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ダンピールの章
可愛い大事な4
しおりを挟む望みを断ち切られた和花奈は静かに涙を流した。心臓を取られるのと同じくらい、母に抱かれるのが嫌だった。母に股を舐められて気持ちよくなってしまうのは、恥ずかしいしおかしいことだと思っている。母と離れているときは嫌悪感しかないのに、命じられたら言いなりになってしまう。
母はいつも弱いとこばかりしつこく弄ってくる。乳首だけでいくまで吸ったり舌で転がしたり。一番気持ちが良いクリトリスも指で、舌で、じんじんするまで弄られる。皮を剥いて直接されるのは刺激が強すぎて苦手なのに止めてくれない。気が済むと自分であそこを広げて見せて、「和花奈のここも大人にして、お母さん」と言わされる。すると母は「和花奈ちゃんはこのままでいいのよ」と言って、またしつこく外側だけを舐め続ける。母はこの茶番劇が好きだ。
中には一度も触られたことがない。たぶんぬるぬるして柔らかくて絡み付く感じなのだろう。母の中がそうだから。中を擦ると母は喜んで、いやらしい汁をたくさん出す。中の快感を知ったら、自分も母のようになってしまうのだろうか――
「もう少し我慢してね。あのお兄さんとのお話が終わったら、うんと気持ち良くしてあげる」
「やっ」
カップの隙間から乳首を引っ掻かれて、和花奈は思わず声を漏らした。
「和花奈は乳首が感じるのよね。乳首だけで濡れちゃうの。今のでもう濡れてるんじゃない?」
「やめて!」
「やっぱり濡れてる。うふふ。和花奈のここは素直でいい子ね。気が変わった。先に一回いっておきましょう」
「やっ、やだぁっ……あ、あ、あ……!」
愛液を絡ませた指で勃起したクリトリスを捏ねられる。まだ心臓を戻されていない和花奈にはきつい行為だった。
二人の絡みに興味が持てなかった昢覧は家の中を見て回った。普通の女子が好きそうな服や雑貨が置いてあるばかり。これ以上ここにいても有益な情報は得られそうになかった。もう一度伝染型吸血鬼について説明し、もし情報を得たら教えるようにと祥子に連絡先を渡して次の目的地に向かうことにした。
昢覧に続いて、ずっと黙って近くに控えていた絢次も玄関に向かう。新しい下着に着替えた祥子も見送りに来た。早く戸締りをして和花奈と続きをしたい。祥子は座って靴を履く絢次の首筋にかすかな歯型があるのに気付いた。玄関の外で絢次を待つ昢覧と歯型をそっと見比べる。
「おまえ、ずいぶん可愛がられてるのね」
「昢覧は俺がかわいい」
ぐっと胸を張る絢次の腕を昢覧が引っ張った。
「黙れ。こいつはペットだから。ペット!」
「ペットが可愛いのは当たり前よ~?」
祥子がくすくすと笑う。馬鹿にする意図はなかった。しかし絢次との関係をどう思われるか気にしていた昢覧は、カッとなって強く言い返してしまった。
「実の娘に手を出すような変態がとやかく言うな!」
「変態? 私が? 人狼を抱くあんたはとびきりのど変態!」
「だっ……抱いてない!」
売り言葉に買い言葉で、場の空気が険悪なものに一変した。絢次は慌てて玄関の外に逃げる。巻き込まれたらただでは済まない。さっきの道端での喧嘩とは違い、今度は昢覧も殺気立っている。
居間から物音が聞こえた。和花奈が何かしているのだろう。祥子の気が昢覧から逸れた。それが敗因だった。昢覧の手刀が祥子の心臓を一突きにしている。
「さっき言ったこと、取り消せ」
「あ……あんな人狼……和花奈と比べたら全然可愛くない……」
「そこじゃない!」
心臓を刺したまま祥子の身体を壁に押し付け、顎に手を掛けて首を引き千切ってやろうとするが上手くいかない。頚椎が破損しても皮膚が破れず首が伸びただけだった。仕方がないから心臓から手を抜いて、皮膚に切り口を作って、改めて上下に引っ張ったらようやく千切れた。
「おか……さ……」
心臓を取り戻した和花奈が、居間の扉から廊下に顔を出した。母の変わり果てた姿を見てへなへなとその場にへたり込む。
「う……」
祥子が呻き声を上げると、はっとした和花奈が母の胴体に取りついた。祥子の傷付いた部分が蘇生のために蠢いている。間もなく心臓の穴が塞がり脈を打つだろう。そうなれば首と胴体が互いに引き合い、何事もなかったかのように復活を遂げる。
昢覧は母娘の様子を見守った。首を千切るのに手間取ったせいでだいぶ興が醒めている。息を吹き返した祥子が謝るならそれで良し。そうでないなら今度はもっと思い知らせてやる。
だが和花奈が予想外の動きをした。いつも自分がされていた要領で祥子の心臓を抉り出し、それを台所の流しに放り込んだのだ。排水口のディスポーザーが派手な音を立てて仕事をした。これで祥子の復活は不可能となった。
「俺もう行くわ。嚙み付く吸血鬼の件、よろしく」
「わかりました」
和花奈は大きく頷いた。礼を言って頭を下げて、母に代わり客を見送る。心臓を壊されて祥子の再生は止まっていた。もう声を出すこともできない。きっと朝を待たずに消えてしまうだろう。
「お母さん、ごめんなさい……ごめんなさい……!」
母を失う。自分を愛し守っていた女が、その生涯を閉じようとしている。涙が零れるのは悲しいからじゃない。急に転がり込んだ自由のせいで足元が不安定なだけ。和花奈は母の頭部を胸に抱いた。
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