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4章〜崩れて壊れても私はあなたの事を——〜
78話「崩壊の影1」
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一振りで数人の死者と負傷者を生み出す レイジ の蛇腹剣。しかし、それも永遠にとはいかない。そこに レイジ は危機感を感じていた。
今は順調に距離を取れているがいずれは体力に限界が訪れる。しかし、兵士や冒険者達は負傷した先から下がり、回復を繰り返している。
これでは全員を亡き者にするまで レイジ の体力は削られ続けてしまう。
(クソッ! これじゃあジリ貧だ)
レイジ の体力が先か、相手の回復が尽きるのが先か。言葉に出せば抱えている ゼーレ に不安を感じさせてしまう⋯⋯と言うより、口に出す余裕すらもない。
(何か、何かないのか⋯⋯!)
周囲を見渡し使えそうなものは無い。
逃走経路を考えるが、周囲を囲う人の層が厚すぎてとても突破できそうな気がしない。
(これが妖刀なら話は変わったんだが⋯⋯ん?)
無い物ねだりをするレイジだったが、行動を起こすよりも先に敵側に変化が訪れた。
(兵士達が引いた? 冒険者も? 何故だ?)
攻めに攻めいていた兵士が レイジ を逃さないようにジリジリと後退を始めたのだ。そして、兵士の行動に反応して冒険者達も似たように後退する——まるで籠の中の鳥を逃さないように。
(何だこの感じ⋯⋯なにか来るのか?)
圧倒的物量がなせる業を捨ててまで作り出すこの状況に レイジ は困惑する。
だが、その答えは直ぐにやって来た。
後退し、円陣を組む兵士達の間から男女二人の計四人の兵士が出て来た。どれも一般兵とは違う鎧の装飾、マントから別格であることがわかる。そして、その中で一人だけ一際華美な装飾をしている男がいる。
一方、冒険者側からも同じで出てきたのは三人。
眼鏡を掛けどこか妖精のような感じを彷彿させる服を纏う女性、コート型の装備を纏う体格の大きい中年の男、そして——
「お姉ちゃんの仇⋯⋯!」
身の丈の倍はある大金棒を構える赤髪金目の少女——ロート・ヴァオレットが現れた。
全員を見渡したレイジは直感した——強い、と。
一人なら倒せる。
二人なら⋯⋯まあ、何とかなる。
だが、三人を相手どるのは厳しく、四人となれば危険だと感じるほどに。
そんな風に冷たいものを感じる レイジ に冒険者側に立っている男から声が掛けられた。
「よくもまあやってくれたもんだな」
声のかけ方は近所にいるオジサンといった雰囲気だが向ける眼差しは明らかに違った。一切の動作を警戒し、何かあれば即座に動こうとするだろう。
「俺もあまり望んでいなかったんだがな」
だが、気圧されることもなく レイジ は答えた。この程度の殺気はダンジョンの中では日常茶飯事であったから。
「殺す前に一つ聞いていいか?」
「殺されるつもりはないがな」
「へえ、この状況でそんな口がきけるとは大したもんだ。聞きたいのは何でこの町にノコノコやって来たんだ?」
男の質問は最もだろう。
本来ダンジョンから出る必要のないのがダンジョンマスターなのだから。
だが、レイジ には理由があった。その理由を言うかどうかは別としてダンジョンから出る必要があった。
「⋯⋯」
「何だ、だんまりか?」
故に困った。言って何か変わるのか? 何ができるのか?下手に言えば的に情報を渡すだけだ。しかし上手くいけば何かしらの情報が手に入るのでは?
そう自分の中で問答するのだ。だから——
「俺たちは マーダ を追っている。マーダ の居場所を知っているか?」
レイジ は直球で返答した。
「マーダ⋯⋯?」
「ボールス、這い寄る影の事だよ」
「ああ! あの暗殺ギルドの幹部か!」
上手く思い出せずにいたボールス に ロート が助け舟を出した。
ボールス は突っかかって居た物が取れてスッキリした様子で手を叩いた。
「マーダね。知っているわけじゃないが、知らないわけでもないな」
「それはどっちなんだ?」
「さぁってどうか——」
「ボールス!」
ボールス は軽い態度で返そうとするがそれを遮る声が大きく上がった。
「下らん話をしている場合ではない! さっさと片付けるぞ」
声をあげたのは兵士側にいた四人のうちの一人、副団長だった。ボールスの前座のような下りにイラついている様子だ。
「世間話はそのくらいにしなさい!諸悪の根源がいつまでものさばられては、我々のメンツが立たないのだよ」
「副団長の言う通りです!」
「そういうわけぞ」
「いやー、恨みはないんだよ? あれ? 諸悪の根源だから恨みあるのかな?」
四人の兵士達がそれぞれ武器を構えた。
副団長は一本の西洋剣を、共感の声をあげた男は二本の西洋剣を、女性二人は鞭と杖を。
「ま、そう言うわけだ。お前の質問に答えて欲しけりゃあこの状況をどうにかする事だな」
「⋯⋯無駄話はいいから早くしねぇか」
「はぁ、相変わらず冷たいねぇ ネビラちゃんは」
ボールス は両刃斧を、ボールスを窘めた女性——ネビラ は自然体の構えを取った。
そして、全員の戦闘態勢にその場の緊張が一気に最高点へ到達する。
誰かを守るためか
誰かを救うためか
誰かを悼むためか
誰かを殺すためか
そして——己の願いを叶えるためか。
「お姉ちゃんの——」
真っ先に動いたのは ロート だった。
いつの間にか行われていた変化——鬼化によって強化された身体能力をもってして音の壁を超える。爆音と暴風が巻き起こる中狙われたのはレイジの頭部。
「仇ッ!」
フルスイングで振られた大金棒は一瞬前まで レイジ がいた場所を通り過ぎた。
「なっ!?」
「お返し、だ!」
しゃがみ込み大金棒を避けた レイジ は ロート の顎を狙い回転蹴りを返した。しかし——
「『反発』」
短く唱えられた言葉がロートの窮地を一瞬で変えた。
レイジ の回転蹴りは確かに ロート の顎を捉えていたが、突如その距離が開いたのだ。結果、レイジ の蹴りは空を切り、ロート は距離を取りネビラ の元に着地した。
「今のは一体⋯⋯?」
「『反発』」
「またか!?」
困惑する レイジ に悩む余裕を与えずに短い言葉が告げられた。
レイジ の体は地面から離され宙を舞った。その高さは3mを超えただろう。
「これは⋯⋯重力か!? なら!」
二度受けた事でその正体が何らかの魔法であり、重力に関係したものではないかと レイジ は感じた。しかし、一瞬の猶予も与えることなく次の攻撃が仕掛けられる。
「『白銀の世界』」
レイジ に次の行動をさせまいと兵士側で杖を構えた女性が一つの魔法を放った。
呪文が唱えられた瞬間、レイジ の直下から巨大な氷の柱が飛び出た。氷の柱は伸び、宙を舞う レイジ を包み込んだ。
「『極力の世界』」
ダメ押しとばかりにさらなる呪文が唱えられた。
唱えられた瞬間、氷の柱は一瞬にして圧縮され、崩れ粉々に砕け散った。残ったのは砕け散った氷の残骸は積もり、山になった。かなり大きなその山はまるで墓場のようだ。
「終わった? 終わったよね?」
「上級魔法を二つだぞ。流石に生きてねぇだろ」
「⋯⋯」
呪文と唱えた女性二人が呟く中、ロートだけはジッと氷の山を見つめていた。そして——
「危ねえ⋯⋯」
その呟きと同時に氷の山は一瞬にして消滅した。
一滴の水を残す事なく消滅した氷の山の中心地には レイジ が ゼーレ を片手で抱きかかえた状態で立っていた。
「な、なぜ? なんでかな?」
「おいおい⋯⋯こりゃ、マジかよ」
「こ、これは一体⋯⋯?」
「⋯⋯やっぱり」
様々な場所で驚きの声が上がる。そんな中、ロートだけは納得の言葉を溢した。
「アイツには⋯⋯ダンジョンマスターには魔法が効かない!」
ロートが告げた言葉は希望か絶望か。戦いは次なる段階へと上がっていった。
今は順調に距離を取れているがいずれは体力に限界が訪れる。しかし、兵士や冒険者達は負傷した先から下がり、回復を繰り返している。
これでは全員を亡き者にするまで レイジ の体力は削られ続けてしまう。
(クソッ! これじゃあジリ貧だ)
レイジ の体力が先か、相手の回復が尽きるのが先か。言葉に出せば抱えている ゼーレ に不安を感じさせてしまう⋯⋯と言うより、口に出す余裕すらもない。
(何か、何かないのか⋯⋯!)
周囲を見渡し使えそうなものは無い。
逃走経路を考えるが、周囲を囲う人の層が厚すぎてとても突破できそうな気がしない。
(これが妖刀なら話は変わったんだが⋯⋯ん?)
無い物ねだりをするレイジだったが、行動を起こすよりも先に敵側に変化が訪れた。
(兵士達が引いた? 冒険者も? 何故だ?)
攻めに攻めいていた兵士が レイジ を逃さないようにジリジリと後退を始めたのだ。そして、兵士の行動に反応して冒険者達も似たように後退する——まるで籠の中の鳥を逃さないように。
(何だこの感じ⋯⋯なにか来るのか?)
圧倒的物量がなせる業を捨ててまで作り出すこの状況に レイジ は困惑する。
だが、その答えは直ぐにやって来た。
後退し、円陣を組む兵士達の間から男女二人の計四人の兵士が出て来た。どれも一般兵とは違う鎧の装飾、マントから別格であることがわかる。そして、その中で一人だけ一際華美な装飾をしている男がいる。
一方、冒険者側からも同じで出てきたのは三人。
眼鏡を掛けどこか妖精のような感じを彷彿させる服を纏う女性、コート型の装備を纏う体格の大きい中年の男、そして——
「お姉ちゃんの仇⋯⋯!」
身の丈の倍はある大金棒を構える赤髪金目の少女——ロート・ヴァオレットが現れた。
全員を見渡したレイジは直感した——強い、と。
一人なら倒せる。
二人なら⋯⋯まあ、何とかなる。
だが、三人を相手どるのは厳しく、四人となれば危険だと感じるほどに。
そんな風に冷たいものを感じる レイジ に冒険者側に立っている男から声が掛けられた。
「よくもまあやってくれたもんだな」
声のかけ方は近所にいるオジサンといった雰囲気だが向ける眼差しは明らかに違った。一切の動作を警戒し、何かあれば即座に動こうとするだろう。
「俺もあまり望んでいなかったんだがな」
だが、気圧されることもなく レイジ は答えた。この程度の殺気はダンジョンの中では日常茶飯事であったから。
「殺す前に一つ聞いていいか?」
「殺されるつもりはないがな」
「へえ、この状況でそんな口がきけるとは大したもんだ。聞きたいのは何でこの町にノコノコやって来たんだ?」
男の質問は最もだろう。
本来ダンジョンから出る必要のないのがダンジョンマスターなのだから。
だが、レイジ には理由があった。その理由を言うかどうかは別としてダンジョンから出る必要があった。
「⋯⋯」
「何だ、だんまりか?」
故に困った。言って何か変わるのか? 何ができるのか?下手に言えば的に情報を渡すだけだ。しかし上手くいけば何かしらの情報が手に入るのでは?
そう自分の中で問答するのだ。だから——
「俺たちは マーダ を追っている。マーダ の居場所を知っているか?」
レイジ は直球で返答した。
「マーダ⋯⋯?」
「ボールス、這い寄る影の事だよ」
「ああ! あの暗殺ギルドの幹部か!」
上手く思い出せずにいたボールス に ロート が助け舟を出した。
ボールス は突っかかって居た物が取れてスッキリした様子で手を叩いた。
「マーダね。知っているわけじゃないが、知らないわけでもないな」
「それはどっちなんだ?」
「さぁってどうか——」
「ボールス!」
ボールス は軽い態度で返そうとするがそれを遮る声が大きく上がった。
「下らん話をしている場合ではない! さっさと片付けるぞ」
声をあげたのは兵士側にいた四人のうちの一人、副団長だった。ボールスの前座のような下りにイラついている様子だ。
「世間話はそのくらいにしなさい!諸悪の根源がいつまでものさばられては、我々のメンツが立たないのだよ」
「副団長の言う通りです!」
「そういうわけぞ」
「いやー、恨みはないんだよ? あれ? 諸悪の根源だから恨みあるのかな?」
四人の兵士達がそれぞれ武器を構えた。
副団長は一本の西洋剣を、共感の声をあげた男は二本の西洋剣を、女性二人は鞭と杖を。
「ま、そう言うわけだ。お前の質問に答えて欲しけりゃあこの状況をどうにかする事だな」
「⋯⋯無駄話はいいから早くしねぇか」
「はぁ、相変わらず冷たいねぇ ネビラちゃんは」
ボールス は両刃斧を、ボールスを窘めた女性——ネビラ は自然体の構えを取った。
そして、全員の戦闘態勢にその場の緊張が一気に最高点へ到達する。
誰かを守るためか
誰かを救うためか
誰かを悼むためか
誰かを殺すためか
そして——己の願いを叶えるためか。
「お姉ちゃんの——」
真っ先に動いたのは ロート だった。
いつの間にか行われていた変化——鬼化によって強化された身体能力をもってして音の壁を超える。爆音と暴風が巻き起こる中狙われたのはレイジの頭部。
「仇ッ!」
フルスイングで振られた大金棒は一瞬前まで レイジ がいた場所を通り過ぎた。
「なっ!?」
「お返し、だ!」
しゃがみ込み大金棒を避けた レイジ は ロート の顎を狙い回転蹴りを返した。しかし——
「『反発』」
短く唱えられた言葉がロートの窮地を一瞬で変えた。
レイジ の回転蹴りは確かに ロート の顎を捉えていたが、突如その距離が開いたのだ。結果、レイジ の蹴りは空を切り、ロート は距離を取りネビラ の元に着地した。
「今のは一体⋯⋯?」
「『反発』」
「またか!?」
困惑する レイジ に悩む余裕を与えずに短い言葉が告げられた。
レイジ の体は地面から離され宙を舞った。その高さは3mを超えただろう。
「これは⋯⋯重力か!? なら!」
二度受けた事でその正体が何らかの魔法であり、重力に関係したものではないかと レイジ は感じた。しかし、一瞬の猶予も与えることなく次の攻撃が仕掛けられる。
「『白銀の世界』」
レイジ に次の行動をさせまいと兵士側で杖を構えた女性が一つの魔法を放った。
呪文が唱えられた瞬間、レイジ の直下から巨大な氷の柱が飛び出た。氷の柱は伸び、宙を舞う レイジ を包み込んだ。
「『極力の世界』」
ダメ押しとばかりにさらなる呪文が唱えられた。
唱えられた瞬間、氷の柱は一瞬にして圧縮され、崩れ粉々に砕け散った。残ったのは砕け散った氷の残骸は積もり、山になった。かなり大きなその山はまるで墓場のようだ。
「終わった? 終わったよね?」
「上級魔法を二つだぞ。流石に生きてねぇだろ」
「⋯⋯」
呪文と唱えた女性二人が呟く中、ロートだけはジッと氷の山を見つめていた。そして——
「危ねえ⋯⋯」
その呟きと同時に氷の山は一瞬にして消滅した。
一滴の水を残す事なく消滅した氷の山の中心地には レイジ が ゼーレ を片手で抱きかかえた状態で立っていた。
「な、なぜ? なんでかな?」
「おいおい⋯⋯こりゃ、マジかよ」
「こ、これは一体⋯⋯?」
「⋯⋯やっぱり」
様々な場所で驚きの声が上がる。そんな中、ロートだけは納得の言葉を溢した。
「アイツには⋯⋯ダンジョンマスターには魔法が効かない!」
ロートが告げた言葉は希望か絶望か。戦いは次なる段階へと上がっていった。
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