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第1章
第9話
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頭が割れるような痛みでエルは目を覚ました。
痛みを堪えながらよろよろと起き上がり回りを見渡す。どうやら自分の部屋のようだ。
顔を手で押さえ、朦朧とする頭で昨日のできごとをなんとか思い出そうと試みる。リリや他の冒険者達と酒場で騒いでいた記憶はあるが、その先が思い出せない。自分で部屋に戻ってきた記憶がないから、酒場で寝扱けてしまったところを誰かが運んでくれただろう。後でお礼を言う必要があるなと、エルは一人ごちた。
それと、さきほどから続くこの頭痛の原因は……そうだ、ライネルという冒険者にエール酒を無理やり飲まされたのだ。初めて飲んだ酒は苦味が強く少しも美味いとは感じなかったが、アルコールのせいで酔いが回り普段では考えられないくらい騒いだのだ。あんなにしゃべったのはいつ以来だろうと、つい苦笑してしまう。
また、他の冒険者の話を聞いて改めてわかったことがある。この宿の客はルーキーか下位冒険者だ。皆事情は違えど、この都市には身を立て冒険者として成功するために来ている。共感を抱く部分も多く親近感が芽生えた。それに実際に話してみてると、以外と気の良い連中が多い。同じ冒険者であるから共通の話題も事欠かないので、口下手なエルでも杯を交わし談笑できた。
もっと早くに話せばよかったと悔恨の念にかられたが、元々故郷でも友達がほとんどおらず修行ばかりしていたので自分から話し掛けるのは抵抗がある。やはり、昨日のように話し掛けられねば顔見知りになることは無理だったろうと、自分の不甲斐なさにため息が出る。
突然お腹が鳴り始め自分の存在を主張し始めたので、着替えて部屋を出ることにした。
ひっきりなしに苛む頭痛を我慢し、足元がおぼつかないまま1階の酒場に降りエルは空いてるテーブルに突っ伏した。エルが苦痛に呻いていると声が掛けられる。
「具合が悪そうだが、どうした?」
ゆっくり頭を上げると、宿主のシェーバが心配そうにエルを覗き込んでいる。虚勢を張っても仕方ないので、エルは正直に二日酔いを白状する。
「昨日初めてお酒を飲んだんですが、頭が割れそうです。
二日酔いだと思うんですが……」
「なんだ二日酔いか。
今薬を持ってきてやるから大人しくしてな」
「それと……、すいませんが朝食もお願いします」
「わかった、わかった。
ちょっと待ってな」
「すいません。よろしくお願いします」
去って行くシェーバを後目にエルは再びテーブルに突っ伏した。二日酔いに苦しみながら、二度と酒は飲むまいと密かに誓うのだった。
そんな情けない姿のエルに野太い大声がかかる。
「なんだ、エル坊。
情けない格好しやがって、どうしたんだ?」
大声が頭が響いて痛い。苦痛に顔を顰めながら頭を上げると、金属鎧を身に纏い大剣を背負った大柄な男が立っていた。肉食獣を連想させる鋭い容貌に愛嬌のある男臭い笑みが浮かべている。昨夜、エルにさんざん酒を飲ませたライネルだ。エルは頭の痛みも手伝ってライネルに皮肉を返す。
「ライネルさんがいっぱいお酒を飲ませてくれたので頭が痛いんですよ。
それに坊やは止めてください」
エルの返答を聞くと、ライネルは一瞬きょとんとした後大笑いを始めた。あまりに笑い過ぎて気管に詰まったようで、むせている。そこまで笑わなくてもいいじゃないかとエルが非難の視線を送ると、ようやく笑うのを止めライネルは謝罪を口にする。
「いやぁ、悪い。
あまりにおかしくってな。
そんなに飲ませた覚えはないが、酒も飲めないようじゃあ坊やって言われても仕方ないぜ」
「酒は体に合わないんです。
もう飲みません」
エルの返答がおかしいのか、ライネルはまた笑い出してしまう。あまりに笑われるので、エルは憮然とした表情になる。何か言い返してやろうとした所に、横から声が掛けられる。
「ライネル。
エル君が可愛いのはわかるけど、あんまりからかわないの」
声がした方を振り向くと、弓を担いだ軽装の女性に槍を持つ細身で長身の男性、そして、純白のローブを身に着けた女性が立っていた。ライネルの冒険者仲間だ。たしか4人でパーティを組んで24階層辺りを探索していると言っていたなと、昨日自己紹介されたことを思い出す。今話し掛けてきたのは弓を担いでいるエミリーだ。冷静沈着で芯の強そうな女性である。きっとパーティのまとめ役なのだろう。
「いやあ、エル坊があんまりおかしいんでなあ」
「はいはい、もう笑わないの。
確かにエル君は可愛いけれど、これでも下位冒険者なんだから」
「可愛いって……。
エミリーさんもからかわないでくださいよ」
「ごめんなさい。
でも、エル君が可愛いのは本当よ」
「そうですね。エル君は本当にかわいいです」
落ち着いた心安らぐ声が賛同を示す。純白のローブを着たクリスだ。鈴の音が鳴るような澄んだ声と柔和な笑顔を持つ、人を穏やかにさせる女性だ。この2つ星を有する冒険者のパーティの面々と比べると、エルの方が大分若い。しかも、童顔のせいも相まってエルは余計に幼く見える。弟をかまうような気分になるのかもしれない。
「まあ、そんな可愛いエル君も1人で小鬼の王を倒せるだから大したものよ」
「そうだな。
しかも聞けば、素手で殴り殺したんだからよくやるなと感心したもんだ。
俺たちが倒した時も大分苦戦したよな?」
「ええ、弓も剣もあの固い皮膚に弾かれて大変だったのを覚えてるわ」
「何ですか、皆さん。
からかってたと思ったら褒めだして……」
エルが不審そうにライネル達を見つめると、その反応が可愛らしく映るのかまた笑い声が上がる。むくれるエルに、慌ててエミリーが取成す。
「エル君、そう怒らないの。
笑ったのは謝るけど、エル君のこと褒めてるのは本当のことよ」
「ああ、反応が面白いからついからかっちまったが、お前のことはよく頑張ってると思ってるぜ」
「それならいいですけど……」
「エル君との世間話も楽しいけど、そろそろ出発しましょ。
迷宮が待ってるわ」
これからライネル達は迷宮探索の予定なのだろう。全員しっかり装備を整えている。出発前にエルを見つけて声を掛けてくれたのだ。子ども扱いされるのは癪だが、心配して声を掛けてくれたのだからと笑顔で送り出すことにした。
「皆さん、迷宮探索頑張ってください」
「おう、エル坊も頑張れよ」
「じゃあね、エル君」
「エル君、またね」
口々にエルに別れを告げると、ライネル達は迷宮を目指して去って行った。
こんな朝もたまには悪くないかな、とつぶやきながらエルは再びテーブルに突っ伏すのだった。
エルがようやく調子を取り戻したのは、シェーバに酔い覚ましの薬をもらい朝食も食べ終わってからのことだった。薬は即効性が強く、体内の残存アルコールを立ち所に分解してくれたのか、エルを苦しめた頭の痛みもいつのまにか無くなっていた。
体が元気になるとやる気も出たのか、シェーバに快活な声で礼を述べ朝食の代金よりも多めに渡すと勢いよく宿を飛び出す。
今日は何と言っても武の神の神殿に再び訪れる日である。情けないところは見せられないと、さっきまでの姿がまるで嘘のように気を漲らせるのだった。
神殿区画を通り抜け、再び武の神が奉られている巨大な白亜の神殿の前に立つ。この神殿に来るのも随分久しぶりだと、感慨に耽りそうになるが直ぐ様頭振って思い直し、門番に要件を告げ中に通してもらう。
礼拝堂のようなところで待っていると、以前にも会ったことのある金髪の神官が歩み寄ってくる。
「エルよ。
君と再び会えるのを楽しみにしていたよ」
「僕も神官様に再会できてうれしいです。
冒険者カードをどうぞ。
昨日付けで下位冒険者になりました」
「うむ、確かに。
見事5階層を踏破し、下位冒険者になったようだな。
エルはこれで神殿の技術を学べる資格を得たことになるが、神殿の技術は多岐にわたる。
剣術、槍術、斧術、盾術、格闘術など様々なものがあるが、きみは何を望む?」
「はい、無手の格闘術を学びたいです」
エルの返答を聞くと神官は微笑む。神官の琴線に触れる部分があったのだろう。
「よろしい。
この神官アルドが直接武神流の格闘術を指導しよう。
ついて来なさい」
言われるままアルドについて行くと、礼拝堂を抜けどんどん神殿の奥に向って行く。どこに行くか想像できないが、エルは神妙な顏でアルドにつき従う。
「昨今の風潮のせいか剣術などの武器術を学ぶために門戸を叩く者は多いが、嘆かわしいことに格闘術を志望するものは少ないのだ。
英雄譚の主役は、往々にして剣士の場合が多いのでね……」
確かに有名な英雄譚や多くの伝説に登場する主人公するケースが多いと、エルはアルドの後を追いながら相槌をうつ。
「この神殿には様々な武術を教える神官がいるが、格闘術は少数派になる。
修行者の数も少ないから肩身が狭くてね……」
苦々しそうに現状を告白するアルドに、エルはどう答えていいかわからず頷くだけに留める。
「だからエルが格闘術を学びたいと言ってくれたのはうれしかったよ」
喜びを隠しきれずに笑みを浮かべ、アルドの口調も砕けたものになっている。アルドは壮年に差し掛かったばかりのまだ若い神官である。青年といっても十分通用する容貌で、砕けた口調の方が似合っているように感じる。アルドがまだ若い神官であることも、肩身が狭い要因であるのかもしれない。
「さあ着いたぞ。
ここが神殿の修練場だ」
神殿の裏側には、巨大な塀に囲まれた修練場があった。そこかしこで修行者達が鍛錬を積んでいる。アルドが言う通り武器を持った修行者が大半で、格闘術の稽古を行っているものは見受けられない。
いつのまにかアルドは修練場に向って歩いて行る。修行者達の熱気に当てられてエルは放心していたが、 取る物も取り敢えずアルドの後を追って駆け出した。やがて、修練場の隅にまで来るとアルドは立ち止まる。ここが、格闘技の鍛錬をする場所ということだろう。修練所の隅というは、おそらく格闘技者の修行者が少ないことが関係しているのだろう。これもアルドが居心地が悪いと感じる要因かもしれない。
「さて今から修行始めるが、エルには3日間で基礎的な技術を教える予定だ。
その後はエルの成長度合いに合わせて順次教えていく」
「はい。よろしくお願いします」
エルは深々と頭を下げる。
そんなエルにアルドは満足そうに頷くと、徐に右手を上げる。
「今日教えることは一つだけだ。
それは気の扱いかたについてだ」
アルドの右手にゆっくりと金色の光が集まり始め、間もなく球状になり掌の上に浮かんでいる。
迷宮では幾度も魔法使いの魔法を受けてきたエルである。神秘の力を見るのは慣れているが、自分が使えるようになるとは想像すらしておらず虚を突かれ立ち尽くしてしまう。茫然自失のエルを落ち着かせるように、低く悠々たる声でアルドが語りかけた。
「エル、5階層を踏破したのだから魔法などの神秘の力を見かけただろう?
気の力も魔法と同じ神秘の力であるが、迷宮ではありふれたものなのだ」
「これがありふれた力……」
アルドの手のひらに浮かぶ気の塊を見ながら、信じられないとエルはつぶやく。この神秘の力が自分の物になるというのが、どうしても思い描けない。
不安を隠しきれないエルに、アルドはゆっくりとした声音で諭す。
「エルが信じられない気持ちはわかる。
気の力は普通なら長い修行の果てに身に付けるものであるからだ。
だが、我々冒険者は違う。
冒険者は迷宮の魔物を倒し魔素を吸収することで、心身ともに飛躍的に強化される。
エルもすでに一般市民とは隔絶した力を身に付けていることはわかるだろう?」
「それは……、わかります」
今のエルなら軽く跳躍しただけで、自分の頭より高く跳べる。自慢の拳を振るえば、煉瓦の壁だとて簡単に粉砕できるだろう。アルドの問いには、是としか答えようがない。魔素の吸収がそれだけ凄まじい恩恵を与えてくれるのならば、神秘の力も使える可能性もあるのでないかと、にわかに活気づき始めるエルの前にアルドが気の玉を掲げる。
「エルよ。
お前は5階層を踏破することで、すでに気を扱える素養ができている。
この気の玉を受け取り、自分の中の気の力に呼び覚ますのだ」
エルは恐る恐る手を伸ばす。アルドから宝物を抱くように両手でしっかり受け取ると、気の玉はエルを包むように広がりだした。
エルはたちまち全身を金色の光に包まれる。
思わず目を閉じると、武の神の信徒になる際に浴びた洗礼の光に包まれた感覚を想起した。
金色の気は洗礼の光を同様に柔らかくて暖かく、光に抱かれると心身が癒される。
肉体の隅々にまで光が行き渡り、エルを構成する細胞一つ一つが生まれ変わるような、何かに呼び覚まされるような感覚に陥る。
どれだけ時間が経っただろう。
法悦にひたるエルにはわからなかったが、いつのまにか体の中から湧き上がるなにかがあることを知覚した。
体のそこかしこから自分が包まれているのと同様の暖かなものが、こんこんと溢れ出すのを感じる。
うっすらと目を開けると、エルの体を白い靄のようなものが立ち昇っている。
これが気なのだろうか。
「そうだ、それが気だ。
今のエルは体中からただ気を放出しているだけの状態だ。
私と同じ様にあふれ出す気を押し止め、右手に集中させるのだ」
アルドは見本を見せるために右手に気を集中させる。エルも右手に気を集めようとするが中々上手くいかない。
「慣れるまで難しいかもしれないが、目的の場所に気が移動することを想像するんだ。
まずは心を落ち着かせて、ゆっくり気を移動させなさい」
アルドに言われるまま、エルは身体中から湧き上がる気を移動させようとするが一向にできない。
全体を移動させようとするから無理なのかもしれないと思い直し、エルは右腕のみに集中することにした。
右肩から湧き出る気が上腕に移動するように想像する。
再び目を閉じ、暖かな気が移動する様を思い描く。
大きく息を吸い込んで深呼吸しながら、繰り返し繰り返し思い描く。
すると、エルの思いに答えるように次第に気が動きだし始める。
肩の気が遅遅とした歩みで上腕部に流れ出す。
長い長い時間をかけて、ようやくエルは拳に気を移動させることに成功した。
「よし、初めてにしては上出来だ。
慣れない身でよくやった。
そのまま気を籠めた拳で突きを放つのだ。
これを武人拳と言う」
アルドが金色の気を集中させた右拳で中段突きを放つ。エルも後について自身の純白の気を纏った右拳で中段突きを行う。
「そうだ、その突きが武人拳だ。
その拳は安易に人に向けてはいかんぞ。
恐ろしいことになる」
速度自体は気を纏わない突きと変わらないが、威力が段違いになるということだろう。新たに得た神秘の力に興奮が治まらない。はしゃぎだしたい気分だ。
「何故武人拳と呼ぶか説明しておこう。
武神流では気の技を初めて習う際に、絶対に武人の名を冠する技を習う。
これは戒めであり、己が何者であるか自覚させるためのものなのだ。
我々は、迷宮探索を生業とする冒険者であり、魔物と戦う戦闘者でもある。
だが、武の神を信仰する武人であることを忘れてはならない。
武人とは、闘う者でありながら高い道徳と礼節を兼ね備えた人物の事を言う。
エルよ。己が身を鍛えると共に、心も鍛えるのだ。
我々が拳を振るうのは魔物や同じ戦闘者に対してのみであり、決して無辜の民に振るうものではない。
この戒めを破りし時は、もはや武人ではなくただの畜生である事を努々忘れるな」
アルドの言葉に忽ち冷水を浴びせられた気分になる。
ただ伝説の冒険者に憧れ強くなるためだけに武の神を信仰した自分が、そんな高潔な人物になれるのか想像すらできない。
顔を青褪めさせたエルを安心させるように、アルドは笑いかける。
「いきなり武人になれと言われて心構えもできないかもしれないが、焦ることはない。
初めは犯罪を犯さないぐらいの気持ちからでもいいのだ。
徐々に礼節を弁え、己が拳を振るう理由を見つければいい」
「僕は武人になれるでしょうか?」
「それはエル次第だが、決して諦めず心も身体も研鑽を積めばいつかきっとなれるさ。
さて、今日私が教えることは以上だ。
左右の拳で交互に武人拳を放つ練習をしなさい。
繰り返し鍛錬することで気の使い方も慣れてくる」
「アルド神官、ご指導ありがとうございました」
「うむ、修行に励めよ。
明日も早いぞ」
アルドは颯爽と神殿に去って行った。
エルはじっと拳を見つめる。
そんな立派な人物に慣れるのだろうかと不安は尽きない。
だが、神官も言っていたように、今すぐではなく遠い未来に武人に成れればいいのだと思い改める。
今自分にできることをしようと意を決し、エルは一心不乱に修行に励むのだった。
痛みを堪えながらよろよろと起き上がり回りを見渡す。どうやら自分の部屋のようだ。
顔を手で押さえ、朦朧とする頭で昨日のできごとをなんとか思い出そうと試みる。リリや他の冒険者達と酒場で騒いでいた記憶はあるが、その先が思い出せない。自分で部屋に戻ってきた記憶がないから、酒場で寝扱けてしまったところを誰かが運んでくれただろう。後でお礼を言う必要があるなと、エルは一人ごちた。
それと、さきほどから続くこの頭痛の原因は……そうだ、ライネルという冒険者にエール酒を無理やり飲まされたのだ。初めて飲んだ酒は苦味が強く少しも美味いとは感じなかったが、アルコールのせいで酔いが回り普段では考えられないくらい騒いだのだ。あんなにしゃべったのはいつ以来だろうと、つい苦笑してしまう。
また、他の冒険者の話を聞いて改めてわかったことがある。この宿の客はルーキーか下位冒険者だ。皆事情は違えど、この都市には身を立て冒険者として成功するために来ている。共感を抱く部分も多く親近感が芽生えた。それに実際に話してみてると、以外と気の良い連中が多い。同じ冒険者であるから共通の話題も事欠かないので、口下手なエルでも杯を交わし談笑できた。
もっと早くに話せばよかったと悔恨の念にかられたが、元々故郷でも友達がほとんどおらず修行ばかりしていたので自分から話し掛けるのは抵抗がある。やはり、昨日のように話し掛けられねば顔見知りになることは無理だったろうと、自分の不甲斐なさにため息が出る。
突然お腹が鳴り始め自分の存在を主張し始めたので、着替えて部屋を出ることにした。
ひっきりなしに苛む頭痛を我慢し、足元がおぼつかないまま1階の酒場に降りエルは空いてるテーブルに突っ伏した。エルが苦痛に呻いていると声が掛けられる。
「具合が悪そうだが、どうした?」
ゆっくり頭を上げると、宿主のシェーバが心配そうにエルを覗き込んでいる。虚勢を張っても仕方ないので、エルは正直に二日酔いを白状する。
「昨日初めてお酒を飲んだんですが、頭が割れそうです。
二日酔いだと思うんですが……」
「なんだ二日酔いか。
今薬を持ってきてやるから大人しくしてな」
「それと……、すいませんが朝食もお願いします」
「わかった、わかった。
ちょっと待ってな」
「すいません。よろしくお願いします」
去って行くシェーバを後目にエルは再びテーブルに突っ伏した。二日酔いに苦しみながら、二度と酒は飲むまいと密かに誓うのだった。
そんな情けない姿のエルに野太い大声がかかる。
「なんだ、エル坊。
情けない格好しやがって、どうしたんだ?」
大声が頭が響いて痛い。苦痛に顔を顰めながら頭を上げると、金属鎧を身に纏い大剣を背負った大柄な男が立っていた。肉食獣を連想させる鋭い容貌に愛嬌のある男臭い笑みが浮かべている。昨夜、エルにさんざん酒を飲ませたライネルだ。エルは頭の痛みも手伝ってライネルに皮肉を返す。
「ライネルさんがいっぱいお酒を飲ませてくれたので頭が痛いんですよ。
それに坊やは止めてください」
エルの返答を聞くと、ライネルは一瞬きょとんとした後大笑いを始めた。あまりに笑い過ぎて気管に詰まったようで、むせている。そこまで笑わなくてもいいじゃないかとエルが非難の視線を送ると、ようやく笑うのを止めライネルは謝罪を口にする。
「いやぁ、悪い。
あまりにおかしくってな。
そんなに飲ませた覚えはないが、酒も飲めないようじゃあ坊やって言われても仕方ないぜ」
「酒は体に合わないんです。
もう飲みません」
エルの返答がおかしいのか、ライネルはまた笑い出してしまう。あまりに笑われるので、エルは憮然とした表情になる。何か言い返してやろうとした所に、横から声が掛けられる。
「ライネル。
エル君が可愛いのはわかるけど、あんまりからかわないの」
声がした方を振り向くと、弓を担いだ軽装の女性に槍を持つ細身で長身の男性、そして、純白のローブを身に着けた女性が立っていた。ライネルの冒険者仲間だ。たしか4人でパーティを組んで24階層辺りを探索していると言っていたなと、昨日自己紹介されたことを思い出す。今話し掛けてきたのは弓を担いでいるエミリーだ。冷静沈着で芯の強そうな女性である。きっとパーティのまとめ役なのだろう。
「いやあ、エル坊があんまりおかしいんでなあ」
「はいはい、もう笑わないの。
確かにエル君は可愛いけれど、これでも下位冒険者なんだから」
「可愛いって……。
エミリーさんもからかわないでくださいよ」
「ごめんなさい。
でも、エル君が可愛いのは本当よ」
「そうですね。エル君は本当にかわいいです」
落ち着いた心安らぐ声が賛同を示す。純白のローブを着たクリスだ。鈴の音が鳴るような澄んだ声と柔和な笑顔を持つ、人を穏やかにさせる女性だ。この2つ星を有する冒険者のパーティの面々と比べると、エルの方が大分若い。しかも、童顔のせいも相まってエルは余計に幼く見える。弟をかまうような気分になるのかもしれない。
「まあ、そんな可愛いエル君も1人で小鬼の王を倒せるだから大したものよ」
「そうだな。
しかも聞けば、素手で殴り殺したんだからよくやるなと感心したもんだ。
俺たちが倒した時も大分苦戦したよな?」
「ええ、弓も剣もあの固い皮膚に弾かれて大変だったのを覚えてるわ」
「何ですか、皆さん。
からかってたと思ったら褒めだして……」
エルが不審そうにライネル達を見つめると、その反応が可愛らしく映るのかまた笑い声が上がる。むくれるエルに、慌ててエミリーが取成す。
「エル君、そう怒らないの。
笑ったのは謝るけど、エル君のこと褒めてるのは本当のことよ」
「ああ、反応が面白いからついからかっちまったが、お前のことはよく頑張ってると思ってるぜ」
「それならいいですけど……」
「エル君との世間話も楽しいけど、そろそろ出発しましょ。
迷宮が待ってるわ」
これからライネル達は迷宮探索の予定なのだろう。全員しっかり装備を整えている。出発前にエルを見つけて声を掛けてくれたのだ。子ども扱いされるのは癪だが、心配して声を掛けてくれたのだからと笑顔で送り出すことにした。
「皆さん、迷宮探索頑張ってください」
「おう、エル坊も頑張れよ」
「じゃあね、エル君」
「エル君、またね」
口々にエルに別れを告げると、ライネル達は迷宮を目指して去って行った。
こんな朝もたまには悪くないかな、とつぶやきながらエルは再びテーブルに突っ伏すのだった。
エルがようやく調子を取り戻したのは、シェーバに酔い覚ましの薬をもらい朝食も食べ終わってからのことだった。薬は即効性が強く、体内の残存アルコールを立ち所に分解してくれたのか、エルを苦しめた頭の痛みもいつのまにか無くなっていた。
体が元気になるとやる気も出たのか、シェーバに快活な声で礼を述べ朝食の代金よりも多めに渡すと勢いよく宿を飛び出す。
今日は何と言っても武の神の神殿に再び訪れる日である。情けないところは見せられないと、さっきまでの姿がまるで嘘のように気を漲らせるのだった。
神殿区画を通り抜け、再び武の神が奉られている巨大な白亜の神殿の前に立つ。この神殿に来るのも随分久しぶりだと、感慨に耽りそうになるが直ぐ様頭振って思い直し、門番に要件を告げ中に通してもらう。
礼拝堂のようなところで待っていると、以前にも会ったことのある金髪の神官が歩み寄ってくる。
「エルよ。
君と再び会えるのを楽しみにしていたよ」
「僕も神官様に再会できてうれしいです。
冒険者カードをどうぞ。
昨日付けで下位冒険者になりました」
「うむ、確かに。
見事5階層を踏破し、下位冒険者になったようだな。
エルはこれで神殿の技術を学べる資格を得たことになるが、神殿の技術は多岐にわたる。
剣術、槍術、斧術、盾術、格闘術など様々なものがあるが、きみは何を望む?」
「はい、無手の格闘術を学びたいです」
エルの返答を聞くと神官は微笑む。神官の琴線に触れる部分があったのだろう。
「よろしい。
この神官アルドが直接武神流の格闘術を指導しよう。
ついて来なさい」
言われるままアルドについて行くと、礼拝堂を抜けどんどん神殿の奥に向って行く。どこに行くか想像できないが、エルは神妙な顏でアルドにつき従う。
「昨今の風潮のせいか剣術などの武器術を学ぶために門戸を叩く者は多いが、嘆かわしいことに格闘術を志望するものは少ないのだ。
英雄譚の主役は、往々にして剣士の場合が多いのでね……」
確かに有名な英雄譚や多くの伝説に登場する主人公するケースが多いと、エルはアルドの後を追いながら相槌をうつ。
「この神殿には様々な武術を教える神官がいるが、格闘術は少数派になる。
修行者の数も少ないから肩身が狭くてね……」
苦々しそうに現状を告白するアルドに、エルはどう答えていいかわからず頷くだけに留める。
「だからエルが格闘術を学びたいと言ってくれたのはうれしかったよ」
喜びを隠しきれずに笑みを浮かべ、アルドの口調も砕けたものになっている。アルドは壮年に差し掛かったばかりのまだ若い神官である。青年といっても十分通用する容貌で、砕けた口調の方が似合っているように感じる。アルドがまだ若い神官であることも、肩身が狭い要因であるのかもしれない。
「さあ着いたぞ。
ここが神殿の修練場だ」
神殿の裏側には、巨大な塀に囲まれた修練場があった。そこかしこで修行者達が鍛錬を積んでいる。アルドが言う通り武器を持った修行者が大半で、格闘術の稽古を行っているものは見受けられない。
いつのまにかアルドは修練場に向って歩いて行る。修行者達の熱気に当てられてエルは放心していたが、 取る物も取り敢えずアルドの後を追って駆け出した。やがて、修練場の隅にまで来るとアルドは立ち止まる。ここが、格闘技の鍛錬をする場所ということだろう。修練所の隅というは、おそらく格闘技者の修行者が少ないことが関係しているのだろう。これもアルドが居心地が悪いと感じる要因かもしれない。
「さて今から修行始めるが、エルには3日間で基礎的な技術を教える予定だ。
その後はエルの成長度合いに合わせて順次教えていく」
「はい。よろしくお願いします」
エルは深々と頭を下げる。
そんなエルにアルドは満足そうに頷くと、徐に右手を上げる。
「今日教えることは一つだけだ。
それは気の扱いかたについてだ」
アルドの右手にゆっくりと金色の光が集まり始め、間もなく球状になり掌の上に浮かんでいる。
迷宮では幾度も魔法使いの魔法を受けてきたエルである。神秘の力を見るのは慣れているが、自分が使えるようになるとは想像すらしておらず虚を突かれ立ち尽くしてしまう。茫然自失のエルを落ち着かせるように、低く悠々たる声でアルドが語りかけた。
「エル、5階層を踏破したのだから魔法などの神秘の力を見かけただろう?
気の力も魔法と同じ神秘の力であるが、迷宮ではありふれたものなのだ」
「これがありふれた力……」
アルドの手のひらに浮かぶ気の塊を見ながら、信じられないとエルはつぶやく。この神秘の力が自分の物になるというのが、どうしても思い描けない。
不安を隠しきれないエルに、アルドはゆっくりとした声音で諭す。
「エルが信じられない気持ちはわかる。
気の力は普通なら長い修行の果てに身に付けるものであるからだ。
だが、我々冒険者は違う。
冒険者は迷宮の魔物を倒し魔素を吸収することで、心身ともに飛躍的に強化される。
エルもすでに一般市民とは隔絶した力を身に付けていることはわかるだろう?」
「それは……、わかります」
今のエルなら軽く跳躍しただけで、自分の頭より高く跳べる。自慢の拳を振るえば、煉瓦の壁だとて簡単に粉砕できるだろう。アルドの問いには、是としか答えようがない。魔素の吸収がそれだけ凄まじい恩恵を与えてくれるのならば、神秘の力も使える可能性もあるのでないかと、にわかに活気づき始めるエルの前にアルドが気の玉を掲げる。
「エルよ。
お前は5階層を踏破することで、すでに気を扱える素養ができている。
この気の玉を受け取り、自分の中の気の力に呼び覚ますのだ」
エルは恐る恐る手を伸ばす。アルドから宝物を抱くように両手でしっかり受け取ると、気の玉はエルを包むように広がりだした。
エルはたちまち全身を金色の光に包まれる。
思わず目を閉じると、武の神の信徒になる際に浴びた洗礼の光に包まれた感覚を想起した。
金色の気は洗礼の光を同様に柔らかくて暖かく、光に抱かれると心身が癒される。
肉体の隅々にまで光が行き渡り、エルを構成する細胞一つ一つが生まれ変わるような、何かに呼び覚まされるような感覚に陥る。
どれだけ時間が経っただろう。
法悦にひたるエルにはわからなかったが、いつのまにか体の中から湧き上がるなにかがあることを知覚した。
体のそこかしこから自分が包まれているのと同様の暖かなものが、こんこんと溢れ出すのを感じる。
うっすらと目を開けると、エルの体を白い靄のようなものが立ち昇っている。
これが気なのだろうか。
「そうだ、それが気だ。
今のエルは体中からただ気を放出しているだけの状態だ。
私と同じ様にあふれ出す気を押し止め、右手に集中させるのだ」
アルドは見本を見せるために右手に気を集中させる。エルも右手に気を集めようとするが中々上手くいかない。
「慣れるまで難しいかもしれないが、目的の場所に気が移動することを想像するんだ。
まずは心を落ち着かせて、ゆっくり気を移動させなさい」
アルドに言われるまま、エルは身体中から湧き上がる気を移動させようとするが一向にできない。
全体を移動させようとするから無理なのかもしれないと思い直し、エルは右腕のみに集中することにした。
右肩から湧き出る気が上腕に移動するように想像する。
再び目を閉じ、暖かな気が移動する様を思い描く。
大きく息を吸い込んで深呼吸しながら、繰り返し繰り返し思い描く。
すると、エルの思いに答えるように次第に気が動きだし始める。
肩の気が遅遅とした歩みで上腕部に流れ出す。
長い長い時間をかけて、ようやくエルは拳に気を移動させることに成功した。
「よし、初めてにしては上出来だ。
慣れない身でよくやった。
そのまま気を籠めた拳で突きを放つのだ。
これを武人拳と言う」
アルドが金色の気を集中させた右拳で中段突きを放つ。エルも後について自身の純白の気を纏った右拳で中段突きを行う。
「そうだ、その突きが武人拳だ。
その拳は安易に人に向けてはいかんぞ。
恐ろしいことになる」
速度自体は気を纏わない突きと変わらないが、威力が段違いになるということだろう。新たに得た神秘の力に興奮が治まらない。はしゃぎだしたい気分だ。
「何故武人拳と呼ぶか説明しておこう。
武神流では気の技を初めて習う際に、絶対に武人の名を冠する技を習う。
これは戒めであり、己が何者であるか自覚させるためのものなのだ。
我々は、迷宮探索を生業とする冒険者であり、魔物と戦う戦闘者でもある。
だが、武の神を信仰する武人であることを忘れてはならない。
武人とは、闘う者でありながら高い道徳と礼節を兼ね備えた人物の事を言う。
エルよ。己が身を鍛えると共に、心も鍛えるのだ。
我々が拳を振るうのは魔物や同じ戦闘者に対してのみであり、決して無辜の民に振るうものではない。
この戒めを破りし時は、もはや武人ではなくただの畜生である事を努々忘れるな」
アルドの言葉に忽ち冷水を浴びせられた気分になる。
ただ伝説の冒険者に憧れ強くなるためだけに武の神を信仰した自分が、そんな高潔な人物になれるのか想像すらできない。
顔を青褪めさせたエルを安心させるように、アルドは笑いかける。
「いきなり武人になれと言われて心構えもできないかもしれないが、焦ることはない。
初めは犯罪を犯さないぐらいの気持ちからでもいいのだ。
徐々に礼節を弁え、己が拳を振るう理由を見つければいい」
「僕は武人になれるでしょうか?」
「それはエル次第だが、決して諦めず心も身体も研鑽を積めばいつかきっとなれるさ。
さて、今日私が教えることは以上だ。
左右の拳で交互に武人拳を放つ練習をしなさい。
繰り返し鍛錬することで気の使い方も慣れてくる」
「アルド神官、ご指導ありがとうございました」
「うむ、修行に励めよ。
明日も早いぞ」
アルドは颯爽と神殿に去って行った。
エルはじっと拳を見つめる。
そんな立派な人物に慣れるのだろうかと不安は尽きない。
だが、神官も言っていたように、今すぐではなく遠い未来に武人に成れればいいのだと思い改める。
今自分にできることをしようと意を決し、エルは一心不乱に修行に励むのだった。
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