ダンジョンマスターは魔王ではありません!?

静電気妖怪

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4章〜崩れて壊れても私はあなたの事を——〜

104話「崩壊の招き人17」

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 ー レイジ、ミサキ、マーダ、ハクレイ vs アレックス ー

「⋯⋯大丈夫か⋯⋯ハクレイ⋯⋯?」
「もう無理っす⋯⋯動けないっす⋯⋯」
「大丈夫そうだな⋯⋯」

 アレックス の常識では計り知れない肩力によって吹き飛ばされ、地面に叩きつけられた二人が互いの安否を確認しあっていた。
 重傷ではないが軽傷とも言えない二人。骨折や内臓をやられた、なんて事は無いが打ち身などの全身から発せられる痛みが立ち上がる二人の邪魔をする。

「痛てぇ⋯⋯」

 痛みを堪え立ち上がる二人。体のふらつきから思った通りの戦闘をするのは難しいことがよくわかる。しかし、そんな事に構うことなく戦いは続いていた。
 視線をその場所に向ければ今もなお二本のククリナイフを振るう ミサキ とサポートする エイナの姿があった。

 だが、状況は依然として好転していなかった。剣筋の軌道を全て見切られ、避けられ、反撃される ミサキ。足元を狙い搦め手を取ったり、不意の一撃を放ったり、弾道を重ねる等多彩な方法で仕掛けるが悉く打ち破られる エイナ。

 ただ、両者ともに一撃離脱を専念しているためか目立った傷は見えなかった。
 そんな中、いつの間にかマーダ がレイジ の元に来ていた。

「ダンジョンマスターよ、まだ息してるか?」

 その呼吸は落ち着いたものではなく上下の運動が激しく、治ったはずの身体中の傷も今ではほとんど元通りになっていた。おそらく、来るまでに ミサキ や エイナ と共に戦っていたのだろう。

「何だよ⋯⋯随分、息が上がってるじゃねえか」
「軽口を⋯⋯叩けるぐらいには元気かよ⋯⋯そんなお前に⋯⋯良いことを教えてやる」
「良いこと⋯⋯?」

 息を整えながら話し始めるマーダ。

「ああ。アレックス は⋯⋯勇者は全部で七つの制限リミッターがある。で、今は五つ目だな」
「つまり後二段階は強くなるってか? 冗談だろ⋯⋯今ですらこんなにキツイってのによ⋯⋯」

 教えられたことが全く良いことではなかった。それどころか、負け宣告にすら聞こえる。

「それともう一つだ。嬢ちゃん達にも聞いたが⋯⋯お前いつ戻るかちゃんと分かってるか?」
「戻るって⋯⋯どこにだ?」
「なに忘れてんだよ。お前の生まれた星に、だよ」

 マーダに言われてようやく思い出した。確かに、そろそろこの世界に来て一年が経とうとしていた。しかし、問題はそこだけではない。

「ちょ、ちょっと待て! 何でお前がその事を知ってるんだ!?」
「んなこたぁどうでも良い。問題なのは時間だ。ちゃんと計ってるか?」
「そ、それは⋯⋯」

 マーダがなぜこちらレイジ達側の事情に詳しいのかは謎だ。しかし、マーダの言っていることは正しく、レイジは正確な時間は把握していなかった。

「ったく⋯⋯後、一分強くらいだよ。で、これ聞いて時間をどのくらい稼げる?」
「時間を稼ぐって⋯⋯それは!」
「そうだよ、逃げんだよ」
「逃げるったって勇者はどうなる? 一緒に来なら同じじゃないか?」

 当然の疑問だった。この状態で戻ったとしても制限時間なしの戦いになり、負けるのが目に見えている。
 しかし、こちらレイジ達の事情になぜか詳しいマーダはそれを否定する。

「それは多分無いな。勇者っていうのはその星の一つの時代に現れるもんだ。おいそれと他の時代にだって行けやしねぇ。そうなら当然他の世界に行くことだってできやしねぇ。で、どれくらい時間が稼げる?」
「時間を稼ぐって言ったって⋯⋯」

 レイジ は必死に頭を回した。だが、どんなに頑張っても、どんなに罠を張ったとしてもあの勇者バケモノを足止めする案が浮かばなかった。

「その様子だと変異種の嬢ちゃんの案に乗るしかねぇか」
「何? ミサキ が何か言ったのか?」
「ああ、何つったかな⋯⋯ガチるって言ってたが⋯⋯」
「え? マジっすか!? ミサキ先輩ガチるんすか!?」

 レイジ と マーダ の話を横で聞いていた ハクレイ が突然声を上げる。その様子は何かを知っている⋯⋯と言うより、見たことがあると言った感じだ。

「ハクレイ なんか知ってるのか?」
「知ってるも何も実験台にされたっすからね。あれはお兄さんがいなかった一ヶ月の半ば頃だったっす——」
「そう言うのはいらねえからさっさと吐け!」
「ちぇ。ま、要するに⋯⋯ガチるんすよ」

「「は?」」

 ハクレイ の簡略化しすぎた説明に レイジ も マーダ も揃って首を傾げた。そして、その疑問を解消するかの様に アレックス と ミサキ の攻防に若干の傾きが起きた。
 全てに攻撃を捌き、いなしてきた アレックス だったが一太刀、また一太刀と数え切れない金属音の中で、数え切れる攻撃を受けていた。

「ど、どう言うことだ⋯⋯?」
「アレックス が押され始めている⋯⋯?」
「ミサキ先輩が以前言ってたんすよ。『⋯⋯ひかりが⋯⋯みえた⋯⋯』って。で、その後検証し続けたら、浮いているより足をつけた方がより速く動けるらしいっす」
「はぁ? 何言ってんだ? そんなのは当たり前だろうが」

 要領を得ない マーダ は ハクレイ の説明により一層頭を悩ます。しかし、原理を知っていた レイジ は違った。

 日常では ミサキ は裸足で歩いているが、こと戦闘になったら進化する前の影響を引きずって少しだけ浮いた状態で戦っていた。
 それは技能スキルである『神速』の副作用を減らすためであり、ある意味では絶対的に必要な事だった。一歩毎に大量の体力と魔力を失うその技能スキル。しかし、足を着けたなら——

「長くは持たないぞ⋯⋯」
「でも、少しの時間なら持つっすよね?  先輩も言ってたっすよ。奥の手だって」
「なぁんか良くわかんねぇが、取り敢えず アレックス を一時的だが抑え込めるらしいな」

 短い時間であろうと、その僅かな時間でも惜しい現状。マーダは楽観的にニヤリと口元を上げるが、ハクレイとしてはそうはいかない。

「でも、本当に短いっすよ? 半月ほど準備して持つのは一分も無いって言ってたっす」
「マジか⋯⋯本当に奥の手だねぇ」
「⋯⋯なら」

 三人が視線を ミサキ へと向けた。中心に立っている アレックス が一人で剣を振っているようにしか見えないがその実、視認することすら不可能な速度に達した ミサキ が文字通り目にも留まらぬ速さで アレックス を抑え込んでいた。

 そのあまりにも速すぎる戦いに エイナ も参戦することは叶わず、たじろいでいた。

「ミサキ が動けなくなってからが正念場か⋯⋯」

 レイジ はその瞬間の後を何とかイメージするのだった。

 ◾️◆◾️◆◾️◆◾️◆◾️◆◾

 ーーーーー
 名前:ミサキ
 種族: 霊種
 性別:女
 Lv: 80 → 93
 HP: B → A
 MP: A → S
 技能:神速<5→6>、剣術<4→7>、守護者<->(New)、直感<->(New)、魔力貯蔵<5> (New)、体力貯蔵<6>(New)
 称号:変異種、闇の支配者、神風(New)、守護者(New)
 ーーーーー

 ーーーーー
 魔力貯蔵<5>
 等級:C

 魔力を一時的に溜め込むことができる。
 容量は使用者の熟練度に依存する。
 ーーーーー

 ーーーーー
 体力貯蔵<6>
 等級:C

 体力を一時的に溜め込むことができる。
 容量は使用者の熟練度に依存する。
 ーーーーー
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