ダンジョンマスターは魔王ではありません!?

静電気妖怪

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4章〜崩れて壊れても私はあなたの事を——〜

105話「崩壊の招き人18」

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 ー レイジ、ミサキ、マーダ、ハクレイ vs アレックス ー

 思考する レイジ。しかし、恐れていた事は予想していた以上に早くやって来た。
 レイジ達の期待を裏切る様に“ 何か“ が レイジ の横を物凄い速さで通り過ぎたのだ。通り過ぎた“ 何か“ は鳥居に激突し、大きな激突音を生み出して止まった。

「な、何だ? 今の——ッ!」

 音の方向へ全員が視線を向ける。そこには——

「⋯⋯うっ⋯⋯」

 苦悶の表情で尚も起き上がろうとしている ミサキ の姿があった。
 しかし、身体中には幾つもの裂傷があり、少なくない血が全身を染めていた。更に、手や足は曲がってはいけない方向を向いており、立ち上がろうとする ミサキ はバタリと倒れる。

「七つの技能スキル全てを使わせたことは褒めてやろう。だが所詮はその程度だ」

 口に溜まっていた血を吐き出し近づく アレックス の姿があった。
 鎧は多数の切られた傷があるがそれだけだ。アレックス 本人には大した傷が負われていないことはその立ち姿から十分に感じさせられる。

「これで俺を邪魔できる奴はもういな——」

 ゆっくりと近づきながら語る アレックス。しかし、その言葉を遮る“ 声” が突如襲来し、ダンジョン内に響き渡った。

 ——ピーンポーンパーンポーン

『あーあー、テステス。聞こえてるかい? まぁ聞こえてなくてもいいけどね。えーでは、だだ今を持って残り時間が一分となりました。ダンジョン内に居る関係者以外の方は速やかにダンジョンから出て下さいね。これから起きる転移はダンジョンマスターとその配下、及びダンジョンその物が対象だよ』

「こ、この声は⋯⋯!」

 レイジ達を強制的にダンジョンマスターに変え、更に異世界へ飛ばした張本人。忘れもしないこの “ 声”  に レイジ は驚きを隠せないようだ。

「な、何だこの声は?」

 “声” の存在を知らないため、困惑の表情を見せる アレックス。しかし、言葉の中で出た残り時間と言う文言には敏感に反応していた。

「⋯⋯」

 同様に “声” を聞いていた マーダ。静かに、気配を探るように探らせない様にその声に耳を傾けていた。

『この転移に巻き込まれることはないけど地盤落下なんかで死んじゃっても知らないからね。それじゃあ、急ぐんだよ』

 ——ブチっ

 何かが切れる音がしたが、恐らく演出の一種だろう。その音が聞こえた後に “ 声”  が再び聞こえることは無く沈黙が場を支配していた。
 そして、その沈黙を破る様に納得の声を上げるものがいた。

「成る程、これが貴様等の狙いか!」

 先程までの余裕とは打って変わり若干焦りを見せながら アレックス が急接近した。

「戦いの途中で感じた違和感。逃げることで勝ちを得ようと言うのかダンジョンマスタァーッ!」
「クソがッ! なんだ今の声は?! バレちまったじゃねえか!」
「させませんわ!」
「邪魔だッ!」

 アレックス の急接近に真っ先に反応したのは マーダ、そして次いで反応したには エイナ。しかしどちらも アレックス の無造作で怒りに満ちた攻撃を耐えきることができず吹き飛ばされてしまう。
 そして、その余波となる風圧は レイジ すらも襲った。

「マーダッ! エイナッ!」

 片膝を着き体勢を崩されながらも レイジ は二人の安否を確認しようと目を開く。しかし、目の前にいたのは——

「貴様の罪はダンジョンマスターであることではない」

 ——アレックスだ。彼はようやく レイジ の元に辿り着いたのだ。

「くっ⋯⋯」
「俺の⋯⋯俺の愛する娘を殺したことだ!」

 そう言って アレックス は片手に持つ西洋剣を振り上げた。振り下ろせば確実に レイジ の首を飛ばすことができるその位置で——だが、その間に割って入る存在が現れた。

「ハクレイ⋯⋯?」

 ◾️◆◾️◆◾️◆◾️◆◾️◆◾

 ー パンドラ vs テレス、パローラ ー

 レイジ達の戦闘が終結に向かう少し前。そこには黒と白以外の色が無かった。

「「はあああああああああっ!!」」

 拳一つのぶつかり合いですら起きる衝撃波。闇が、光がその波に乗って伝わり空気を震撼させ、大地を削っていた。
 一時前まで存在していた黒の球体や棘は粉々に砕け散り、魔法を放っていた パローラ は壁際で腹部を赤く染め眠っている。

「ふぅ⋯⋯ふぅ⋯⋯」
「はぁ⋯⋯はぁ⋯⋯」

 相対するのは二つの禁忌。
 片や、美と醜悪を兼ね備えた深淵の禁忌。その表情は未だ終わる気配を見せない戦闘の焦りが隠しきれなくなっている。
 片や、美と神々しさを兼ね備えた神聖の禁忌。その頬には今も涙が流れている。その理由は言うまでも無かった。

「まさか⋯⋯命を投げ打って⋯⋯来るだなんて⋯⋯」
「⋯⋯」

 パンドラ の言葉に何も答えない テレス。キッ、と睨みつけ強く歯噛みする。
 そう、テレス は神聖魔法を使っている。しかし、ここまでに至る経緯は危険しかない博打だった。

「透明化⋯⋯加えて、命を賭けた陽動⋯⋯流石に私わたくしもそこまでは思いつきませんわ」

 テレス が神聖魔法を使う時、パンドラ は最優先で テレス の神聖魔法の阻止に動いた。当然、テレス は邪魔をされ魔法に発動ができなかった。

 だがそこへ パローラ が来た。そして、大きな閃光弾を放ち パンドラ の意識を一瞬だけズラした。その一瞬、そのたった一瞬で パローラ は テレス を透明化させ、自身を テレス の姿に模したのだ。

 当然、それだけなら パンドラ も気づけただろう。すぐには気づけなくとも、違和感を感じることはあっただろう。

 だがここで パローラ は博打に出た——自らを殺したのだ。
 パンドラ に テレス を殺させたと錯覚させるために自然な流れで迫り来る棘を喰らい死んだのだ。

 結果、テレス の神聖魔法を阻止したと安堵した パンドラ の背後に魔法を発動した テレス が回り込み球体を破壊しほぼ互角の戦いになった。

「パローラ様⋯⋯」

 ギュッと錫杖を強く握る テレス。もう、彼女の瞳には仲間への仇となる パンドラ しか写っていない。
 そして、もう一度攻撃しようと踏み込もうとした時、“ 声“ が邪魔をする。

 ——ピーンポーンパーンポーン

『あーあー、テステス。聞こえてるかい? まぁ聞こえてなくてもいいけどね。えーでは、だだ今を持って残り時間が一分となりました。ダンジョン内に居る関係者以外の方は速やかにダンジョンから出て下さいね。これから起きる転移はダンジョンマスターとその配下、及びダンジョンその物が対象だよ』

「この声は⋯⋯?」
「転移⋯⋯?」

『この転移に巻き込まれることはないけど地盤落下なんかで死んじゃっても知らないからね。それじゃあ、急ぐんだよ』

 ——ブチっ

「「残り⋯⋯一分⋯⋯?」」

 “ 声”  の唐突な襲来により惚ける二人。しかし、パンドラ は内心歓喜した。自身の残り時間が少なかったことから焦りがあったが、残り一分なら何とかなる、と。

「では⋯⋯残りの時間で最後のダンスを踊りましょうか!」

 パンドラ の中に余裕が生まれる。しかし、その余裕は相対して テレス に焦りを植え付ける。

「ま、まさか⋯⋯時間を稼ぐつもりですの!?」
「当然です。私も死にたくはありませんから」
「⋯⋯さない」

 テレス が足に力を込める。

「絶対に許しませんわッ!」

 突き刺さるような声と共に両者が再び激突する。こうして、黒と白の激闘は終局を迎えていた。

 ◾️◆◾️◆◾️◆◾️◆◾️◆◾

 ー 響、香 vs 冒険者、騎士団 ー

 蹲り、両手を地面に叩きつける 響。そして、響 の近くでしゃがみ込み両手で顔を覆っている 香。二人は少女の死を悼み——泣いていた。
 そして、二人の元へ近く二つの影があった。

「ロート、ネビラちゃんは?」
「アイツは魔力切れで倒れたよ。近くにいた氷の魔法使いが介抱してる」
「マジか。となると俺たち二人しか残ってねえのか」
「騎士団の連中は? 副団長とか言うやつはどうなったのよ?」
「アイツは重症。最後の一発の時に一体反応した魔物がいたらしく反撃喰らってな。鞭振ってた姉ちゃんが見てるから問題ないだろ」
「あっそ」
「さあて⋯⋯」

 そして 響 と 香 の前に ボールス と ロート が立った。

「お前⋯⋯達⋯⋯は?」
「何だ、 記憶喪失か? それとも演技か? さっきまで戦ってたろ。ダンジョンマスターさん達よ」
「くっ⋯⋯」

 響 は中々止まらない涙を拭い、睨みつけるように ボールス を見た。そして、少女の言葉を思い出した。

「香⋯⋯逃げるぞ!」

 香 の手を取り、ボールス に背を向け一気に駆ける 響。少女が最後に願ったのは二人に生きて欲しいだった。逃げ切って欲しいだった。 響 はその事を守ろうとした。
 だが、二人の前にはいつのまにか ロート が立っていた。

「逃がすわけねえだろ⋯⋯死ね!」

 何の躊躇もなく振られる大金棒。無造作に振られるだけで二人の体は吹き飛ばされることは容易に理解できた。

「く、黒雪ッ!」

 その迫り来る凶器と恐怖に 響 は配下の魔物を呼んだ。
 そして、その呼び掛けに答えるように真っ白な体躯に黒の斑点をあしらった一匹の豹が姿を現した。

「呼ばれてきたよ!」

 振り下ろさせた前足は大金棒の軌道をズラした。お陰で、二人に襲いかかった凶器は地面を抉るだけに留まった。

「アンタ⋯⋯」

 突然現れ、邪魔をした豹に怒気を含んだ殺意を剝きだす ロート。
 そして、その様子を伺っていた ボールス が動こうとするが——

「しゃあねえ、俺が⋯⋯」
「んー、すまんがここは通せんのぉ」

 巨大な氷山を背負った大きな亀が ボールス の行く手を阻んだ。突然現れた巨体。流石の ボールス もその巨体に驚きの声を漏らした。

「でっか⋯⋯」

 そして、もう一体の魔物が 響達の元に姿を現していた。

「きゅっ!」
「ま、丸ウサ!?」

 真っ白な球状の魔物。オマケのように付けられた赤い点が目である兎の魔物は地面を転がり広場の出口へ向かう。途中で『きゅっ!』と鳴き、響達を呼ぶ。

「丸ウサ!」
「ひ、響君!」

 丸い兎を追いかけるように出口に向かう 響。そして、響 に手を引かれ連れられれるように走る 香。

「待ちな⋯⋯!」
「アンタの相手はアタイだよ!」

 逃げる 響達を ロート が追おうとするがその前には一匹の豹が行く手を阻んだ。

「行かせては?」
「んー、すまんが無理じゃのぉ」
「だよな。はあ、面倒だが⋯⋯退かせてもらうぞ!」

 冒険者達の最後の一騎打ち。それは、響達の最後の抵抗でもある。
 その戦いは本来であったならば直ぐに決着がついただろう。しかし、時間稼ぎを目的としたその戦いは予想以上の結果を産んだ。

 戦いの後、ロート と ボールス は円形広場から出た。そして直ぐに “ 声”  を聞き、必死に探が、二人は 響達を見つけることは叶わなかった。
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