極悪令息と呼ばれていることとメシマズは直接関係ありません

ちゃちゃ

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46 学校での変化

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 夢心地で地に足がつかないまま帰宅した。自分の左手にある指輪を見て頬が緩む。家族以外からこういうプレゼントを貰ったこと自体初めてだった。たまに右手の指で指輪に触れていると、レオが「気に入った? 嬉しい? 可愛いな」と言ってくれる。俺の見た目は可愛いタイプじゃないと思うんだけど、レオに言われると嬉しい。
 
 レオに部屋まで送ってもらうと、驚いたことにレオの部屋が隣に用意されていた。なんでも、何かあった時にすぐに助けられるように、とのこと。
 
「レオが俺の家で暮らして、隣の部屋にいるなんて不思議だ……」
「あと一年もしたら二人で暮らすことになるよ」
「え……? あ……」
 
 そうか、学校卒業したらもうすぐ結婚するのか……。今まで婚約者もいなくて、これからも好きな人は出来ないと思ってたけど、レオに会ってから目が回るような変化だと実感する。
 
「二人きりの生活も、楽しみだな……」
「週末はオレの家でゆっくり過ごそう。昨日みたいなことは無理やりしないから」
「昨日……? ………ぁっ……!」
 
 そうだった。昨日俺たちはなんか凄いエロいことをしてしまったんだった。
 
「そうそう、今日はオレの魔力に慣れる練習してないね」
「れ、レオ……」
 
 優しい微笑みを保ったまま、愉快な気持ちを隠そうとしていない目と声に、思わず後ずさる。だが歩幅も腕の長さも一回り違うレオに、簡単に背中を絡め取られてします。
 
「レ……んぅ……」
 
 唇が合わさったと思ったら、すぐに舌を吸われた。俺がレオの名前を呼ぼうとした瞬間だったからすんなりと口内に許してしまった。キスは嫌いじゃないけど、むしろ好きだけど。恥ずかしいし、てろてろになるからちょっと抵抗がある。あ、でも今は自分の家だしレオがいるし、良いかな……。
 レオの甘い唾液をこくりと飲み込むと、思考がどんどん鈍ってくる。
 
「んっ……はぁ……ンンン、ちゅ……あ……」
 
 レオの厚い舌が俺の口内をなぞっていく。
 クチュ……クチュ……。
 与えられる熱に浮かされながら、俺もレオの舌を一生懸命に探し応える。レオの口内に侵入することは出来ず、襲ってくる熱をただ享受する。
 気持ちいい……もっと……。甘美な味にとろけ、レオを味わっていると、いつの間にかベッドの上に寝かされていた。レオが顔から離れ、俺を見下ろした。もっと……甘いの欲しい……。
 
「レオ……もっと。たくさん欲しい。レオの頂戴」
 
 俺はレオを見上げたまま口を開き舌を見せた。レオが目を見開いた瞬間、体重が掛からないように俺の上に乗ってきた。俺の左側の首にレオの鼻が当たる。そのままぎゅうぎゅうと抱きしめてきた。
 
「本当に、真面目で可愛い子がこんな淫らになるなんて、我慢出来るわけないだろ……。でも流石にティアのご実家でこれ以上は出来ない……」
 
 俺の肩にレオの口を押し付けて何か喋っている……。なんか横になると眠くなってきた……。
 
「ティア、もう寝ようか。今日もお疲れ様、頑張ったね。ゆっくりお休み」
「うん……レオも……お疲れ様。ありがとう……」
「こちらこそ、ありがとう。愛しているよティア」
 
 額と唇にチュッという音と共にふにっとした柔らかい感覚がした。目を瞑ったまま、思わず頬が緩んだ。そのまますぐに眠りに落ちていく。
 
「明日から毎晩キスしようね」
「うん……」
 
 夢うつつの中、それでも俺はちゃんと返事をしたのだった。
 
 
 
 クラスメイトside
 
 ザワザワ……。
 
 教室で、ある一人に皆の視線が集中していた。当の本人はそんな分かりやすい注目にも気付いていないのか、ぼんやりと前方を眺めていたかと思うと頬が緩み、切れ長の目尻も垂れ下がる。思い出したかのように真顔になったかと思うと、左の薬指に嵌った指輪をなぞり、微笑む。
 最近メンブルク公爵子息と会話を交わすことになったとはいえ、普段は無表情でいることが多く、プリムローズ侯爵子息に絡まれてもツンケンした態度しか取らなかったあのエルティア・クロスフェードの様子の急変に、教室にいる誰もが興味を惹かれ凝視するも、声を掛ける者はいなかった。
 たった一人を除いて。
 
 フリードリヒ・メンブルク。公爵子息でありながら人格者で、公爵夫人はフリードリヒの弟を産んですぐに儚くなったそうだが、そんな寂しさを感じさせる暇もないくらい、父親である公爵様が子煩悩であるという。高位貴族としては珍しいが、フリードリヒが誰からも慕われていることからも親子関係や家庭環境は良好だったのではないかと思われる。
 
 そんなフリードリヒが最近頻繁に接触し交流しているのが黒い悪魔と恐れられたエルティア・クロスフェードだ。顔立ちは良く、スッキリとした目もスっと伸びた鼻も形の良い薄めの唇も、その小さな顔に綺麗にはまっていて、全体的にカッコ良い雰囲気を出している。そんな容姿と、伯爵子息という家柄であれば誰もがお近づきになりたいと思うはずだが、学校入学時から続く悪い噂と、いつも何かとキール・プリムローズとリアム・ゴードンが傍にいた為に近寄ることが出来無かったのだ。
 エルティアはキールに対していつもつれなく返していたが、キールは誰かがエルティアに近づこうとするとギッと睨んで牽制してきた。二人には確執があると聞いているので、『自分の獲物だ』と思っての行動だと思うが、キールがどちらかと言えば可愛らしい顔立ちだからか全く怖くなかった。むしろ『また黒い悪魔に冷たくされて可哀想、可愛い』と自分を含めたクラスメイトたちは思っていた。まぁそんなぼくたちをリアムが恐ろしい顔で全方向に睨みつけるから何も考えていないフリをした。正直エルティアよりあいつが悪魔だろ……。
 
 フリードリヒがエルティアに挨拶をし、その後何かしら話しているところにキールがやってきた。同じ課題グループになっていたが、今回も一触即発の空気になるだろうか……とクラスメイト一同少し離れた席で見守っていると、和やかに4人(実際はリアムが喋らないので3人)で話し始めた。
 数日前には考えられなかった状況に、教室内は静まり返り固唾を飲んで4人を見つめた。フリードリヒがエルティアに何言か話すと、急に大声を張り上げたエルティアは頬を赤らめ、うなづいた。そんなエルティアを見たキールも何故か頬が赤くなっている。会話の内容は聞こえない。普段より柔和なエルティアの様子は愛らしく話しやすい雰囲気で気になるし、キールは怒っているようだがエルティアを見つめて目を潤ませていて可愛らしい。
 
 皆が二人に注目している中、会話に入っていないリアムが殺気を出して教室内にいる全員に圧を掛けてきた為に、ぼくは見ることも考えることも放棄したのだった。
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