ダンジョンマスターは魔王ではありません!?

静電気妖怪

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1章〜異世界の地に立つ者達〜

25話「運命は廻る、回す、マワセラレル」

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 ー???ー

 陽の光が届くこともなく、物音が鳴ることもない空間に1つの存在が起き上がった。

「ーーあっ」

 その存在は違和感を覚えた。

「⋯⋯足りない?いや、いなくなった?⋯⋯あぁ、そうか」

 存在の違和感は気づきに変わった。
 やがて、それは納得に繋がった。

「マルコシアス⋯⋯消えちゃったか」

 『存在』は喪失したものを嘆いているのか。
 『存在』は喪失したものを笑っているのか。
 『存在』は喪失したものを悼んでいるのか。
 『存在』は喪失したものを望んでいるのか。

 どの表現が正しいのか、それは『存在』にもわからないーーいや、忘れてしまっているのかもしれない。

「⋯⋯また、始まるんだね」

 そう呟いて、存在はまた眠りについた。何も変わらない日常を過ごすように。
 昨日と同じ今日が過ぎていき、今日と同じ明日が訪れることに微塵も疑いを持つとはなかった。

 ー異世界某所ー

 その都市は栄えていた。

 中心部には大きな塔。
 それは天まで届くのではないか、と思わせるほどだ。

 そして、塔の周囲には家々が並び、様々な店が競い合い、少し大きめの施設が活動している。
 東西南北、それぞれで担当があるのか雰囲気が異なっているのが特徴だ。

 そんな都市の中にある1つの建物。
 他の建物より一際大きく、酒場のような風貌だが、清潔に保たれ、シンボルには剣と盾と杖が交差していた。

 その建物の最上階には1人の男が机に向かって作業をしていた。

 男は筋骨隆々な肉体と、座っているだけでもわかる大きさ。
 服もその筋肉を邪魔しないように半袖短パンだ。
 渋く見せるためか、髪は短めで髭を短く伸ばしている。

 そんな男が執務をしていると扉がノックされた。

「入れ」

 扉をあけて出てきたのは黒髪を短く揃えた女性だった。

 服の裾ヒラヒラとしているが、白と赤を基調としていて落ち着ついて見える。
 そして、スッと鋭い黒目は冷たさを帯びている。

 そんな美しい女性が数枚の紙がまとめられた物を持って入室してきた。

「ああ?どうした?」
「報告です」
「報告だ?今朝受けたばっかだぞ」
「新たなーー緊急の報告です」
「⋯⋯内容は?」
「新たなダンジョンについてです。予測されていた3ヶ所の内、2ヶ所が発見されました」

 報告を聞いた男は溜息をつき内容を促した。

「発見された2ヶ所の内1つの1回層は見晴らしが良く、動物型の魔物が多いことが確認されています」
「2つ目のは?」
「1回層が暗闇。ダンジョンでは珍しい光源がない層です」
「⋯⋯危険度はどのくらいだと考える?」

 男の質問に女は暫く考え結論を出した。

「どちらも出来たばかりと言う点で評価すると高くはないですね」
「なら、適当に貼り付けとけ」
「わかりました。では、次の報告ですがーー」
「なんだ、まだあるのか?」
「こちらの方が重要です」

 女は少し間を置いてから報告書の内容を述べた。

「先程、3ヶ所の内2ヶ所発見された、と報告しましたが3ヶ所目も一度発見されてはいます」
「一度?どう言う意味だ?」
「移動しているのです」
「⋯⋯なんだと?」
「はい、ダンジョンへの入り口が移動しているのです。それも1日単位で」
「入り口が移動⋯⋯だと?そんな事例、俺は聞いたことないぞ」

 自分の知識外の話をされた男は先程までと聞く姿勢を変えた。

「過去の履歴を調べたところ、二度起きていることがわかりました」
「⋯⋯俺は知らないんだが」
「貴方が生まれる前に起きたことですので仕方ないかと」
「⋯⋯そうか。で、それの結果は?」
「『突発的魔物増加現象スタンピート』が例外なく起きています。それも大規模の」

 男はは勢いよく立ち上がった。
 その反動で椅子は倒れ、机にヒビが入った。

「それはマズイ!急いで入り口を突き止め上級冒険者を送り込め!下手に被害が出れば面倒なことになるぞ!」

 男は声を大にして言った。
 その大きな声に女が耳を手で塞ぐほどに。

「⋯⋯わかっています。すでに手配済みです。五月蝿いので大きな声を出さないで下さい」
「お、おう、すまん。流石だな」
「報告書をおいて置きますので確認してください。では、失礼します」

 そう言って女は部屋を出て行った。

 男は振り返り、窓から見える世界を見た。

 発展し、栄えた都市。
 その更に奥にはーー

「はぁ⋯⋯折角、世界が落ち着いてきたっていうのに」

 壊れた住宅、倒れた木々、血塗られた死体が山を作っていた。
 そして、それらを包む大地の更に先には海が大きく広がっていた。
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