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お仕事
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午前9時。それは霞のお仕事が始まる時間。
一人暮らしのため部屋には霞以外は誰もいない。
誰かに雇われるわけではない漫画家という職業は自分で仕事の時間や内容を決められるが、その分自分に甘くなってしまうと後で痛い目を見るのも自分なのだ。
午前9時からは仕事をする。
これは霞がデビュー当初に決めて今も続くルーティーンの一つだ。
霞が連載をしている雑誌は2つほどあり、冴島スミは業界内ではそれなりに名の通った作家である。
柏木出版社から出される”コミック エクスタシー"では毎月完結型のお話を書く場合がほとんどで、もう一つの連載先である青柳社からは”月刊 ラブミックス”という月刊誌にオフィスラブものの連載をしている。
「今日はラブミックスのほう進めなきゃ、がんばろっと」
ラブミックスのほうの作品の名前は”いけない上司のボーダーライン”である。
これは飲みの席でひょんなことから不感症で悩んでいることをあこがれの上司に知られてしまった主人公が特訓という名目で一線を越えてしまい、セフレ関係になってしまう、という物語だ。
「・・・一線、か。」
この連載を始めるにあたって話の大まかな流れを決めた時には自分が、主人公の”理沙”のように思いがけないところで一線を越えてしまうなんて思ってもみなかった。
今後の予定では、理沙は紆余曲折はあるものの自らの底に秘めた思いに気がつき、上司との関係をセフレから恋人にし、そして最後は彼との子をなして幸せに暮らす…、といったような人生を送る。
同じ一線を越えたのでもセフレの関係ですらなれなかった自分にはもちろんその先の吉村という男との未来もないわけで。
考えてもむなしいだけ。
いつもなら物語の二人がどうしたら最高のエンディングを迎えられるのか考えるたびにドキドキしてしまうのに、今の霞の中から湧き上がる感情は自身でも驚くほどに無であった。
(駄目だ、こんなんじゃ仕事にならない!)
これが俗に言うスランプなんだろうか。
パソコンの画面に映し出された理沙のフキダシの続きは先程から点滅し続けている。
元々好きで始めた仕事だ。
今まではこんなことなかった。
物語のストーリーを考え出すと休みでも、何をしていても頭の片隅には二人のことがあって、アイデアがどんどん湧いてきた。
初めての経験に戸惑いを感じる。
「今日はお休みにしちゃお」
これ以上考えてもなにも効果がない、そう思った霞は今日を臨時の休みにすることにした。
そういえばここの所単行本化にあたっての加筆修正作業に忙しく、本来休みにしている曜日も働いていたのだった。
(息抜きしてなかったからなぁ)
「あ、最近レナの店行ってなかったから行こうかな・・。」
ふと最近友人の喫茶店に顔を出してないことに気が付き、今日はそこに訪れることを決める。
リラックスすることで何かアイデアが生まれますように、と願いながら霞は出かける支度をしていくのであった。
一人暮らしのため部屋には霞以外は誰もいない。
誰かに雇われるわけではない漫画家という職業は自分で仕事の時間や内容を決められるが、その分自分に甘くなってしまうと後で痛い目を見るのも自分なのだ。
午前9時からは仕事をする。
これは霞がデビュー当初に決めて今も続くルーティーンの一つだ。
霞が連載をしている雑誌は2つほどあり、冴島スミは業界内ではそれなりに名の通った作家である。
柏木出版社から出される”コミック エクスタシー"では毎月完結型のお話を書く場合がほとんどで、もう一つの連載先である青柳社からは”月刊 ラブミックス”という月刊誌にオフィスラブものの連載をしている。
「今日はラブミックスのほう進めなきゃ、がんばろっと」
ラブミックスのほうの作品の名前は”いけない上司のボーダーライン”である。
これは飲みの席でひょんなことから不感症で悩んでいることをあこがれの上司に知られてしまった主人公が特訓という名目で一線を越えてしまい、セフレ関係になってしまう、という物語だ。
「・・・一線、か。」
この連載を始めるにあたって話の大まかな流れを決めた時には自分が、主人公の”理沙”のように思いがけないところで一線を越えてしまうなんて思ってもみなかった。
今後の予定では、理沙は紆余曲折はあるものの自らの底に秘めた思いに気がつき、上司との関係をセフレから恋人にし、そして最後は彼との子をなして幸せに暮らす…、といったような人生を送る。
同じ一線を越えたのでもセフレの関係ですらなれなかった自分にはもちろんその先の吉村という男との未来もないわけで。
考えてもむなしいだけ。
いつもなら物語の二人がどうしたら最高のエンディングを迎えられるのか考えるたびにドキドキしてしまうのに、今の霞の中から湧き上がる感情は自身でも驚くほどに無であった。
(駄目だ、こんなんじゃ仕事にならない!)
これが俗に言うスランプなんだろうか。
パソコンの画面に映し出された理沙のフキダシの続きは先程から点滅し続けている。
元々好きで始めた仕事だ。
今まではこんなことなかった。
物語のストーリーを考え出すと休みでも、何をしていても頭の片隅には二人のことがあって、アイデアがどんどん湧いてきた。
初めての経験に戸惑いを感じる。
「今日はお休みにしちゃお」
これ以上考えてもなにも効果がない、そう思った霞は今日を臨時の休みにすることにした。
そういえばここの所単行本化にあたっての加筆修正作業に忙しく、本来休みにしている曜日も働いていたのだった。
(息抜きしてなかったからなぁ)
「あ、最近レナの店行ってなかったから行こうかな・・。」
ふと最近友人の喫茶店に顔を出してないことに気が付き、今日はそこに訪れることを決める。
リラックスすることで何かアイデアが生まれますように、と願いながら霞は出かける支度をしていくのであった。
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