ダンジョンマスターは魔王ではありません!!

静電気妖怪

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一章〜盤外から見下ろす者、盤上から見上げる者〜

2話「【外なる神】」

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「⋯⋯ゃん!」
「⋯⋯まっ!」
「⋯⋯お⋯⋯てっ! ⋯⋯てよっ!」

 誰かの声が聞こえる。深い深い暗い闇の中で誰かが呼び声がする。

「⋯⋯ん⋯⋯ばっ!」
「お⋯⋯さ⋯⋯っ!」

 誰だろう? でも、誰でもいいだろう。呼ばれているのだから応えればいい。ただそれだけだ。
 そして一人の少年が目を開けた——

「⋯⋯あ、ああ?」

 視界に入ったのは馴染みある天井——なんてものではない。文字通り天井が抜け満天の星空が映された。
 キラキラと輝く星々は雑に塗り潰した様に黒くなった空を強く弱く鼓動させながら唯一の装飾となっていた。

「⋯⋯ここは⋯⋯?」

 少年——神ノ蔵 レイジ はぼうっとした脳みそを動かし始め今起きている状況を確認するために起き上がろうとした。しかし起き上がる レイジ にまるで隕石のように何かが飛び込んできた。

「お兄ちゃんっ!」
「お兄様っ!」

「うっ⋯⋯」

 レイジ の左側から飛んできたのは白髪赤目の少女、ゼーレ。
 レイジ の右側から飛んできたのは黒髪黒目の少女、エイナ。

 両者ともに強い当たりで レイジ のお腹に突撃し、レイジ は声にならない声を上げる。そして今もなお額をグリグリと押し込み痛みが続く。

「あ、貴方様! どこか痛いところはありますか!?」

「⋯⋯あ、ああ⋯⋯現在進行形で両脇腹が痛い」

「そうですか⋯⋯どこも怪我がなくて安心しましたわ」

「いや、今言ったよね? 両脇腹が現在進行形で痛いって。聞いてる?」

「はい?」

 レイジ の言葉に首を傾げ聞き直す全身微妙に違う紫で統一された女性——パンドラ は言っている意味がわからない、と言わんばかりに疑問符を浮かべている。

「ん⋯⋯ますたー⋯⋯げんき⋯⋯?」

「あ、まあ⋯⋯元気といえば微妙だな⋯⋯ってお前は大丈夫なのか!?」

「ん⋯⋯お姉ちゃんが⋯⋯かいふくやく⋯⋯くれた⋯⋯」

 赤髪に黒い斑点を撒いた様な髪の少女、ミサキ は元気であることをアピールする様に両手を拳にして軽く掲げる。
 一見して全身には傷一つなく元気そのものが伝わってくる。

「そうか⋯⋯ありがとうな ゼーレ」

 そう言って レイジ は今もなお額をグリグリしてくる少女二人を優しく撫でた。その効果があってか押し付ける強さが弱くなり痛みが若干引いた。

「⋯⋯ところで、俺はどのくらい寝てたんだ?」

「それでしたら一時間ほどですわ。転移が終わってから貴方様やミサキ様達を見つけた時は怪我もしていらっしゃったのでどうしようかと思っていたのですが、ゼーレ様が直ぐに駆けつけてきてくれたのです」

「ん⋯⋯それで⋯⋯お姉ちゃんが⋯⋯かいふくやく⋯⋯くれて⋯⋯なおした⋯⋯」

「あ! そうですわ! 貴方様、ハクレイ様がどこにいるか御存じありませんか? どうも見当たらないのです。恐らく、どこかに隠れていると思うのですが⋯⋯これからはビシバシ訓練して差し上げますわ!」

「そう⋯⋯あのあと⋯⋯どうなったか⋯⋯しらない⋯⋯どうなった⋯⋯?」

 片手を握りしめて明後日の方向を向きながら吠える様に叫ぶ パンドラ。
 そして、顔をコテンっと傾げ最後の戦い——勇者との戦闘の結末を訪ねてくる ミサキ。

 眩しい物を見せるその二人の様子を見た レイジ は口ごもり一瞬、本当のことを言うべきか迷ってしまった。

 言ってしまえばどうなるかは分かっていた。パンドラは特に。しかし、言わないなら何を伝えるのか。いつかバレてしまうような嘘を吐くのか? そこに意味はあるのか?

 レイジは一度目を閉じて深く呼吸をした。そして覚悟を決めゆっくりを瞼を持ち上げながら重い口を動かした。

「⋯⋯あの後はだな——」

 レイジ はそう切り出し勇者との戦いの顛末を皆に話し始めた。

 嘘偽りなく、できる限り詳細に全てを。

 ◾️◆◾️◆◾️◆◾️◆◾️◆◾

「——と言うわけだ」

 レイジは戦いの全てを話した。

 ミサキが勇者相手に重傷を負わされたこと。エイナとマーダが二人がかりでも相手取れなかったこと。
 そして、ハクレイが命をかけて勇者を足止めしレイジ達が逃げる時間を稼いでくれたこと。

 全てを話していくうちに心の内側が強く締めつけられ、視界が滲みだす。それでも、話さなければいけないからレイジは口を閉ざさなかった。
 そして、全てを話し終え様子を伺うと全員が沈痛な表情をしていた。特に酷かったのはパンドラだった。

「そんな⋯⋯ハクレイ様が⋯⋯? う、嘘ですわ⋯⋯うそ⋯⋯うっ、申し訳ありませんっ!」

 途中から両手で顔を覆い話すレイジから顔を背けていたが話し終え、限界が来たのか一言残し広場から出て行ってしまった。手の隙間からはうっすらと光を反射するモノが見えたが、気のせいではないだろう。

「⋯⋯パンドラ」

「⋯⋯ようす⋯⋯みてくる⋯⋯」

 そう言ってミサキは立ち上がりパンドラが出て行った方向へ走って行った。

「⋯⋯すまない⋯⋯俺が⋯⋯俺がもっと⋯⋯」

「お、お兄ちゃんは悪くないよっ!」

「そ、そうですわ! それを言うのならわたしが⋯⋯わたしがもっと⋯⋯」

「え、エイナちゃんも悪くないよっ!」

 もっと強かったら、もっと戦えたら、そんな後悔と懺悔がグルグルと渦巻く。
 話せば話すほど強く、深くなっていく渦。何とかして止めるためにゼーレは話題の方向を変えようとした。

「そ、そうだよ! お兄ちゃん! ハクレイちゃんは最期なんて言ったの? なにか言わなかったの?」

「⋯⋯最期? 最期は⋯⋯すまない、最期に何か伝えたかったみたいだけど上手く⋯⋯聞き取れなかったんだ⋯⋯」

「でも幸せそうだったんだよね? 笑顔でお別れしたんだよね?」

「⋯⋯そう⋯⋯だな⋯⋯笑ってたよ。いつものおっちゃらけた様子なんて全然なかった。本当に笑ってたよ⋯⋯本当に嬉しそうにさ⋯⋯」

 ゼーレの意図通り少しだけレイジの取り巻く雰囲気が明るくなった。それは僅かかも知れないが確かに変わった。
 その様子に釣られてエイナもまた別の感情が芽生えたのがゼーレには分かった。

「そっか⋯⋯そっかそっか。じゃあ、あんまりくよくよしてるとハクレイちゃんが出てきちゃうよ? 『情けないっすね!』 とか、『自分がいないとお兄さんはダメダメっすね~』 とか言って」

 微妙に似た声色と口調で、更に振り付けまで付け加えながら真似る。
 その微妙に似たモノマネ、そして何より元気づけるために必死になっているゼーレの思いを感じ取りレイジは無理に顔を綻ばす。

「⋯⋯そう⋯⋯かもな」

「そうだよ。ハクレイちゃんだってお兄ちゃんに悲しんで欲しいわけじゃないと思うよ? 生きて生きて生きて欲しい⋯⋯そう思ったと思うよ」

「⋯⋯そうだな」

 背中にのしかかっていた重い何かが少しだけ軽くなった気がする。そう感じながらレイジは立ち上がった。

「お兄⋯⋯様ぁ⋯⋯?」

「お兄ちゃん?」

「⋯⋯二人とも心配してくれてありがとう。そうだな、あんまり悩んでばっかいるとハクレイに文句言われそうだからな。もっと⋯⋯頑張るよ」

「⋯⋯お兄様ぁ!」

「うんっ! 頑張ろ! ゼーレも頑張るから! ⋯⋯あ、そうだ!」

 レイジの吹っ切れに喜ぶゼーレ。そして突然思い返した様に声を上げた。

「お兄ちゃん⋯⋯ダンジョンコアに何か特別な機能が付いたみたいだよ?」

「「⋯⋯はい?」」

 突然の意味不明な爆弾発言にエイナとレイジから揃って呆けた声が溢れた。

 ◾️◆◾️◆◾️◆◾️◆◾️◆◾

 ダンジョンの最下層。
 一年前ではただの洞窟内にある広い空間でしかなかったが今ではベットや仕切り、入浴場などの生活感がある場所に変わっていた。
 そんな部屋の中でレイジはある人物を視界に捉えた。

「テトラ⋯⋯?」

 部屋の奥で一人の幼女が静かに立っていた。ジッと何かを見ている様であったがレイジの声を聞くと直ぐに振り返った。

「パパ? パパだ! おかえりっ!」

 そう言いながらタッタと小走りで近づき——跳び込んだ。

「うお!?」

 意外にもあった跳躍力でレイジ目掛けて飛び込んできたのが少女、テトラは後頭部で二つに分けられた漆黒の髪を揺らしながらレイジに抱きついた。

「おかえりなさいっ!」

 天真爛漫。正にそんな言葉が似合う様な純粋な笑顔を作り見上げる様な形でテトラはレイジの顔を覗き込んだ。

「あ、ああ⋯⋯ただいま」

「えへへへ」

 勢いで押されながらも言葉を返し、そのついでで近くにある頭を撫でれば純粋であった笑顔が少しだらしないがより嬉しそうな笑い顔になった。
 ちょっと良い雰囲気にも見えなくもないがそれを良しとしない人物がそこにいた。

「お兄ちゃん?」

 一連の流れを全て見ていたゼーレが凍てつく様な笑顔でレイジを呼んだ。その一言で我に帰ったレイジはふとテトラが立っていた場所を思い出した。

「て、テトラ、ずっと何かを見ていたみたいだけど何を見ていたんだ?」

「テトが見てたもの? あれだよっ!」

 そう言ってテトラはある一箇所を指差した。
 そこは部屋の再奥、そこは周囲とは異なる雰囲気があった。

 髑髏を象った様な水晶。
 通して見ても奥にある岩が一切遮られることなく見える程に透明であり、浴びる光は様々な所に乱反射し一種の神々しさを感じる。
 普段であれば静かに存在しているが今は少し様子が違っていた。

「こ、これは⋯⋯?」

 レイジ達の目の前にある髑髏の水晶は自ら光を放ちホログラムを作り出していたのだ。


 ーーーーーーーーーー
 【ルール説明】

 一つ、参加者は【魔王】【ダンジョンマスター】【人類】の三勢力である。

 一つ、【魔王】は一人、【ダンジョンマスター】は九人、【人類】は推定数約七十八億人を参加者とする。

 一つ、【魔王】の勝利条件は全ての【ダンジョンマスター】及び、全ての【人類】の死亡もしくは戦意喪失による。また、敗北条件は “死”とする。

 一つ、【ダンジョンマスター】の勝利条件は【人類】より先に【魔王】を殺すこと。ただし、最も早く【魔王】を殺した【ダンジョンマスター】が勝者となる。また、敗北条件は【ダンジョンマスター】の死亡もしくは【ダンジョンコア】の破壊とする。

 一つ、【人類】の勝利条件は【ダンジョンマスター】より先に【魔王】を殺すこと。ただし、【人類】に置いては誰が【魔王】を殺したとしても【人類】の勝利となる。また、敗北条件は【人類】全ての死亡もしくは戦意喪失とする。

 一つ、【魔王】を殺した者には報酬が与えられる。報酬の内容は『どんな内容であっても一つだけ願いを叶える』となる。ただし、叶う願いは全て自然な流れを取って叶えられる。

 一つ、ゲームの開催は通称『地球』と呼ばれる一つの惑星全域で行うものとする。

 一つ、ゲームは『地球』が崩壊するまで続くものとし、これを中断することはできない。

 以上を制限ルールとし【外なる神】の名の下にゲームを開催する。
 ーーーーーーーーーー
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