SSランク万能ギルドのドジっ娘メイドが、実は最強の【掃除屋】だった件

早見羽流@3/19書籍発売!

文字の大きさ
27 / 40

第27話 あなたたち、一夜の間に何があったんですのよ?

しおりを挟む
 ☆


 翌日。目が覚めると、リサちゃんの拘束から抜け出して、代わりに彼女にはワインボトルを抱っこさせてあげた。酔っ払いにはこっちの方が似合う。
 ちなみにワインの残りはすべて私が飲み干しておいた。昨日の分のお返しとして。

 リサちゃんが二日酔いになっていたら申し訳ないなと思いつつも部屋を出ると、ちょうどヘレナとコルネリアの2人が店に入ってくるところだった。そういえばこの2人は普段どこに住んでいるのだろう?

 2人は私が店にいることに対して不思議そうな顔をした後、バックヤードで寝ているリサちゃんを見て大体の状況を把握したらしい。

「あらアニータちゃん、リサさんが大変なことになっているようですわね」

 コルネリアが口角を上げて笑みを浮かべてこちらに向かってきた。なんか楽しそうなんだけど……。

「しょうがないじゃん。酔っ払ったリサちゃんは手がつけられないんだって……」
「へぇ~。それでアニータちゃんが面倒見てあげていたの?」

 今度はヘレナがニヤつきながら訊ねてくる。私は苦笑いを浮かべながら「まあね」と答えた。すると、2人共意外だという表情になった。

「リサに聞いてみましょうか。……起きなさいっ!」

 ヘレナはそのオーガのような怪力で寝ているリサちゃんからワインボトルを取り上げる。そしてそのラベルを確認して眉をひそめた。

「もう……あたし秘蔵の年代物ワインを空けちゃってぇ……」

 ヘレナがブツブツ言っていると、リサちゃんが目を擦りながら伸びをした。どうやら目を覚ましたようだ。
 リサちゃんは部屋をぐるりと見渡すと、ヘレナやコルネリアの顔を見て、私と視線を合わした。
 じっと私を見つめていたリサちゃんの顔が急速に紅潮していく。ほら、やっぱり覚えていたようだ。

「り、リサは! リサはなんてことを……!」

 リサちゃんは両手で顔を覆って叫ぶ。そんな様子に私達は揃って爆笑した。

「もう! 笑わないでくださいいじわる! ……こうなったらアニータさんに責任を取ってもらうしかありませんね!」
「──え、えっと? それはつまりどういうことなんでしょうか?」

 私は頬を引きつらせながら尋ねると、リサちゃんは不敵な笑みを浮かべた。そして「それはですね……」と言いながら私の手を握る。そして指を絡めてきた。えっと……リサちゃん? なにをしてらっしゃるの?
 そして、私の耳元に唇を寄せると甘く囁いた。

「これからずっとリサと一緒にいてくれるなら……リサはあなたの側にいますよ……」

 私はその瞬間、背筋をぞくりとしたものが駆け抜ける感覚を覚えた。
 そして気付く。私は彼女に魅せられてしまったのだということに。ああ、もうダメだ。私は彼女のものになるしかない。そう悟った時、自然と言葉が口からこぼれていた。

「もちろんだよ。……一応、私とリサちゃんはパートナーってことになってるし」

 そう言って笑うと、彼女はとても嬉しそうに笑っていた。その様子を見た私は胸の中に暖かいものが込み上げてきて、なんだか幸せな気分だった。そして同時に思う。この子を一生かけて幸せにしてあげるのだと。
 私がこんな風に思っているということは、きっと彼女も同じ気持ちなのだと思う。

「はいはい、ちょっと待った。なに勝手に話を進めてますのよ?」

 コルネリアが腰に手を当てながら不満そうに声を上げた。私はそちらに振り向くと、彼女にしては珍しく、ムッとしたような顔になっていることに驚いた。

「あなたたち、一夜の間に何があったんですのよ? ……もしかして」
「違うよ!? 別に何もないから! ……しかけたってだけで、してはいないから!」

 私がそう弁明している最中、コルネリアは呆れたように額に手をやり、ため息をついていた。
 ヘレナは口元に手を当ててニヤニヤ笑いを浮かべている。

「あなたたちが結ばれて、お母さん幸せだわ!」
「だから私はあんたの娘じゃねぇっての! てか結ばれてないし!」

 3人でワイワイ騒ぎ始めたところで、またしても恥ずかしさの波が来てしまったらしいリサちゃんは真っ赤になった顔を俯かせていた。その様子がおかしくて、私達はまた笑い出すのだった。


 4人でひとしきり騒いだ後、ヘレナが一転して真面目な顔で私とリサちゃんに依頼の紙切れを差し出した。

「リサ、アニータちゃん、あなたたちにまた任務をお願いしたいの」
「……暗殺? それとも護衛?」
「アニータちゃんが大好きな猫探しよ」
「……えっと」
「あ、はい」

 リサちゃんは私を見て微笑んだ。私は苦笑いするしかなかった。

「でも、今回はちょっとだけ特殊な内容なのよねぇ」
「どんな?」
「巨大な猫型魔物の討伐よ」
「えっ……そんなのがいるの?」

 私が尋ねると、ヘレナはウィンクをしながら人差し指を立てた。

「いるんですよねーこれが。どうやら魔王によって強化された魔物のうちの一体みたいで、周辺の街や村から討伐依頼が来てるの」
「なるほどね。まぁいいんじゃいないかな。面白そうだし」
「そうですね! リサたちにかかればその程度余裕でしょう」

 リサちゃんは自信たっぷりに答えたので、多分今回も余裕だろう。そんなことを考えていると、ヘレナが釘を刺してきた。

「油断しないでね。今回のはただでさえ強いのに加えて魔王直々の強化魔法を受けていて厄介な相手なんだから。──これを持っていきなさい」

 そう言いながらヘレナが差し出したのは赤黒くてグロテスクなポーションだった。

「え、なにこれ?」
「あたしが調合した特製ポーションよ。困った時に使いなさい」
「いやいいよ。明らかに怪しい色してるじゃんこれ……」
「いいから持っていきなさい。必要にならないに越したことはないけれど、念の為……ね」

 ヘレナは私の手にポーションを押し付けてくる。私はそれを渋々鞄にしまった。

「それに──」

 ヘレナが言い終わる前にリサちゃんのお腹が鳴ってしまった。ヘレナは一瞬固まった後、くすっと笑った。
 リサちゃんは恥ずかしそうにお腹を押さえる。

 ヘレナは「ご飯食べてから行きましょうか」と言って立ち上がると部屋から出ていった。私達は互いに見つめ合いながら肩をすくめると、彼女の後に続いて食堂へと向かうのであった。


 食事を終えた私達は準備を整え、早速旅立った。今回も王都からかなり離れた地方まで行かなければならないので数日の旅程になる。なので食料を買い込んで馬車で移動するのだ。御者席にはいつも通りリサちゃんが座り、私は荷台に乗っているのだが……。

 2人での旅は何となく気まずかった。昨日の件もあるし。リサちゃんの顔を見るだけで、昨日の酔っ払って私に迫ってくるリサちゃんのエロい表情が思い出されてしまって仕方がない。
 私が悶々としていると、突然後ろを振り向いたリサちゃんと目が合ってしまう。彼女は不思議そうな顔をしていたので、私は咄嵯に誤魔化すことにした。

「リサちゃん、前見てないと危ないよ?」
「あはは、すみません」

 彼女は笑いながら前を向いた。私はホッとして再び窓の外の風景に視線を向ける。
 リサちゃんのことをもっと知りたい。故郷の村を襲った魔物って何だったのかとか、どうしてそんなに強くなれたのかとか……。考えてみたら【宵の明星ヴェスパール】のメンバーはヘレナやコルネリアも含めて謎だらけだ。そんなことをつらつらと考えているうちに、私の意識は徐々に薄れていった。いつの間にか眠っていたようだ。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

ヤンデレ美少女転校生と共に体育倉庫に閉じ込められ、大問題になりましたが『結婚しています!』で乗り切った嘘のような本当の話

桜井正宗
青春
 ――結婚しています!  それは二人だけの秘密。  高校二年の遙と遥は結婚した。  近年法律が変わり、高校生(十六歳)からでも結婚できるようになっていた。だから、問題はなかった。  キッカケは、体育倉庫に閉じ込められた事件から始まった。校長先生に問い詰められ、とっさに誤魔化した。二人は退学の危機を乗り越える為に本当に結婚することにした。  ワケありヤンデレ美少女転校生の『小桜 遥』と”新婚生活”を開始する――。 *結婚要素あり *ヤンデレ要素あり

性別交換ノート

廣瀬純七
ファンタジー
性別を交換できるノートを手に入れた高校生の山本渚の物語

同じアパートに住む年上未亡人美女は甘すぎる。

ピコサイクス
青春
大学生の翔太は、一人暮らしを始めたばかり。 真下の階に住むのは、落ち着いた色気と優しさを併せ持つ大人の女性・水無瀬紗夜。 引っ越しの挨拶で出会った瞬間、翔太は心を奪われてしまう。 偶然にもアルバイト先のスーパーで再会した彼女は、翔太をすぐに採用し、温かく仕事を教えてくれる存在だった。 ある日の仕事帰り、ふたりで過ごす時間が増えていき――そして気づけば紗夜の部屋でご飯をご馳走になるほど親密に。 優しくて穏やかで――その色気に触れるたび、翔太の心は揺れていく。 大人の女性と大学生、甘くちょっぴり刺激的な同居生活(?)がはじまる。

戦場帰りの俺が隠居しようとしたら、最強の美少女たちに囲まれて逃げ場がなくなった件

さん
ファンタジー
戦場で命を削り、帝国最強部隊を率いた男――ラル。 数々の激戦を生き抜き、任務を終えた彼は、 今は辺境の地に建てられた静かな屋敷で、 わずかな安寧を求めて暮らしている……はずだった。 彼のそばには、かつて命を懸けて彼を支えた、最強の少女たち。 それぞれの立場で戦い、支え、尽くしてきた――ただ、すべてはラルのために。 今では彼の屋敷に集い、仕え、そして溺愛している。   「ラルさまさえいれば、わたくしは他に何もいりませんわ!」 「ラル様…私だけを見ていてください。誰よりも、ずっとずっと……」 「ねぇラル君、その人の名前……まだ覚えてるの?」 「ラル、そんなに気にしなくていいよ!ミアがいるから大丈夫だよねっ!」   命がけの戦場より、ヒロインたちの“甘くて圧が強い愛情”のほうが数倍キケン!? 順番待ちの寝床争奪戦、過去の恋の追及、圧バトル修羅場―― ラルの平穏な日常は、最強で一途な彼女たちに包囲されて崩壊寸前。   これは―― 【過去の傷を背負い静かに生きようとする男】と 【彼を神のように慕う最強少女たち】が織りなす、 “甘くて逃げ場のない生活”の物語。   ――戦場よりも生き延びるのが難しいのは、愛されすぎる日常だった。 ※表紙のキャラはエリスのイメージ画です。

天才天然天使様こと『三天美女』の汐崎真凜に勝手に婚姻届を出され、いつの間にか天使の旦那になったのだが...。【動画投稿】

田中又雄
恋愛
18の誕生日を迎えたその翌日のこと。 俺は分籍届を出すべく役所に来ていた...のだが。 「えっと...結論から申し上げますと...こちらの手続きは不要ですね」「...え?どういうことですか?」「昨日、婚姻届を出されているので親御様とは別の戸籍が作られていますので...」「...はい?」 そうやら俺は知らないうちに結婚していたようだった。 「あの...相手の人の名前は?」 「...汐崎真凛様...という方ですね」 その名前には心当たりがあった。 天才的な頭脳、マイペースで天然な性格、天使のような見た目から『三天美女』なんて呼ばれているうちの高校のアイドル的存在。 こうして俺は天使との-1日婚がスタートしたのだった。

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

クラスメイトの美少女と無人島に流された件

桜井正宗
青春
 修学旅行で離島へ向かう最中――悪天候に見舞われ、台風が直撃。船が沈没した。  高校二年の早坂 啓(はやさか てつ)は、気づくと砂浜で寝ていた。周囲を見渡すとクラスメイトで美少女の天音 愛(あまね まな)が隣に倒れていた。  どうやら、漂流して流されていたようだった。  帰ろうにも島は『無人島』。  しばらくは島で生きていくしかなくなった。天音と共に無人島サバイバルをしていくのだが……クラスの女子が次々に見つかり、やがてハーレムに。  男一人と女子十五人で……取り合いに発展!?

処理中です...