ダンジョンマスターは魔王ではありません!?

静電気妖怪

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2章〜光は明日を照らし、鬼は大地を踏みしめ、影は過去を喰らう〜

51話「這い寄る影、蠢く破滅、その先に5」

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「では、もう一度手順を確認しましょう。まず、私が入り口から直線状に砂漠を裂きます」
「で、お姉ちゃんが付けた攻撃に沿って私が出口を見つけてくればいいんだよね?」
「ええ。見つけられても、見つけられなくても必ず戻ってくるのですよ?」
「はいはーい」
「戦闘は必要ありませんからね? 最悪、見つけることを断念しても構いません」
「わかってるって」
「そうですか。では、参りましょう」

 そして、四人はダンジョンの中に一歩踏み出した。

 ◾️◆◾️◆◾️◆◾️◆◾️◆◾

 ダンジョンに入るとそこは少し変わった砂漠だった。

 大地は乾き全て砂と化し、生える植物は緑をつけることなく痩せ細り、空は赤黒く染まり、頂点には赤い太陽が強く照っていた。

「これは⋯⋯」
「あまり、気分のいい場所ではないな」

 四人はそれぞれ苦悶の表情を浮かべていた。
 職業柄、汚いものを見たり触れることはあったもののこの居心地の悪さという意味では慣れないようだ。

「では、最後にもう一度手順を確認しましょう。まず、私がここから直線状に砂漠を裂きます」
「で、お姉ちゃんが付けた攻撃に沿って私が出口を見つけてくればいいんだよね?」
「ええ。見つけられても、見つけられなくても必ず戻ってくるのですよ?」
「はいはーい」
「戦闘は必要ありませんからね? 最悪、見つけることを断念しても構いません」
「わかってるって」

 脳筋勢は気づいていないが、本来このような最悪の環境下で単独行動するのは自殺行為でしかない。
 マーダとラルカも気づいてか目を見合わせるが何も言わない⋯⋯もし自分に白羽の矢が立ったらそれこそ自殺行為だから。

「では、早速始めましょう。もうダンジョンマスターは感づいているでしょうし」
「ああ」
「うむ」

 心の中でロートに合唱する二人をよそに、ブラウは背中に背負っていた大鎌を降ろした。
 そして、腰を落とし半身を出し鎌を後ろに構える。

「ふぅ⋯⋯ーーハアァッ!」

 一度溜まっていたものを吐き出し、気合いと共にブラウは鎌を下から上に振り抜いた。

 一閃。
 振り抜いた鎌は風の刃を作り出し、それは暴風を撒き散らしながら砂漠を割った。

「うお!?」
「くっ!」
「あー」

 暴風にマーダとラルカは吹き飛ばされそうになるのを耐えていた。
 唯一、長い付き合いのロートは瞬時に背中の金棒を盾に暴風を防いでいた。

 そして、暴風によって撒き散らされた砂埃が収まるとーー

「マジか⋯⋯」
「これは⋯⋯」

 ーー砂漠が左右に割れていた。
 砂漠よ、割れろと言わんばかりに一直線に裂けていた。裂けた先はどこまでも遠く、その端を視界が捉えることができない程にだ。

「ロートッ!」
「はーい!」

 ブラウに呼ばれたロートはすぐに金棒を背負い、割れた砂漠に沿って走り出した。

 その走り姿はまるでつむじ風。
 筋力にものを言わせた走りは一歩毎に砂場を抉りちょっとした爆発を起こしていた。

「⋯⋯.これはまあ、何というか⋯⋯流石『鬼姉妹』ってところか?」
「ああ。私もここまで派手なことはできんな⋯⋯」
「では皆さん、ロートが帰ってくるまで休憩としましょうか」
「いいのかそれで⋯⋯」

 慣れた手つきで休憩の段取りをとるブラウ。もはや呆れて物も言えない二人は文句ひとつ言うことなく手伝うのだった。

 ◾️◆◾️◆◾️◆◾️◆◾️◆◾

 ブラウ達が休憩を始めて一時間ほどにロートが帰って来た。

「ただいまーお姉ちゃーー何やってるの!?」
「おかえり、ロート」

 帰ってきたロートが目にしたのは華やかに休憩をしている三人の姿だった。
 全員がお茶の入ったティーカップを片手にお茶菓子を摘んでいる。

「お、おお。早かったな⋯⋯」
「そ、そうだな⋯⋯」

 その現場を見られたマーダとラルカは居心地が悪そうにそう言った。
 それもそうだろう。自分は必死に走り回っていたのに待っていたのは優雅にお茶会をしている仲間たちの姿だ、ブチギレられても文句は言えない所業である。

「⋯⋯お姉ちゃん?」

 ロートは振り返り、主犯であると察した姉のブラウへ目を向けた。
 その目はさながら鬼を彷彿させるほどに殺意を宿しながら。

「ロートもお疲れ様。こっちへ来てどうだったか教えて」
「そうじゃないでしょお姉ちゃん! 私が頑張っている間に何してるのよ!」
「何って休憩以外に何が見えるの?」

 烈火の如く怒り狂うロート。しかし、ブラウは澄まして冷静だった。
 その温度差がさらにロートの怒りに油を注ぐ。

「休憩!? そうじゃなくてアイスは!? 果物は!? かき氷は!?」
「パフェはいらないのかしら?」
「いるよ! どこにあるの!」

 怒る視点がそこなのか、とは誰も言わない。

「ないわよ」
「ないの!? なんで!?」
「帰ったら作るって約束でしょ?」
「帰って来たじゃん!」
、帰ったらよ」
「ええ!? だ、騙したな!」
「騙してないわよ。大体、こんな機材も、材料もない場所で作れるわけがないでしょ?」
「グヌヌ⋯⋯」

 ぐうの音も出なくなってしまったロート。
 確かにそんな風に言っていた気もするが、そもそもこんな場所でアイスもかき氷もパフェも作れるはずもないと納得してしまう。

 そもそも、怒る場所はそこではないのではないか?とは誰も聞かない。本人が気づかないのならそれも幸せなのだ。

「で、出口は見つかったの?」
「⋯⋯⋯⋯⋯⋯ぁった」
「ロート?」
「あったの! あったって言ってるでしょ!」
「そう」

 ロートはいい様に使われたことを根に持ちながらもブラウの問いに答えた。

「なあ、この姉妹っていつもこうなのか?」
「あ、ああ。私が知ってる限りではこの様な現場は度々見たぞ」
「⋯⋯苦労してるな妹ちゃん。今度おじさんが何か買ってあげようかな」
「⋯⋯犯の数を増やすなよ」

 マーダは憐憫の眼差しを向ける。ラルカに疑惑の眼差しを向けられていることからは眼を逸らしながら。

「それでは、行きましょうか。ロート、案内して」
「⋯⋯はぁい」

 ブラウの言葉にロートは不貞腐れながら、渋々と答えた。
 こうして渋りながらも従っているあたり姉への信頼は高いのだろう⋯⋯服従なのかもしれないが。

 何はともあれ、四人は再度ダンジョンに足を踏み入れた。
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