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第2章
④
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(は――?)
意味がわからず目を瞬かせる俺をよそに、殿下が寝台に乗り上げてくる。
そして、唇に触れるなにか。温かくて柔らかいソレが殿下の唇だと気が付くのに十秒ほどを要した。
(殿下は、なにをしてっ!)
殿下の行動に困惑する俺をよそに、殿下は何度もキスを落とす。
角度を変えて何度も落とされるキスに、戸惑うことしかできない。
「で、んか」
「俺、キスをしたのはじめてなんですよ」
男の俺でも見惚れてしまいそうなほどに美しく殿下がはにかむ。
「きっとラードルフさんはたくさんキスしてきた。けど、最後にするのは俺にしてくださいね」
きれいな指で殿下は俺の唇を撫でた。かさついた唇を愛おしそうに撫でて微笑む。
「俺のはじめてのキスはラードルフさんです。もちろん、最後も」
また唇が重なった。今度のキスは噛みつくような荒々しいものだ。
俺の唇を強引に割る殿下の舌。その舌は遠慮なく俺の口内を荒らしていく。
(手慣れてるように感じるのは、気のせいか……?)
殿下の舌は動きに無駄がない。ためらいもない。到底はじめてのものとは思えなかった。
(って、流されている場合じゃない。なんとかして、やめさせないと……!)
このままでは殿下は取り返しのつかないことをしてしまわれる。
直感が告げ、俺は殿下の胸を押す。しかし、動かない。これでも元騎士だ。力はあるはずなんだが……。
(この細い身体のどこにそんな力があるんだよ!)
殿下の胸を押すだけではなく、たたいてもみる。が、やはりびくともしない。
俺の抵抗に気が付いてか、殿下はようやく口づけをやめた。吐いた息が触れるほどに近い距離で、殿下が笑う。
「これでも鍛錬は欠かしていませんから」
うすら寒いものが背筋を撫でたような気がした。
「別にひどいことをしたいわけじゃないんです。俺の愛を受け取ってくれたらいいだけですから」
……これはきっと、一方的な愛情を押し付けだ。
(一方的な感情の押しつけは、迷惑でしかない。それくらい、殿下だって)
じっと殿下の目を見つめた。深い海のようなブルーの目は俺の困惑した顔だけを映している。
「俺には、殿下の愛情を受け取る権利はありません」
柄にもなく震えるような声で告げると、殿下は笑う。場に似つかわしくない、慈愛に満ちた笑みだ。
「そんなものいらないでしょう。あなたがラードルフさんである以上、権利は発生しています」
殿下の手が衣服の上を滑る。するりと布越しに肌を撫でられ、その手が衣服の中に侵入する。
俺の直感がこのままでは危ないと告げている。なんとかして逃げ出さなくてはならないとも。
「で、んか」
「ふふっ、あなたのそんな顔も愛おしくてたまらない。あなたはいつだって強かった。なのに、俺に怯えている」
指先で俺の目元を撫で、殿下がささやく。
怯えている? この俺が――。
(いや、正しいのかもしれない。俺が今、前にしているのは得体のしれない存在だ)
殿下は殿下でも、俺の知らない殿下だ。俺の知らない部分を前面に押し出している。
「可愛いあなたを大切にしたい。だけど、同時に壊したいっていう感情もある。俺だけを見つめるように、いっそ壊れてしまったら……って」
唇に触れるだけのキス。
「俺のことだけを愛して、俺のことだけを見てくれるあなたになってほしい」
ブルーの目が俺を覗き込む。底なし沼のような昏さを孕んだ目が、俺を射貫く。
「あなたが俺の愛を受け取ってくれないのならば、信じてくれないのならば。俺は自分の愛を証明するだけです」
「……証明、とは?」
「決まっているでしょう。わからないふりをしても、無駄ですから」
俺の顔の両側に肘をつき、殿下が俺を見下ろす。逃げることができないと本能が恐怖を覚えた。
「俺の愛は本物です。偽りでも、幻想でもない」
意味がわからず目を瞬かせる俺をよそに、殿下が寝台に乗り上げてくる。
そして、唇に触れるなにか。温かくて柔らかいソレが殿下の唇だと気が付くのに十秒ほどを要した。
(殿下は、なにをしてっ!)
殿下の行動に困惑する俺をよそに、殿下は何度もキスを落とす。
角度を変えて何度も落とされるキスに、戸惑うことしかできない。
「で、んか」
「俺、キスをしたのはじめてなんですよ」
男の俺でも見惚れてしまいそうなほどに美しく殿下がはにかむ。
「きっとラードルフさんはたくさんキスしてきた。けど、最後にするのは俺にしてくださいね」
きれいな指で殿下は俺の唇を撫でた。かさついた唇を愛おしそうに撫でて微笑む。
「俺のはじめてのキスはラードルフさんです。もちろん、最後も」
また唇が重なった。今度のキスは噛みつくような荒々しいものだ。
俺の唇を強引に割る殿下の舌。その舌は遠慮なく俺の口内を荒らしていく。
(手慣れてるように感じるのは、気のせいか……?)
殿下の舌は動きに無駄がない。ためらいもない。到底はじめてのものとは思えなかった。
(って、流されている場合じゃない。なんとかして、やめさせないと……!)
このままでは殿下は取り返しのつかないことをしてしまわれる。
直感が告げ、俺は殿下の胸を押す。しかし、動かない。これでも元騎士だ。力はあるはずなんだが……。
(この細い身体のどこにそんな力があるんだよ!)
殿下の胸を押すだけではなく、たたいてもみる。が、やはりびくともしない。
俺の抵抗に気が付いてか、殿下はようやく口づけをやめた。吐いた息が触れるほどに近い距離で、殿下が笑う。
「これでも鍛錬は欠かしていませんから」
うすら寒いものが背筋を撫でたような気がした。
「別にひどいことをしたいわけじゃないんです。俺の愛を受け取ってくれたらいいだけですから」
……これはきっと、一方的な愛情を押し付けだ。
(一方的な感情の押しつけは、迷惑でしかない。それくらい、殿下だって)
じっと殿下の目を見つめた。深い海のようなブルーの目は俺の困惑した顔だけを映している。
「俺には、殿下の愛情を受け取る権利はありません」
柄にもなく震えるような声で告げると、殿下は笑う。場に似つかわしくない、慈愛に満ちた笑みだ。
「そんなものいらないでしょう。あなたがラードルフさんである以上、権利は発生しています」
殿下の手が衣服の上を滑る。するりと布越しに肌を撫でられ、その手が衣服の中に侵入する。
俺の直感がこのままでは危ないと告げている。なんとかして逃げ出さなくてはならないとも。
「で、んか」
「ふふっ、あなたのそんな顔も愛おしくてたまらない。あなたはいつだって強かった。なのに、俺に怯えている」
指先で俺の目元を撫で、殿下がささやく。
怯えている? この俺が――。
(いや、正しいのかもしれない。俺が今、前にしているのは得体のしれない存在だ)
殿下は殿下でも、俺の知らない殿下だ。俺の知らない部分を前面に押し出している。
「可愛いあなたを大切にしたい。だけど、同時に壊したいっていう感情もある。俺だけを見つめるように、いっそ壊れてしまったら……って」
唇に触れるだけのキス。
「俺のことだけを愛して、俺のことだけを見てくれるあなたになってほしい」
ブルーの目が俺を覗き込む。底なし沼のような昏さを孕んだ目が、俺を射貫く。
「あなたが俺の愛を受け取ってくれないのならば、信じてくれないのならば。俺は自分の愛を証明するだけです」
「……証明、とは?」
「決まっているでしょう。わからないふりをしても、無駄ですから」
俺の顔の両側に肘をつき、殿下が俺を見下ろす。逃げることができないと本能が恐怖を覚えた。
「俺の愛は本物です。偽りでも、幻想でもない」
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