イマドキ!

灰色

文字の大きさ
19 / 24
第2章 イマドキの呼び出し

19話~赤い姉弟~

しおりを挟む
「蓮斗」

自室でベッドに寝転び本を読んでいるところに、突然聞こえた聞き慣れた声。
間髪入れず、扉が開けられる。

「っおい!勝手に入って来んなよ…!」

特に見られて困るものは無いが、ずかずかと部屋に入られるのはいつものことながら気分が良いモンじゃない。
俺は体を起こしそんな訴えをしてみるが当の本人、俺の姉である茜は全く気にする様子はない。
いつもは高い位置でふたつに結ばれている赤茶の髪が今は下ろされているところからして多分、風呂上りだろう。

「今日、召喚式の説明あったでしょ」

「あった、けど……」

全くこちらの状態や都合を気にすることなく話し始める姉貴。
これで生徒会の副会長だ、まったくとんでもねえ。
読んでいた本に栞を挟み腕を伸ばしベッドサイドテーブルに置く。
これは竹上が貸してくれた本だから、姉貴に燃やされでもしたら困る。

「アンタの師匠はこのアタシだから。」

突然の師匠宣言。
まったく意味が分からん。
何も答えられずにいると突然、片一方の耳を遠慮なく捕まれ引っ張られる。

「いででででで!!」

「お姉様の言葉には何て答えるんだったかしら?」

「は、はい…!」

「よろしい」

解放された耳を摩る。
まだじんじんする…師匠というより暴君だろ!
そして俺の扱いは弟子というより奴隷だ。…あぁ、自分で言っていて悲しい。

「召喚式に出る生徒は高学年の生徒の弟子となり、召喚に必要なチカラを磨く。それが決まりなの。」


「そういうのは同意を得る前に言うべきじゃ…」

「あ?」

「っ、『フレーム』!」

睨まれ、情けないことにビビった俺はつい最近習った防御ガードの呪文を唱えてしまった。
俺の周りに見えない壁が作り出される。
俺は、火や風を手に灯し維持させるという形成学は苦手だが、呪文学は意外と得意だったりする。
特に得意なのは攻撃アタックの呪文だが、防御も十分得意な方だと思う。

「……ふーん、このアタシに逆らうワケね。面白い。…二度とそんな気が起きないようにしてあげる。」

普段、ぱちりと開かれている赤茶色の目を微かに細めた姉貴につい息を飲み身を縮こめる。
あぁ、俺はどこまでも情けない…!
姉貴の両手に真っ赤な炎が灯る。
その拳が俺へと向けて飛んでくるのを見て、雹太と翠星学園の連中に絡まれた時のことを思い出す。
まるで走馬灯のようだ。
俺の周りに作られていた薄い薄い壁は俺のそれより小さな拳に簡単に割られ、間違いなく俺の左頬を捉えたようだ。
頬を抉られたような激痛に、俺は簡単に意識を手放す。
…本当に、情けない。






「…ってなことがあってな。」

「それでガーゼを貼っているんだね」

「お姉さん、小柄なのに強いよね…柔道やってるんだっけ」

左頬に白いガーゼを貼った蓮斗を囲むのは水色の金平糖頭の雹太と、黒髪の小柄な彼、真一。
ガーゼは貼っているものの大きく腫れ上がっているのは目に見える。
その痛々しい様子に真一は眉尻を下げ見つめる。
雹太は片手に粗く丸い氷を作り出し蓮斗に差し出した。

「はいっ!」

「お、おう」

剥き出しになった氷を片手に受け取る。
頬を冷やせという意味は理解できる。
しかしこれで冷やせばガーゼはびしょびしょになることは間違いない。
目の前には悪意のない、笑顔を浮かべたピータパン。
蓮斗が葛藤を繰り返しているうち、真一がビニール袋とハンカチを持ってくる。

「これ、コンビニのだけど良かったら…」

「あぁ、サンキュ。…ハンカチはいいよ、悪いし。」

葛藤により知らず知らずのうちに寄っていた眉間の皺を消し蓮斗は袋を受け取りハンカチについては首を横に振る。
受け取った袋の中へごろっとしたひとつの氷を入れ、袋の口を縛り閉じた。
それをガーゼ越しに腫れた頬に押し付ければ当然ながら、ひやりとした感覚。

「でも師匠を見つけなきゃいけないんだね」

「あぁ、そうらしい」

「竹上くん……だよね、?」

断られたハンカチをブレザーのポケットへ仕舞いつつ、真一は話題を召喚式に戻す。
その発言の内容を肯定し頷く赤髪の横で口ごもる水色。
真一ははっとしたように水色、雹太に向き直り一礼する。

「ご、ごめん。名乗りもせずに…僕は竹上真一です。蘇芳くんと同じ図書委員で…よろしくお願いします。」

「あ、うん!俺は坂崎雹太!よろしく、竹上くん!」

やや声量小さな真一に対して、声量大きく返す雹太の声は明るい。
新しい友達が出来て嬉しいのだろう、蓮斗はひとり、静かにそう思う。
しかしそれを指摘することはなく、周囲を見渡した。

「…そういや、榊がまだ来てないな」

時刻は朝のホームルームの5分前。
いつもの聖ならば来るはずの時間帯。
そう呟いた蓮斗の言葉は、誰にも拾われずただ空気を震わせるだけに留まった。







(竹上くんは誰か師匠のあてがあるの?)

(いや、それが無くて…坂崎くんは?)

(俺は1人だけ!…あ、その人にいい人がいないか聞いてみようか?)

(え、あ、いいの…?)

(もちろん!)
しおりを挟む
感想 10

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

【完結】捨て去られた王妃は王宮で働く

ここ
ファンタジー
たしかに私は王妃になった。 5歳の頃に婚約が決まり、逃げようがなかった。完全なる政略結婚。 夫である国王陛下は、ハーレムで浮かれている。政務は王妃が行っていいらしい。私は仕事は得意だ。家臣たちが追いつけないほど、理解が早く、正確らしい。家臣たちは、王妃がいないと困るようになった。何とかしなければ…

妻からの手紙~18年の後悔を添えて~

Mio
ファンタジー
妻から手紙が来た。 妻が死んで18年目の今日。 息子の誕生日。 「お誕生日おめでとう、ルカ!愛してるわ。エミリア・シェラード」 息子は…17年前に死んだ。 手紙はもう一通あった。 俺はその手紙を読んで、一生分の後悔をした。 ------------------------------

三十年後に届いた白い手紙

RyuChoukan
ファンタジー
三十年前、帝国は一人の少年を裏切り者として処刑した。 彼は最後まで、何も語らなかった。 その罪の真相を知る者は、ただ一人の女性だけだった。 戴冠舞踏会の夜。 公爵令嬢は、一通の白い手紙を手に、皇帝の前に立つ。 それは復讐でも、告発でもない。 三十年間、辺境の郵便局で待ち続けられていた、 「渡されなかった約束」のための手紙だった。 沈黙のまま命を捨てた男と、 三十年、ただ待ち続けた女。 そして、すべてを知った上で扉を開く、次の世代。 これは、 遅れて届いた手紙が、 人生と運命を静かに書き換えていく物語。

お飾りの妻として嫁いだけど、不要な妻は出ていきます

菻莅❝りんり❞
ファンタジー
貴族らしい貴族の両親に、売られるように愛人を本邸に住まわせている其なりの爵位のある貴族に嫁いだ。 嫁ぎ先で私は、お飾りの妻として別棟に押し込まれ、使用人も付けてもらえず、初夜もなし。 「居なくていいなら、出ていこう」 この先結婚はできなくなるけど、このまま一生涯過ごすよりまし

追放された味噌カス第7王子の異種族たちと,のんびり辺境地開発

ハーフのクロエ
ファンタジー
 アテナ王国の末っ子の第7王子に産まれたルーファスは魔力が0で無能者と言われ、大陸の妖精族や亜人やモンスターの多い大陸から離れた無人島に追放される。だが前世は万能スキル持ちで魔王を倒し英雄と呼ばれていたのを隠し生まれ変わってスローライフを送る為に無能者を装っていたのだ。そんなルーファスはスローライフを送るつもりが、無人島には人間族以外の種族の独自に進化した先住民がおり、周りの人たちが勝手に動いて気が付けば豊かで平和な強国を起こしていく物語です。

お姫様は死に、魔女様は目覚めた

悠十
恋愛
 とある大国に、小さいけれど豊かな国の姫君が側妃として嫁いだ。  しかし、離宮に案内されるも、離宮には侍女も衛兵も居ない。ベルを鳴らしても、人を呼んでも誰も来ず、姫君は長旅の疲れから眠り込んでしまう。  そして、深夜、姫君は目覚め、体の不調を感じた。そのまま気を失い、三度目覚め、三度気を失い、そして…… 「あ、あれ? えっ、なんで私、前の体に戻ってるわけ?」  姫君だった少女は、前世の魔女の体に魂が戻ってきていた。 「えっ、まさか、あのまま死んだ⁉」  魔女は慌てて遠見の水晶を覗き込む。自分の――姫君の体は、嫁いだ大国はいったいどうなっているのか知るために……

三年目の離婚から始まる二度目の人生

あい
恋愛
三年子ができなければ、無条件で離婚できる――王国の制度。 三年目の夜、オーレリアは自らその条文を使い、公爵ルートヴィッヒに離婚を告げた。 理由はただ一つ。 “飾り”として生きるのをやめ、自分の手で商いをしたいから。 女性が公の場で立てる服を作るため、彼女は屋敷を去り、仕立て屋〈オーレリア・テイラーズ〉を開く。 店は順調に軌道に乗り、ついに王女の式典衣装を任されることに。 だが、その夜――激しい雨の中、彼女は馬車事故に遭い命を落とす。 (あと少し早く始めていたら、もっと夢を叶えられたのに……) そう思った瞬間、目を覚ますと――三年前、ルートヴィッヒと結婚する前の世界に戻っていた。 これは、“三年目の離婚”から始まる、二度目の人生。 今度こそ、自分の人生を選び取るために。 ーーー 不定期更新になります。 全45話前後で完結予定です、よろしくお願いします🙇

処理中です...