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プロローグ
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プロミス社。日本を代表する化学メーカーで、基本的に医療薬品、健康食品などを開発、生産している。日本国民の身体を思ってくれる会社だ。
だがそんな会社に、黒い裏があることを、世間は知らないーーーー
「おい、コアは吸収し終わったか」
「いや、まだっすね」
東京都内。東京湾を近くに高くそびえ立つ、プロミス社のビルの地下深く。綺麗な白衣と七三分けがキマっている学者たちが、立方体の大きな作業場で忙しくあちらこちらと動き回っていた。山積みの書類を運ぶ者、複数名でボードの前で話し合う者、パソコンでデータを打ち込む者、雑巾がけをする者、滝に打たれる者、彼らはここで重大な仕事を遂行していた。
「何、まだ出来ていないのか」
一人のお偉い学者が、一人の下っ端に問う。
「いや、何か、よく分かんないすけどなんか」
下っ端は、コアと呼ばれる巨大なカプセルに入った赤茶色の球体と、その前に置かれてる無数のボタンとを指差し、首を傾げながら何とか説明しようとする。
「ボタン効かないんすよぉ……ぱっさぁん」
「その名前で呼ぶなと言っただろう、どれ、見せてみろ」
下っ端は後ろに下がり、その前で先輩学者ことぱっさんが、その無数のボタンをポチポチと押してみる。が、何の反応もない。ぱっさんも同様に首を傾げ始める。
「おかしいな、お前、何もしてないよな?」
「ハイ! 何もしてないっす! ハイ!」
ぱっさんは振り返って下っ端に確認するも、どうもそいつは何もやっていないらし……!
ぱっさんは自然と下っ端を二度見した。
「お前、何で服濡れてんだ?」
「あ、いやさっき滝に打たれてきたんで……ウィッス」
下っ端がさっきまで立っていたその床には水たまりが出来ている。
「え、……水没すか?」
「当たり前だろう。それ以外何がある」
「ちょっと待ってくださいよ! 防水してないんすかコレぇ!! 弁償すか!? ぱっさんオレ弁償すか!?」
「うるさい!! めっ!」
ぱっさんは強く袖を引っ張ってきた下っ端の手を引っぱたいた。下っ端は今にも泣き出しそうだったが、我慢しているのか、顔が全面的に震えている。そこに、
「すんませーん! 抜けてましたー!」
遠くから二人を呼びかけたのは、部屋の隅で雑巾がけをしていた山本だった。左手に古く黒ずんだ雑巾、右手で、おそらくさっきまで機能しなかったボタン装置のコンセントをブラブラと上げている。
「何だ……そういうことか。雑巾班気をつけろよー!」
「「「ウイーッス」」」
ぱっさんの注意に、雑巾班は遠くで返事する。山本もコンセントを元通りに刺したようで、ボタン装置が音を立てて再起動し始めた。
「良かったな、水没じゃなくてな」
ぱっさんは優しく下っ端の背中を叩く。
「ぱっさぁん……、俺アイツら嫌いっす。何なんすかもォ……!」
鼻をすすり、身体を震わせる下っ端の目から何かが滴っているような気がしたが、それは滝の水と混ざり合い見分けが付かなかった。
ぱっさんはそんなそいつの体をそっと抱き寄せる。
「寒いだろ、俺があっためてやるよ」
「ぱっさぁん……オレ、怖かったっす……! またぱっさんに怒られると思って……!」
「よーしよし、分かったから泣くな、カズ、な?」
ぱっさんはカズの体を、雑巾を絞る時のように強く抱きしめる。水が次々としたたる。
「今度、一緒に滝に打たれような」
「……うん」
「……服は脱いでな」
「……ん」
(water) fall in love…☆☆
ブツッ-----
「最後のは何だね……?」
「いやこれは! 本当に誠に申し訳なくお思っている所存でして! この度は不適切な内容を映像にお流ししたことをお詫び申し上げると同時に……!!」
「すみません、こちらの不手際です。申し訳ありません」
早口で、体を前後に大きく振りながら謝る部下を、1人の上司が庇った。
上司はプロジェクターの電源を切り、パソコンを閉じる。
「後半部分は除いて、前半の映像にあった通り、ようやく地球との契約が終了し、コアの抽出も可能になりました。これからは仕事の効率化向上を目指し励む予定になっております。途中経過は以上です」
「うむ……ご苦労」
プロジェクターを見終わったその大男は、椅子から立ち上がり、高級なふかふかの絨毯をゆっくりと踏みしめながら、部屋の窓へ歩む。男は一つ、溜め息をつくと、
「……もうすぐだ……ふふ」
と、不敵な笑みを浮かべて、窓の外に広がる低い東京の街を見下ろし、眺めるのだった。
だがそんな会社に、黒い裏があることを、世間は知らないーーーー
「おい、コアは吸収し終わったか」
「いや、まだっすね」
東京都内。東京湾を近くに高くそびえ立つ、プロミス社のビルの地下深く。綺麗な白衣と七三分けがキマっている学者たちが、立方体の大きな作業場で忙しくあちらこちらと動き回っていた。山積みの書類を運ぶ者、複数名でボードの前で話し合う者、パソコンでデータを打ち込む者、雑巾がけをする者、滝に打たれる者、彼らはここで重大な仕事を遂行していた。
「何、まだ出来ていないのか」
一人のお偉い学者が、一人の下っ端に問う。
「いや、何か、よく分かんないすけどなんか」
下っ端は、コアと呼ばれる巨大なカプセルに入った赤茶色の球体と、その前に置かれてる無数のボタンとを指差し、首を傾げながら何とか説明しようとする。
「ボタン効かないんすよぉ……ぱっさぁん」
「その名前で呼ぶなと言っただろう、どれ、見せてみろ」
下っ端は後ろに下がり、その前で先輩学者ことぱっさんが、その無数のボタンをポチポチと押してみる。が、何の反応もない。ぱっさんも同様に首を傾げ始める。
「おかしいな、お前、何もしてないよな?」
「ハイ! 何もしてないっす! ハイ!」
ぱっさんは振り返って下っ端に確認するも、どうもそいつは何もやっていないらし……!
ぱっさんは自然と下っ端を二度見した。
「お前、何で服濡れてんだ?」
「あ、いやさっき滝に打たれてきたんで……ウィッス」
下っ端がさっきまで立っていたその床には水たまりが出来ている。
「え、……水没すか?」
「当たり前だろう。それ以外何がある」
「ちょっと待ってくださいよ! 防水してないんすかコレぇ!! 弁償すか!? ぱっさんオレ弁償すか!?」
「うるさい!! めっ!」
ぱっさんは強く袖を引っ張ってきた下っ端の手を引っぱたいた。下っ端は今にも泣き出しそうだったが、我慢しているのか、顔が全面的に震えている。そこに、
「すんませーん! 抜けてましたー!」
遠くから二人を呼びかけたのは、部屋の隅で雑巾がけをしていた山本だった。左手に古く黒ずんだ雑巾、右手で、おそらくさっきまで機能しなかったボタン装置のコンセントをブラブラと上げている。
「何だ……そういうことか。雑巾班気をつけろよー!」
「「「ウイーッス」」」
ぱっさんの注意に、雑巾班は遠くで返事する。山本もコンセントを元通りに刺したようで、ボタン装置が音を立てて再起動し始めた。
「良かったな、水没じゃなくてな」
ぱっさんは優しく下っ端の背中を叩く。
「ぱっさぁん……、俺アイツら嫌いっす。何なんすかもォ……!」
鼻をすすり、身体を震わせる下っ端の目から何かが滴っているような気がしたが、それは滝の水と混ざり合い見分けが付かなかった。
ぱっさんはそんなそいつの体をそっと抱き寄せる。
「寒いだろ、俺があっためてやるよ」
「ぱっさぁん……オレ、怖かったっす……! またぱっさんに怒られると思って……!」
「よーしよし、分かったから泣くな、カズ、な?」
ぱっさんはカズの体を、雑巾を絞る時のように強く抱きしめる。水が次々としたたる。
「今度、一緒に滝に打たれような」
「……うん」
「……服は脱いでな」
「……ん」
(water) fall in love…☆☆
ブツッ-----
「最後のは何だね……?」
「いやこれは! 本当に誠に申し訳なくお思っている所存でして! この度は不適切な内容を映像にお流ししたことをお詫び申し上げると同時に……!!」
「すみません、こちらの不手際です。申し訳ありません」
早口で、体を前後に大きく振りながら謝る部下を、1人の上司が庇った。
上司はプロジェクターの電源を切り、パソコンを閉じる。
「後半部分は除いて、前半の映像にあった通り、ようやく地球との契約が終了し、コアの抽出も可能になりました。これからは仕事の効率化向上を目指し励む予定になっております。途中経過は以上です」
「うむ……ご苦労」
プロジェクターを見終わったその大男は、椅子から立ち上がり、高級なふかふかの絨毯をゆっくりと踏みしめながら、部屋の窓へ歩む。男は一つ、溜め息をつくと、
「……もうすぐだ……ふふ」
と、不敵な笑みを浮かべて、窓の外に広がる低い東京の街を見下ろし、眺めるのだった。
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