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第5章
第101話
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灼熱の太陽が照り付ける熱砂の大地。
見渡す限り延々と続く大砂漠。
人も動物も、植物さえ姿の見えない静寂の世界で笑声と轟音が鳴り響いた。
笑い声の正体は人間だ。
成人というより少年という言葉がしっくりくる様な、まだあどけなさの残る少年だ。
その少年が愉快そうに声を上げつつ闘っているのだ。
闘う?
そう、闘っているのだ。
砂漠を疾走し、縦横無尽に動き回る少年は何かと闘っていた。
だが姿は見えない。
時折危険を察知した少年が空に逃げるが、多量の砂がまるで少年を捕まえようとするかのように、周囲から覆い被さろうとしただけだ。
では、魔物が潜んでいて、砂を用いて攻撃したのだろうか?
否、否だ。
待てど暮らせど、一向に敵は姿を現さない。
少年が喜々として砂と戯れる、いや足元からの砂の襲撃をあしらっている光景しか見受けられない。
だが少年への砂の攻撃は止む所か、時を追う毎に勢いを増すばかりだ。
敵とは何だ?
襲い来る砂を操るものの正体とは……。
答えは砂。
砂そのもの、この広大な砂漠のそのもの砂が少年の敵なのだ。
砂の魔神ザンド
魔神とは名付けられているが、悍ましき邪神の眷属というわけでなく、むしろ精霊に近い存在で、自我も希薄でこの砂漠を越えんとする冒険者の行く手を阻む守護者。
それが砂の魔神なのだ。
ザンドの肉体はこの砂漠の砂全て。
心臓ともいうべき精霊核を破壊しない限り、倒すことは不可能。
しかも精霊核は砂の間を自由に移動できるので、ただ探すだけでも一苦労。
それに加えて実際は、容赦なく体力を奪う猛暑の中襲い来る砂の襲撃を掻い潜り、少年の握りこぶし程度の核を見つけなければならないのだ。
徐々に体力を奪われ思考も低下し、終には砂に呑まれた冒険者も数多存在する。
それほどこの砂の魔神と闘うということは、冒険者にとっても命がけなのだ。
だが、目の前の少年にとってはそうではない。
「ははっ、もっとだ! もっとお前の全力を見せてみろっ!!」
呵呵大笑し、喜々として砂そのものとの闘いそのものを楽しんでいたのだ。
気を纏った四肢や肩や背、将又頭撃など肉体のありとあらゆる部位を用いて、無数の攻撃を休む間もなく繰り出し続ける。
更には発勁を繰り出し、砂に衝撃を通し吹き飛ばし続けた……。
いや、そうではない。
少年の鍛え抜かれた気と技によって、砂の粒子そのものが次々に消滅させられていったのだ!
中肉中背のまだあどけない少年といって差し支えない小さな体の、どこにそんな力があるというのか!
誰かに話しても夢想と一笑に付されるであろう、信じ難き光景が厚顔の少年の手によって造り上げられていく。
無論、ザンドとて何もしなかったわけではい。
広大な砂漠という、恒河沙の如き、あるいは無限とさえ思われる砂を意のままに操る魔神なのだ。
ザンドにとっては少量とはいえ着実に己が砂を減らされていくのだ。
例え希薄な意思しか持っていなくとも、自分の生命の危機には敏感であった。
無数の巨大な手足を生み出し、無謀の砂の巨人の群れを瞬時に創生し少年を襲わせた。
あるいは足元に巨大な流砂を造り、砂の津波や大質量の砂の大玉を次から次に生み出しては少年の四方八方から打ち出した。
だが、そのどれもが少年にとっては修練の道具でしかなかった。
わざと真正面から立ち向かい莫大な気と勁をもって打ち砕く。
例えそれが自分を飲み込む程の巨大な大津波、人が本能から畏怖し恐れるであろう、自然の脅威そのものであったとしてもだ!
逃げず、怯まず、それ所か大笑すると喜々として飛び込んでいった。
嗤った鬼の様に顔を歪めながら……。
そして少年は何もかもを打ち砕いて行った。
生まれて初めて必死の抵抗を見せる砂の魔神の抵抗を、自分の成長への糧として!
……やがて砂漠が小さくなっていった。
長大な海を連想させた巨大な砂漠が、少年によって見る間にその規模を縮小させられてたのだ。
無尽蔵とさえ思われる少年の体力と気の量によって、ザンドの周りの砂が消滅させられるので、身を護るために砂漠の砂を引き寄せていくので、魔神を中心に砂が集まっては消され続け、砂漠が中心に向かって縮小していくように見えたのだ。
砂の魔神を倒すために広大な砂漠を消滅させようなどとは、一体誰が考えようか?
どれほどの力の気の量が、そして時が必要なのか、想像するだけでも馬鹿らしくなる所業だ。
砂漠を消さずとも、魔神の核たる精霊核さえ破壊すればザンドを倒せるのだから。
だがそれにもかかわらず、少年はやってみせた。
無限とさえ想えた砂を滅し続け、終には砂漠そのものを消し去ってしまった。
真に驚嘆すべき偉業。
そして畏怖せずにはいられない強大な力。
人間ではなく魔人、いや、魔神や真竜が人に変じていたと言われた方がまだ納得がいくというものだ。
だがそうではない。
ただの人間の冒険者。
それもまだ大人というには些か幼ない少年が為したのだ。
長ずれば古の神や魔に届くかもとさえ思える強さ。
それが大志を抱き郷里より迷宮都市に赴き只管研鑽を続けた少年、エルの強さであった。
見渡す限り延々と続く大砂漠。
人も動物も、植物さえ姿の見えない静寂の世界で笑声と轟音が鳴り響いた。
笑い声の正体は人間だ。
成人というより少年という言葉がしっくりくる様な、まだあどけなさの残る少年だ。
その少年が愉快そうに声を上げつつ闘っているのだ。
闘う?
そう、闘っているのだ。
砂漠を疾走し、縦横無尽に動き回る少年は何かと闘っていた。
だが姿は見えない。
時折危険を察知した少年が空に逃げるが、多量の砂がまるで少年を捕まえようとするかのように、周囲から覆い被さろうとしただけだ。
では、魔物が潜んでいて、砂を用いて攻撃したのだろうか?
否、否だ。
待てど暮らせど、一向に敵は姿を現さない。
少年が喜々として砂と戯れる、いや足元からの砂の襲撃をあしらっている光景しか見受けられない。
だが少年への砂の攻撃は止む所か、時を追う毎に勢いを増すばかりだ。
敵とは何だ?
襲い来る砂を操るものの正体とは……。
答えは砂。
砂そのもの、この広大な砂漠のそのもの砂が少年の敵なのだ。
砂の魔神ザンド
魔神とは名付けられているが、悍ましき邪神の眷属というわけでなく、むしろ精霊に近い存在で、自我も希薄でこの砂漠を越えんとする冒険者の行く手を阻む守護者。
それが砂の魔神なのだ。
ザンドの肉体はこの砂漠の砂全て。
心臓ともいうべき精霊核を破壊しない限り、倒すことは不可能。
しかも精霊核は砂の間を自由に移動できるので、ただ探すだけでも一苦労。
それに加えて実際は、容赦なく体力を奪う猛暑の中襲い来る砂の襲撃を掻い潜り、少年の握りこぶし程度の核を見つけなければならないのだ。
徐々に体力を奪われ思考も低下し、終には砂に呑まれた冒険者も数多存在する。
それほどこの砂の魔神と闘うということは、冒険者にとっても命がけなのだ。
だが、目の前の少年にとってはそうではない。
「ははっ、もっとだ! もっとお前の全力を見せてみろっ!!」
呵呵大笑し、喜々として砂そのものとの闘いそのものを楽しんでいたのだ。
気を纏った四肢や肩や背、将又頭撃など肉体のありとあらゆる部位を用いて、無数の攻撃を休む間もなく繰り出し続ける。
更には発勁を繰り出し、砂に衝撃を通し吹き飛ばし続けた……。
いや、そうではない。
少年の鍛え抜かれた気と技によって、砂の粒子そのものが次々に消滅させられていったのだ!
中肉中背のまだあどけない少年といって差し支えない小さな体の、どこにそんな力があるというのか!
誰かに話しても夢想と一笑に付されるであろう、信じ難き光景が厚顔の少年の手によって造り上げられていく。
無論、ザンドとて何もしなかったわけではい。
広大な砂漠という、恒河沙の如き、あるいは無限とさえ思われる砂を意のままに操る魔神なのだ。
ザンドにとっては少量とはいえ着実に己が砂を減らされていくのだ。
例え希薄な意思しか持っていなくとも、自分の生命の危機には敏感であった。
無数の巨大な手足を生み出し、無謀の砂の巨人の群れを瞬時に創生し少年を襲わせた。
あるいは足元に巨大な流砂を造り、砂の津波や大質量の砂の大玉を次から次に生み出しては少年の四方八方から打ち出した。
だが、そのどれもが少年にとっては修練の道具でしかなかった。
わざと真正面から立ち向かい莫大な気と勁をもって打ち砕く。
例えそれが自分を飲み込む程の巨大な大津波、人が本能から畏怖し恐れるであろう、自然の脅威そのものであったとしてもだ!
逃げず、怯まず、それ所か大笑すると喜々として飛び込んでいった。
嗤った鬼の様に顔を歪めながら……。
そして少年は何もかもを打ち砕いて行った。
生まれて初めて必死の抵抗を見せる砂の魔神の抵抗を、自分の成長への糧として!
……やがて砂漠が小さくなっていった。
長大な海を連想させた巨大な砂漠が、少年によって見る間にその規模を縮小させられてたのだ。
無尽蔵とさえ思われる少年の体力と気の量によって、ザンドの周りの砂が消滅させられるので、身を護るために砂漠の砂を引き寄せていくので、魔神を中心に砂が集まっては消され続け、砂漠が中心に向かって縮小していくように見えたのだ。
砂の魔神を倒すために広大な砂漠を消滅させようなどとは、一体誰が考えようか?
どれほどの力の気の量が、そして時が必要なのか、想像するだけでも馬鹿らしくなる所業だ。
砂漠を消さずとも、魔神の核たる精霊核さえ破壊すればザンドを倒せるのだから。
だがそれにもかかわらず、少年はやってみせた。
無限とさえ想えた砂を滅し続け、終には砂漠そのものを消し去ってしまった。
真に驚嘆すべき偉業。
そして畏怖せずにはいられない強大な力。
人間ではなく魔人、いや、魔神や真竜が人に変じていたと言われた方がまだ納得がいくというものだ。
だがそうではない。
ただの人間の冒険者。
それもまだ大人というには些か幼ない少年が為したのだ。
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