17 / 50
第2章
②
しおりを挟む
シャワーを浴びている間、俺はずっと考え込んでいた。
どうして亜玲が俺のことを抱いたのか。もしかしたら、嫌がらせの延長かもしれない。
だけど、どうしてだろうか。それだけではない気がしていた。
衣服を着て浴室を出ると、亜玲が手際よく朝食を作っていた。一人掛けのテーブルの上に、二人分。メニューはシンプルなもので、トーストと目玉焼き。あと、サラダ。飲み物はコーヒーかなにかだろう。
「あ、シャワー終わった?」
亜玲がニコニコと笑って問いかけてくる。
その所為で、俺は一拍遅れて頷いた。だって、亜玲の笑みが不気味だったから。
「……亜玲も、シャワー浴びてきたらどうだ?」
そっと亜玲から視線を逸らして、提案してみる。すると、亜玲は「また、後でいいや」と言って俺のほうに近づいてきた。
俺の顔を覗き込んでくる亜玲。その目がとても美しくて、自然と喉が鳴った。
「とりあえず、食べようよ」
にっこりと笑った亜玲が、俺を朝食に誘ってくる。一瞬頷きそうになるものの、俺はハッとして首を横に振る。
(俺は、亜玲のところになにをしに来たんだ!?)
心の中でそう叫んで、俺は亜玲を睨みつけた。
そうだ。俺は亜玲と仲良くなるつもりでここに来たわけじゃない。
何度も言うが、情事に及んだのだって不可抗力。亜玲が勝手に襲ってきただけ……そう、だと思う。
(最後のほう、記憶ないわけだし……なにか、変なことを言っていなかったらいいんだけど)
途中から記憶がない。ただ唯一わかるのは、これでもかというほどに乱されたことくらいだろうか。
今だって、喉が痛いのだから。多分、散々喘がされた。
「祈?」
奴の顔が、俺に間近に迫ってくる。
口づけできそうなほどに近い距離にある、亜玲の端正な顔。……心臓が、高鳴った。
「い、いや、俺は帰る。……こんな風に仲良くしにきたわけじゃ、ないし」
朝食に罪はない。だから、ちょっと思うことはある。
それでも、亜玲のことだ。捨てるなんてことはしない……だろう。
そう思って俺が玄関に足を向けようとすると、亜玲の手が俺の手首を掴んだ。
「……そんな悲しいこと言わないで。……せっかく、久々に二人きりになれたのに」
「は?」
こいつは一体なにを言っているんだ……?
俺の頬が引きつるのがわかる。亜玲のほうに視線を向ければ、亜玲は眉を下げていた。
「俺の気分は最高なのに。……普段よりも、すっきりと目覚められたし」
「俺の気分は最悪だよ!」
亜玲がなにを思って最高の気分だというのかはわからない。
唯一わかるのは、俺の目覚めは最悪だったということだけだ。
(なにが好き好んで目覚めにコイツの顔を見なくちゃならないんだよ……!)
しかも、仲良く朝食を摂るなんて……。
「……祈」
ふと、亜玲が真剣な声で俺の名前を呼んだ。
……無視するのも申し訳なくて、亜玲にちらりと一度だけ視線を向ける。
亜玲の手が伸びてくる。……そのきれいな指が、俺の顎を掬い上げる。
「なにが、最悪なの?」
きょとんとしながら、亜玲がそう問いかけてくる。な、にがって!
「全部だよ。亜玲に抱かれて、亜玲と同じベッドで寝て、起きて。挙句、仲良く朝食を摂るなんて……」
そんなの、俺の気持ちが許さない。情緒がめちゃくちゃな自覚はある。が、俺の情緒を乱しているのはほかでもない亜玲で……。
「俺は、それが幸せなんだけれどなぁ」
なのに、亜玲はそう言って、俺の顔にぐっと自身の顔を近づけてくる。
「それに、そんな口をたたくんだったら、もっと愛してあげてもいいよ? あ、キスで殺してあげようか?」
……背筋にヒヤッとしたものが這いまわったような気がした。
「あ、れい……」
「いい子の祈りは、俺の言っていることの意味がわかるよね?」
俺の頬がさらに引きつるのがわかった。……俺は、頷くことしか出来ない。
「可愛い。……ほら、こっちだよ」
そう言った亜玲は、俺の手首を掴んでそのまま引っ張っていく。本当に最悪な気分だった。
どうして亜玲が俺のことを抱いたのか。もしかしたら、嫌がらせの延長かもしれない。
だけど、どうしてだろうか。それだけではない気がしていた。
衣服を着て浴室を出ると、亜玲が手際よく朝食を作っていた。一人掛けのテーブルの上に、二人分。メニューはシンプルなもので、トーストと目玉焼き。あと、サラダ。飲み物はコーヒーかなにかだろう。
「あ、シャワー終わった?」
亜玲がニコニコと笑って問いかけてくる。
その所為で、俺は一拍遅れて頷いた。だって、亜玲の笑みが不気味だったから。
「……亜玲も、シャワー浴びてきたらどうだ?」
そっと亜玲から視線を逸らして、提案してみる。すると、亜玲は「また、後でいいや」と言って俺のほうに近づいてきた。
俺の顔を覗き込んでくる亜玲。その目がとても美しくて、自然と喉が鳴った。
「とりあえず、食べようよ」
にっこりと笑った亜玲が、俺を朝食に誘ってくる。一瞬頷きそうになるものの、俺はハッとして首を横に振る。
(俺は、亜玲のところになにをしに来たんだ!?)
心の中でそう叫んで、俺は亜玲を睨みつけた。
そうだ。俺は亜玲と仲良くなるつもりでここに来たわけじゃない。
何度も言うが、情事に及んだのだって不可抗力。亜玲が勝手に襲ってきただけ……そう、だと思う。
(最後のほう、記憶ないわけだし……なにか、変なことを言っていなかったらいいんだけど)
途中から記憶がない。ただ唯一わかるのは、これでもかというほどに乱されたことくらいだろうか。
今だって、喉が痛いのだから。多分、散々喘がされた。
「祈?」
奴の顔が、俺に間近に迫ってくる。
口づけできそうなほどに近い距離にある、亜玲の端正な顔。……心臓が、高鳴った。
「い、いや、俺は帰る。……こんな風に仲良くしにきたわけじゃ、ないし」
朝食に罪はない。だから、ちょっと思うことはある。
それでも、亜玲のことだ。捨てるなんてことはしない……だろう。
そう思って俺が玄関に足を向けようとすると、亜玲の手が俺の手首を掴んだ。
「……そんな悲しいこと言わないで。……せっかく、久々に二人きりになれたのに」
「は?」
こいつは一体なにを言っているんだ……?
俺の頬が引きつるのがわかる。亜玲のほうに視線を向ければ、亜玲は眉を下げていた。
「俺の気分は最高なのに。……普段よりも、すっきりと目覚められたし」
「俺の気分は最悪だよ!」
亜玲がなにを思って最高の気分だというのかはわからない。
唯一わかるのは、俺の目覚めは最悪だったということだけだ。
(なにが好き好んで目覚めにコイツの顔を見なくちゃならないんだよ……!)
しかも、仲良く朝食を摂るなんて……。
「……祈」
ふと、亜玲が真剣な声で俺の名前を呼んだ。
……無視するのも申し訳なくて、亜玲にちらりと一度だけ視線を向ける。
亜玲の手が伸びてくる。……そのきれいな指が、俺の顎を掬い上げる。
「なにが、最悪なの?」
きょとんとしながら、亜玲がそう問いかけてくる。な、にがって!
「全部だよ。亜玲に抱かれて、亜玲と同じベッドで寝て、起きて。挙句、仲良く朝食を摂るなんて……」
そんなの、俺の気持ちが許さない。情緒がめちゃくちゃな自覚はある。が、俺の情緒を乱しているのはほかでもない亜玲で……。
「俺は、それが幸せなんだけれどなぁ」
なのに、亜玲はそう言って、俺の顔にぐっと自身の顔を近づけてくる。
「それに、そんな口をたたくんだったら、もっと愛してあげてもいいよ? あ、キスで殺してあげようか?」
……背筋にヒヤッとしたものが這いまわったような気がした。
「あ、れい……」
「いい子の祈りは、俺の言っていることの意味がわかるよね?」
俺の頬がさらに引きつるのがわかった。……俺は、頷くことしか出来ない。
「可愛い。……ほら、こっちだよ」
そう言った亜玲は、俺の手首を掴んでそのまま引っ張っていく。本当に最悪な気分だった。
85
あなたにおすすめの小説
陰キャ系腐男子はキラキラ王子様とイケメン幼馴染に溺愛されています!
はやしかわともえ
BL
閲覧ありがとうございます。
まったり書いていきます。
2024.05.14
閲覧ありがとうございます。
午後4時に更新します。
よろしくお願いします。
栞、お気に入り嬉しいです。
いつもありがとうございます。
2024.05.29
閲覧ありがとうございます。
m(_ _)m
明日のおまけで完結します。
反応ありがとうございます。
とても嬉しいです。
明後日より新作が始まります。
良かったら覗いてみてください。
(^O^)
ヤンデレだらけの短編集
八
BL
ヤンデレだらけの1話(+おまけ)読切短編集です。
【花言葉】
□ホオズキ:寡黙執着年上とノンケ平凡
□ゲッケイジュ:真面目サイコパスとただ可哀想な同級生
□アジサイ:不良の頭と臆病泣き虫
□ラベンダー:希死念慮不良とおバカ
□デルフィニウム:執着傲慢幼馴染と地味ぼっち
ムーンライトノベル様に別名義で投稿しています。
かなり昔に書いたもので芸風(?)が違うのですが、楽しんでいただければ嬉しいです!
【異世界短編】単発ネタ殴り書き随時掲載。
◻︎お付きくんは反社ボスから逃げ出したい!:お馬鹿主人公くんと傲慢ボス
幼馴染みのハイスペックαから離れようとしたら、Ωに転化するほどの愛を示されたβの話。
叶崎みお
BL
平凡なβに生まれた千秋には、顔も頭も運動神経もいいハイスペックなαの幼馴染みがいる。
幼馴染みというだけでその隣にいるのがいたたまれなくなり、距離をとろうとするのだが、完璧なαとして周りから期待を集める幼馴染みαは「失敗できないから練習に付き合って」と千秋を頼ってきた。
大事な幼馴染みの願いならと了承すれば、「まずキスの練習がしたい」と言い出して──。
幼馴染みαの執着により、βから転化し後天性Ωになる話です。両片想いのハピエンです。
他サイト様にも投稿しております。
【BL】捨てられたSubが甘やかされる話
橘スミレ
BL
渚は最低最悪なパートナーに追い出され行く宛もなく彷徨っていた。
もうダメだと倒れ込んだ時、オーナーと呼ばれる男に拾われた。
オーナーさんは理玖さんという名前で、優しくて暖かいDomだ。
ただ執着心がすごく強い。渚の全てを知って管理したがる。
特に食へのこだわりが強く、渚が食べるもの全てを知ろうとする。
でもその執着が捨てられた渚にとっては心地よく、気味が悪いほどの執着が欲しくなってしまう。
理玖さんの執着は日に日に重みを増していくが、渚はどこまでも幸福として受け入れてゆく。
そんな風な激重DomによってドロドロにされちゃうSubのお話です!
アルファポリス限定で連載中
ヤンキーΩに愛の巣を用意した結果
SF
BL
アルファの高校生・雪政にはかわいいかわいい幼馴染がいる。オメガにして学校一のヤンキー・春太郎だ。雪政は猛アタックするもそっけなく対応される。
そこで雪政がひらめいたのは
「めちゃくちゃ居心地のいい巣を作れば俺のとこに居てくれるんじゃない?!」
アルファである雪政が巣作りの為に奮闘するが果たして……⁈
ちゃらんぽらん風紀委員長アルファ×パワー系ヤンキーオメガのハッピーなラブコメ!
※猫宮乾様主催 ●●バースアンソロジー寄稿作品です。
俺にだけ厳しい幼馴染とストーカー事件を調査した結果、結果、とんでもない事実が判明した
あと
BL
「また物が置かれてる!」
最近ポストやバイト先に物が贈られるなどストーカー行為に悩まされている主人公。物理的被害はないため、警察は動かないだろうから、自分にだけ厳しいチャラ男幼馴染を味方につけ、自分たちだけで調査することに。なんとかストーカーを捕まえるが、違和感は残り、物語は意外な方向に…?
⚠️ヤンデレ、ストーカー要素が含まれています。
攻めが重度のヤンデレです。自衛してください。
ちょっと怖い場面が含まれています。
ミステリー要素があります。
一応ハピエンです。
主人公:七瀬明
幼馴染:月城颯
ストーカー:不明
ひよったら消します。
誤字脱字はサイレント修正します。
内容も時々サイレント修正するかもです。
定期的にタグ整理します。
批判・中傷コメントはお控えください。
見つけ次第削除いたします。
隣の番は、俺だけを見ている
雪兎
BL
Ωである高校生の湊(みなと)は、幼いころから体が弱く、友人も少ない。そんな湊の隣に住んでいるのは、幼馴染で幼少期から湊に執着してきたαの律(りつ)。律は湊の護衛のように常にそばにいて、彼に近づく人間を片っ端から遠ざけてしまう。
ある日、湊は学校で軽い発情期の前触れに襲われ、助けてくれたのもやはり律だった。逃れられない幼馴染との関係に戸惑う湊だが、律は静かに囁く。「もう、俺からは逃げられない」――。
執着愛が静かに絡みつく、オメガバース・あまあま系BL。
【キャラクター設定】
■主人公(受け)
名前:湊(みなと)
属性:Ω(オメガ)
年齢:17歳
性格:引っ込み思案でおとなしいが、内面は芯が強い。幼少期から体が弱く、他人に頼ることが多かったため、律に守られるのが当たり前になっている。
特徴:小柄で華奢。淡い茶髪で色白。表情はおだやかだが、感情が表に出やすい。
■相手(攻め)
名前:律(りつ)
属性:α(アルファ)
年齢:18歳
性格:独占欲が非常に強く、湊に対してのみ甘く、他人には冷たい。基本的に無表情だが、湊のこととなると感情的になる。
特徴:長身で整った顔立ち。黒髪でクールな雰囲気。幼少期に湊を助けたことをきっかけに執着心が芽生え、彼を「俺の番」と心に決めている。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる