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You bring happiness to rainy days !②
しおりを挟む彼が借り始めたマンションへと移動して、絡み合うようにキスをした。
感情がセーブできなかった。忘れていた彼の体温、キス、吐息。
「雨だし、美晴に会えるような気がしてた」
キスをしながら彼は続ける。
私に会いたかったと。私も概ねそうだったので、会いたかったよ、と返した。
ここまで来てだが、セックスをしてもいいのだろうか。いくら元カレで、恋愛感情はあると言っても。
「私、こんなに軽い女じゃないんだよ?」
男にホイホイ付いて行って股を広げるような女ではない。
「わかってるよ。俺だって、軽く女を家に連れ込むような男じゃない」
首筋にキスをされて、背筋を通った熱が腰を粟立たせた。
彼が私のワンピースのファスナーを下ろし、私は彼のシャツのボタンを外した。
思っている事とやっている事が違う。
彼が欲しい。二十歳そこそこでもあるまいのに、根底にあるそれが彼を強く求めてしまう。
丁寧とは言えない荒々しい愛撫だが、それさえ興奮した。彼も待てないのかと思うと、昂りが抑えられなかった。
「朔也、もう来て」
発情したメスネコのように腰をくねらせて彼を誘う。
指では嫌だった。すぐに彼が欲しい。
ゴムを着けている間もキスを繰り返して、離れられなかった。
欲しくて疼く。久々のセックスのせいもあるが、彼に抱かれていた記憶も呼び戻された。
前戯もそこそこだったのに、自分でもわかるほど濡れているのは、興奮している証拠だ。
彼のそそり立ったモノが、私の充分に潤った場所に埋まる。
「は、…………ぁあっ」
待っていた痺れが身体を走る。
ゆっくり入ってこられて、思わず腰が動く。
「これだけで……イきそ……」
彼の吐息混じりの言葉が、感情を走り出させた。
「もう、離れないから……」
首に手を回して彼の目を覗いた。熱の灯った瞳に、縋るような顔の私が映っている。
「まるでプロボーズみたいだ」
「まだ早いわよ」と言おうとした言葉が、急に打ち付けられた衝撃で嬌声に変わった。
いつだって優しい、彼の激情を感じさせるその動きに、私の身体が歓喜する。
「ああっ。……んん、ぁっ」
激しく揺すられて、彼の熱塊が大きくグラインドする度に、チカチカとした光が飛んでいる気がした。
「朔也ぁ、きもち……いぃ……ぁ」
身体のことを覚えていてくれたのか、私が好きなところや奥を擦り付けるように熱を移していく。
「悪い、美晴……。もたない」
眉間に皺を寄せた彼が、切なげに吐いた。
揺すられている私は、それに頷くことも出来なかった。
息も腰も早くなって、熱が私を追い詰めていく。
「は、ぁ。美晴、みはる……っ」
私を求める彼が先に熱を吐き出した。
狂おしいほど名前を呼んで欲しかった。
私の上に彼が覆いかぶさって、「ごめん」と洩らした。
「気持ちよかったら……だよね?」
「……まあ、気持ちよかったけどさ」
納得のいかない顔も、懐かしくて可愛らしくてクスリと笑うと、ムスッとした彼が「……男の事情ってわかる?」とボヤいた。
2回目は、以前と変わらず、私を気遣うように抱いてくれた。
まるで、どこかのお姫様にでもなったかのようで、私を夢見心地にさせた。
眠りにつく時、彼が私に何かを言った気がした。あまりにも眠たかったので、彼がなにを言ったのかわからなかったが、私の名前を言ったのは、笑っている口の動きでわかった。
とにかく、幸せだった。
それから、1年の交際を経て、去年のこのシーズンにバラの咲き誇る庭園でプロポーズを受けた。
動画サイトで見た歌手の歌のようで、少し恥ずかしかった。
「きれいだね、美晴」
白のタキシードの彼が、嬉しそうに微笑んでくれた。
あまりに熱心に見つめられて、私は照れてながら微笑むので精一杯になった。
「結婚式も雨になっちゃったね」
「晴れの日も雨の日も、美晴が一緒ならそれがベストな天気だよ」
朗らかに笑って腕を出され、そっと腕を組んだ。
瀟洒な観音開きのドアが開き、厳かなパイプオルガンの音と聖歌が聴こえる。
父親と歩く バージンロードだが、父は誰よりも高い場所で私を見ているので一緒には歩けない。
ベール越しに目が合った母が、目元をハンカチで押さえている。年を取ると涙脆くなるというのは本当らしい。
私にとって、雨の日は特別だ。
こんなにも幸せになれるのは、天の恵みもあるが、父が幸せを降らせてくれているからかもしれない。
定型文の制約の文句を済ませ、指輪を交換した。
悩みに悩んだ末の結婚指輪だ。これから一生この指輪をするのに、悩まない新婦はいない。
ベールを上げられ、彼が眩しそうに目を細めて笑っているのがはっきり見える。
「雨も祝福したくて降ってきてるんだよ」
彼──夫らしいポジティブな言葉に、素直に笑って頷くことが出来る。
「朔也。ありがとう……」
続けて言おうとした言葉が、胸から溢れる温かな気持ちで出てこない。
母のことは言えない。
そっと重ねられた誓いのキスが、頬に雨粒を零れさせた。
雨に一方的に好かれているのではなく、私も雨が好きなのだ。
恋人時代の楽しかった思い出は、雨とともにある。
これからは、雨でも晴れでも楽しく幸せに、彼と歩いて行くのだ。
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