ダンジョンマスターは魔王ではありません!?

静電気妖怪

文字の大きさ
58 / 106
2章〜光は明日を照らし、鬼は大地を踏みしめ、影は過去を喰らう〜

58話「湧き立つ希望、溢れる光、その後に6」

しおりを挟む
 パンドラ は レイジ に助けられた時、歓喜に震えていた。
 しかし、レイジ と ラルカ の斬り合いが続けば続くほど喜びは薄れ、次第に後悔に染まっていった。

(なにを⋯⋯なにを私は喜んでいるのですか? 私は配下⋯⋯ですのにダンジョンマスターである貴方様が代わりに戦っているのですよ?)

 いつの間にか震えは止まっていた。
 しかし、切られた左腕や太腿の血が止まらない。痛みが止まらない。動くことができない。

(私は何をしているの? 動かなくては、戦わなくては)

 無理に動かそうとするが一度抜けた力が戻ることはなく反応が無い。

(動いて、動いて下さい!)

 残る右手で切られた右足を殴りつけるも結果は変わらなかった。

「うぅ⋯⋯どうして私はこんなにも弱いのですか⋯⋯」

 溢れ出した言葉は普段の彼女からは見られないほどか細く、弱々しかった。

 ◾️◆◾️◆◾️◆◾️◆◾️◆◾

 レイジ と ラルカ は互いに脳内での戦闘シミュレーションが終わり、構えをとった。

「ハッ!」

 先に動いたのは ラルカ だった。その一足で離れていた距離を縮め レイジ に差し迫った。

「うらっ!」

 しかし、その接近はレイジが妖刀の蛇腹を伸ばすことで中断させられ、さらにレイジが下がることで距離を戻した。結局、間合いは元に戻り中距離まで伸ばすことができるレイジがやや優勢になってしまった。

「⋯⋯本当に面倒な剣だ」
「応用が効く便利な剣と言って欲しいね」
「フン、そんな物は剣ではなく鞭ではないか」

 そう言って、ラルカ は再度構えを取り同じように レイジ に迫った。レイジ も先ほどと同様に蛇腹を伸ばす。
 しかしーー

「何度も通じると思うな!」

 ーーラルカ は光魔法で片足分の足場を作り、それを蹴り妖刀を躱しつつ、レイジ に更に迫った。

「マジかよ!?」

 ラルカ は何度も見たその動きに対応し始めた。
 その突然の対応に レイジ は妖刀を手元に戻す。

「そに動き、先ほど見たぞ!」

 自由意志を持つ妖刀の刃はレイジを囲うように舞う。まるで、一枚の布でできた衣のように強固な守りを作ろうとする。
 しかし、想定していたラルカの方が対応が早かった。一寸の隙間に自身の剣を差し込み妖刀の回る方に沿う様に高速で剣先を回し、振り抜いた。

「ハッ!」

 巻き技。
 力に沿った ラルカ の巻き技は伸びた妖刀を自身の剣に巻き取り レイジ から妖刀を奪った。

「これで私の勝ーー」
「いいや、お前の負けだ」

 振り抜き、ようやく魔力を吸収する原因を取り除けたと勘違いしたラルカは無防備となっていた。
 この瞬間をレイジは待っていた。急接近し、その距離は目と鼻の先ほどになる。絶対に避けることのできない間合い。しかし、近すぎて手を振るうことすらできない0距離の間合い。

「喰らえ」

 レイジは大きく口を開ける。向けられたラルカは唖然とするが、次の瞬間には目を見開いた。色彩を吸い込むような虚空が目の前に広がっていたのだ。そして、この瞬間に自身の間違いを悟る。

(魔力を吸っていたのはこの刀ではないっ?!)

気付くのが遅かった⋯⋯遅すぎた。
そして、虚空は吸い込むだけでなく吐き出すこともできることに気づいたのもこの時だった。口元から光が見える。それは見覚えのある光。ラルカが見せた恐怖の剣の光。

「そ、その光はーー」

 ラルカ が光の正体に気づき驚愕する。そして、それを嘲笑うかのように レイジ は派きだす。

 一閃。
 不協和音と共に放たれた一条の光。

 その光は ラルカ の腹部を消失させ、広場の壁を抉った。光によってまった砂が収まればそこにはーー

「ア⋯⋯ぁ⋯⋯」

 ーー声という声も出せず倒れ伏した ラルカ の姿があった。

「はぁ⋯⋯はぁ⋯⋯」

 レイジ の口元には先程の魔力はかけらも残っておらず、ただ、疲労による荒い呼吸が通り抜けるだけだった。

「なんとか⋯⋯倒せた」

 レイジ は ラルカ を一瞥し、その姿を確認し安堵した。そして、ラルカ の剣に巻き取られている妖刀に近づき、解いた。

(上手く行ったみたいやな、旦那)
「ああ、お陰でこっちは疲労困憊だ」

 レイジ は僅かな安心をした。
 そしてーー


「貴方様後ろですッ!」


 ーーその安心は大いなる隙を生んでしまった。

「ーーえ?」

 パンドラ の叫びにも似た声が響き渡った。

 レイジ は反射的に振り向いた。その先にあった光景はーー


「アヒャヒャヒャぁ!」


 ーー狂気的な笑い声をあげる一人の少女が大きな金棒を振りかぶっていた。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

【完結】捨て去られた王妃は王宮で働く

ここ
ファンタジー
たしかに私は王妃になった。 5歳の頃に婚約が決まり、逃げようがなかった。完全なる政略結婚。 夫である国王陛下は、ハーレムで浮かれている。政務は王妃が行っていいらしい。私は仕事は得意だ。家臣たちが追いつけないほど、理解が早く、正確らしい。家臣たちは、王妃がいないと困るようになった。何とかしなければ…

雷王、大いに懊悩す~ラスボス魔王、使命を果たして元の世界に戻りたくない異世界転移チート勇者によって全力で延命させられるの巻~

朽縄咲良
ファンタジー
 ――「要するに、アンタには死なれちゃ困るんだよ。俺が、この異世界で幸せな一生を送って、天寿を全うするまで、な」  魔族を統べる魔王イラ・ギャレマスは、自身の城へと攻め込んできた“伝説の四勇士”の三人、ジェレミィア・ファミィ・エラルティスを、その圧倒的な力を以て圧倒する。  残るは、黒髪黒目の冴えない男――シュータ・ナカムラのみ。  だが……シュータは、魔法陣で三人の仲間を魔王城の遥か彼方へと吹っ飛ばし、ただひとりで魔王と対峙する。  ――そして、二十分後。  不様に大理石の床に這いつくばっていたのは、魔王ギャレマスの方だった。  シュータの繰り出す圧倒的なチート攻撃の前に為す術もないギャレマスは、自身の敗北と迫りくる死を覚悟するが、そんな彼に対し、シュータは不敵な笑みを浮かべながら、意外な提案を持ちかけるのだった――。 「なぁ、魔王。ここはひとつ、手を組もうぜ……!」  『地上最強の生物』だが、めっぽうお人好しで、バカが付くくらいに娘の事を溺愛している中年オヤj……ナイスミドル(忖度)の魔王が、反則級のチートマシマシ異世界転移勇者をはじめとした周囲の者たちに翻弄されまくるコメディファンタジー、ここに開幕!  哀れな魔王の、明日はどっちだ……? (表紙イラストは、ペケさんから戴きました) *小説家になろう・ノベルアッププラスにも、同作品を掲載しております。

『辺境伯一家の領地繁栄記』序章:【動物スキル?】を持った辺境伯長男の場合

鈴白理人
ファンタジー
北の辺境で雨漏りと格闘中のアーサーは、貧乏領主の長男にして未来の次期辺境伯。 国民には【スキルツリー】という加護があるけれど、鑑定料は銀貨五枚。そんな贅沢、うちには無理。 でも最近──猫が雨漏りポイントを教えてくれたり、鳥やミミズとも会話が成立してる気がする。 これってもしかして【動物スキル?】 笑って働く貧乏大家族と一緒に、雨漏り屋敷から始まる、のんびりほのぼの領地改革物語!

捨てられた前世【大賢者】の少年、魔物を食べて世界最強に、そして日本へ

月城 友麻
ファンタジー
辺境伯の三男坊として転生した大賢者は、無能を装ったがために暗黒の森へと捨てられてしまう。次々と魔物に襲われる大賢者だったが、魔物を食べて生き残る。 こうして大賢者は魔物の力を次々と獲得しながら強くなり、最後には暗黒の森の王者、暗黒龍に挑み、手下に従えることに成功した。しかし、この暗黒龍、人化すると人懐っこい銀髪の少女になる。そして、ポーチから出したのはなんとiPhone。明かされる世界の真実に大賢者もビックリ。 そして、ある日、生まれ故郷がスタンピードに襲われる。大賢者は自分を捨てた父に引導を渡し、街の英雄として凱旋を果たすが、それは物語の始まりに過ぎなかった。 太陽系最果ての地で壮絶な戦闘を超え、愛する人を救うために目指したのはなんと日本。 テンプレを超えた壮大なファンタジーが今、始まる。

バーンズ伯爵家の内政改革 ~10歳で目覚めた長男、前世知識で領地を最適化します

namisan
ファンタジー
バーンズ伯爵家の長男マイルズは、完璧な容姿と神童と噂される知性を持っていた。だが彼には、誰にも言えない秘密があった。――前世が日本の「医師」だったという記憶だ。 マイルズが10歳となった「洗礼式」の日。 その儀式の最中、領地で謎の疫病が発生したとの凶報が届く。 「呪いだ」「悪霊の仕業だ」と混乱する大人たち。 しかしマイルズだけは、元医師の知識から即座に「病」の正体と、放置すれば領地を崩壊させる「災害」であることを看破していた。 「父上、お待ちください。それは呪いではありませぬ。……対処法がわかります」 公衆衛生の確立を皮切りに、マイルズは領地に潜む様々な「病巣」――非効率な農業、停滞する経済、旧態依然としたインフラ――に気づいていく。 前世の知識を総動員し、10歳の少年が領地を豊かに変えていく。 これは、一人の転生貴族が挑む、本格・異世界領地改革(内政)ファンタジー。

最難関ダンジョンをクリアした成功報酬は勇者パーティーの裏切りでした

新緑あらた
ファンタジー
最難関であるS級ダンジョン最深部の隠し部屋。金銀財宝を前に告げられた言葉は労いでも喜びでもなく、解雇通告だった。 「もうオマエはいらん」 勇者アレクサンダー、癒し手エリーゼ、赤魔道士フェルノに、自身の黒髪黒目を忌避しないことから期待していた俺は大きなショックを受ける。 ヤツらは俺の外見を受け入れていたわけじゃない。ただ仲間と思っていなかっただけ、眼中になかっただけなのだ。 転生者は曾祖父だけどチートは隔世遺伝した「俺」にも受け継がれています。 勇者達は大富豪スタートで貧民窟の住人がゴールです(笑)

第5皇子に転生した俺は前世の医学と知識や魔法を使い世界を変える。

黒ハット
ファンタジー
 前世は予防医学の専門の医者が飛行機事故で結婚したばかりの妻と亡くなり異世界の帝国の皇帝の5番目の子供に転生する。子供の生存率50%という文明の遅れた世界に転生した主人公が前世の知識と魔法を使い乱世の世界を戦いながら前世の奥さんと巡り合い世界を変えて行く。  

貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。

黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。 この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。

処理中です...