を片付けていくメイドの顔には見覚えがあった。彼女とは先日ちょっぴり言葉を交わした。といっても、恐縮してばかりの彼女はあまり言葉をくれなかったが。
「ねぇ、ちょっといいかしら?」
アンジーの声に反応して、彼女の肩がびくんと跳ねた。可哀そうになるくらいの驚き具合に、申し訳なさがこみあげてくる。
「社交のことで悩んでいることがあって。もし相談に適任な人を知っているのなら、教えてほしいの」
この国に来て日が浅いため、おかしなことを言ったとは思われないはず。
社交には国ごとに独特のルールがある。あくまでもこの国のルールが知りたい――という風に問いかけてみる。
「私はこの国の文化をすべて知っているわけではないわ。グリーナウェイでの文化が、この国では不適切ということもあるでしょう?」
付け足した言葉に納得したようで、彼女はうなずいた。
少しの間うなって、突然手をぽんっとたたいた。
「でしたら、私の祖母などどうでしょうか」
「あなたのお祖母さま?」
繰り返すと今度は力強くうなずくのが見えた。
「私の祖母は伯爵家の生まれで、若いころは社交界を牛耳っていたそうです」
「それは、大丈夫なの? もちろん、悪い意味ではないわよ」
「はい。祖母はとても明るい人で、祖母と話すと気分が晴れる――と今でも評判なのです」
だったら、大丈夫――だろう。
「あの人は天性の人たらしですから。祖母に牛耳っているという自覚はなくて、周囲が一時期勝手に言っているだけですし」
あきれたような態度の彼女を見ていると、なぜか元気が出てきた。そして、彼女がここまで言う祖母に会ってみたいと心から思う。
「お祖母さまに会ってみたいわ。連絡できる?」
「はい、お任せください――と、あ、申し訳ございません!」
いきなり頭を下げられて、きょとんとしてしまった。
先ほどまできちんと会話が出来ていたのに――と。
「で、出過ぎた真似をしました! 本当に、本当に申し訳ございません!」
今にも額を床に押し付けてしまいそうな様子に、今度はアンジーが困ってしまった。
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・執筆時間空けてしまった間に途中過程が気に食わなくなったので、設定などを少し変えて改稿しています。
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