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第26話 ライフドレインの活用法
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「なんだよ……そりゃ」
俺は呆然と呟いた。
「リッくん、逃げてぇっ!!」
クロエの声が聞こえる。
俺が慌てて立ち上がろうとした時── ザシュウッ! 再び、今度は背中に熱い感覚を覚えた。俺はゆっくりと後ろを振り返る。するとそこにいるのは先程までとはまるで違う、邪悪なオーラを身にまとう漆黒のデスナイト。その右手には巨大な剣が握られていた。その刃が赤く濡れているのは、俺の血だろうか。
「グルルァァァッ!!」
デスナイトは再び咆哮を上げると、ノエルの拘束を引きちぎる。同時に横から突っ込んできたクロエの短剣の一撃その巨木のような腕で受け止めた。
そして── 俺の眼前に突然現れた黒い塊が通り過ぎた。それは俺のすぐ傍で戦うクロエを押しつぶそうと振り下ろされたデスナイトの足。
俺はそれをスローモーション映像を見るかのように眺めながら思う。ダメだ、あんな攻撃を食らったら一撃でクロエが死ぬ! ポーション生成師として目の前で人が死ぬほど悔しいものはない。──だから!
「クロエッ!!」
叫ぶと同時に俺はデスナイトに斬りかかった。魔剣を手に全力で走りながら渾身の一撃を放つ。しかしデスナイトは左腕だけでそれを受けると、そのまま俺を吹き飛ばした。
「グフゥッ!」
「リ……リッくん!!」
俺の名を呼んでクロエがデスナイトに立ち向かう。その短剣はしかし、デスナイトに簡単に弾かれてしまう。
「クロエ……早く……にげ……」
デスナイトが剣を振り下ろす。標的は俺だ。リジェネレーションスキルを持っていて厄介な俺に確実にトドメをさすつもりらしい。だめだ、回復しきっていない身体では回避が間に合わない。
俺は迫りくる死を予感した。その時──
「リッくん!」
クロエが俺を庇うように覆いかぶさってきた。俺は必死に叫ぶ。
「クロエ、よせ!!」
次の瞬間──ザシュッ!! という音が聞こえ、クロエの背中が深々と切り裂かれた。そしてクロエはそのまま地面に倒れこむ。俺はクロエの下に敷かれて動けなくなっていた。クロエが必死の形相で手を伸ばしている。そのHPバーは赤いゾーンで持ちこたえていた。──まだ生きている!
彼女の意図するところを察した俺がクロエの手を握ると、彼女はライフドレインのスキルで俺のHPを吸って回復をした。
正直肝が冷えた。今の攻撃は俺に比べてステータスの高いクロエでなけれ受けきれなかっただろう。咄嗟の合理的な判断とはいえ、彼女に痛い思いをさせてしまったことに罪悪感をおぼえる。
だが、幸いなことにデスナイトの攻撃で崩れた洞窟の壁面に隠れるような形になって、デスナイトは俺たちを見失ってくれていた。
そして……
「ありがとうクロエ。クロエのおかげで思いついたぜ。奴を倒す方法をな!」
「ほんと? どんな作戦?」
クロエが嬉しそうに聞く。心配そうに駆け寄ってきたノエルとアルフォンスの顔を見渡すと、俺は答えた。
「奴には物理も魔法もあまり意味はない。──だから他の方法で倒す」
「他の方法?」
「そう、継続ダメージだ」
「継続ダメージ……なるほど! それなら再生能力を発動させずにHPを削ることができますね!」
アルフォンスがポンッと手を叩いた。
「そう。だが、普通の継続ダメージではあんなにHPの多いモンスターを削りきるまではかなり時間がかかる。その間にこっちがやられる」
そこで、と俺はクロエを見て言った。
「クロエのライフドレインを使ってほしい」
俺の言葉を聞いてクロエは大きく目を見開いたあと、こくりと力強く首肯する。
「わかった! やってみる」
「俺がデスナイトの気を引くから、クロエは奴の背後から近づいてライフドレイン。ノエルとアルフォンスはなんでもいいから他の状態異常で援護してくれ」
「おっけーです」
「なるほど、確かにそれは名案ですね」
二人が返事をする。これで準備は完了だ。
「よし、行くぞっ!!」
俺が掛け声をかけると全員が一斉に動き出した。まず、俺がデスナイトの正面に躍り出ると、魔剣を構える。
「よし、俺が相手だ!」
そして、わざとらしく大声で叫ぶと魔剣で切りかかった。当然のことながらあっさり避けられるがそれは想定の範囲内だ。奴の行動パターンならある程度読めてきた。ルナとの特訓の成果だ。
俺はそのまま魔剣の刃を盾にするように構えてデスナイトに近づくと、すれ違いざまにその足に斬りつけた。
ザシュウッ!!
「グオオオッ!」
怒ったデスナイトが闇雲に大剣を振り回す。攻撃が掠め、多少のダメージを受けるが問題ない。リジェネレーションですぐに回復できる。
「ノエル、アルフォンス、今だ!」
俺が指示を出すと、すぐさまノエルの魔法が飛んできた。
「『ポイズン・スワンプ』」
デスナイトの足元がぬかるみ、瘴気が漂いはじめる。ノエルの黒魔術の毒沼だ。デスナイトは毒沼の範囲から出ようとするが、俺は奴に張りつくように動きながら攻撃を繰り出しそれを許さない。
当然、俺も奴も毒を受けて継続的にダメージを受けるわけだが、まあこっちにはリジェネレーションがあるしな。それを考慮してノエルは毒沼魔法を使っているのだろう。
アルフォンスも薬草師らしく毒草を投げるようにして援護してくれる。効果があるのかどうか分からないが、俺やクロエと違ってノエルやアルフォンスは自分のスキルで回復をすることができないので、彼らにはやはり後衛に徹してもらおう。
俺はその後もデスナイトにちょこまかと嫌がらせのように攻撃を繰り返す。すると、毒によってだんだんとデスナイトのHPが減ってきた。やっぱり、効いている!
「クロエッ!」
俺が叫ぶと、クロエは素早くデスナイトの背後に回り込んだ。
「リッくん……いくよっ!」
俺がコクリとうなずくと、彼女はデスナイトの巨体に飛びつくようにしてライフドレインを使った。デスナイトのHPが急速にクロエへと吸い込まれていく。同時にデスナイトの動きがさらに鈍った。
クロエのライフドレインはHPが減っている状態でないと使えないが、それはノエルの毒沼によってクロエのHPも削られているため、解決しているらしい。そして、HPが少しでも減っていれば、ライフドレインはいつもと同じ速度で相手のHPを削るらしい。図らずもまるで計算しきったような作戦になった。
やがて、気づいた頃にはデスナイトのHPバーはレッドゾーンまで突入していた。
「いけぇぇぇぇっ!!」
「はぁぁぁぁぁっ!!」
完全に動きを止めたデスナイトの首筋に、俺とクロエは同時に攻撃を放った。そしてその攻撃はデスナイトの残りHPを消し飛ばずには十分だった。
「グオオォォ……」
デスナイトが断末魔のような声を上げ、崩れ落ちる。
やった……倒した!! 俺たちはついにデスナイトを打ち破ることができたのだ。
俺は呆然と呟いた。
「リッくん、逃げてぇっ!!」
クロエの声が聞こえる。
俺が慌てて立ち上がろうとした時── ザシュウッ! 再び、今度は背中に熱い感覚を覚えた。俺はゆっくりと後ろを振り返る。するとそこにいるのは先程までとはまるで違う、邪悪なオーラを身にまとう漆黒のデスナイト。その右手には巨大な剣が握られていた。その刃が赤く濡れているのは、俺の血だろうか。
「グルルァァァッ!!」
デスナイトは再び咆哮を上げると、ノエルの拘束を引きちぎる。同時に横から突っ込んできたクロエの短剣の一撃その巨木のような腕で受け止めた。
そして── 俺の眼前に突然現れた黒い塊が通り過ぎた。それは俺のすぐ傍で戦うクロエを押しつぶそうと振り下ろされたデスナイトの足。
俺はそれをスローモーション映像を見るかのように眺めながら思う。ダメだ、あんな攻撃を食らったら一撃でクロエが死ぬ! ポーション生成師として目の前で人が死ぬほど悔しいものはない。──だから!
「クロエッ!!」
叫ぶと同時に俺はデスナイトに斬りかかった。魔剣を手に全力で走りながら渾身の一撃を放つ。しかしデスナイトは左腕だけでそれを受けると、そのまま俺を吹き飛ばした。
「グフゥッ!」
「リ……リッくん!!」
俺の名を呼んでクロエがデスナイトに立ち向かう。その短剣はしかし、デスナイトに簡単に弾かれてしまう。
「クロエ……早く……にげ……」
デスナイトが剣を振り下ろす。標的は俺だ。リジェネレーションスキルを持っていて厄介な俺に確実にトドメをさすつもりらしい。だめだ、回復しきっていない身体では回避が間に合わない。
俺は迫りくる死を予感した。その時──
「リッくん!」
クロエが俺を庇うように覆いかぶさってきた。俺は必死に叫ぶ。
「クロエ、よせ!!」
次の瞬間──ザシュッ!! という音が聞こえ、クロエの背中が深々と切り裂かれた。そしてクロエはそのまま地面に倒れこむ。俺はクロエの下に敷かれて動けなくなっていた。クロエが必死の形相で手を伸ばしている。そのHPバーは赤いゾーンで持ちこたえていた。──まだ生きている!
彼女の意図するところを察した俺がクロエの手を握ると、彼女はライフドレインのスキルで俺のHPを吸って回復をした。
正直肝が冷えた。今の攻撃は俺に比べてステータスの高いクロエでなけれ受けきれなかっただろう。咄嗟の合理的な判断とはいえ、彼女に痛い思いをさせてしまったことに罪悪感をおぼえる。
だが、幸いなことにデスナイトの攻撃で崩れた洞窟の壁面に隠れるような形になって、デスナイトは俺たちを見失ってくれていた。
そして……
「ありがとうクロエ。クロエのおかげで思いついたぜ。奴を倒す方法をな!」
「ほんと? どんな作戦?」
クロエが嬉しそうに聞く。心配そうに駆け寄ってきたノエルとアルフォンスの顔を見渡すと、俺は答えた。
「奴には物理も魔法もあまり意味はない。──だから他の方法で倒す」
「他の方法?」
「そう、継続ダメージだ」
「継続ダメージ……なるほど! それなら再生能力を発動させずにHPを削ることができますね!」
アルフォンスがポンッと手を叩いた。
「そう。だが、普通の継続ダメージではあんなにHPの多いモンスターを削りきるまではかなり時間がかかる。その間にこっちがやられる」
そこで、と俺はクロエを見て言った。
「クロエのライフドレインを使ってほしい」
俺の言葉を聞いてクロエは大きく目を見開いたあと、こくりと力強く首肯する。
「わかった! やってみる」
「俺がデスナイトの気を引くから、クロエは奴の背後から近づいてライフドレイン。ノエルとアルフォンスはなんでもいいから他の状態異常で援護してくれ」
「おっけーです」
「なるほど、確かにそれは名案ですね」
二人が返事をする。これで準備は完了だ。
「よし、行くぞっ!!」
俺が掛け声をかけると全員が一斉に動き出した。まず、俺がデスナイトの正面に躍り出ると、魔剣を構える。
「よし、俺が相手だ!」
そして、わざとらしく大声で叫ぶと魔剣で切りかかった。当然のことながらあっさり避けられるがそれは想定の範囲内だ。奴の行動パターンならある程度読めてきた。ルナとの特訓の成果だ。
俺はそのまま魔剣の刃を盾にするように構えてデスナイトに近づくと、すれ違いざまにその足に斬りつけた。
ザシュウッ!!
「グオオオッ!」
怒ったデスナイトが闇雲に大剣を振り回す。攻撃が掠め、多少のダメージを受けるが問題ない。リジェネレーションですぐに回復できる。
「ノエル、アルフォンス、今だ!」
俺が指示を出すと、すぐさまノエルの魔法が飛んできた。
「『ポイズン・スワンプ』」
デスナイトの足元がぬかるみ、瘴気が漂いはじめる。ノエルの黒魔術の毒沼だ。デスナイトは毒沼の範囲から出ようとするが、俺は奴に張りつくように動きながら攻撃を繰り出しそれを許さない。
当然、俺も奴も毒を受けて継続的にダメージを受けるわけだが、まあこっちにはリジェネレーションがあるしな。それを考慮してノエルは毒沼魔法を使っているのだろう。
アルフォンスも薬草師らしく毒草を投げるようにして援護してくれる。効果があるのかどうか分からないが、俺やクロエと違ってノエルやアルフォンスは自分のスキルで回復をすることができないので、彼らにはやはり後衛に徹してもらおう。
俺はその後もデスナイトにちょこまかと嫌がらせのように攻撃を繰り返す。すると、毒によってだんだんとデスナイトのHPが減ってきた。やっぱり、効いている!
「クロエッ!」
俺が叫ぶと、クロエは素早くデスナイトの背後に回り込んだ。
「リッくん……いくよっ!」
俺がコクリとうなずくと、彼女はデスナイトの巨体に飛びつくようにしてライフドレインを使った。デスナイトのHPが急速にクロエへと吸い込まれていく。同時にデスナイトの動きがさらに鈍った。
クロエのライフドレインはHPが減っている状態でないと使えないが、それはノエルの毒沼によってクロエのHPも削られているため、解決しているらしい。そして、HPが少しでも減っていれば、ライフドレインはいつもと同じ速度で相手のHPを削るらしい。図らずもまるで計算しきったような作戦になった。
やがて、気づいた頃にはデスナイトのHPバーはレッドゾーンまで突入していた。
「いけぇぇぇぇっ!!」
「はぁぁぁぁぁっ!!」
完全に動きを止めたデスナイトの首筋に、俺とクロエは同時に攻撃を放った。そしてその攻撃はデスナイトの残りHPを消し飛ばずには十分だった。
「グオオォォ……」
デスナイトが断末魔のような声を上げ、崩れ落ちる。
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