ダンジョンマスターは魔王ではありません!?

静電気妖怪

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1章〜異世界の地に立つ者達〜

39話「平穏と窮地の表裏1」

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 ローブの人物が投げた煙玉が収まりレイジ達の視界が開けた。
 倒した侵入者の死体はダンジョンが吸収してしまい形は残っていないが、そこには間違いなく勝利した実感が残っていた。

 そして、初陣を華々しく飾れて安堵したレイジの元にレイスが近寄ってきたーー

「ただ、いま⋯⋯ます、たー」
「おう、おかーー何を持ってるんだ?」

 ーーガレスの首を持って。

「これ⋯⋯たお、した⋯⋯それ、と⋯⋯お、れい」

 ローブの下の表情はわからない。
 ただ、感謝されて嬉しく思わない人はいないだろうーーお礼の品が人の首でなければ。

「⋯⋯取り敢えずそれは捨てなさい。で、何のお礼だ?」
「たた、かい⋯⋯さぽー、と⋯⋯」
「俺がか?いつ?」
「ず、っと⋯⋯」

 身に覚えのないレイジは、ハタと首を傾げた。
 そこに、何かを察したパンドラが口を挟んだ。

「貴方様、今回の戦闘の間ずっと相手の魔力を阻害していたことに気づいていますか?」
「え? そうなのか?」
「はい。恐らく、餓鬼様の力の一旦だと思われます」

 その言葉にレイジは驚いた。
 そして、ある一場面を思い出した。それは、パンドラとの戦いの時、餓鬼は『暴食』を使ってパンドラの『魅了』を防いだ時だ。

「そういえば、パンドラの魔力が甘い味だって⋯⋯」
「ええ、おそらく『暴食』により相手の攻撃を捕食した際に味覚を感じるのだと思います」
「そうか!確かに、今回の戦闘中ずっと甘い味がしたな。そういうことだったのか⋯⋯!」

 今回の戦闘は思った以上に収穫が多かった。
 特に、『暴食』が無意識に発動していたことは確実にレイジの戦闘へ貢献できるということだ。

「⋯⋯餓鬼、本当にありがとう」

 自然とレイジの口からは餓鬼への感謝が溢れた。
 それは、餓鬼の思いは確実に受け継がれている証拠でもある。

「⋯⋯やはり、彼の方が羨ましいですね」
「⋯⋯そう、だね」

 そんなレイジを見て二体の魔物は羨望と嫉妬を溢すのだった。

 ◾️◆◾️◆◾️◆◾️◆◾️◆◾

 レイジ達が餓鬼に感謝しているところに黒い影が近ずいてきた。

「ただいま戻りましたぁ、お兄様ぁ」
「お、ファントムおかーーえ?」

 レイジは振り返った。
 それはもう、風を割くほどの速さで。

 そこにはレイジの思い描く黒いマネキンのような存在はなかった。

 居たのは、小学低学年くらいの身長の女の子だった。
 地面まで伸ばした黒いストレートの髪、瞳は大きく髪と同色の黒。
 更に、裾には若干のフリルをあしらった黒いワンピースをなびかせ、手にはレイジをモチーフにしたような人形を持っていた。

「どうかしましたかぁ?」

 そう言って目の前にいる少女は首を傾げた。

「お前⋯⋯ファントムか?」
「はい、そうですよぉ。もしかしてーー」

 目の前にいる少女は気の抜けるような声と、笑顔で話していたがーー

「ーー私のこと⋯⋯忘れちゃったのですか?」

 ーー次の瞬間、瞳の奥の光が消えていた。

 その冷たく、何処までも貫いてしまいそうな瞳を向けられたレイジの背中には冷たいものは走った。

「嘘ですよね?冗談ですよね?お兄様が私を見間違えるなんて。お兄様が私に気づかないなんて。そんな事あるはずがありませんよね?あって良いはずがありませんよね?」

「ひっ⋯⋯」
「お兄様?私の声が聞こえてますか?どうして後退りなさるのですか?どうして返事をしてくれないのですか?どうして目を逸らすのですか?どうしてですか?どうしてなんですか?そんなに怖がらなくても大丈夫ですよ?ねぇ?ねぇ?」

 その圧迫感に、威圧感にレイジはある種の恐怖と危機を感じた。

「あ、ああ! 勿論冗談だ。ちょっとファントムの成長に驚いただけだ!ははははっ」

 全く笑えていないぎこちない笑顔と無理矢理な笑い声を上げた。
 今のレイジにはこれが精一杯だった。今まで感じたことのない恐怖を目の前に裏返った声であってもこれだけ言えれば満足だった。

「まぁ!そうでしたの?それでしたら無理もありませんねぇ」

 そんなレイジの反応に少女は頬を朱に染め照れていた。

「でしたら、お兄様ぁ」
「な、なんだ?」
「私の姿⋯⋯どうでしょうかぁ?可愛いですかぁ?お兄様好みに進化できていますかぁ?」

 少女は照れながらレイジを上目遣いに見つめ聞いてきた。
 恥じらいの少女は可愛らしい、世間ではそう言った風潮があると思っているが疑問を持たざるを得ないーー

 ーー俺の好みはいつからロリになっているんだ?、と。

 勿論、そんなことは口にできなかった。
 だって、怖いから。

「あ、ああ。凄ぇ可愛いぜ!」

 レイジはサムズアップしながらそう言った。
 レイジは頑張った。だって怖いから。

「で、でしたらぁ」

 レイジの応えてに更に照れた少女は身体をくねらせながら次なる試練を与えてきた。

「私にお名前をください、お兄様ぁ!」
「⋯⋯えっ?」

 この瞬間、レイジの中の時間が止まった。
 だが、そんなことは目の前の少女が許さなかった。

「どうかしたのですか?私はお兄様にお兄様好みの名前を付けて欲しいだけです!つけて下さりますよね?だってお兄様の為にお兄様が好んでくれるような姿に私はなったのですから。お兄様が私を嫌うはずなんてありませんよね?あって良いはずがありませんよね?どうして固まってるのですか?あっ、私の名前を考えてくださっているんですね?そうですよね?そうに違いありませんよね?」

 レイジに選択権は無かった。
 そもそも、一部業界を除きこんな状況に立たされれば困る。色々な意味で。

 そして、レイジはついパンドラに視線を送ってしまった。

「私達魔物は進化すると名前を欲しがる欲求にかられるのですよ」

 パンドラは笑顔でそう答えた。

「お願いしますね、お兄様ぁ」

 視線を戻せば黒髪の少女が笑顔でそう言った。
 こうしてこの後、1時間に及ぶレイジの試練が続いた。
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