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勇者に選ばれた恋人が、王女様と婚姻するらしいので、

待つ恋人アデルミラの話(6)【※】

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「お、お兄ちゃん、お願い、やめよう?」

 ロレンシオの目を見て、アデルミラはそう訴える。しかし、ロレンシオはその欲情した目を隠すことなく、アデルミラの身体を見下ろしてくる。その視線がとても怖く、アデルミラは思わず身震いしてしまった。

「アデルミラ。……今日のために、おしゃれをしたのか?」

 ロレンシオはアデルミラの言葉に聞く耳も持たず、そんなことを問いかけてくる。その声音がとても迫力のあるものだったため、アデルミラはただ頷くことしか出来なかった。今日のためにおしゃれをしたのは、間違いない。ロレンシオのことを忘れようと、頑張ろうとした結果なのだ。

「そ、それが、どうし――」
「……気に入らないな」

 アデルミラが口を開こうとすれば、ロレンシオはそう言ってアデルミラの身体を服越しに撫でる。その撫で方には下心がたっぷりと籠っており、アデルミラの身体が小刻みに震えてしまう。こんな風に、誰かに触れられたことなどない。そんなことを考え、恐怖に心も震える。なのに、ロレンシオは特に気にした風もなくアデルミラの身体を撫で続ける。

「……このワンピース、見たくもないな。……俺以外の男のためにおしゃれをするアデルミラなんて、見たくもなかった」

 それは、嫉妬してくれているということだろうか?

 そんなことを一瞬思ってしまったが、ロレンシオが何やら呪文を唱えたためそちらに意識が引き戻される。その手には、いつの間にか短剣が握られていて。アデルミラがそれを見てわなわなと唇を震わせれば、ロレンシオは「……動くなよ」とだけ忠告し、アデルミラのワンピースを器用にも切り裂いていく。抵抗しようにも、その短剣が怖くアデルミラは抵抗をすることが出来なかった。さらに言えば、未だに両腕を固定されていることもあり、暴れることも出来ない。ロレンシオは片手で短剣を握り、もう片方の手でアデルミラの腕を拘束している。……やっぱり、器用だなぁ。心のどこかで、アデルミラはそう思ってしまった。

「あ、ぁ」

 そのまま短剣はするするとアデルミラのワンピースを切っていく。そして、最後まで切り終えると、ロレンシオはアデルミラのワンピースを左右に開いた。そうすれば、アデルミラの下着がロレンシオの眼下に晒されてしまう。

 まさか、こんな展開になるとは思わなかったため、下着は質素なものを身に着けていた。その所為もあり、アデルミラの顔に熱が溜まっていく。

「アデルミラの胸は、大きいな」

 そんなアデルミラの羞恥心など全く知りもしないロレンシオは、そんなことを言ってアデルミラの胸を下着越しに撫でまわす。その触れ方がとても厭らしくて。アデルミラの目には、涙が溜まってしまう。この頃にはもう、腕は解放されていた。それでも、短剣が怖くて抵抗することは出来なかった。

「んんっ、ぁ、あ」

 豊満な胸を撫でまわされ、アデルミラの身体が熱くなっていく。こんな感覚は、知らない。自分で身体を洗う時とは全く違う感覚に、アデルミラは混乱してしまう。本当は、ロレンシオの目を見て「やめてほしい」と訴えたかった。しかし、ロレンシオの欲情しきった目が怖くて、目を見ることは叶わない。ただ、唇をわなわなと震わせ、口から小さな悲鳴を零すことしか出来ない。

「アデルミラ。……俺以外の男に、触れられたか?」
「ど、どうして……!」
「この三年間、俺以外の男に触れられなかったかと訊いているんだ」

 そう言いながら、ロレンシオはアデルミラの胸を覆う下着をずらし、豊満な胸に直接触れる。その感覚は大層不思議なものであり、アデルミラの身体がさらに熱くなっていく。……嫌だ。こんな気持ちの通じ合わない行為は、本当に嫌だ。そう思うのに、漏れる息はどんどん艶っぽくなっていく。

「そんな、の……!」
「答えろ」

 些細な抵抗とばかりにアデルミラが顔を背け回答を拒否すれば、ロレンシオは怒ったようにそんな言葉をアデルミラの耳元で、囁いてくる。その声がとても怖く、アデルミラは「ひっ」と言う小さな悲鳴を零した。

「アデルミラ。……寂しくて、浮気なんてしていないだろうな?」
「そ、そんなわけ……!」

 そもそも、先に浮気に近しいことをしたのはロレンシオだろう。そう言いたかったのに、アデルミラの唇が乱暴に塞がれる。そのまま舌を差し込まれ、舌を絡めとられる。逃げようと必死にもがいても、ロレンシオは逃がす素振り一つ見せない。

「……アデルミラ。厭らしいな」
「い、言っちゃ、いやぁ……!」

 自分が今、どんな表情をしているのかはある程度想像がつく。きっと、とろけたような表情をしているのだろう。無理やりとはいえ、恋する人に触れられている。心は、徐々に『嬉しい』という気持ちに傾き始めていた。……こんなのは、ダメだと分かっているのに。

「……あんまり、煽るな」

 ロレンシオがボソッと零した、余裕のなさそうな言葉。それに、アデルミラの心がぎゅっと締め付けられたような気がした。それはきっと……その声音に籠った感情が、愛おしいとでも言いたげなものだったからなのだろう。

「アデルミラ、アデルミラ」

 うっとりとしたような声音で名前を呼ばれ、アデルミラの心が揺れる。このまま、抱かれてもいいかもしれない。そう思うのに、ちらつくのだ。……ロレンシオと、王女の婚姻話が。
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