二人の太極図

水妖イヨタ

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一章

狂気の沙汰

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「今までありがとうござました」

「気をつけてな」

僕たちはお寺を出て次の目的地に向かっていた。
そんな時、通知が届いた。

「やっぱり終わったか」

それはボスを攻略した通知だった。
それも、第五十層のボス、最後のボスだ。
一週間の間に全ての階のボスが一人のプレイヤーによって攻略された。

「ボス攻略終わっちゃったな」

「そうですね」

「兄さん、これからどうするの?」

ボス攻略が終わった後のことは何も考えてはいなかった。
だが、メイズさんと話して能力を悪用しようとするものがいることが分かった。
それなら僕たちがすることは、

「レベルティラスのシュアルツシスを潰すことかな」

「え?どうやって?」

「それはまだ決めてない、だけど、能力を回収して悪用しようとしてるなら壊さないと危なくないか?」

「それはそうだけど、どこにあるの?」

「レベルティラスはここから西方向にあります、距離もそう遠くはありませんよ」

「じゃあ、一度行ってみよう」

そう言い僕たちはレベルティラスに向かって進み始めた。
目的地までは半日程度でたどり着いた。
その国は国と言うだけあってすごく大きかった。

「じゃあ、入ってみるか」

中に入ってみると国とは思えないほどに繁栄してはなかった。
国の中は暗く不穏な空気が漂っていた。
出歩いている人は十人程度しかいなかった、その中の一人にこの町の状況を確認してみた。

「あの、すみません、なぜこんなも栄えていないんですか?この世界の王が作った国ならもっと栄えていると思ったんですが」

「あ、最近来た人かね、この国には来ない方がいいぞ」

「え?なぜですか?」

「この国には何十年か前は栄えておった。じゃが、王が突然消えてからこの国は変わった」

そこから今までのことを話してくれた。

「王が消えてから護衛部隊が国を運営し始めた、じゃが、上手くはいかんかった。そこで目を付けたのは能力じゃ、能力を使って他の国も支配して自分たちが王になろうとしておるのじゃ」

「そんなことがあったんですね」

「今護衛部隊は国の中に?」

「今はおらんよ、いつもこの時間は能力を探しに行っておる」

「いつ戻ってきますか?」

「夜の十時、その時間は皆で夕食と結果報告じゃ」

「最後に聞かせてください、その護衛部隊は何人ですか?それと、能力者は何人ですか?」

「護衛部隊の人数は二十人、能力は使用しているところは見えんかった」

「ありがとうございます」

「ねえ、兄さんどうするの?」

「今日の十時に護衛部隊を潰す」

「え?!無茶じゃないですか?」

「能力者がどれだけいるかわからないんだよ?」

「それはそうだけど、この国は護衛部隊のやり方のせいで繁栄してない、いち早く護衛部隊を潰すし、民間人の中からこの国を統率する人を出したほうがこの国の未来のためになると思う」

「まあ、そうだけど」

「とりあえず、宿を探そう」

それから僕たちは宿探しをし、作戦会議をする。
ああ言ったものの、勝てる保証なんてない、だが、潰さないとこの国の未来に平和は無いと思う。

「兄さん、作戦ちゃんと考えてる?兄さんが今日するって言ったんだよ?」

「あぁ、考えてるよ」

今の時間は午後六時、もう少しで作戦を決めなくてはならない。

「あの、私がおとりになるって言うのはどうでしょうか?」

「え?おとり?」

「そうです、私が正面からおとりとしてお城の中に入ります、護衛部隊はみんな私に視線が集まると思います。その隙を見て、後ろから不意打ちを食らわせてください」

「少し危ないがありだな」

「兄さん、本当にいいの?」

「今はこの作戦が一番可能性が高いと思う」

ほんとに危ないと思う。
でも、

「大丈夫です、捕まらないように逃げ回るので!」

「ほんとにいいのか?」

「はい!」

作戦は一様決定した。

午後十時前、護衛部隊だと思われる人たちがお城に帰ってきた。
大きなテーブルの横に置いてある椅子に座っていく、すべての椅子が埋まると僕は陽向に合図をする。
僕たちはお城の後ろに回り込み準備をする。

「あ、あの、私宿を探してこの国に来たんですけど」

正面から陽向が入っていった。予想通りみんな陽向に視線が集まった。
僕は能力を発動し、その隙に...

スパッスパッスパッ

護衛部隊の首をナイフを切り裂いていく、
五、十、十三人自分が死んだとも分からないスピードで倒していく。
十六、十九....そこで気が付いた、一人いない!!

「おい、止まれ」

低いその声で僕は足を止めた。
男は陽向を倒し、妹の首にナイフを当てていた。

「何してんだ?お前?」

「僕たちは能力を悪用するようなやつを野放しに出来ないと思ってな、あと、お前能力者だな?」

「そうさ、俺の能力は身体強化、お前じゃ、俺に追いつけない」

「ほう?それはどうかな?」

「じゃあ、こうしたらどうなるかな?」

そこで男は顔に笑みを浮かべ、首に充てているナイフえお動かし...

「やめろ!」

誤算だった、僕が甘かった、能力を得たからって慢心をしていた。
そこで僕は能力をできる限り全力で発動し...意識が消えた、

「おい、お前何してんだよ」


その声で気づく、俺のナイフを持っている俺の腕が動かない、
そしてさっきまで首に当てていたナイフが無い。

「お前、今何しようとしたか分かってんのか?」

「お、俺は、」

腕を捻りあげられる。

「うぁぁぁぁぁ!」

叫ぶ、この男なんだ?!さっきまでと雰囲気がまるで違う

「おい、お前、俺の妹に何しようとした?」

その声はとても冷たく、声だけで気圧されそうだった。

「質問を変えよう、能力を集めて何しようとしてた?」

「それ、は、能力を使い他の国にある資源、物資全て自分たちの物にしッ」


俺はそこでそいつの首を切り裂いた。
何やってんだよ、全然守れてねぇな、水月。
そして能力を解いた。

僕は目を覚ました、どうやら意識を失っていたらしい、

「ッ、恋月と陽向はッ?!」

「兄さん、私は大丈夫だよ、陽向さんは気絶させられただけみたい」

「誰が助けてくれたんだ?」

「兄さん何言ってるの?兄さんが助けてくれたんじゃん、助けたあと、倒れたけどね」

僕が助けた?覚えがない。

「でも、あの時の兄さんすごく怖かったよ」

「ご、ごめん」

とりあえず、謝っておく。
それにしても僕が助けた?意識を失った状態で?
まあ、みんな無事なら良かった。

それからお城の中から能力の玉を探す。
数十分後、宝箱のような箱の中に入っていた、数は五個。

「この中から二つ選んでくれ、そのほかは置いていく」

「そうですねー、じゃあ、私はこれにします」

陽向はそう言うと緑色の玉を取った。

「じゃあ、私これ」

恋月はグレーの玉を取った。
二人とも能力の玉を使い、

(能力取得)

「やったー!これで能力が使えるー!」

「私の能力は回復でした、恋月さんはなんでしたか?」

「私は、バグ?なんだこれ?」

「僕も分からないな」

これで一様三人とも能力が使えるようになった。
回復、バグ、そして、覚醒。
妙な能力ばっかりだなと思った。

翌日、そのことを国中の人たちに報告すると、大喜びし、感謝された。
僕たちはこの国を出ていくとと、王を国の中から決めることを伝えこの国を去った。
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