めぐりの数

立志源

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最終章

循環

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朝、目が覚めても、何も変わらない。
目蓋を開けると、天井がある。
誰かがカーテンを開ける音がする。光が差し込む。
だが、暖かさも、眩しさも、もう分からない。

「おはようございます」

優しい声が響く。
返事をする代わりに、彼はまばたきを一度した。
それだけで、褒められる。
「本日も素晴らしい目覚めです」
笑う声があった。拍手する者もいた。

身体はすでに、椅子にも収まらない。
浮腫み、膨らみ、皮膚は伸びきって乾いている。
感覚はほとんどなく、喉も動かない。
それでも、誰かがスープを流し込んでくれる。

その日、部屋には複数の2がいた。
言葉少なに、手際よく準備を進めている。
彼を静かに運ぶ。ベッドごと。音もなく。

彼は目を閉じた。
もう、何がどうでもよかった。
心地よい布の感触も、声も、意味をなさない。

ドアが開く。
廊下を進む。
エレベーターに乗る。
下へ、下へ。
空気が冷たくなる。

最初に臭いが変わった。
鉄と、薬品と、湿った床の匂い。
次に、音。
機械の低い唸り。遠くで何かが切れる音。
水の流れる音。
何かが運ばれる音。

彼はそれらをただ聞いていた。
反応はない。表情もない。言葉もない。
ただ、運ばれていく。

「3番、到着しました」
無機質な声。
誰も敬語を使わない。
もう、必要がなかった。

ベッドごと移され、機械の上に置かれる。
赤外線の光が、彼の額をなぞる。
「確認。3番、登録ナンバー…一致」

金属が鳴る。
ナイフではない。
もっと正確で、冷たいもの。

その瞬間、彼の目はうっすらと開いていた。
だが、見たものはなかった。
感じたものもなかった。


静かに、処理が始まる。
血も、肉も、骨も、規格通りに分けられていく。
機械は止まらない。
すべてが、計画通りに進む。

そして――

**

夕暮れ、ある食堂。
「1」の若者が席につく。
皿の上には焼けた肉。柔らかく、脂がのっている。
ナイフで切り、口に運ぶ。
うまい、と呟く。

彼の額には「1」。

隣のテーブルでは、別の1が笑っている。
同じ肉。
同じ味。
同じ世界。

そしてまた、ある部屋では、別の誰かが鏡を見つめている。
額の数字にナイフを当てる手が、かすかに震えている。

世界は回る。
静かに、淡々と、何も変わらず。

――その目の前で。
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