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第一章 霧雨レイン
第7話 リオンとの対話②
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「何ですか、これ。地球契約……概要」
「プロミス社の下請け会社の所から盗ってきた。見てみろ」
リオンは重いまぶたを最大限に開いて、その書類に目を通す。だが次第にその目は細まり、リオンの眉間にはシワが寄っていった。
「これ本当ですか?」
「馬鹿馬鹿しい話だよなあ。俺らはクロノス社からこんなことを調べるために依頼されたんだ」
「こんなのデタラメに決まってます! 話がぶっ跳んでるじゃないですか……!」
「デタラメ……だといいよなあ。でもリオン、クロノス社の社員が何て言ってたか覚えてるか?」
「……」
心当たりを探したが、リオンには思い出せなかった。
「地球が危ないかもしれない、と、言っていた。この計画を、ある程度クロノス社は把握していたのかもしれない」
レインはリオンを見つめる。もうここまで言ったら分かるだろう、という顔で。
「……それなら本当に、この書類がデタラメだと思うか? プロミス社とは違う会社が、見事この計画を立てていることを見破ったんだぞ? お前が言う〝デタラメ〟が真実なら、プロミス社とクロノス社はグルとでも言うのか? え?」
レインは椅子から立ち上がる。
「この書類に書かれてあることが真実だ。お前が今手に持っているのは嘘偽り無い物なんだよ」
リオンは俯いて、じっとその書類の内容を見つめている。その紙に書かれた一文字一文字とにらめっこしては、思考することを拒絶するリオン。リオンにはどうしてもこの事実を受け止められないようだ。
「今の日本に、こんな技術があるって言うんですか」
「ああ、そう認めざるをえないのかもな」
「俺が行ったあの街の、あのいつもと変わらないビルが本当に……?」
「よく息を潜めていると思うよ。裏社会にすら情報が来ないのが珍し。」
「大体、何なんですか本当にこの書類はァ! 誰だよアキレス腱三郎五右衛門破ってぇ!! 明らかに人の名前じゃねえし!!!」
リオンは近くにあった机に、書類を強く叩きつけた。
「り、リオン、落ち着け。確かにその責任者の名前はイカレているな。うん。この書類はな……とても、扱いにくい物なんだよ」
レインが机に叩きつけられた書類を手に取る。
「この、一般人に見せても誰も信じなさそうな内容、絶対に有り得ない責任者の名前など、あらゆる要素からこの書類は、世間から相手にされない物なんだ。つまり、この書類をマスコミなどに提供しても無意味。逆にそれでプロミス社に勘づかれて、目を付けられたりでもしたら殺されるだろうな。世界を滅亡させるほどの力を持っているのだから、俺もあっさりと消されるかもしれない。だから、この書類は俺たちの中で保管することにする。……この書類の価値は、もっと別なことにあったってわけだな」
レインはまた、机の上に書類を置く。
「別なことって……?」
「この書類は、謎を呼んできてくれた。俺たちの、謎を究明する欲求を掻きたたせた。お前も、真実を確かめたくなっただろう? ……なら、いくしかないだろ。プロミス本社に」
リオンに強いショックが襲う。全身の力が抜けるようだった。今すぐにでも寝たい、いや、もうこの身体をあと数十度後ろに傾ければ、この世界からおさらばして、永遠の眠りにつける自信がリオンにはあった。
「リオン、お前も今回特別に連れて行ってやろう。たまには刺激も与えんとな」
嫌だ。絶対に、寿命が、十年は縮む。
プロミス社にいく、と、普通に聞けばおかしい部分はないが、レインの言う「いく」の意味は違う。危険なセキュリティをかいくぐって、潜入する、いわゆる「逝く」の方に近い意味だ。その言葉の意味を、リオンは深く深く承知していた。
「予定が決まったらまた教えるから。心の準備しといてね」
リオンの耳の遠くで、レインのその言葉が響く。
リオンはもう、ベッドに身を任せて、深い眠りについていた……。
「プロミス社の下請け会社の所から盗ってきた。見てみろ」
リオンは重いまぶたを最大限に開いて、その書類に目を通す。だが次第にその目は細まり、リオンの眉間にはシワが寄っていった。
「これ本当ですか?」
「馬鹿馬鹿しい話だよなあ。俺らはクロノス社からこんなことを調べるために依頼されたんだ」
「こんなのデタラメに決まってます! 話がぶっ跳んでるじゃないですか……!」
「デタラメ……だといいよなあ。でもリオン、クロノス社の社員が何て言ってたか覚えてるか?」
「……」
心当たりを探したが、リオンには思い出せなかった。
「地球が危ないかもしれない、と、言っていた。この計画を、ある程度クロノス社は把握していたのかもしれない」
レインはリオンを見つめる。もうここまで言ったら分かるだろう、という顔で。
「……それなら本当に、この書類がデタラメだと思うか? プロミス社とは違う会社が、見事この計画を立てていることを見破ったんだぞ? お前が言う〝デタラメ〟が真実なら、プロミス社とクロノス社はグルとでも言うのか? え?」
レインは椅子から立ち上がる。
「この書類に書かれてあることが真実だ。お前が今手に持っているのは嘘偽り無い物なんだよ」
リオンは俯いて、じっとその書類の内容を見つめている。その紙に書かれた一文字一文字とにらめっこしては、思考することを拒絶するリオン。リオンにはどうしてもこの事実を受け止められないようだ。
「今の日本に、こんな技術があるって言うんですか」
「ああ、そう認めざるをえないのかもな」
「俺が行ったあの街の、あのいつもと変わらないビルが本当に……?」
「よく息を潜めていると思うよ。裏社会にすら情報が来ないのが珍し。」
「大体、何なんですか本当にこの書類はァ! 誰だよアキレス腱三郎五右衛門破ってぇ!! 明らかに人の名前じゃねえし!!!」
リオンは近くにあった机に、書類を強く叩きつけた。
「り、リオン、落ち着け。確かにその責任者の名前はイカレているな。うん。この書類はな……とても、扱いにくい物なんだよ」
レインが机に叩きつけられた書類を手に取る。
「この、一般人に見せても誰も信じなさそうな内容、絶対に有り得ない責任者の名前など、あらゆる要素からこの書類は、世間から相手にされない物なんだ。つまり、この書類をマスコミなどに提供しても無意味。逆にそれでプロミス社に勘づかれて、目を付けられたりでもしたら殺されるだろうな。世界を滅亡させるほどの力を持っているのだから、俺もあっさりと消されるかもしれない。だから、この書類は俺たちの中で保管することにする。……この書類の価値は、もっと別なことにあったってわけだな」
レインはまた、机の上に書類を置く。
「別なことって……?」
「この書類は、謎を呼んできてくれた。俺たちの、謎を究明する欲求を掻きたたせた。お前も、真実を確かめたくなっただろう? ……なら、いくしかないだろ。プロミス本社に」
リオンに強いショックが襲う。全身の力が抜けるようだった。今すぐにでも寝たい、いや、もうこの身体をあと数十度後ろに傾ければ、この世界からおさらばして、永遠の眠りにつける自信がリオンにはあった。
「リオン、お前も今回特別に連れて行ってやろう。たまには刺激も与えんとな」
嫌だ。絶対に、寿命が、十年は縮む。
プロミス社にいく、と、普通に聞けばおかしい部分はないが、レインの言う「いく」の意味は違う。危険なセキュリティをかいくぐって、潜入する、いわゆる「逝く」の方に近い意味だ。その言葉の意味を、リオンは深く深く承知していた。
「予定が決まったらまた教えるから。心の準備しといてね」
リオンの耳の遠くで、レインのその言葉が響く。
リオンはもう、ベッドに身を任せて、深い眠りについていた……。
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