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はじまりはじまり。
気紛れ古代竜。
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ふと気付いた。
そういえば加護を与えるのを忘れていたな、と。
「と、いう訳でな。来てやったぞ」
「いやどういう訳だよ。っていうか、あの場所を離れることもあるんだな」
「動かねば太るではないか。他の古代竜の様に」
「そんな理由かよ。でもって他にも古代竜がいてそいつらは太ってんのかよ」
気軽にひょいっと姿を見せ、何を当たり前のことをと言わんばかりにのたまう古代竜に、竜皇帝と呼ばれる男はツッコミを入れた。
入れなきゃダメな気がしたので。
「嬢ちゃんはおらんのか」
「子供等は揃って昼寝の時間だ」
子供、特に五歳前後までは、脳への負担を軽減させる為にも昼寝を含め、しっかりとした睡眠と栄養を取らせるようにしている。
「子供は眠っている間に記憶を整理するんだったか? ふむ。ならばお前さんだけで良いか」
取り敢えず其れ寄越せ、と言われて男は渋々と腰に佩いた剣を手渡す。
「太刀か」
「おう。皇竜の鱗を削って造り出した太刀だよ」
古代竜は暫く刃の部分を眺めた後、ちょいちょいと突いた。
「これで良し。返すぞ」
「……何やった?」
手元に戻ったソレは、明らかに質が変わっている。よくよく見れば、柄頭に透明な石が填まっていた。
「見て分からんか? 儂の加護で聖属性の神気を帯びた太刀になった」
言うならば”神竜の太刀”か。
束の間、何を言われたのか理解出来なかった。
理解したらしたで顔が引き攣るのを抑えられない。
この古代竜、やらかしやがった!
そういえば聖属性の古代竜は神竜として竜族に崇められ神殿もある、と今更ながらに気付く。そうか、だから神気を帯びるのか。
「じゃなくて。そもそも何で俺に神竜の加護だよ」
「古代竜の住処まで来れた特典じゃな。儂以外の古代竜も皆、似た様な事をやっとるよ」
暇潰しに。
暇潰しかよ。
「あの、陛下……」
呼ばれたので其方に顔を向けると、表情の硬い宰相以下文官及び近衛がいた。
会議の真っ最中だったので当然だ。
「あー、悪い。中座させたな」
「い、いいえ! その、先程から陛下とお話しされているのは」
「ああ。こいつが例の古代竜」
指差し示すが周囲は困惑の表情を浮かべたまま。
「リュートよ。そ奴等には儂の姿は見えとらんと思うぞ」
見えてない、とは。
「だって儂、薄皮一枚分とはいえ位相をずらして存在しとるし」
「は?」
思わず間の抜けた声が出た。
リュートには姿も見えているし声も聞こえる上に触れる事すら可能なのだが、他の者にとっては辛うじて其処に『恐ろしいまでに畏怖を湛えた何か』が在る、と感じ取れる程度。
これは一体どういう仕組みか。
「異界慣れしているプレイヤーだからな。その辺、もしかしたらゲームのあれこれが反映しているのかもしれんぞ」
これは検証が必要だな、うむ。
まさかのプレイヤー万能説。
興味を持った古代竜に付き合わされる運命が決定した瞬間だった。合掌。
後に、現竜皇帝であるリュートは”神竜に認められし皇帝”、そして神竜より神託を受けて断罪を行う”神裁の竜”と呼ばれるようになる。
「流石に、あれは遣り過ぎだと思うんだが」
「儂の酒をくすねたあの男が悪い」
最初の切欠は神殿の高位神官が神竜へ献上される酒を一瓶くすねた。それを知った古代竜が「儂の酒!」と怒って雷を数発神殿に落とした、それだけの話だった。
余罪として色々出てきただけで。それがちょっとシャレにならない位の悪事だっただけで。
「今度、美味い酒見繕ってやるから機嫌直せ」
「飲み仲間付きか、それなら許そう」
「え、飲み仲間って俺? いや、良いけど」
「それから今度からエーシェンと呼べ。お前とお嬢ちゃんにだけ、儂の名を呼ぶのを許してやろう」
次はダンジョンへ行くぞ、運動不足解消に付き合え。
言いたいだけ言って去る古代竜に、最早聞こえてないと分かっていても言わざるを得なかった。
「名を呼べってお前、最初から付き合わせる事前提だっただろう!?」
顛末だけを聞いたリンフィスは、伯父に対し「がんばれ」と形だけ慰めた。
そういえば加護を与えるのを忘れていたな、と。
「と、いう訳でな。来てやったぞ」
「いやどういう訳だよ。っていうか、あの場所を離れることもあるんだな」
「動かねば太るではないか。他の古代竜の様に」
「そんな理由かよ。でもって他にも古代竜がいてそいつらは太ってんのかよ」
気軽にひょいっと姿を見せ、何を当たり前のことをと言わんばかりにのたまう古代竜に、竜皇帝と呼ばれる男はツッコミを入れた。
入れなきゃダメな気がしたので。
「嬢ちゃんはおらんのか」
「子供等は揃って昼寝の時間だ」
子供、特に五歳前後までは、脳への負担を軽減させる為にも昼寝を含め、しっかりとした睡眠と栄養を取らせるようにしている。
「子供は眠っている間に記憶を整理するんだったか? ふむ。ならばお前さんだけで良いか」
取り敢えず其れ寄越せ、と言われて男は渋々と腰に佩いた剣を手渡す。
「太刀か」
「おう。皇竜の鱗を削って造り出した太刀だよ」
古代竜は暫く刃の部分を眺めた後、ちょいちょいと突いた。
「これで良し。返すぞ」
「……何やった?」
手元に戻ったソレは、明らかに質が変わっている。よくよく見れば、柄頭に透明な石が填まっていた。
「見て分からんか? 儂の加護で聖属性の神気を帯びた太刀になった」
言うならば”神竜の太刀”か。
束の間、何を言われたのか理解出来なかった。
理解したらしたで顔が引き攣るのを抑えられない。
この古代竜、やらかしやがった!
そういえば聖属性の古代竜は神竜として竜族に崇められ神殿もある、と今更ながらに気付く。そうか、だから神気を帯びるのか。
「じゃなくて。そもそも何で俺に神竜の加護だよ」
「古代竜の住処まで来れた特典じゃな。儂以外の古代竜も皆、似た様な事をやっとるよ」
暇潰しに。
暇潰しかよ。
「あの、陛下……」
呼ばれたので其方に顔を向けると、表情の硬い宰相以下文官及び近衛がいた。
会議の真っ最中だったので当然だ。
「あー、悪い。中座させたな」
「い、いいえ! その、先程から陛下とお話しされているのは」
「ああ。こいつが例の古代竜」
指差し示すが周囲は困惑の表情を浮かべたまま。
「リュートよ。そ奴等には儂の姿は見えとらんと思うぞ」
見えてない、とは。
「だって儂、薄皮一枚分とはいえ位相をずらして存在しとるし」
「は?」
思わず間の抜けた声が出た。
リュートには姿も見えているし声も聞こえる上に触れる事すら可能なのだが、他の者にとっては辛うじて其処に『恐ろしいまでに畏怖を湛えた何か』が在る、と感じ取れる程度。
これは一体どういう仕組みか。
「異界慣れしているプレイヤーだからな。その辺、もしかしたらゲームのあれこれが反映しているのかもしれんぞ」
これは検証が必要だな、うむ。
まさかのプレイヤー万能説。
興味を持った古代竜に付き合わされる運命が決定した瞬間だった。合掌。
後に、現竜皇帝であるリュートは”神竜に認められし皇帝”、そして神竜より神託を受けて断罪を行う”神裁の竜”と呼ばれるようになる。
「流石に、あれは遣り過ぎだと思うんだが」
「儂の酒をくすねたあの男が悪い」
最初の切欠は神殿の高位神官が神竜へ献上される酒を一瓶くすねた。それを知った古代竜が「儂の酒!」と怒って雷を数発神殿に落とした、それだけの話だった。
余罪として色々出てきただけで。それがちょっとシャレにならない位の悪事だっただけで。
「今度、美味い酒見繕ってやるから機嫌直せ」
「飲み仲間付きか、それなら許そう」
「え、飲み仲間って俺? いや、良いけど」
「それから今度からエーシェンと呼べ。お前とお嬢ちゃんにだけ、儂の名を呼ぶのを許してやろう」
次はダンジョンへ行くぞ、運動不足解消に付き合え。
言いたいだけ言って去る古代竜に、最早聞こえてないと分かっていても言わざるを得なかった。
「名を呼べってお前、最初から付き合わせる事前提だっただろう!?」
顛末だけを聞いたリンフィスは、伯父に対し「がんばれ」と形だけ慰めた。
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