Rainy Days & You

なかむ楽

文字の大きさ
8 / 8

You bring happiness to rainy days !②

しおりを挟む

 彼が借り始めたマンションへと移動して、絡み合うようにキスをした。
 感情がセーブできなかった。忘れていた彼の体温、キス、吐息。

「雨だし、美晴に会えるような気がしてた」

 キスをしながら彼は続ける。
 私に会いたかったと。私も概ねそうだったので、会いたかったよ、と返した。

 ここまで来てだが、セックスをしてもいいのだろうか。いくら元カレで、恋愛感情はあると言っても。

「私、こんなに軽い女じゃないんだよ?」

 男にホイホイ付いて行って股を広げるような女ではない。

「わかってるよ。俺だって、軽く女を家に連れ込むような男じゃない」

 首筋にキスをされて、背筋を通った熱が腰を粟立たせた。

 彼が私のワンピースのファスナーを下ろし、私は彼のシャツのボタンを外した。
 思っている事とやっている事が違う。
 彼が欲しい。二十歳そこそこでもあるまいのに、根底にあるそれが彼を強く求めてしまう。
 丁寧とは言えない荒々しい愛撫だが、それさえ興奮した。彼も待てないのかと思うと、昂りが抑えられなかった。

「朔也、もう来て」

 発情したメスネコのように腰をくねらせて彼を誘う。
 指では嫌だった。すぐに彼が欲しい。
 ゴムを着けている間もキスを繰り返して、離れられなかった。

 欲しくて疼く。久々のセックスのせいもあるが、彼に抱かれていた記憶も呼び戻された。


 前戯もそこそこだったのに、自分でもわかるほど濡れているのは、興奮している証拠だ。

 彼のそそり立ったモノが、私の充分に潤った場所に埋まる。

「は、…………ぁあっ」

 待っていた痺れが身体を走る。
 ゆっくり入ってこられて、思わず腰が動く。

「これだけで……イきそ……」

 彼の吐息混じりの言葉が、感情を走り出させた。

「もう、離れないから……」

 首に手を回して彼の目を覗いた。熱の灯った瞳に、縋るような顔の私が映っている。

「まるでプロボーズみたいだ」

「まだ早いわよ」と言おうとした言葉が、急に打ち付けられた衝撃で嬌声に変わった。

 いつだって優しい、彼の激情を感じさせるその動きに、私の身体が歓喜する。

「ああっ。……んん、ぁっ」

 激しく揺すられて、彼の熱塊が大きくグラインドする度に、チカチカとした光が飛んでいる気がした。

「朔也ぁ、きもち……いぃ……ぁ」

 身体のことを覚えていてくれたのか、私が好きなところや奥を擦り付けるように熱を移していく。

「悪い、美晴……。もたない」

 眉間に皺を寄せた彼が、切なげに吐いた。
 揺すられている私は、それに頷くことも出来なかった。
 息も腰も早くなって、熱が私を追い詰めていく。

「は、ぁ。美晴、みはる……っ」

 私を求める彼が先に熱を吐き出した。
 狂おしいほど名前を呼んで欲しかった。

 私の上に彼が覆いかぶさって、「ごめん」と洩らした。

「気持ちよかったら……だよね?」
「……まあ、気持ちよかったけどさ」

 納得のいかない顔も、懐かしくて可愛らしくてクスリと笑うと、ムスッとした彼が「……男の事情ってわかる?」とボヤいた。

 2回目は、以前と変わらず、私を気遣うように抱いてくれた。
 まるで、どこかのお姫様にでもなったかのようで、私を夢見心地にさせた。


 眠りにつく時、彼が私に何かを言った気がした。あまりにも眠たかったので、彼がなにを言ったのかわからなかったが、私の名前を言ったのは、笑っている口の動きでわかった。
 とにかく、幸せだった。


 それから、1年の交際を経て、去年のこのシーズンにバラの咲き誇る庭園でプロポーズを受けた。
 動画サイトで見た歌手の歌のようで、少し恥ずかしかった。





「きれいだね、美晴」

 白のタキシードの彼が、嬉しそうに微笑んでくれた。
 あまりに熱心に見つめられて、私は照れてながら微笑むので精一杯になった。

「結婚式も雨になっちゃったね」
「晴れの日も雨の日も、美晴が一緒ならそれがベストな天気だよ」

 朗らかに笑って腕を出され、そっと腕を組んだ。

 瀟洒な観音開きのドアが開き、厳かなパイプオルガンの音と聖歌が聴こえる。

 父親と歩く バージンロードだが、父は誰よりも高い場所で私を見ているので一緒には歩けない。
 ベール越しに目が合った母が、目元をハンカチで押さえている。年を取ると涙脆くなるというのは本当らしい。


 私にとって、雨の日は特別だ。

 こんなにも幸せになれるのは、天の恵みもあるが、父が幸せを降らせてくれているからかもしれない。

 定型文の制約の文句を済ませ、指輪を交換した。
 悩みに悩んだ末の結婚指輪だ。これから一生この指輪をするのに、悩まない新婦はいない。


 ベールを上げられ、彼が眩しそうに目を細めて笑っているのがはっきり見える。 


「雨も祝福したくて降ってきてるんだよ」


 彼──夫らしいポジティブな言葉に、素直に笑って頷くことが出来る。


「朔也。ありがとう……」

 続けて言おうとした言葉が、胸から溢れる温かな気持ちで出てこない。
 母のことは言えない。


 そっと重ねられた誓いのキスが、頬に雨粒を零れさせた。


 雨に一方的に好かれているのではなく、私も雨が好きなのだ。
 恋人時代の楽しかった思い出は、雨とともにある。
 これからは、雨でも晴れでも楽しく幸せに、彼と歩いて行くのだ。
しおりを挟む
感想 0

この作品の感想を投稿する

あなたにおすすめの小説

橘若頭と怖がり姫

真木
恋愛
八歳の希乃は、母を救うために極道・橘家の門を叩き、「大人になったら自分のすべてを差し出す」と約束する。 その言葉を受け取った橘家の若頭・司は、希乃を保護し、慈しみ、外界から遠ざけて育ててきた。 高校生になった希乃は、虚弱体質で寝込んでばかり。思いつめて、今まで養ってもらったお金を返そうと夜の街に向かうが、そこに司が現れて……。

うわさの行方

下沢翠花(しもざわすいか)
恋愛
まだ十歳で結婚したセシリア。 すぐに戦場へ行ってしまった夫のニールスは優しい人だった。 戦場から帰るまでは。 三年ぶりにあったニールスは、なぜかセシリアを遠ざける。 ニールスの素っ気ない態度に傷つき疲弊していくセシリアは謂れのない酷い噂に追い詰められて行く。

彼の巨大な体に覆われ、満たされ、貪られた——一晩中

桜井ベアトリクス
恋愛
妹を救出するため、一ヶ月かけて死の山脈を越え、影の沼地を泳ぎ、マンティコアとポーカー勝負までした私、ローズ。 やっと辿り着いた先で見たのは——フェイ王の膝の上で甘える妹の姿。 「助けなんていらないわよ?」 は? しかも運命の光が私と巨漢戦士マキシマスの間で光って、「お前は俺のものだ」宣言。 「片手だけなら……」そう妥協したのに、ワイン一杯で理性が飛んだ。 彼の心臓の音を聞いた瞬間、私から飛びついて、その夜、彼のベッドで戦士のものになった。

どんなあなたでも愛してる。

piyo
恋愛
遠征から戻った夫の姿が変わっていたーー 騎士である夫ディーノが、半年以上の遠征を終えて帰宅した。心躍らせて迎えたシエラだったが、そのあまりの外見の変わりように失神してしまう。 どうやら魔女の呪いでこうなったらしく、努力しなければ元には戻らないらしい。果たして、シエラはそんな夫を再び愛することができるのか? ※全四話+後日談一話。 ※毎日夜9時頃更新(予約投稿済)&日曜日完結です。 ※なろうにも投稿しています。

私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。

MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。

恋と首輪

山猫
恋愛
日本屈指の名門・城聖高校には、生徒たちが逆らえない“首輪制度”が存在する。 絶対的支配者・東雲財閥の御曹司、東雲 蓮の「選んだ者」は、卒業まで彼の命令に従わなければならない――。 地味で目立たぬ存在だった月宮みゆは、なぜかその“首輪”に選ばれてしまう。 冷酷非情と思っていた蓮の、誰にも見せない孤独と優しさに触れた時、みゆの心は静かに揺れはじめる。 「おめでとう、今日から君は俺の所有物だ。」 イケメン財閥御曹司 東雲 蓮 × 「私はあなたが嫌いです。」 訳あり平凡女子 月宮 みゆ 愛とか恋なんて馬鹿らしい。 愚かな感情だ。 訳ありのふたりが、偽りだらけの学園で紡ぐカーストラブ。

女の子がほとんど産まれない国に転生しました。

さくらもち
恋愛
何番煎じかのお話です。 100人に3~5人しか産まれない女の子は大切にされ一妻多夫制の国に産まれたのは前世の記憶、日本で亭主関白の旦那に嫁いびりと男尊女卑な家に嫁いで挙句栄養失調と過労死と言う令和になってもまだ昭和な家庭!でありえない最後を迎えてしまった清水 理央、享年44歳 そんな彼女を不憫に思った女神が自身の世界の女性至上主義な国に転生させたお話。 当面は2日に1話更新予定!

授かり婚〜スパダリ社長が旦那様になりました!!〜

鳴宮鶉子
恋愛
授かり婚〜スパダリ社長が旦那様になりました!!〜

処理中です...