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第4章
第71話
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「ほらっ、エルのんびりしていないで。早く早く」
「リリ、そんなに急がなくてもいいじゃないか」
満面の笑みを浮かべエルの手を引く金の牡羊亭の看板娘、リリに急かされ少年も少女に引っ張られるようにしてしぶしぶ走り出した。
「時間は限られてるのよ。ぐずぐずしてたら勿体無いじゃない」
「いや、まあ、それはそうなんだけど……」
「はいはい、ぼやかないの。買い物が早く終わったら、今美味しいって噂になってるお店に連れて行ってあげるから、さっさと済ませちゃいましょ」
「わかった、わかったよ。美味しい料理には興味があるから、ちゃんと走るよ」
「よろしい。でも私を置いていかないでね?エルは速過ぎるから、ちゃんと手加減してね?」
「もちろんわかっているさ。あっ、急ぐなら僕が抱っこして走ろうか?」
ようやく気合いを入れリリと併走する様にして大通りを駆け出したエルが、茶目っ気たっぷりの顔で問い掛けると、少女はびっくりして立ち止まり顔を真っ赤にして怒った。
「っ!? まっ、街中でそんな事したら恥ずかしいじゃない」
「はははっ、冗談だよ。こんな大通りでそんな事やったら、たちまち注目の的だからね」
「もうー。私をからかってたら後がひどいんだからね。エルが寝苦しくなる様な、変なの選んじゃうんだからね」
「ごめんごめん。ついふざけなくなってね」
「はあっ、しょうがないんだから。さっ、急ぎましょ」
何のことはない。エルがちょっとした悪戯心からした事だと分かっていたので、リリも冗談でちょっと怒った振りをしただけであった。
すぐにお互い笑顔になって並んで走り出す。秋晴れの空のもと、少年と少女は仲良く手をつなぎ、多くの人が行き交う通りを息を弾ませながら目的地を目指すのだった。
2人が訪れたのは、商業区画の大通りに面した1等地に居を構えた家具屋「酔竜の午睡」である。何代にも渡ってこの地に居を構え続ける老舗中の老舗であり、市民でも買える手頃な物から、目映いばかりの絢爛豪華な装飾を施した物、あるいは魔法を施した家具等、ありとあらゆる品が揃っている名店である。
エルとリリがこの家具屋に訪れたのは理由があった。
先日、シェーバからエルの好みに合った新しい家具を選んでくれと頼まれたからだ。というのも、エルが上位冒険者に昇格した事に端を発する。
金の雄羊亭は元々新人から下位冒険者用の宿であり、上位以上の宿とでは宿泊代金に大きな隔たりがあった。
その要因の1つが部屋の調度品や家具である。
上位冒険者ともなれば広大な迷宮を何日も探検し凶悪な魔物達としのぎを削らねばならず、冒険の疲れも下位とでは比べ物にならない。1日休んだぐらいでは蓄積した疲労や怪我は完治できないのだ。
そこで冒険者の傷を治し疲れを取るのを早めるために、高級宿では家具に回復や癒しの効果を付与した魔道具を用いているのだ。その他にも上位の迷宮の食材をふんだんに使った高級料理、酒類や御菓子類、はてはマッサージ等も専門の者を雇って提供する所まであり、1泊の値段も安宿の100倍にも上る場合もある。
エルも上位に昇格したのだから、サービスや設備の充実した宿に移る方が本人のためであろう。それにシェーバでは上位の食材を扱った事がないので、どんどん上に昇っていくであろう少年に、適切な料理、冒険者の成長を促進させてくれる迷宮の食材を使った料理を提供できないという問題もあった。つまり、金の雄羊亭で提供できる料理もサービスも何もかも、上位冒険者へ提供できるレベルには達していないのだ。
現状を鑑みれば、この宿はエルに相応しくない。
そんな現実をきちんと把握しているが故に、シェーバが家族3人で今後のエルへの対応について話し合った時、多大な恩があるが宿を移ってもらった方が彼のためになるのではないかと、珍しく弱音を吐いてしまった。
だが、リリやマリナが強硬に反対したのである。特にマリナは弱気な夫を諫め強く叱咤した。
宿の設備や知識が不足しているからと、命の恩人を他人に任せていいのかと。
エル本人に宿を変える意思がないのに、先にこちらが諦めるのかと。
私達がまず誠心誠意恩返しをすべきではないかと。
幸い薬の代金のために蓄えもあるから、エルの部屋を改装し魔法が施された家具も揃える事ができる。料理もあなたのやる気次第じゃないかと激励したのだ。
事実、マリナの奇病の治療のために必要となった薬の代金は、大金貨10枚という途方もない額だ。餓竜のキモという希少素材でしか薬を作れず、この素材を落とすレアモンスターの出現率が非常に稀なため、そこまで高額になっているのだが、エルの命を賭した献身によってその素材を入手できたので、お金は丸々余っているのだ。
シェーバがお金をエルに渡そうとしたのだが、日頃お世話になったお返しだからと、困っている人を助けるのは武人を目指す者として当然の事だからと、笑顔で拒否されたのである。
そこでマリナはお金をそのまま渡すのではなく、彼のためになる事で返そうと考えたというわけだ。
後は上位素材を適切に処理し料理を提供できるかであったが、結局の所シェーバ次第であった。普段の忙しい仕事の合間を縫って他人に教えを請い、妻の恩人に報いる気概があるかという事なのだ。
真剣に熱い期待を込めて見つめてくる母娘に対し、ついにはシェーバも決断した。どこまでやれるか分からないが、エルに見限られない限り精一杯努力して美味しい料理を提供しようと宣言したのだ。
これはエルへの恩返しのための行為であるが、ひいてはシェーバのスキルアップにもつながる。料理人としても一歩上に昇れる機会を与えて貰えたと感謝し、シェーバはエルに報いようと決めたのであった。
その後エルの意向を確認し直接自分で選んだ方がいいだろうという事になり、リリと2人で老舗の家具屋に行ってもらったというわけである。
「いらっしゃいませ」
家具屋「酔竜の午睡」に入ると穏やかな声で老齢の店主が出迎えてくれた。身なりは上等なものを使用しているようだが派手過ぎず、あくまでお客を立てこちらは一歩引きつつも上品さを損なわない、計算し尽されたコーディネートがなされていた。恭しく頭を下げる態度も執事が主人を出迎えれるようで、実に様になっている。この店ほどになると王侯貴族が訪れる事もあるので、一際礼節には気を使っているということだろう。
「こんにちは。私は金の雄羊亭を経営しているシェーバの娘、リリと言います。こっちは宿に宿泊している冒険者のエルです」
「どっ、どうもはじめまして」
「ほっほっほ。これはこれは、本日は可愛らしいお客様にご来店頂き、誠にありがとうございます」
元気に挨拶するリリや店の雰囲気に圧倒されてどもりながら頭を下げたエルを見て、老紳士は嬉しそうに笑いながら一礼した。
またその仕草も同の入っており、さして教養のないエルから見ても絵になるようで、いたく感銘を受けた。
「お客様、本日はどういったご用向きでございましょうか?」
「今日はエルの泊まっている部屋の家具を買いに来ました。上位、できれば最上位の冒険者になっても使える様なものを揃えたいんです」
「それはありがとうございます。失礼ですが、冒険者のエル様とおっしゃいましたね?」
「はい」
「よろしければお客様の冒険者カードを拝見させて頂けないでしょうか?」
「あっ、はい。どうぞ」
魔法の小袋から冒険者カードを取り出すと店主に渡した。店主はカードに記載された冒険者のランクを確認すると、直ぐに返した。
エルの着ている装備からして上位冒険者である事は判断できていたが、上位のどのランクにいるのか知るために、冒険者カードの提示を願ったというわけだ。
「5つ星という事は、もしかしたら最近上位に昇格されたのですか?」
「そうです。上位になってまだ一週間も経ってはいません」
「ふむ。それでしたら最上位冒険者用ではなく、上位の冒険者用の方がよろしいのではないでしょうか?エル様が最上位に成るまでに時間もある程度掛かるでしょうし、その時に改めて購入し直した方が費用も維持費も安く済みますが、どういたしましょうか?」
「実はエルが冒険者になってから、まだ半年ぐらいしか経っていないんです」
「!?」
少女の言葉を聞き、多くの冒険者を見てきた店主にしては本当に珍しい事に、驚きで目を見開いた。
このまだ幼さの残る少年といって差し支えのない年齢の少年は、上位冒険者の資格を有するだけでも驚くべき事なのに、昇格速度があまりにも早過ぎるのだ。
普通は冒険者に登録してから上位に昇格するまで5年は掛かる。才能豊かな者だとて2、3年は優に掛かるのが常識だ。しかし、少年のペースはそれよりも圧倒的に早い。数少ないほんの一握り、最上位冒険者で活躍する英傑達並の昇格の早さだ。
何十年とこの店の店主を務め、本物の英雄や豪傑達相手に接客した事もあるが、少女の言葉に照れて顔を赤らめる童顔の少年が彼らと肩を並べる程の才能があるとは予想だにしなかったのである。
だが、少女の言葉に嘘偽り等は一切感じられない。
わざわざ嘘を付いたり見栄を張る意味もないだかろうから、つまりは真実という事になる。この少年がそれほどの成長速度があるのならば、最上位冒険者向けの品を求めるのも頷けるというものだ。
老爺や驚愕で言葉を失い、話の腰を折った事を咳払いしつつ謝罪した。
「ごほんっ、失礼いたしました。それならば最上位に相応しい品を選ばせて頂きます。しかし、金の雄羊亭とは先代の頃からお付き合いさせて頂いておりましたが、今回は思い切った事をなさいますな。たしか、新人や下位の冒険者が安心して泊まれる宿を目指しておいでだったと記憶しておりましたが?」
「宿の方針は今でも変わっていません。でも、エルは私達家族の命の恩人なんです。彼が餓竜のキモを取ってきてくれなければ、母は生きていなかったでしょう。でも、エルが命懸けで闘ってくれたおかげで病気も治り、今では元気に走り回って働けるようになったんです」
「なるほど、その様な経緯があったのですね。自分の命を賭してまで隣人を助けるなど、そうそうできるものではありません。エル様は素晴らしい御心の持ち主のようですね」
「はい、そうなんです。エルのおかげで、私達家族は笑っていられるんです」
「リッ、リリ。もういいじゃないか。そんなに褒められても恥ずかしいし」
「いいじゃない、私は本当に感謝しているんだから。それに、これぐらいじゃ言い足りないぐらいだわ」
何というか褒められ慣れていないエルとしては、傍らの少女に自分のした事を誇らしげに語られるともうたじたじであった。どうにもむずかゆいし照れ臭い。
未だ人付き合いが苦手な少年は称賛される事事態が珍しいし、これほど純粋な好意を寄せられた事などなかったのでどう反応していいか分からなかったのだ。
少女が胸を張り少年の為した偉業を褒めちぎる。そんな少女を恥ずかしいからと、何とか止めようとする少年。
そんな微笑ましい光景に老爺は目を細め嬉しそうに笑った。
久方ぶりに他人の優しさ、人の善なる行為を見た気がしたのだ。
まだまだ世の中も捨てたものじゃない。優しく頼もしい若い芽が育ってきている事に店主は喜んだ。
「大変良い話を聞かせて頂きました。エル様にはどうか、他人を労わる優しい心を忘れずに成長して頂きたいものですね」
「そっ、そんな大した事していませんよ。ただお世話になった人達、それと親友のリリに日頃の恩返しをしただけですから」
「ううん、そんな事ないわ。エルがいてくれたからお母さんは助かったの。エルが迷宮に行ってから容体が悪化し、何度も何度も危ない時があったわ。もうだめかもしれないとあきらめかけた時、気絶寸前の疲れた体に鞭打って薬の材料を届けてくれたのは、あなただったじゃない。あの時ほどうれしかった事はないわ」
「そっ、そうかな」
感謝を口にしきらきらした瞳で好意を寄せてくるリリに対し、エルはもう嬉しいやら恥ずかしいやらで、真面に視線を合わせられなくなっていた。
そんなエルに傍らで見ていた老紳士が助け船を出す。
「エル様のした行動は誠に素晴らしいものです。その事だけは覚えてくださいませ。私も心が洗われるお話しを聞かせて頂いたお礼に、当店の自慢の品を紹介させて頂きます。もちろん、価格に関しても勉強させてもらいますよ」
「はい、よろしくお願いします。それと、家具を選んだら金の雄羊亭に届けて欲しいです。代金はその時に父が支払うという事でいいですか?」
「承知いたしました。長い付き合いをさせて頂いておりますし、前金も必要ありませんよ」
「ありがとうございます」
「いえいえ。これからも末永いお付き合いをよろしくお願いしますと、お父上にお伝えください。」
「はい、父に伝えてますね」
「それではご案内いたします」
元気良く返事するリリに柔らかい笑みを湛えた奇麗なお辞儀をすると、店主は先頭に立って歩き出した。
リリとエルは急いで老紳士の後を追い、大きな店内に所狭しと陳列してある品々を珍しそうにちらちらと横目で眺めながら付いて行った。
やがて奥まった一角、見るからに高級な物しか置いてない場所に行くととある寝台の所で立ち止まった。
木の木目をそのままに活かした造りで過度な装飾は施されていないが、良質な素材しか使っておらず、そこはかとなく醸し出される気品を感じずにはいられない、そんな良品であった。一目で格別なものだとわかる。
「エル様は美術的な価値よりも実用性の高い物の方がよろしいかと思いまして、こちらの品をご紹介させて頂きます」
「そうですね、あまりに豪華だと逆に落ち着かなくなって眠れなくなると思います」
「この品はレーヴェンの作で、材料に使っているリエン樹、木そのものを良さを追求し、素朴ながらも自然な美しさのある品でございます。それに加えて、心身を癒し回復を早める魔法陣が寝台の中に刻まれていますので回復効果も高く、最上位冒険者の方にも自信を持って推薦できる一品でございます。また、動力源は他の魔道具と同じく魔石で動き、枕元の近くに起動スイッチがございます……」
すらすらと説明する店主の説明をエルはふんふんと頷きながら聞いた。
実は半分以上頭に入っておらず、とりあえず魔法陣があって寝ると回復を早めてくれるのだと理解しておいた。
リリの方はしっかりしたもので、魔法陣の使い方や定期的な運用に掛かる費用等、どのランクの魔石がどの程度の頻度で必要なのかも聞き出している。
エルは早々にあきらめ、後で熱心に話を聞いているリリに教えてもらうことにした。店主がエルに合った品を選んでくれた事に加え、過度に主張しないながらも奥ゆかしい優美さのあるこの寝台を気に入ったので、反対する理由がなかったのである。
老店主もエルの様子から実務的な面はリリに説明した方がよろしいと判断し、細々とした注意事項を話していった。
しばらくして2人の間での話が終わると、店主はエルに向き直った。
「それでは先程のお話しのお礼として、寝具と心に安らぎを与える魔道具を付けさせて頂きますね」
「えっ、いいんですか?」
「ええ構いませんとも。御二人の話を聞いて、久しぶりに胸のすく思いをさせて頂きました。そのお礼ですので、どうかお気になさらずお受け取りください」
「あっ、ありがとうございます」
「ありがとうございます。それじゃあ、金の雄羊亭まで届けてくださいね」
「一度整備し直してからとなりますので後日という事になりますが、近日中にお届けするようにいたします」
「はい、よろしくお願いします。それでは失礼しますね。エル、お昼食べに行こっか」
「うん、そうだね。今日はありがとうございました」
「お買い上げありがとうございました」
リリに促されエルは老爺にお辞儀すると、2人連れ立って外に向かう。
老紳士はわざわざ出入り口まで見送りに付いて来ると、再び洗練された礼を見せてくれた。
時刻は少しお昼を回ったぐらいだろう。エルのお腹が鳴り勝手に自己主張し始めている。そんなエルを可笑しそうに笑うと、リリはエルの手を取って走り出すのだった。
リリがエルを連れて行ったお店は少し前にできたばかりのお店で、パスタという異国の料理を食べさせてくれるお店だった。
主人が南方諸国の出身らしく、その地方ではパンの代わりに食されているものらしい。パンもパスタも小麦を主な原料としているので、この地の人々にも受け入れ易かったのだろう。
ただし、特筆すべき点として食感の違いが挙げられる。主人が毎朝自分の手で丹精に作り上げた生パスタはもっちりとした歯応えがあり、様々な具材やソースに合わせる事によってその時々の違った顔を見せてくれる。
加えて、迷宮の食材をパスタに練り込んだり、具材に用いているそうで冒険者からも人気が高い。お値段の方は使用している材料のせいで若干高いが、それでも手が出ないほどではない。市民でも月何回か食せる価格であり、下位の冒険者でも余程困窮していなければ問題ない程度なので、昼を少し過ぎたというのに店内は大賑わいであった。
そんな中エルはというと、1食目の海老と貝のスープ仕立てのパスタがお気に召したようで、立て続けに茸と地鶏のパスタ、更にはクリームソースを胡椒や辛みのある香辛料で味付けしたパスタを注文し、猛然と食べ続けていた。
小食のリリはというと、エルから各パスタを分けてもらい其々の味を楽しみつつ、大量のパスタをあっという間に平らげ新たに注文しようかという勢いのエルを温かな笑顔で見つめていた。
先ほどエルが家具屋の店主にリリの事を親友だと紹介していたが、少女の認識ではちょっと異なる。親友であることは間違いではないが、彼女はエルに恋していたのだ。
見た目に反して大食漢の少年とは出会って半年ほどの付き合いであったが、年も近いという事もあってすぐに友達になった。普段のエルは穏やかで人畜無害そのものであるが、どこか抜けているというか、自分の興味がある事以外は本当にいい加減な所があって、しっかり者の少女としては放っておけずに色々と世話を焼いたりもした。
また、目を輝かせて自分の冒険や修行の様子を話す少年は希望に満ち溢れ、話を聞いているだけで元気を分けてもらった。こちらが落ち込んでいても、エルの話を聞けば自分も頑張ろうと自然とやる気が出てきたのだ。
彼の話す内容は血生臭く凄惨なものやあまりにもハードな修行内容である事もあったが、少女は幼い頃から冒険者との付き合いがあったので慣れっこであったし、逆によくそこまで頑張れるものだと勇気をもらったぐらいだ。
それに、一途に夢を語る少年を見るのが好きで良くせがんだりしたりもした。
田舎から出て来たという事もあって、この都市(アドリウム)の事を何も知らないので手の空いた時に案内を買って出て、2人で街を歩く事もあった。
一緒にお祭りに行ったり、露天の珍しい商品を見て回った事もあった。その時の記念として、エルに買ってもらった淡い桃色の蝶の髪留めはリリの大切な宝物だ。いつの間にか仲も深まり遠慮せずに言いたい事を言い合える、そんな親友の間柄になっていた。
そんな2人に転機が訪れたのは、母の病状が悪化し命も危ぶまれる程の危険な状態になった時だ。動転し泣き叫ぶしかできなかったリリを、エルは優しく抱きしめ落ち着くまで頭を撫でてくれた。
あの時抱きしめてくれた胸のぬくもりを思い出すと赤面して顔を覆いたくなるが、思えばあの瞬間が恋の始まりだったのだろう。普段は抜けた所もあって私が注意してやらないととどこか弟の様に見ていた少年は、見かけに反してその肉体は鍛え上げられており、リリのか細い少女の体とは別の、男の体をしていたのだ。あの胸に抱かれ髪を穏やかに撫で付けられると、荒れ狂った心も静まりその安らかさに全てを委ねてしまいたくなったくらいだ。
その後ようやく泣き止んだ少女に、きっとお母さんは良くなると、僕もリリのお母さんを助けるために頑張るからきっと助かるよと、励ましてくれた。
少女に誓った言葉に嘘はなくエルは迅速に行動を起こすと、伝手を頼って大商人に薬の材料の入手の依頼してきてくれたのだ。まさに有言実行そのものの行動であり、不安ばかり積り母の伏した枕元で看病する事しかできなかった自分とは大違いであった。
まあ結局は母の病状が急変したため依頼しても間に合わなかったのだが、もはや後三日の命と医師に告げられ誰もが絶望に打ちひしがれた中で、エルだけは諦めなかった。重い代償を支払ってでもマリナを救うために神に試練を願い出、必ず助けてみせると只独り迷宮に旅立っていったのだ。
そして見事に薬の材料を持ち帰り母の命を救ってくれたわけだが、リリはあの時ほど嬉しく感謝した事はない。
エル本人は日頃の恩返しだから気にしないでいいよなんて軽く言い、決してリリ達家族に恩着せがましくする事はなかったが、実際は決死の強行軍であり餓竜のキモを手に入れ、生きて帰れる確率は無に等しかったのだ。
後日話し渋るライネル達に何度も頼み込んで聞き出した事だが、4つ星程度の冒険者が7つ星が相手するような魔物に挑むのは無謀の極みであり、勝つ可能性など万に一つもなかっただろうと言われた時、目の前が真っ黒になった程だ。
実際本当に死ぬ寸前まで追い詰められたらしく、あの戦闘好きのエルが義兄であるライネルに珍しく弱音を零した程の劣勢だったそうだ。幾度も手足を食い千切られ、最後には片手片足の状態で竜の顎門が高速で迫るのを見て死を受け入れ掛けたと聞き、涙が溢れ止まらなくなった。
その言葉を聞いた時の衝撃は何と表現すればいいのだろう。
少年の命を賭した献身に対する感謝の心と申し訳なさ。どうしようもなく弱い自分の後ろめたさ。親友を知らずに死地に立たせていた引け目。正と負の感情が嵐のように少女の心を掻き乱し、憂いを帯びた瞳から際限なく涙を流させた。
エルは自分達には一言も言わないが、そんな死線を潜り抜けてもなお、母の病気が治ってよかったと変わらぬ笑顔を向けてくれたのだ。
滂沱の涙を流すリリをクリスが抱き締めあやしながら、そんな死の間際から起死回生の逆転ができたのはリリや皆のおかげだとあの子は言っていましたよと、優しく諭すように話聞かせてくれた。
驚いて涙で濡らした顔を上げるとクリスが笑顔で頷き、死を目前にして目を閉じかけた瞬間、泣き叫ぶリリや悲しむ私達の姿が浮かんだのだそうだと説明してくれた。その姿を見てこのままでは死ねないと気力を取り戻したのだそうだ。
そして少年は、自分1人の力では勝てなかったが、大切な人達がいたらこそこうして生きて帰れたのだと語ってくれたのだそうだ。
なんと善良で優しい心だろうか。
リリは嬉しさと喜びで、また涙が溢れ出した。
そんなリリに近寄り頭を優しく撫でると、エミリーがエルには今迄通りに接して欲しいと言ってきた。感謝され態度を変えられるとあの子が悲しむだろうと。
リリ達に言わないのは意識されて、これまで築き上げてきた間柄を壊したくないからだろうと言われたのである。
だから真相を知ってもなお、少女はエルへの態度を変えなかった。
ただし少女の心にあった恋の蕾は完全に開花し、大輪の花を咲かせていた。
普段や穏やかで素朴な笑顔が似合うエル。ちょっと物ぐさで頼りなく、自分が付いていなければと心配な所もあるエル。
夢と希望に満ち溢れ他人に勇気と元気を分けてくれ、一緒にいると笑顔になれる優しいエル。
そんな少年は少女にとって英雄(ヒーロー)であった。
どんな伝説に登場する英雄も色あせる、絶体絶命の危機を救ってくれた自分だけの英雄(ヒーロー)なのであった。
そして、自分の大好きな人だ。
きっとエルの事だ。今は少女だけの英雄(ヒーロー)かもしれないが、困った人は出会ったら見過ごせず、手を差し伸べずにはいられないだろう。
エルが自分の夢に向かって邁進し強くなっていけばいくほど、皆が彼を放っておかなくなるに違いない。いくつも偉業を成し遂げ、英雄への階梯を登っていくのだ。そんなエルに恋し恋慕の情を抱く者も、幾人も出てくるに違いない。
この世界は王侯貴族や大商人、英雄や騎士等が複数の妻を娶るのは当たり前である。王族や貴族達には自分の血を絶やさぬ義務があるし、財や力ある者には多くの者を養う余裕があり、その庇護を受けたいと思うのは当然の事であったからである。世は不平等であり、一握りの男の元に女達が集い、あぶれた弱い男は孤独な生涯を全うする。そんな弱き者が淘汰される厳しい世の中なのだ。
それから考えれば、エルは当然一握りの男の方に入る。それも飛び切り優秀で、今後絶対に女性達が放っておかないであろう事請け合いである。
ただ今ならば、まだ自分一人である。
もしかしたら、この小さな胸に秘めた思いを打ち明ければ恋仲になれるかもれない。それは想像するだけで甘美で、何度も少女を誘惑し悩ませた。
だが、少女はその行動を是としなかった。
何故なら今のエルにとっては負担にしかならないからだ。
少年は未だに無垢であり恋を知らず、友達や知り合いができただけで喜ぶほどであった。無理やり愛だ恋だのと迫っても負担にしかならないだろう。
それに、今はエルにとって大事な時期でもある。
冒険者になってまだ1年にも満たない、世間知らずの少年である。昔から冒険者が身持ちを崩す原因としては、色恋賭け事と決まっている。
上位冒険者となり迷宮の難度も魔物の強さも増して来ているというのに、ここで他の事に囚われれば挫折したり、堕落する事もあり得る。
エルならば大丈夫だとも思いたいが、人の世に絶対はない。極力負担を掛けず、自分の夢に集中させるべきなのだ。今は冒険者として成功するために力を付け、多くの事を知り成長する大事な時であるのだ。
決して相手の負担となるような恋はしない。
自分だけが幸せになる恋では、相手のためにならないのだ。
真に少年の事を想う少女の心は、一途で高潔そのものであった。
エルが成長し恋を知ったなら、その時はこの思いを打ち明けよう。
できれば自分に恋してくれたなら、それに勝る喜びはないだろう。
だが、それは今ではない。
今はエルを支え安らげる場所になろう。
それが恩人であり恋を寄せる少年への、相手の事を第一に願う少女の清らかで清廉な想いであった。
ただ、こうして偶にの休みに楽しむのは許してほしい。
少年の気晴らしに付き合い、街を2人で散策して楽しむ事くらいは大目に見てもらいたい。
胸の淡い思いは秘したままだが、エルと談笑しながら街を歩くのは楽しくて仕方ないのだ。限られた時間を精一杯楽しみ、エルにも喜んでもらいたい。
今はまだ恋心は打ち明けられないが、彼と過ごす時間を大切にしよう。
今はまだ……。
少女と少年は穏やかな日差しの下、笑い合い茶化しあいながら久方の休みを心行くまで楽しむのだった。
「リリ、そんなに急がなくてもいいじゃないか」
満面の笑みを浮かべエルの手を引く金の牡羊亭の看板娘、リリに急かされ少年も少女に引っ張られるようにしてしぶしぶ走り出した。
「時間は限られてるのよ。ぐずぐずしてたら勿体無いじゃない」
「いや、まあ、それはそうなんだけど……」
「はいはい、ぼやかないの。買い物が早く終わったら、今美味しいって噂になってるお店に連れて行ってあげるから、さっさと済ませちゃいましょ」
「わかった、わかったよ。美味しい料理には興味があるから、ちゃんと走るよ」
「よろしい。でも私を置いていかないでね?エルは速過ぎるから、ちゃんと手加減してね?」
「もちろんわかっているさ。あっ、急ぐなら僕が抱っこして走ろうか?」
ようやく気合いを入れリリと併走する様にして大通りを駆け出したエルが、茶目っ気たっぷりの顔で問い掛けると、少女はびっくりして立ち止まり顔を真っ赤にして怒った。
「っ!? まっ、街中でそんな事したら恥ずかしいじゃない」
「はははっ、冗談だよ。こんな大通りでそんな事やったら、たちまち注目の的だからね」
「もうー。私をからかってたら後がひどいんだからね。エルが寝苦しくなる様な、変なの選んじゃうんだからね」
「ごめんごめん。ついふざけなくなってね」
「はあっ、しょうがないんだから。さっ、急ぎましょ」
何のことはない。エルがちょっとした悪戯心からした事だと分かっていたので、リリも冗談でちょっと怒った振りをしただけであった。
すぐにお互い笑顔になって並んで走り出す。秋晴れの空のもと、少年と少女は仲良く手をつなぎ、多くの人が行き交う通りを息を弾ませながら目的地を目指すのだった。
2人が訪れたのは、商業区画の大通りに面した1等地に居を構えた家具屋「酔竜の午睡」である。何代にも渡ってこの地に居を構え続ける老舗中の老舗であり、市民でも買える手頃な物から、目映いばかりの絢爛豪華な装飾を施した物、あるいは魔法を施した家具等、ありとあらゆる品が揃っている名店である。
エルとリリがこの家具屋に訪れたのは理由があった。
先日、シェーバからエルの好みに合った新しい家具を選んでくれと頼まれたからだ。というのも、エルが上位冒険者に昇格した事に端を発する。
金の雄羊亭は元々新人から下位冒険者用の宿であり、上位以上の宿とでは宿泊代金に大きな隔たりがあった。
その要因の1つが部屋の調度品や家具である。
上位冒険者ともなれば広大な迷宮を何日も探検し凶悪な魔物達としのぎを削らねばならず、冒険の疲れも下位とでは比べ物にならない。1日休んだぐらいでは蓄積した疲労や怪我は完治できないのだ。
そこで冒険者の傷を治し疲れを取るのを早めるために、高級宿では家具に回復や癒しの効果を付与した魔道具を用いているのだ。その他にも上位の迷宮の食材をふんだんに使った高級料理、酒類や御菓子類、はてはマッサージ等も専門の者を雇って提供する所まであり、1泊の値段も安宿の100倍にも上る場合もある。
エルも上位に昇格したのだから、サービスや設備の充実した宿に移る方が本人のためであろう。それにシェーバでは上位の食材を扱った事がないので、どんどん上に昇っていくであろう少年に、適切な料理、冒険者の成長を促進させてくれる迷宮の食材を使った料理を提供できないという問題もあった。つまり、金の雄羊亭で提供できる料理もサービスも何もかも、上位冒険者へ提供できるレベルには達していないのだ。
現状を鑑みれば、この宿はエルに相応しくない。
そんな現実をきちんと把握しているが故に、シェーバが家族3人で今後のエルへの対応について話し合った時、多大な恩があるが宿を移ってもらった方が彼のためになるのではないかと、珍しく弱音を吐いてしまった。
だが、リリやマリナが強硬に反対したのである。特にマリナは弱気な夫を諫め強く叱咤した。
宿の設備や知識が不足しているからと、命の恩人を他人に任せていいのかと。
エル本人に宿を変える意思がないのに、先にこちらが諦めるのかと。
私達がまず誠心誠意恩返しをすべきではないかと。
幸い薬の代金のために蓄えもあるから、エルの部屋を改装し魔法が施された家具も揃える事ができる。料理もあなたのやる気次第じゃないかと激励したのだ。
事実、マリナの奇病の治療のために必要となった薬の代金は、大金貨10枚という途方もない額だ。餓竜のキモという希少素材でしか薬を作れず、この素材を落とすレアモンスターの出現率が非常に稀なため、そこまで高額になっているのだが、エルの命を賭した献身によってその素材を入手できたので、お金は丸々余っているのだ。
シェーバがお金をエルに渡そうとしたのだが、日頃お世話になったお返しだからと、困っている人を助けるのは武人を目指す者として当然の事だからと、笑顔で拒否されたのである。
そこでマリナはお金をそのまま渡すのではなく、彼のためになる事で返そうと考えたというわけだ。
後は上位素材を適切に処理し料理を提供できるかであったが、結局の所シェーバ次第であった。普段の忙しい仕事の合間を縫って他人に教えを請い、妻の恩人に報いる気概があるかという事なのだ。
真剣に熱い期待を込めて見つめてくる母娘に対し、ついにはシェーバも決断した。どこまでやれるか分からないが、エルに見限られない限り精一杯努力して美味しい料理を提供しようと宣言したのだ。
これはエルへの恩返しのための行為であるが、ひいてはシェーバのスキルアップにもつながる。料理人としても一歩上に昇れる機会を与えて貰えたと感謝し、シェーバはエルに報いようと決めたのであった。
その後エルの意向を確認し直接自分で選んだ方がいいだろうという事になり、リリと2人で老舗の家具屋に行ってもらったというわけである。
「いらっしゃいませ」
家具屋「酔竜の午睡」に入ると穏やかな声で老齢の店主が出迎えてくれた。身なりは上等なものを使用しているようだが派手過ぎず、あくまでお客を立てこちらは一歩引きつつも上品さを損なわない、計算し尽されたコーディネートがなされていた。恭しく頭を下げる態度も執事が主人を出迎えれるようで、実に様になっている。この店ほどになると王侯貴族が訪れる事もあるので、一際礼節には気を使っているということだろう。
「こんにちは。私は金の雄羊亭を経営しているシェーバの娘、リリと言います。こっちは宿に宿泊している冒険者のエルです」
「どっ、どうもはじめまして」
「ほっほっほ。これはこれは、本日は可愛らしいお客様にご来店頂き、誠にありがとうございます」
元気に挨拶するリリや店の雰囲気に圧倒されてどもりながら頭を下げたエルを見て、老紳士は嬉しそうに笑いながら一礼した。
またその仕草も同の入っており、さして教養のないエルから見ても絵になるようで、いたく感銘を受けた。
「お客様、本日はどういったご用向きでございましょうか?」
「今日はエルの泊まっている部屋の家具を買いに来ました。上位、できれば最上位の冒険者になっても使える様なものを揃えたいんです」
「それはありがとうございます。失礼ですが、冒険者のエル様とおっしゃいましたね?」
「はい」
「よろしければお客様の冒険者カードを拝見させて頂けないでしょうか?」
「あっ、はい。どうぞ」
魔法の小袋から冒険者カードを取り出すと店主に渡した。店主はカードに記載された冒険者のランクを確認すると、直ぐに返した。
エルの着ている装備からして上位冒険者である事は判断できていたが、上位のどのランクにいるのか知るために、冒険者カードの提示を願ったというわけだ。
「5つ星という事は、もしかしたら最近上位に昇格されたのですか?」
「そうです。上位になってまだ一週間も経ってはいません」
「ふむ。それでしたら最上位冒険者用ではなく、上位の冒険者用の方がよろしいのではないでしょうか?エル様が最上位に成るまでに時間もある程度掛かるでしょうし、その時に改めて購入し直した方が費用も維持費も安く済みますが、どういたしましょうか?」
「実はエルが冒険者になってから、まだ半年ぐらいしか経っていないんです」
「!?」
少女の言葉を聞き、多くの冒険者を見てきた店主にしては本当に珍しい事に、驚きで目を見開いた。
このまだ幼さの残る少年といって差し支えのない年齢の少年は、上位冒険者の資格を有するだけでも驚くべき事なのに、昇格速度があまりにも早過ぎるのだ。
普通は冒険者に登録してから上位に昇格するまで5年は掛かる。才能豊かな者だとて2、3年は優に掛かるのが常識だ。しかし、少年のペースはそれよりも圧倒的に早い。数少ないほんの一握り、最上位冒険者で活躍する英傑達並の昇格の早さだ。
何十年とこの店の店主を務め、本物の英雄や豪傑達相手に接客した事もあるが、少女の言葉に照れて顔を赤らめる童顔の少年が彼らと肩を並べる程の才能があるとは予想だにしなかったのである。
だが、少女の言葉に嘘偽り等は一切感じられない。
わざわざ嘘を付いたり見栄を張る意味もないだかろうから、つまりは真実という事になる。この少年がそれほどの成長速度があるのならば、最上位冒険者向けの品を求めるのも頷けるというものだ。
老爺や驚愕で言葉を失い、話の腰を折った事を咳払いしつつ謝罪した。
「ごほんっ、失礼いたしました。それならば最上位に相応しい品を選ばせて頂きます。しかし、金の雄羊亭とは先代の頃からお付き合いさせて頂いておりましたが、今回は思い切った事をなさいますな。たしか、新人や下位の冒険者が安心して泊まれる宿を目指しておいでだったと記憶しておりましたが?」
「宿の方針は今でも変わっていません。でも、エルは私達家族の命の恩人なんです。彼が餓竜のキモを取ってきてくれなければ、母は生きていなかったでしょう。でも、エルが命懸けで闘ってくれたおかげで病気も治り、今では元気に走り回って働けるようになったんです」
「なるほど、その様な経緯があったのですね。自分の命を賭してまで隣人を助けるなど、そうそうできるものではありません。エル様は素晴らしい御心の持ち主のようですね」
「はい、そうなんです。エルのおかげで、私達家族は笑っていられるんです」
「リッ、リリ。もういいじゃないか。そんなに褒められても恥ずかしいし」
「いいじゃない、私は本当に感謝しているんだから。それに、これぐらいじゃ言い足りないぐらいだわ」
何というか褒められ慣れていないエルとしては、傍らの少女に自分のした事を誇らしげに語られるともうたじたじであった。どうにもむずかゆいし照れ臭い。
未だ人付き合いが苦手な少年は称賛される事事態が珍しいし、これほど純粋な好意を寄せられた事などなかったのでどう反応していいか分からなかったのだ。
少女が胸を張り少年の為した偉業を褒めちぎる。そんな少女を恥ずかしいからと、何とか止めようとする少年。
そんな微笑ましい光景に老爺は目を細め嬉しそうに笑った。
久方ぶりに他人の優しさ、人の善なる行為を見た気がしたのだ。
まだまだ世の中も捨てたものじゃない。優しく頼もしい若い芽が育ってきている事に店主は喜んだ。
「大変良い話を聞かせて頂きました。エル様にはどうか、他人を労わる優しい心を忘れずに成長して頂きたいものですね」
「そっ、そんな大した事していませんよ。ただお世話になった人達、それと親友のリリに日頃の恩返しをしただけですから」
「ううん、そんな事ないわ。エルがいてくれたからお母さんは助かったの。エルが迷宮に行ってから容体が悪化し、何度も何度も危ない時があったわ。もうだめかもしれないとあきらめかけた時、気絶寸前の疲れた体に鞭打って薬の材料を届けてくれたのは、あなただったじゃない。あの時ほどうれしかった事はないわ」
「そっ、そうかな」
感謝を口にしきらきらした瞳で好意を寄せてくるリリに対し、エルはもう嬉しいやら恥ずかしいやらで、真面に視線を合わせられなくなっていた。
そんなエルに傍らで見ていた老紳士が助け船を出す。
「エル様のした行動は誠に素晴らしいものです。その事だけは覚えてくださいませ。私も心が洗われるお話しを聞かせて頂いたお礼に、当店の自慢の品を紹介させて頂きます。もちろん、価格に関しても勉強させてもらいますよ」
「はい、よろしくお願いします。それと、家具を選んだら金の雄羊亭に届けて欲しいです。代金はその時に父が支払うという事でいいですか?」
「承知いたしました。長い付き合いをさせて頂いておりますし、前金も必要ありませんよ」
「ありがとうございます」
「いえいえ。これからも末永いお付き合いをよろしくお願いしますと、お父上にお伝えください。」
「はい、父に伝えてますね」
「それではご案内いたします」
元気良く返事するリリに柔らかい笑みを湛えた奇麗なお辞儀をすると、店主は先頭に立って歩き出した。
リリとエルは急いで老紳士の後を追い、大きな店内に所狭しと陳列してある品々を珍しそうにちらちらと横目で眺めながら付いて行った。
やがて奥まった一角、見るからに高級な物しか置いてない場所に行くととある寝台の所で立ち止まった。
木の木目をそのままに活かした造りで過度な装飾は施されていないが、良質な素材しか使っておらず、そこはかとなく醸し出される気品を感じずにはいられない、そんな良品であった。一目で格別なものだとわかる。
「エル様は美術的な価値よりも実用性の高い物の方がよろしいかと思いまして、こちらの品をご紹介させて頂きます」
「そうですね、あまりに豪華だと逆に落ち着かなくなって眠れなくなると思います」
「この品はレーヴェンの作で、材料に使っているリエン樹、木そのものを良さを追求し、素朴ながらも自然な美しさのある品でございます。それに加えて、心身を癒し回復を早める魔法陣が寝台の中に刻まれていますので回復効果も高く、最上位冒険者の方にも自信を持って推薦できる一品でございます。また、動力源は他の魔道具と同じく魔石で動き、枕元の近くに起動スイッチがございます……」
すらすらと説明する店主の説明をエルはふんふんと頷きながら聞いた。
実は半分以上頭に入っておらず、とりあえず魔法陣があって寝ると回復を早めてくれるのだと理解しておいた。
リリの方はしっかりしたもので、魔法陣の使い方や定期的な運用に掛かる費用等、どのランクの魔石がどの程度の頻度で必要なのかも聞き出している。
エルは早々にあきらめ、後で熱心に話を聞いているリリに教えてもらうことにした。店主がエルに合った品を選んでくれた事に加え、過度に主張しないながらも奥ゆかしい優美さのあるこの寝台を気に入ったので、反対する理由がなかったのである。
老店主もエルの様子から実務的な面はリリに説明した方がよろしいと判断し、細々とした注意事項を話していった。
しばらくして2人の間での話が終わると、店主はエルに向き直った。
「それでは先程のお話しのお礼として、寝具と心に安らぎを与える魔道具を付けさせて頂きますね」
「えっ、いいんですか?」
「ええ構いませんとも。御二人の話を聞いて、久しぶりに胸のすく思いをさせて頂きました。そのお礼ですので、どうかお気になさらずお受け取りください」
「あっ、ありがとうございます」
「ありがとうございます。それじゃあ、金の雄羊亭まで届けてくださいね」
「一度整備し直してからとなりますので後日という事になりますが、近日中にお届けするようにいたします」
「はい、よろしくお願いします。それでは失礼しますね。エル、お昼食べに行こっか」
「うん、そうだね。今日はありがとうございました」
「お買い上げありがとうございました」
リリに促されエルは老爺にお辞儀すると、2人連れ立って外に向かう。
老紳士はわざわざ出入り口まで見送りに付いて来ると、再び洗練された礼を見せてくれた。
時刻は少しお昼を回ったぐらいだろう。エルのお腹が鳴り勝手に自己主張し始めている。そんなエルを可笑しそうに笑うと、リリはエルの手を取って走り出すのだった。
リリがエルを連れて行ったお店は少し前にできたばかりのお店で、パスタという異国の料理を食べさせてくれるお店だった。
主人が南方諸国の出身らしく、その地方ではパンの代わりに食されているものらしい。パンもパスタも小麦を主な原料としているので、この地の人々にも受け入れ易かったのだろう。
ただし、特筆すべき点として食感の違いが挙げられる。主人が毎朝自分の手で丹精に作り上げた生パスタはもっちりとした歯応えがあり、様々な具材やソースに合わせる事によってその時々の違った顔を見せてくれる。
加えて、迷宮の食材をパスタに練り込んだり、具材に用いているそうで冒険者からも人気が高い。お値段の方は使用している材料のせいで若干高いが、それでも手が出ないほどではない。市民でも月何回か食せる価格であり、下位の冒険者でも余程困窮していなければ問題ない程度なので、昼を少し過ぎたというのに店内は大賑わいであった。
そんな中エルはというと、1食目の海老と貝のスープ仕立てのパスタがお気に召したようで、立て続けに茸と地鶏のパスタ、更にはクリームソースを胡椒や辛みのある香辛料で味付けしたパスタを注文し、猛然と食べ続けていた。
小食のリリはというと、エルから各パスタを分けてもらい其々の味を楽しみつつ、大量のパスタをあっという間に平らげ新たに注文しようかという勢いのエルを温かな笑顔で見つめていた。
先ほどエルが家具屋の店主にリリの事を親友だと紹介していたが、少女の認識ではちょっと異なる。親友であることは間違いではないが、彼女はエルに恋していたのだ。
見た目に反して大食漢の少年とは出会って半年ほどの付き合いであったが、年も近いという事もあってすぐに友達になった。普段のエルは穏やかで人畜無害そのものであるが、どこか抜けているというか、自分の興味がある事以外は本当にいい加減な所があって、しっかり者の少女としては放っておけずに色々と世話を焼いたりもした。
また、目を輝かせて自分の冒険や修行の様子を話す少年は希望に満ち溢れ、話を聞いているだけで元気を分けてもらった。こちらが落ち込んでいても、エルの話を聞けば自分も頑張ろうと自然とやる気が出てきたのだ。
彼の話す内容は血生臭く凄惨なものやあまりにもハードな修行内容である事もあったが、少女は幼い頃から冒険者との付き合いがあったので慣れっこであったし、逆によくそこまで頑張れるものだと勇気をもらったぐらいだ。
それに、一途に夢を語る少年を見るのが好きで良くせがんだりしたりもした。
田舎から出て来たという事もあって、この都市(アドリウム)の事を何も知らないので手の空いた時に案内を買って出て、2人で街を歩く事もあった。
一緒にお祭りに行ったり、露天の珍しい商品を見て回った事もあった。その時の記念として、エルに買ってもらった淡い桃色の蝶の髪留めはリリの大切な宝物だ。いつの間にか仲も深まり遠慮せずに言いたい事を言い合える、そんな親友の間柄になっていた。
そんな2人に転機が訪れたのは、母の病状が悪化し命も危ぶまれる程の危険な状態になった時だ。動転し泣き叫ぶしかできなかったリリを、エルは優しく抱きしめ落ち着くまで頭を撫でてくれた。
あの時抱きしめてくれた胸のぬくもりを思い出すと赤面して顔を覆いたくなるが、思えばあの瞬間が恋の始まりだったのだろう。普段は抜けた所もあって私が注意してやらないととどこか弟の様に見ていた少年は、見かけに反してその肉体は鍛え上げられており、リリのか細い少女の体とは別の、男の体をしていたのだ。あの胸に抱かれ髪を穏やかに撫で付けられると、荒れ狂った心も静まりその安らかさに全てを委ねてしまいたくなったくらいだ。
その後ようやく泣き止んだ少女に、きっとお母さんは良くなると、僕もリリのお母さんを助けるために頑張るからきっと助かるよと、励ましてくれた。
少女に誓った言葉に嘘はなくエルは迅速に行動を起こすと、伝手を頼って大商人に薬の材料の入手の依頼してきてくれたのだ。まさに有言実行そのものの行動であり、不安ばかり積り母の伏した枕元で看病する事しかできなかった自分とは大違いであった。
まあ結局は母の病状が急変したため依頼しても間に合わなかったのだが、もはや後三日の命と医師に告げられ誰もが絶望に打ちひしがれた中で、エルだけは諦めなかった。重い代償を支払ってでもマリナを救うために神に試練を願い出、必ず助けてみせると只独り迷宮に旅立っていったのだ。
そして見事に薬の材料を持ち帰り母の命を救ってくれたわけだが、リリはあの時ほど嬉しく感謝した事はない。
エル本人は日頃の恩返しだから気にしないでいいよなんて軽く言い、決してリリ達家族に恩着せがましくする事はなかったが、実際は決死の強行軍であり餓竜のキモを手に入れ、生きて帰れる確率は無に等しかったのだ。
後日話し渋るライネル達に何度も頼み込んで聞き出した事だが、4つ星程度の冒険者が7つ星が相手するような魔物に挑むのは無謀の極みであり、勝つ可能性など万に一つもなかっただろうと言われた時、目の前が真っ黒になった程だ。
実際本当に死ぬ寸前まで追い詰められたらしく、あの戦闘好きのエルが義兄であるライネルに珍しく弱音を零した程の劣勢だったそうだ。幾度も手足を食い千切られ、最後には片手片足の状態で竜の顎門が高速で迫るのを見て死を受け入れ掛けたと聞き、涙が溢れ止まらなくなった。
その言葉を聞いた時の衝撃は何と表現すればいいのだろう。
少年の命を賭した献身に対する感謝の心と申し訳なさ。どうしようもなく弱い自分の後ろめたさ。親友を知らずに死地に立たせていた引け目。正と負の感情が嵐のように少女の心を掻き乱し、憂いを帯びた瞳から際限なく涙を流させた。
エルは自分達には一言も言わないが、そんな死線を潜り抜けてもなお、母の病気が治ってよかったと変わらぬ笑顔を向けてくれたのだ。
滂沱の涙を流すリリをクリスが抱き締めあやしながら、そんな死の間際から起死回生の逆転ができたのはリリや皆のおかげだとあの子は言っていましたよと、優しく諭すように話聞かせてくれた。
驚いて涙で濡らした顔を上げるとクリスが笑顔で頷き、死を目前にして目を閉じかけた瞬間、泣き叫ぶリリや悲しむ私達の姿が浮かんだのだそうだと説明してくれた。その姿を見てこのままでは死ねないと気力を取り戻したのだそうだ。
そして少年は、自分1人の力では勝てなかったが、大切な人達がいたらこそこうして生きて帰れたのだと語ってくれたのだそうだ。
なんと善良で優しい心だろうか。
リリは嬉しさと喜びで、また涙が溢れ出した。
そんなリリに近寄り頭を優しく撫でると、エミリーがエルには今迄通りに接して欲しいと言ってきた。感謝され態度を変えられるとあの子が悲しむだろうと。
リリ達に言わないのは意識されて、これまで築き上げてきた間柄を壊したくないからだろうと言われたのである。
だから真相を知ってもなお、少女はエルへの態度を変えなかった。
ただし少女の心にあった恋の蕾は完全に開花し、大輪の花を咲かせていた。
普段や穏やかで素朴な笑顔が似合うエル。ちょっと物ぐさで頼りなく、自分が付いていなければと心配な所もあるエル。
夢と希望に満ち溢れ他人に勇気と元気を分けてくれ、一緒にいると笑顔になれる優しいエル。
そんな少年は少女にとって英雄(ヒーロー)であった。
どんな伝説に登場する英雄も色あせる、絶体絶命の危機を救ってくれた自分だけの英雄(ヒーロー)なのであった。
そして、自分の大好きな人だ。
きっとエルの事だ。今は少女だけの英雄(ヒーロー)かもしれないが、困った人は出会ったら見過ごせず、手を差し伸べずにはいられないだろう。
エルが自分の夢に向かって邁進し強くなっていけばいくほど、皆が彼を放っておかなくなるに違いない。いくつも偉業を成し遂げ、英雄への階梯を登っていくのだ。そんなエルに恋し恋慕の情を抱く者も、幾人も出てくるに違いない。
この世界は王侯貴族や大商人、英雄や騎士等が複数の妻を娶るのは当たり前である。王族や貴族達には自分の血を絶やさぬ義務があるし、財や力ある者には多くの者を養う余裕があり、その庇護を受けたいと思うのは当然の事であったからである。世は不平等であり、一握りの男の元に女達が集い、あぶれた弱い男は孤独な生涯を全うする。そんな弱き者が淘汰される厳しい世の中なのだ。
それから考えれば、エルは当然一握りの男の方に入る。それも飛び切り優秀で、今後絶対に女性達が放っておかないであろう事請け合いである。
ただ今ならば、まだ自分一人である。
もしかしたら、この小さな胸に秘めた思いを打ち明ければ恋仲になれるかもれない。それは想像するだけで甘美で、何度も少女を誘惑し悩ませた。
だが、少女はその行動を是としなかった。
何故なら今のエルにとっては負担にしかならないからだ。
少年は未だに無垢であり恋を知らず、友達や知り合いができただけで喜ぶほどであった。無理やり愛だ恋だのと迫っても負担にしかならないだろう。
それに、今はエルにとって大事な時期でもある。
冒険者になってまだ1年にも満たない、世間知らずの少年である。昔から冒険者が身持ちを崩す原因としては、色恋賭け事と決まっている。
上位冒険者となり迷宮の難度も魔物の強さも増して来ているというのに、ここで他の事に囚われれば挫折したり、堕落する事もあり得る。
エルならば大丈夫だとも思いたいが、人の世に絶対はない。極力負担を掛けず、自分の夢に集中させるべきなのだ。今は冒険者として成功するために力を付け、多くの事を知り成長する大事な時であるのだ。
決して相手の負担となるような恋はしない。
自分だけが幸せになる恋では、相手のためにならないのだ。
真に少年の事を想う少女の心は、一途で高潔そのものであった。
エルが成長し恋を知ったなら、その時はこの思いを打ち明けよう。
できれば自分に恋してくれたなら、それに勝る喜びはないだろう。
だが、それは今ではない。
今はエルを支え安らげる場所になろう。
それが恩人であり恋を寄せる少年への、相手の事を第一に願う少女の清らかで清廉な想いであった。
ただ、こうして偶にの休みに楽しむのは許してほしい。
少年の気晴らしに付き合い、街を2人で散策して楽しむ事くらいは大目に見てもらいたい。
胸の淡い思いは秘したままだが、エルと談笑しながら街を歩くのは楽しくて仕方ないのだ。限られた時間を精一杯楽しみ、エルにも喜んでもらいたい。
今はまだ恋心は打ち明けられないが、彼と過ごす時間を大切にしよう。
今はまだ……。
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