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三章〜神龍伝説爆誕!〜

50話「神龍、悪魔と邂逅する!」

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 ——【妖物のダンジョン】九階層ボス部屋。
 部屋の中央に突如出現した先の見えぬ空間の切れ目。存在しているだけで不安を煽り、恐怖を与えるそれはさながら冥府への扉にすら感じてしまう。


「なんだ⋯⋯これは?」
「なに? 鬼龍、貴様の仕業ではないのか?」


 空間の切れ目と同時に動揺が走った鬼龍。それを見た流はこの異形が鬼龍のものではないと判断し攻撃を中断した。


「こんなモノ余は知らぬ。付け加えるなら、余の配下にもこの様なモノを作り出す様な力は無い」
「⋯⋯主の言う通りです。私は神龍のモノだと考えたのですが?」
「期待に応えられなくて残念だが、我はあの様な力の使い方はしないな」


 力技で無理に空間を捻じ曲げ、抉じ開ける。そう言った芸当を流はあまり好みではなかった⋯⋯無論、「しない」と言ってるだけで「できない」とは言っていない。


「じゃあさ~⋯⋯誰の仕業?」


 流でもなければ鬼龍、そして鬼龍の配下の仕業では無いことが判明した中で紅桜が疑問を投げかけた。
 だが、それはつまり答えが出てる様なものであった。


「それは——」
「当然——」

「君たちの敵だよ」

「「っ!?」」


 臨戦態勢に入る鬼龍と流を肯定するかの様に空間の切れ目から子供の——男の子の声が発せられた。


「やあやあ、待たせてしまったみたいだね」


 空間の切れ目に両手の五指が掛かりバキバキと歪みを広げていく。その大きさは徐々に広がりようやく終わりを迎えた頃には数メートルに達していた。
 最初に姿を見せたのは鈍く黒光りする鱗で覆われた巨体に畝る尾、更には背中から伸びる大きな両翼。その姿は紛れもなく東洋の竜そのものである。だが、それは一点だけ大きく異なっていた——


「「グルアアアアアアアアァァッッ!!」」


 二つに分かれた首から二つの頭。そう、一つの体に二つの顔を持つ多頭の竜であったのだ。
 そして、その背に跨る一つの人影。紛れもなく、この竜の主人であり、鬼龍と流に答えた人物は——


「僕の名前はウァラク。魔王の配下と言えば分かりやすいかな?」


 どこにでも居そうな普通の男の子であった。
 竜とは対照的な純白の服に身を包み、背中には矢筒と弓を、片手には一本の槍を持っている。そして、服同様に汚れを知らない真っ白な羽を生やしている以外は。

「僕はね、僕のご主人様を脅かす存在を消しに来たんだよ」


 誰からも愛されそうな純白の少年は誰でも殺してしまいそうな悪魔の笑みを浮かべていた。


 ◾️◆◾️◆◾️◆◾️◆◾️◆◾


「ウァラク? それに魔王の配下だと?」


 ウァラクの自己紹介に聞き逃せないワードに反応する流。
 腐っても日本のギルドマスターの地位に居座る。巫山戯ているが日本最強を肩書きにしているのは伊達ではない。


「【魔王】は我々【人類】の最終討伐対象⋯⋯逆に言えば、貴様等にとっては我々が討伐対象。なるほど、確かに敵同士であるな」
「話が早くて助かるよ。僕は長話するのが好きじゃなくてね。あ、でも短気ってことでもないんだよ? 長々話してるのは疲れるんだよね~ってことさ!」


 どこか言い訳じみた言い方で弁明するウァラク。その姿はどこにでも居る普通の少年と変わりない。


「ま、さっさと始めちゃいたいんだけど⋯⋯どうするの?」
「どうする、とは?」
「え? だってそっちは二人いるでしょ? 僕はが対象だからね。どっちも消す必要があるんだよ」

「「⋯⋯」」


 ウァラクの言い分に無言になる鬼龍と流。だが、それも仕方ないだろう。年端もいかない外見の少年に「めんどくさいから二人共相手してやるよ」と挑発されているようなものなのだから。


「ゆ、ユウちゃ~ん?」
「⋯⋯主?」


 心配そうに声をかける二振りの刀。幸か不幸か、刀の持ち主は口元をヒクつかせていた。


「⋯⋯なあ、神龍よ。一つ提案があるのだが?」
「鬼龍、貴様もか? 丁度、我も一つだけ聞きたいことがあったのだ」
「確かに奇遇だな。では⋯⋯同時に言ってみるのも興があるのではないか?」
「フッ⋯⋯いいだろう」


 鬼龍と流が同意すると、面白さ半分で調子に乗った紅桜が「せーの!」と掛け声をかけると息を合わせたかの様に——



「奴を排除するぞッ!」
「奴を消滅させるッ!」


 ⋯⋯息はあってるんだけど、やはり言い方は自己流が優っていたようだ。余談であるが、上が流で下が鬼龍だ。


「あははっ⋯⋯じゃあ、二人まとめてで決まりだね!」

「グルル!」
「ガルル!」

「貴様のその余裕⋯⋯後悔するぞ?」
「余の前で大口を叩いたことが御前の敗因であることを知れッ!」


 四頭の龍と竜は笑顔と怒りを振りまいて各々は手に持つ得物を構えた。


 ◾️◆◾️◆◾️◆◾️◆◾️◆◾


「さて、まずは挨拶からかな? リュカ、ジーザス軽めに始めよっか!」
「グウ⋯⋯」
「ガア⋯⋯」


 先に動いたのはウァラクと二頭竜であった。大きな両翼を羽ばたかせ地上から離れると二頭の口元に炎と冷気が生まれる。そして——


「いきなりッ!」
咆哮ブレスか!」

「「ゴアアアアアアアアアアアアァッッ!!」」


 本来では相反する二つの属性だが過剰すぎる力故に炎が冷気を溶かし、水が火によって蒸発する。
 そんな科学的な連鎖反応を巻き起こし一層に威力を倍加させた爆炎が流と鬼龍を襲う。


「いくぞ神龍!」
「ああ、鬼龍!」


 だが、まるで長年を共にした戦友のような息の合わせで二人はこの窮地に立ち向かう。


「墨桜! 惰性を見せろ!」
「⋯⋯まるで私が怠け者のような言い方じゃないですか!」

 先に動いたのは鬼龍だ。黒色の刀身を持つ墨桜が振るわれるとその軌跡には闇が出現した。
 どんな存在も堕落させる闇が爆炎を覆うと荒々しさを弱め嘘のように微弱な燻りを上げるだけになっていた。そして——、


逃れ得ぬ神龍の咆撃アブソリュート・ゼロ


 弱体化した爆炎を打ち消すように流の側に現れた銃から極光が撃ち出された。
 光は予定通りに爆炎を払いその先で口を開けている竜にまで届くが——


「⋯⋯やはりあの程度では無傷か」


 ——黒い鱗は流の攻撃を完璧に遮っていた。傷をつけるどころか、相手に痛みすら感じさせずただの程にしか意味をなさなかった。


「眩しかった~。それに、今ぐらいの攻撃じゃあ挨拶程度にしかならないか~。ま、そうでなきゃ僕がここに来ることもないしね」
「⋯⋯我等が奏でるのは交響曲シンフォニーかそれとも鎮魂歌レクイエムか」
「いきなりどうしたんだい? どうせ聞くなら僕は幻想曲ファンタジア円舞曲ワルツを所望しようかな」
「フッ⋯⋯それは——」


 どこか嘲笑的な笑いを含んだ流の言葉。しかし、それは最後まで言うことなく——


「——叶わぬよ」


 ——いつの間にかウァラクの背後に回っていた鬼龍が代弁した。


「早々に余の前に平伏すがいいッ!」


 完全に取った死角からの攻撃、完璧な奇襲。墨桜を納刀し既に紅桜の柄に手をかけた鬼龍が抜刀術でウァラクに斬りかかる——


「なッ!?」
「そんなので僕が驚くと思う?」


 ——が、驚嘆に声を上げたのは鬼龍の方だった。


「確かに速いし、一度は見失ったけど⋯⋯それもその程度だよ?」


 ウァラクは持っていた槍をただ背後に回すだけで鬼龍の攻撃を防いだのだ。内心、鬼龍は背中に目があるのか!? と驚愕するが、問題はそれだけではなかった。


「ウッソ!? なんで!? なんでワタシの『嫉妬』で切れないの!?」


 鬼龍の声を代弁したかのように赤い刀、紅桜から驚きの声が上がる。


「『嫉妬の罪』、それは自らが認める一つ以外に対して絶対的な拒絶を生み出す罪の力。もう少し想いが強ければ切れたかもねっ!」
「くっ!」
「あう!?」


 ウァラクが態勢を変え、槍の表面を撫でさせるように紅桜を滑らせ鬼龍を地上に投げた。


「無事か鬼龍?」
「ああ、問題ない」
「ふふふっ、やはり君たちには円舞曲ワルツを踊ってもらおう! お相手はコイツらだよ! 出てこい『竜兵召喚』!」


 上空で地上を見下ろすように叫ぶウァラク。その叫びと同時に、地面がポツポツと隆起し始める。


「これは⋯⋯!」
「全部が⋯⋯か?」


 隆起する土塚のサイズは人間の子供くらい。しかし、その範囲は決闘場コロッセオのほぼ全域。その一つ一つを数えても計り知れない。


「さあ! 踊れ踊れ舞い踊れ!」

「「「「「「ギャアアアアアアアアァッッッッ」」」」」」


 そして、一つの土塚からあれよあれよと小型の竜が這い出てくる。
 竜達は二足歩行を行い、片手には円形の盾をもう片方には鋭く研ぎ澄まされた蛮刀が握られている。
 計り知れない数の竜兵はその数倍の数を持って鬼龍と流の前に姿を見せた。


「この数で円舞曲ワルツだと⋯⋯? 幻想曲ファンタジアを聞かされてる気分であるぞ⋯⋯!」
「ゆ、ユウちゃん⋯⋯この数は流石にマズイよ⋯⋯」
「いえ、ここで問題なのはこれ以上増えるかです⋯⋯が、あの生意気なガキを見るに恐らく魔力は余裕なのでしょうね」


 ダンジョン組が苦言を吐きながら考察を述べる。


「どうする神龍よ? 流石に無限に湧き出る竜兵を相手にはできぬし、放っておくことも危険だぞ?」
「⋯⋯」


 流はしばしば瞑目した。実際、流にはこの状況が容易に想定できていたし、ウァラクが無尽蔵の魔力を持っていることも知っていた。
 なぜなら既に——











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 名前:ウァラク
 種族:悪魔
 性別:男
 Lv:666(固定)
 HP:SS(固定)
 MP:SS(固定)
 技能:竜兵召喚<->、一身竜体<->、騎竜術<10>、槍術<10>、弓術<9>、闇魔法<9>、空間魔法<9>、深淵魔法<->
    身体強化<9>、交渉術<8>
 称号:竜騎兵、選ばれし悪魔、悪魔総裁、竜を狩る者、龍殺し
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 鑑定眼で見えているのだから。ただ——


(言えないんだよな⋯⋯この数値。明らかに不安を煽るだけだし、正直称号が危険だし)


 ——ちょっと本人も絶望しかけていただけなのだ。


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 名前:神 流 
 種族:人族
 性別:男
 Lv:78
 HP:B
 MP:B
 技能:鑑定眼<->、聖魔法<10>、身体強化<8>、武具創造<->、二丁拳銃<8>、剣術<8>、威圧<->、降龍術<->、空間魔法<8>
 称号:聖魔法を極めし者、龍人、不治の病、魔を祓う者、神龍(?)
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 名前:桐生 優希
 種族:妖人族
 性別:男
 Lv:80
 HP:A
 MP:B
 技能:呪いの眼<->、二刀流<->、傲慢<->、剣術<10>、身体強化<10>、闇魔法<10>、鍛治<9>、錬金術<9>、
 称号:妖物のダンジョンマスター、不治の病、闇魔法を極めし者、傲慢の罪を背負う者
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