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第2章 新婚生活は割と平和? なんだか胸がむずむずします。
第5話
◇
「……大丈夫、よね」
あれからお風呂に入って、就寝準備を済ませて。私は寝室にいた。
寝室には巨大なベッドが置いてある。その端にちょんと腰かけて、胸の前で手を握った。
(大丈夫、大丈夫。……やれるわ)
大きく音を鳴らす心臓。少しだけ震える手。誘惑、するって決めたのは私だ。そのために下着だって買った。
……そう思って、私は自身の格好を見下ろす。
前開きのパジャマと、ショートパンツ。いつも通りの就寝スタイル。下着はちょっと大人っぽいデザインの、白を基調としたものを選んだ。レースの装飾の可愛らしいもの。……あんまり、普段身に着けたりはしないタイプ。
燎さんは今、お風呂に入っている。私の企みなんて、きっとこれっぽっちも知らない。……知らないと、いいのだけれど。
「っていうか、誘惑っていうことは……その、あの」
なんていうか、そう。えぇっと……えっち、とか、するのかな……?
今更ながらにその可能性に気が付いて、カーっと顔に熱が溜まった。でも、女に二言はない。裏の世界の人間は、自分の発言にしっかりと責任を持たなければならないのだもの。
「大丈夫、やれる。私は、燎さんの妻になったのだもの」
もう一度そう呟くと、寝室の扉が開いた。突然のことに驚いていれば、燎さんのほうも驚いていた。
「……すみれ?」
彼がきょとんとしつつ私に声をかけてこられる。……どう反応すればいいかわからなくて、私はそっと視線を逸らした。
「先に布団の中に入っていてくれても、よかったんだぞ」
どうやら、彼は私の企みを知らないらしい。……ほっと胸を撫でおろして、ちょっと歪な笑みを浮かべる。
「い、いえ、少し、お話でも……と、思いまして」
緊張して喉はからからだし、どうにかなってしまいそうだ。
そんな状態を隠すように視線を逸らし続けていれば、燎さんは「そうか」とだけ言葉をくれた。
そして、彼が私の隣に腰を下ろす。……少し間が離れているのは、気を遣ってくださっているからだろう。
「……明日のこととか、考えているのか?」
燎さんが、そう問いかけてこられる。……明日じゃない、私の頭の中は今のことでいっぱいいっぱいだ。
「え、えぇ、その……なんていうか、緊張、してしまって」
確かに緊張している。ただし、その原因は明日じゃなくて今だ。……なんて、口が裂けても言えない。
「そうか。……とはいっても、組の人間や親しい人間を招いたこじんまりとしたものだ。そこまで、緊張する必要はない」
「そ、そうですよね」
私の声が思いきり上ずっている。さすがの燎さんもそれには気が付いたらしく、「すみれ?」と私の名前を呼んで、顔を覗き込んでくる。……う、もう、無理だ。
「……何処か調子でも悪いのか? だったら、早くに寝たほうが――」
彼が、手を伸ばしてこられた。……もう、今しかない。
そう思ったから、私は彼の身体に抱き着く。少しだけ胸をこすりつけるようにぎゅっと抱き着けば、彼の身体がふるえた。
「……おい、すみれ。そんなことを、するな」
言われると思った。けれど、引いてはいけない。このために、頑張ったんだから。
上目遣いになって、彼の様子をうかがう。……彼は、私から視線を逸らしていた。
だけど、意を決したように私を見つめる。その目には、困ったような色が宿っていた。
「あのな、すみれ。そういうことは――」
「――好きな人にしろと、おっしゃりたいのですか?」
凛とした声で、そう問いかける。彼が息を呑んだのがわかった。……引けない。いや、引かない。
自ら、前開きのパジャマのボタンを開ける。露わになるのは、白いレースのブラジャーと、私の胸。
「お、おい」
「……私、燎さんの妻になるんですよ? ……妹になったわけじゃ、ないんです」
彼の大きな手を取って、私の胸に押し付ける。……心臓の音が聞こえていても、構わない。
「……大丈夫、よね」
あれからお風呂に入って、就寝準備を済ませて。私は寝室にいた。
寝室には巨大なベッドが置いてある。その端にちょんと腰かけて、胸の前で手を握った。
(大丈夫、大丈夫。……やれるわ)
大きく音を鳴らす心臓。少しだけ震える手。誘惑、するって決めたのは私だ。そのために下着だって買った。
……そう思って、私は自身の格好を見下ろす。
前開きのパジャマと、ショートパンツ。いつも通りの就寝スタイル。下着はちょっと大人っぽいデザインの、白を基調としたものを選んだ。レースの装飾の可愛らしいもの。……あんまり、普段身に着けたりはしないタイプ。
燎さんは今、お風呂に入っている。私の企みなんて、きっとこれっぽっちも知らない。……知らないと、いいのだけれど。
「っていうか、誘惑っていうことは……その、あの」
なんていうか、そう。えぇっと……えっち、とか、するのかな……?
今更ながらにその可能性に気が付いて、カーっと顔に熱が溜まった。でも、女に二言はない。裏の世界の人間は、自分の発言にしっかりと責任を持たなければならないのだもの。
「大丈夫、やれる。私は、燎さんの妻になったのだもの」
もう一度そう呟くと、寝室の扉が開いた。突然のことに驚いていれば、燎さんのほうも驚いていた。
「……すみれ?」
彼がきょとんとしつつ私に声をかけてこられる。……どう反応すればいいかわからなくて、私はそっと視線を逸らした。
「先に布団の中に入っていてくれても、よかったんだぞ」
どうやら、彼は私の企みを知らないらしい。……ほっと胸を撫でおろして、ちょっと歪な笑みを浮かべる。
「い、いえ、少し、お話でも……と、思いまして」
緊張して喉はからからだし、どうにかなってしまいそうだ。
そんな状態を隠すように視線を逸らし続けていれば、燎さんは「そうか」とだけ言葉をくれた。
そして、彼が私の隣に腰を下ろす。……少し間が離れているのは、気を遣ってくださっているからだろう。
「……明日のこととか、考えているのか?」
燎さんが、そう問いかけてこられる。……明日じゃない、私の頭の中は今のことでいっぱいいっぱいだ。
「え、えぇ、その……なんていうか、緊張、してしまって」
確かに緊張している。ただし、その原因は明日じゃなくて今だ。……なんて、口が裂けても言えない。
「そうか。……とはいっても、組の人間や親しい人間を招いたこじんまりとしたものだ。そこまで、緊張する必要はない」
「そ、そうですよね」
私の声が思いきり上ずっている。さすがの燎さんもそれには気が付いたらしく、「すみれ?」と私の名前を呼んで、顔を覗き込んでくる。……う、もう、無理だ。
「……何処か調子でも悪いのか? だったら、早くに寝たほうが――」
彼が、手を伸ばしてこられた。……もう、今しかない。
そう思ったから、私は彼の身体に抱き着く。少しだけ胸をこすりつけるようにぎゅっと抱き着けば、彼の身体がふるえた。
「……おい、すみれ。そんなことを、するな」
言われると思った。けれど、引いてはいけない。このために、頑張ったんだから。
上目遣いになって、彼の様子をうかがう。……彼は、私から視線を逸らしていた。
だけど、意を決したように私を見つめる。その目には、困ったような色が宿っていた。
「あのな、すみれ。そういうことは――」
「――好きな人にしろと、おっしゃりたいのですか?」
凛とした声で、そう問いかける。彼が息を呑んだのがわかった。……引けない。いや、引かない。
自ら、前開きのパジャマのボタンを開ける。露わになるのは、白いレースのブラジャーと、私の胸。
「お、おい」
「……私、燎さんの妻になるんですよ? ……妹になったわけじゃ、ないんです」
彼の大きな手を取って、私の胸に押し付ける。……心臓の音が聞こえていても、構わない。
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