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第3章
①
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亜玲との一件から数日後。俺はキャンパス内の食堂にいた。
チキン南蛮定食を頼んで、一人用のカウンター席につく。いつもなら友人や先輩と話しながら食事をするけど、今日に限って誰もいなかった。ま、大学生だからこういうときもある。
タルタルソースがたっぷりとかかったチキンはとても美味しい。いつもの味だ。
(一人の日って寂しいけど、これ食べられるって思ったらまだ元気出るよなぁ)
誰もいないときは、いつもチキン南蛮定食を頼む。孤独で寂しい気持ちを、大好物を食べる嬉しさで上塗りしている。
(んー最高)
サラダを口に運んで咀嚼していると、隣の席に誰かが座ったのがわかった。
まぁ、この時間の食堂は混んでるし隣に誰かが座っても気にしないんだけど――。
(なんか、凝視されてる?)
隣に座った人が俺を見つめている気がした。
一度箸をおいて、コップを手に取った。水を口に運んで、ちらりと隣を見る。
そこには一人の男子生徒がいて、俺を凝視していた。
「……あの」
小さく声をかけると、男子生徒は笑みを浮かべた。周りに花が飛んでいるみたいだ。
「時本先輩――ですよね?」
問いかけのはずだが、確証を持っている。
(でも、俺はコイツのこと知らないんだけど)
彼の短い茶髪はふわふわしていて、柔らかそうだ。瞳は大きくてくりくりしている。
最初に抱いたのは『愛らしい美少年』という印象だった。
「そうだけど」
本当に俺、こんな美少年知らないんだけど――?
頭をフル回転させても、思い出せない。こんなに可愛かったら覚えているはず。
「時本先輩、大丈夫です。僕たちは初対面ですよ」
「そ、うか」
「はい。決して先輩の記憶力が低下したわけではありません」
にっこり笑う男子生徒は、自分が人の記憶に残りやすいことを熟知している。
そして、小首をかしげた仕草といい、絶対に自分が可愛いことも自覚している。
「僕は先輩の一つ下で、二年生の城川 翔也って言います」
「は、はぁ。時本 祈です」
なんで俺は後輩に敬語なんだろう。多分、勢いに押されている。
「知ってます。時本先輩のこと、僕調べましたから」
……当然のように怖いことを言わないでほしい。
「あのですね、聞いてくださいよぉ」
城川はぐいっと身を乗り出して、俺のほうに顔を寄せた。
胸焼けしそうなほどに甘えた声だ。砂糖水みたい。
「僕、亜玲先輩のことが好きなんです」
城川が唇を尖らせる。
「亜玲先輩って、まさに王子さまみたいで。僕、一目惚れしたんです」
頬を微かに染めて、城川はうっとりした表情を浮かべた。
まるで恋する乙女だ。
けど、これ俺に関係ある?
「……だからって、なんで俺に言うんだよ。亜玲に直接言えよ」
眉間にしわを寄せて吐き捨てると、城川は頬杖を突いた。今度はむすっとしている。表情豊かだ。
「もう伝えましたよ? 僕ってすごく可愛いから、亜玲先輩もすぐに頷いてくれる――って、思ってたのに」
城川は目を閉じた。次に開くと、先ほどの愛らしさは消えていた。敵意を丸出しにした双眸が俺を射貫く。
「亜玲先輩、僕のこと相手にしてくれないんですよね。どうしてなんでしょうね?」
「いや、俺に言うなって」
なんて言うけど、俺の心臓がどくどくと大きく音を鳴らしている。
――って、ダメだ。今は城川の話を聞かなくちゃ。
「噂によると、亜玲先輩って好きな人がいるみたいなんです」
指先でくるくる髪の毛を回して、城川が俺を見る。責めるような目つきに、俺はごくりと息を飲んだ。
「――なんでこんな冴えないやつなんだろ」
チキン南蛮定食を頼んで、一人用のカウンター席につく。いつもなら友人や先輩と話しながら食事をするけど、今日に限って誰もいなかった。ま、大学生だからこういうときもある。
タルタルソースがたっぷりとかかったチキンはとても美味しい。いつもの味だ。
(一人の日って寂しいけど、これ食べられるって思ったらまだ元気出るよなぁ)
誰もいないときは、いつもチキン南蛮定食を頼む。孤独で寂しい気持ちを、大好物を食べる嬉しさで上塗りしている。
(んー最高)
サラダを口に運んで咀嚼していると、隣の席に誰かが座ったのがわかった。
まぁ、この時間の食堂は混んでるし隣に誰かが座っても気にしないんだけど――。
(なんか、凝視されてる?)
隣に座った人が俺を見つめている気がした。
一度箸をおいて、コップを手に取った。水を口に運んで、ちらりと隣を見る。
そこには一人の男子生徒がいて、俺を凝視していた。
「……あの」
小さく声をかけると、男子生徒は笑みを浮かべた。周りに花が飛んでいるみたいだ。
「時本先輩――ですよね?」
問いかけのはずだが、確証を持っている。
(でも、俺はコイツのこと知らないんだけど)
彼の短い茶髪はふわふわしていて、柔らかそうだ。瞳は大きくてくりくりしている。
最初に抱いたのは『愛らしい美少年』という印象だった。
「そうだけど」
本当に俺、こんな美少年知らないんだけど――?
頭をフル回転させても、思い出せない。こんなに可愛かったら覚えているはず。
「時本先輩、大丈夫です。僕たちは初対面ですよ」
「そ、うか」
「はい。決して先輩の記憶力が低下したわけではありません」
にっこり笑う男子生徒は、自分が人の記憶に残りやすいことを熟知している。
そして、小首をかしげた仕草といい、絶対に自分が可愛いことも自覚している。
「僕は先輩の一つ下で、二年生の城川 翔也って言います」
「は、はぁ。時本 祈です」
なんで俺は後輩に敬語なんだろう。多分、勢いに押されている。
「知ってます。時本先輩のこと、僕調べましたから」
……当然のように怖いことを言わないでほしい。
「あのですね、聞いてくださいよぉ」
城川はぐいっと身を乗り出して、俺のほうに顔を寄せた。
胸焼けしそうなほどに甘えた声だ。砂糖水みたい。
「僕、亜玲先輩のことが好きなんです」
城川が唇を尖らせる。
「亜玲先輩って、まさに王子さまみたいで。僕、一目惚れしたんです」
頬を微かに染めて、城川はうっとりした表情を浮かべた。
まるで恋する乙女だ。
けど、これ俺に関係ある?
「……だからって、なんで俺に言うんだよ。亜玲に直接言えよ」
眉間にしわを寄せて吐き捨てると、城川は頬杖を突いた。今度はむすっとしている。表情豊かだ。
「もう伝えましたよ? 僕ってすごく可愛いから、亜玲先輩もすぐに頷いてくれる――って、思ってたのに」
城川は目を閉じた。次に開くと、先ほどの愛らしさは消えていた。敵意を丸出しにした双眸が俺を射貫く。
「亜玲先輩、僕のこと相手にしてくれないんですよね。どうしてなんでしょうね?」
「いや、俺に言うなって」
なんて言うけど、俺の心臓がどくどくと大きく音を鳴らしている。
――って、ダメだ。今は城川の話を聞かなくちゃ。
「噂によると、亜玲先輩って好きな人がいるみたいなんです」
指先でくるくる髪の毛を回して、城川が俺を見る。責めるような目つきに、俺はごくりと息を飲んだ。
「――なんでこんな冴えないやつなんだろ」
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