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43 挨拶
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朝起きて食堂に行くとお父様とお母様が既に座っていた。久しぶりにお父様に会ったな……。まだ食事も話もしていないのに苦虫を噛み潰したような顔をしている。
「ティア、久しぶりに会えて嬉しいよ。まぁまずは座りなさい」
「はい……」
「休み中に色々あったようで心配していた。だが、同時に成長もしたようで誇りに思うよ。頑張っているね」
「ありがとうございます。お父様」
「とりあえず、話に聞いた冒険者が来る前に朝食を摂ってしまおう」
最初に見たお父様の表情の理由は分からないが、とりあえず急ぎ目に朝食を終えた。そして時間ぴったりに、家のベルが鳴った。
「クロスフェード卿、クロスフェード伯爵夫人様、本日は急な申し出にも関わらず訪問を許してくださりありがとうございます」
「構わない。お互い話したあことも多いだろうから、応接室に案内しよう」
執事長と両親が前を歩いている後ろをレオと俺が続く。横目でレオを見上げると、銀色の髪が輝いて美しかった。
「レオおはよう。今日はいつもの服装と違うね」
そう、いつもの冒険者然とした服装ではなく、綺麗に洗濯された白いシャツに黒いベストと黒いパンツ、グレイのジャケットを羽織っていた。
「ティアのご両親にご挨拶するんだ。ちゃんとした服装でないと失礼だろう?」
ん? 今日は多分愛し子のこととか、レナセール国の反乱の可能性とか、そのせいでリティーダの血を引く俺が危険な状況になるかもしれないことを話すんだよな? そんなに堅くならなくても……と思いながら応接室のソファーに座った。
俺とレオが同じソファーに座り、向かいにお父様おお母様が座った。お茶をテーブルに置いた執事長は扉の前に立った。
「初めまして。プロテヘール公爵閣下アレハンドロ・クロスフェードだ。そして妻のカレン。今日は腹を割ってお話をしよう」
お父様がレオのことを知っていたことに驚いた。いや、密偵が俺をずっと見ていたとしたら、レオンの存在は知っていたとは思うが、ナルカデア王国の公爵だとは分からないはずだ。
「名乗ることが遅くなり申し訳ございません。レオナルド・ジョゼ・ナルカデア・プロテヘールと申します。──やはり、ご存知でしたか」
「あぁ。ナルカデア国とも流通経路があるし、陛下ともお会いしたことがある。一人冒険者となった子どもがいることも聞いている。カレンがリティーダ共和国の血縁であることから昔から気にかけてくださっていた。我が子エルティアにリティーダの血が濃く表れたことは話していないが……」
「陛下はリティーダの愛し子の保護に熱心ですから……。少し盲信的なところもありますし、知ればすぐにナルカデアに連れて行ってしまう可能性があるので、まだ秘密にしておいた方が良いでしょう。今日は他国の情勢と、それに伴うエルティアの保護についてお話したく参りました。因みに『愛し子』のことについてはご存知ですか」
「いや、リティーダ人は皆一様に黒髪と黒目を持ち、不思議な力があることしか知らない。魔力が原因だと言うことは口伝でカレンから伺っている」
俺は口を挟む暇も必要も無く、お父様まレオの会話を聞いていた。向かいに座ったお母様がビスケットやチョコが入ったお皿をスス……と俺の方に押し出してきた。いつも優しく俺を心配しつつも自由にさせてくれるお母様は、今回の件をお父様に一任しているのか、俺と同じく二人の会話に耳を傾けながらお茶を飲んでいる。俺も飲も。
その間にレオからの話はひと段落ついたようだった。かつてリティーダ共和国で起こったこと。いつか現れるかもしれない『愛し子』とその保護魔法、その代償のこと。レナセール国での紛争とガルダニア帝国と繋がりのあるガルダニア派の圧政について。ガルダニア帝国が恐れているリティーダの愛し子の存在が判明した場合に俺に危険が迫る可能性が高いこと。
お父様は深刻そうな顔を歪ませながら息をついた。
「リティーダ共和国について詳しいことが終ぞ分からなかったが、まさかそんなこととは……」
額に親指と人差し指をあてぐりぐりと押している。一気に代理の情報が入ってきたのだ、頭が痛くなるのも無理はない。
「閣下が想像されている通り、私はここ数日レナセール国内における内紛と、次々に平民派の貴族が行方をくらましている件について調べていた。長男のオルフェスからも便りがあり、様子がおかしいと。いつ内戦が始まってもおかしくないと」
「やはり、そうですか」
「詳しい情勢はオルフェスが戻り次第話そう。──で、状況は把握出来たが、貴殿の言う保護とはどういったものかな? ナルカデア王国に連れていくなどと戯言をまさか話すわけではなかろうな」
厳格でありながらも俺にはどこか甘いお父様の言葉と雰囲気に、部屋の中の空気ピリ……と張り詰めた。思わず俺も緊張する。確かに、守る内容としては屋敷から出る時にレオが帯同するくらいで詳しい話はしていない。
「クロスフェード卿に初めてお会いしたにも関わらず、このようなお話を申し出ることをご容赦ください。エルティアさんと、私。結婚を前提にお付き合いすることをお許しください」
俺はびっくりして固まり、お母様は嬉しそうに頬に両手をあて、お父様は俺に似た切れ長の目をより鋭くし、レオを睨んだ。張り詰めた空気がより緊迫し、重くなった気がした。
「ティア、久しぶりに会えて嬉しいよ。まぁまずは座りなさい」
「はい……」
「休み中に色々あったようで心配していた。だが、同時に成長もしたようで誇りに思うよ。頑張っているね」
「ありがとうございます。お父様」
「とりあえず、話に聞いた冒険者が来る前に朝食を摂ってしまおう」
最初に見たお父様の表情の理由は分からないが、とりあえず急ぎ目に朝食を終えた。そして時間ぴったりに、家のベルが鳴った。
「クロスフェード卿、クロスフェード伯爵夫人様、本日は急な申し出にも関わらず訪問を許してくださりありがとうございます」
「構わない。お互い話したあことも多いだろうから、応接室に案内しよう」
執事長と両親が前を歩いている後ろをレオと俺が続く。横目でレオを見上げると、銀色の髪が輝いて美しかった。
「レオおはよう。今日はいつもの服装と違うね」
そう、いつもの冒険者然とした服装ではなく、綺麗に洗濯された白いシャツに黒いベストと黒いパンツ、グレイのジャケットを羽織っていた。
「ティアのご両親にご挨拶するんだ。ちゃんとした服装でないと失礼だろう?」
ん? 今日は多分愛し子のこととか、レナセール国の反乱の可能性とか、そのせいでリティーダの血を引く俺が危険な状況になるかもしれないことを話すんだよな? そんなに堅くならなくても……と思いながら応接室のソファーに座った。
俺とレオが同じソファーに座り、向かいにお父様おお母様が座った。お茶をテーブルに置いた執事長は扉の前に立った。
「初めまして。プロテヘール公爵閣下アレハンドロ・クロスフェードだ。そして妻のカレン。今日は腹を割ってお話をしよう」
お父様がレオのことを知っていたことに驚いた。いや、密偵が俺をずっと見ていたとしたら、レオンの存在は知っていたとは思うが、ナルカデア王国の公爵だとは分からないはずだ。
「名乗ることが遅くなり申し訳ございません。レオナルド・ジョゼ・ナルカデア・プロテヘールと申します。──やはり、ご存知でしたか」
「あぁ。ナルカデア国とも流通経路があるし、陛下ともお会いしたことがある。一人冒険者となった子どもがいることも聞いている。カレンがリティーダ共和国の血縁であることから昔から気にかけてくださっていた。我が子エルティアにリティーダの血が濃く表れたことは話していないが……」
「陛下はリティーダの愛し子の保護に熱心ですから……。少し盲信的なところもありますし、知ればすぐにナルカデアに連れて行ってしまう可能性があるので、まだ秘密にしておいた方が良いでしょう。今日は他国の情勢と、それに伴うエルティアの保護についてお話したく参りました。因みに『愛し子』のことについてはご存知ですか」
「いや、リティーダ人は皆一様に黒髪と黒目を持ち、不思議な力があることしか知らない。魔力が原因だと言うことは口伝でカレンから伺っている」
俺は口を挟む暇も必要も無く、お父様まレオの会話を聞いていた。向かいに座ったお母様がビスケットやチョコが入ったお皿をスス……と俺の方に押し出してきた。いつも優しく俺を心配しつつも自由にさせてくれるお母様は、今回の件をお父様に一任しているのか、俺と同じく二人の会話に耳を傾けながらお茶を飲んでいる。俺も飲も。
その間にレオからの話はひと段落ついたようだった。かつてリティーダ共和国で起こったこと。いつか現れるかもしれない『愛し子』とその保護魔法、その代償のこと。レナセール国での紛争とガルダニア帝国と繋がりのあるガルダニア派の圧政について。ガルダニア帝国が恐れているリティーダの愛し子の存在が判明した場合に俺に危険が迫る可能性が高いこと。
お父様は深刻そうな顔を歪ませながら息をついた。
「リティーダ共和国について詳しいことが終ぞ分からなかったが、まさかそんなこととは……」
額に親指と人差し指をあてぐりぐりと押している。一気に代理の情報が入ってきたのだ、頭が痛くなるのも無理はない。
「閣下が想像されている通り、私はここ数日レナセール国内における内紛と、次々に平民派の貴族が行方をくらましている件について調べていた。長男のオルフェスからも便りがあり、様子がおかしいと。いつ内戦が始まってもおかしくないと」
「やはり、そうですか」
「詳しい情勢はオルフェスが戻り次第話そう。──で、状況は把握出来たが、貴殿の言う保護とはどういったものかな? ナルカデア王国に連れていくなどと戯言をまさか話すわけではなかろうな」
厳格でありながらも俺にはどこか甘いお父様の言葉と雰囲気に、部屋の中の空気ピリ……と張り詰めた。思わず俺も緊張する。確かに、守る内容としては屋敷から出る時にレオが帯同するくらいで詳しい話はしていない。
「クロスフェード卿に初めてお会いしたにも関わらず、このようなお話を申し出ることをご容赦ください。エルティアさんと、私。結婚を前提にお付き合いすることをお許しください」
俺はびっくりして固まり、お母様は嬉しそうに頬に両手をあて、お父様は俺に似た切れ長の目をより鋭くし、レオを睨んだ。張り詰めた空気がより緊迫し、重くなった気がした。
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