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第二章
あの時と
しおりを挟む「『私達だけ酷いよね。お話をしましょう。でも約束して。貴方を愛すから、貴方も愛して。』ファリンスが私を愛してくれる為の合言葉。」
──────
ファリンスの目が大きく開かれた。まるで何かを思い出した様に・・・。その瞬間私は幸せになれる気がした。
そんな事は束の間。お父様に腕を思いっきり掴まれて引っ張られた。折れたかもしれない。
「公爵様!申し訳ございません!体が悪くてろくに礼儀作法もなっておらず・・・。ほら!謝れ!謝る事も出来んのか?!」
お父様に頭を鷲掴みにされる。
「ぁ・・・そのご令嬢と二人きりでお話させて頂けませんか?お願いします。」
「こいつとですか?!・・・病弱なので少しだけでお願いします。」
二人きりで・・・!まるであの時みたいね。ファリンスの笑顔が素敵だわ。
ファリンスに聞こえない様に、お父様が耳元で家の格が下がる様な事はするな、と注意してくる。やっぱりお父様は格の事しか考えていないし、それよりも腕に爪が刺さってるわ。でも承諾してくれたから許す。危なく手が出る所だった。
そんなお父様を遮る様にファリンスが応接間の扉を開ける。促されるままに応接間へと入った。
バタンッと扉が閉められて二人きり。
ファリンスとバッチリと目が合う。
「どうしてさっきの合言葉を知っていたの?」
「ファリンスが教えてくれたからよ。」
「私は教えてないと思うのだけど。」
私?前は俺って言っていたじゃない。しかも視線に敵意が感じられるわ。睨む様なその目・・・酷い、愛してくれるって言ったじゃない。貴方も裏切るの?やっぱり嘘だったのね。酷い酷い酷い酷い。やっぱり私は幸せになれないんだ。悲しい悲しい悲しい。信じた私が馬鹿だったのかな?でもまだ・・・。
「もしかして・・・俺と同じ経験を?」
『・・・俺も同じ経験をしたからだよ。』
あの時の言葉がフラッシュバックしてくる。あの時と同じ事を言えば・・・!もしかしたら!
「あの『人達が私を何度も嘲笑い、罵り、殺してきたの。自分達の私利私欲の為だけに。今まで一回も刃向かった事は無かった。だからやってみたの。でもね、思ってたよりすぐ死んじゃったし、簡単だった。言われるがままやってきたから、自分からやるなんて無かったの。だから何をすればいいか分からなくて考えたの。一番最初に分かった事は罪に問われてまた殺されるんだって事。また誰かに殺される位なら自分から死んでやろうと思って。でも貴方が来てしまった。』前の人生のお願いをもう一度言うわ。幸せを教えて。私と、シャーロットと結婚して下さい、ファリンス。」
前言ったのと同じ様に言う。しっかりと目を見つめて。ファリンスがニッコリと笑って聞いてくれる。あの時と同じ様に。お願い、ファリンス。私の夢を叶えて。
「シャーロット・・・い──────」
バンッと乱暴に扉が開けられた。
「公爵様、もう宜しいでしょうか?お話ならばローズや私にお願いします。」
お父様・・・?なんで急に入って来るの?折角ファリンスが名前を呼んでくれたのに。
「・・・私が来た理由をお忘れですね。」
「知っておりますとも!婚約者探しの為に娘の紹介をさせて頂くと言う事で・・・」
婚約者探し?じゃあローズに会う為?やっぱりファリンスもローズが一番なの?
「では、こちらの令嬢・・・シャーロット様と婚約をさせて頂きたいです。」
私の肩に手を置いてお父様を真っ直ぐに見つめて、ニッコリとファリンスが言った。
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