ダンジョンマスターは魔王ではありません!?

静電気妖怪

文字の大きさ
94 / 106
4章〜崩れて壊れても私はあなたの事を——〜

94話「崩壊の招き人7」

しおりを挟む
 ーパンドラ vs テレスー

 細剣レイピアと錫杖が奏る金属音に黒と白のドレスが社交ダンスのように揺られる。
 その美しくも激しい戦場で舞うのは二人の美の化身——

「打撃は効きませんか⋯⋯」
「直接の戦闘は苦手の様でしたが⋯⋯嘘ですわね?」

 数合の打ち合いの中で テレス は己の知識の中にある魔物の種族『概念種』に当たりをつけ渋い顔をする。
 一方 パンドラ は確かな強さを実感させる杖術、体術を見せつける テレス に顔を若干引攣らせる。

「いえいえ、そんな事は御座いませんよ。わたくしは補佐の方が得意ですので」
「よく言いますわ。それだけの心得があり、わたくしと互角に打ち合っているではないですか?」
「うふふふふ」
「うふふふふ」

 美しい美貌を作る口元が大きく釣り上がる。
 まるで三日月を描くその口元は芸術的な美化を狂った道化へと変貌させる。

「闇の槍よ——」
「天の光よ——」

「「敵を討ちなさいッ!!」」

 同時に叫ばれた攻撃の合図。
 パンドラ によって生み出された漆黒の槍が、テレス によって生み出された白銀の矢が、激突した。

 狙った様に互いが互いの技を撃ち落とす。その度に起きる爆発音や火花は恐怖と共に一種の芸術を作り出す。
 全てを打ち終わってどちらも傷一つなく焦げた匂いだけが漂うのはどちらも劣らない威力だった事を示していた。

「手慣らしはこの辺で終わりでしょうかね」
「ええ。私も聖女の名に恥じぬように行かせてもらいます——『神を産む聖母の慈愛』、『聖域を番する守護霊』を解放致します!」

 淡い白い光が テレス を包み込み、一際強い光が テレス の纏う光から分離した。

 白い顔にうっすらと浮かび上がる赤色の奇怪な模様。目の周りと頬に現れるそれは力強さと正義を掲げる者を彷彿させる。
 身を守っていた白い聖服は厚みや長さを増し、その輝きも同調するように眩しく一枚の天衣無縫を創り上げる。

 そして、分離した一際強い光は鼓動を繰り返しながら形を変え——一体の馬を生み出した。
 その細身ながら雄々しい四本の脚はしっかりと地を踏みしめ、背中を駆ける白いたてがみは風に揺られている。そして最も眼を見張るのは——

「⋯⋯ユニコーン、ですか」

 その白馬の頭部から伸びる白く畝る長い角。
 一切の欠ける事のないその角は突く物全てを貫くだろう驚異的な破壊力を感じさせる。

「聖霊とは聖女を守護する精霊のことですのよ」
「クルルルゥ——ッ!?」

 テレス に首をゆっくり撫でられる ユニコーン。しかし、突如動き出し テレス の前に立ち光り輝く半透明な盾を生み出した。

 その突然の行動に驚く パンドラ とテレス。そして、ユニコーンの奇行で二人は巨大な火球が此方に迫って来ていることに気づいた。

「な、なんですの!?」
「ぱ、パローラ様!?」

 半透明の壁と巨大な火球の激突。
 轟音と高熱を振りまく理不尽なソレ火球は光の壁によって砂埃を巻き立て消えていった。

「あ、ありがとうございます」
「クルゥ!」
「何だったのですかアレは⋯⋯?」
「恐らく パローラ様の火魔法でしょう」
「⋯⋯お仲間の魔法がこちらに飛んで来ましたよ?」
「パローラ様はその様な間違いは犯しません。考えられるとしたら狙いをずらされたとしか⋯⋯もしや、貴女のお仲間が此方に狙いを変えたのではないでしょうか?」

 片手を顎に添え考えるそぶりを見せながら テレス は言った。
 当然パンドラ は「そんな事っ!」と否定する言葉を口にしようとするが、喉まで上がって来た言葉は外に出ることはなかった。

「⋯⋯否定、しませんのね」
「⋯⋯此方にも色々事情があるのです」
「そうです——っ!?」

 テレス が手を額に添え呆れながらそう言おうとした時、またもやユニコーンが自発的に動いた。

「クルゥ!」

 次にやって来たのは先ほどの火球を三度大きくした様な氷の杭。なぜか回転が加わっている尖った先端はもはや破壊しか目的としていない。

「クルウゥゥッ!!」

 ギャリギャリと嫌な音を立てながら突き進む氷の杭は果てには光の壁に亀裂を作った。

「マズイですわ!」

 危機感を感じた パンドラ は片腕を振った。
 それと同時に出現したのは無数の黒い腕。生きとし生ける者へ死を誘う様な邪悪さを感じさせる漆黒の腕は何もない空間から現れた。

 そして、それらの腕は氷の杭を止めるために絡みついた。
 ビチャビチャと嫌悪感を感じさせるその音と共に腕は弾き飛ぶ。しかし、それも長くは続かなかった。

 というのも、元々そこまで高速で回転していなかった氷の杭は光の壁の効果もあり、次第にその回転と速度を緩め、ズゥン、と超重量を感じさせる音と共に地上に落ちた。

「これも貴女のお仲間の魔法ですわよね?」
「⋯⋯ええ。ですが、そんな愚行は犯しませんよ?」
「そうですか⋯⋯もしかしたらわたくしはハクレイ様に恨まれていたのでしょうか」
「一体、貴女方はどういう集まりなのですか⋯⋯」

 そう言ってまたもや テレス は呆れた事を体で表した。
 しかし、同情するつもりはなく構えと同時に錫杖はシャリン、と心地良い音を鳴らす。

「もう長くここにいたくはありません。早急に片をつけさせて頂きます」
「私も同じ様に考えます。早急に終わらせ ハクレイ様に問いただしたいのですから」

 そう言って パンドラ も細剣を正面に構えた。凛としたその構えと雰囲気は絵になるほどに美しい。

「一つだけ確認をさせて頂きますか?」
「何でしょうか?」

 構え、睨み合っていた二人だが、唐突に テレス が疑問を口にした。

「私は先程までとは全く違いますのよ?」
「そうでしょうね」
「貴女はそのままでよろしいのですか?」
「と、言いますと?」
「先程仰ったではないですか。互角だ、と」
「ああ、その事ですか」

 懐疑に彩られる テレス に余裕だと言わんばかりに得意げな表情を作る パンドラ。
 その様子は魔法が飛んでくる場面を除けば終始変わっていない。

「その後に言ったではありませんか——、と」

 そして次の瞬間、膨大な数の “何か” が テレス を囲んだ。

 ◾️◆◾️◆◾️◆◾️◆◾️◆◾

 ーーーーー
 名前:パンドラ
 種族:概念種
 性別:女
 Lv:43 → 89
 HP:C → C
 MP:C → B
 技能:闇魔法<5→8>、厄災<->、美貌<->、剣術<5→7>、隠密<5>(New)、気配探知<4>(New)、使役強化<6>(New)、深淵魔法<->(New)
 称号:闇の主、厄災の概念、美貌の概念、収集家(New)、堕転者(New)
 ーーーーー

 ーーーーー
 深淵魔法<->
 等級:A

 闇魔法を強化する複合魔法。
 心身共に昏き所まで堕ちた者にだけ使うことが許される禁忌の魔法。
 ーーーーー

 ーーーーー
 収集家

 あるものを求め、集め続け、執着した者に与えられる称号。
 その並ならない情熱は賛同し得る者たちだけが評価できる。
 ーーーーー

 ーーーーー
 堕転者

 本来は正き道を歩んでいたが、己の欲望に忠実な生き方を選び、変わらぬ者となった者に与えられる称号。
 その心の奥に潜む獣を解き放ってはいけない⋯⋯
 ーーーーー
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

【完結】捨て去られた王妃は王宮で働く

ここ
ファンタジー
たしかに私は王妃になった。 5歳の頃に婚約が決まり、逃げようがなかった。完全なる政略結婚。 夫である国王陛下は、ハーレムで浮かれている。政務は王妃が行っていいらしい。私は仕事は得意だ。家臣たちが追いつけないほど、理解が早く、正確らしい。家臣たちは、王妃がいないと困るようになった。何とかしなければ…

雷王、大いに懊悩す~ラスボス魔王、使命を果たして元の世界に戻りたくない異世界転移チート勇者によって全力で延命させられるの巻~

朽縄咲良
ファンタジー
 ――「要するに、アンタには死なれちゃ困るんだよ。俺が、この異世界で幸せな一生を送って、天寿を全うするまで、な」  魔族を統べる魔王イラ・ギャレマスは、自身の城へと攻め込んできた“伝説の四勇士”の三人、ジェレミィア・ファミィ・エラルティスを、その圧倒的な力を以て圧倒する。  残るは、黒髪黒目の冴えない男――シュータ・ナカムラのみ。  だが……シュータは、魔法陣で三人の仲間を魔王城の遥か彼方へと吹っ飛ばし、ただひとりで魔王と対峙する。  ――そして、二十分後。  不様に大理石の床に這いつくばっていたのは、魔王ギャレマスの方だった。  シュータの繰り出す圧倒的なチート攻撃の前に為す術もないギャレマスは、自身の敗北と迫りくる死を覚悟するが、そんな彼に対し、シュータは不敵な笑みを浮かべながら、意外な提案を持ちかけるのだった――。 「なぁ、魔王。ここはひとつ、手を組もうぜ……!」  『地上最強の生物』だが、めっぽうお人好しで、バカが付くくらいに娘の事を溺愛している中年オヤj……ナイスミドル(忖度)の魔王が、反則級のチートマシマシ異世界転移勇者をはじめとした周囲の者たちに翻弄されまくるコメディファンタジー、ここに開幕!  哀れな魔王の、明日はどっちだ……? (表紙イラストは、ペケさんから戴きました) *小説家になろう・ノベルアッププラスにも、同作品を掲載しております。

『辺境伯一家の領地繁栄記』序章:【動物スキル?】を持った辺境伯長男の場合

鈴白理人
ファンタジー
北の辺境で雨漏りと格闘中のアーサーは、貧乏領主の長男にして未来の次期辺境伯。 国民には【スキルツリー】という加護があるけれど、鑑定料は銀貨五枚。そんな贅沢、うちには無理。 でも最近──猫が雨漏りポイントを教えてくれたり、鳥やミミズとも会話が成立してる気がする。 これってもしかして【動物スキル?】 笑って働く貧乏大家族と一緒に、雨漏り屋敷から始まる、のんびりほのぼの領地改革物語!

捨てられた前世【大賢者】の少年、魔物を食べて世界最強に、そして日本へ

月城 友麻
ファンタジー
辺境伯の三男坊として転生した大賢者は、無能を装ったがために暗黒の森へと捨てられてしまう。次々と魔物に襲われる大賢者だったが、魔物を食べて生き残る。 こうして大賢者は魔物の力を次々と獲得しながら強くなり、最後には暗黒の森の王者、暗黒龍に挑み、手下に従えることに成功した。しかし、この暗黒龍、人化すると人懐っこい銀髪の少女になる。そして、ポーチから出したのはなんとiPhone。明かされる世界の真実に大賢者もビックリ。 そして、ある日、生まれ故郷がスタンピードに襲われる。大賢者は自分を捨てた父に引導を渡し、街の英雄として凱旋を果たすが、それは物語の始まりに過ぎなかった。 太陽系最果ての地で壮絶な戦闘を超え、愛する人を救うために目指したのはなんと日本。 テンプレを超えた壮大なファンタジーが今、始まる。

バーンズ伯爵家の内政改革 ~10歳で目覚めた長男、前世知識で領地を最適化します

namisan
ファンタジー
バーンズ伯爵家の長男マイルズは、完璧な容姿と神童と噂される知性を持っていた。だが彼には、誰にも言えない秘密があった。――前世が日本の「医師」だったという記憶だ。 マイルズが10歳となった「洗礼式」の日。 その儀式の最中、領地で謎の疫病が発生したとの凶報が届く。 「呪いだ」「悪霊の仕業だ」と混乱する大人たち。 しかしマイルズだけは、元医師の知識から即座に「病」の正体と、放置すれば領地を崩壊させる「災害」であることを看破していた。 「父上、お待ちください。それは呪いではありませぬ。……対処法がわかります」 公衆衛生の確立を皮切りに、マイルズは領地に潜む様々な「病巣」――非効率な農業、停滞する経済、旧態依然としたインフラ――に気づいていく。 前世の知識を総動員し、10歳の少年が領地を豊かに変えていく。 これは、一人の転生貴族が挑む、本格・異世界領地改革(内政)ファンタジー。

最難関ダンジョンをクリアした成功報酬は勇者パーティーの裏切りでした

新緑あらた
ファンタジー
最難関であるS級ダンジョン最深部の隠し部屋。金銀財宝を前に告げられた言葉は労いでも喜びでもなく、解雇通告だった。 「もうオマエはいらん」 勇者アレクサンダー、癒し手エリーゼ、赤魔道士フェルノに、自身の黒髪黒目を忌避しないことから期待していた俺は大きなショックを受ける。 ヤツらは俺の外見を受け入れていたわけじゃない。ただ仲間と思っていなかっただけ、眼中になかっただけなのだ。 転生者は曾祖父だけどチートは隔世遺伝した「俺」にも受け継がれています。 勇者達は大富豪スタートで貧民窟の住人がゴールです(笑)

第5皇子に転生した俺は前世の医学と知識や魔法を使い世界を変える。

黒ハット
ファンタジー
 前世は予防医学の専門の医者が飛行機事故で結婚したばかりの妻と亡くなり異世界の帝国の皇帝の5番目の子供に転生する。子供の生存率50%という文明の遅れた世界に転生した主人公が前世の知識と魔法を使い乱世の世界を戦いながら前世の奥さんと巡り合い世界を変えて行く。  

貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。

黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。 この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。

処理中です...