竜とRPGと乙女と

紙縞コウキ

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はじまりはじまり。

つくってみた。

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 あれがあったら良いのに。
 何度かそう思うことがあった。
 『前』は電気で動いていたものを、今度は『魔法具』として作れないか。
 それが始まりだった。

 彼女はポットと卓上コンロが欲しかった。

「まあ、米はこの世界でも主食の一つとしてあるからな」
「うん。ゲームでも料理の品目に炒飯とかおむすびがあったし」
 ついでに豚汁や味噌汁だってあったのだから当然味噌もある。
 だが悲しいかな、彼女の生まれた国の主食は小麦、つまりパンだった。
「やっぱり根っこが日本人である以上、いつでも炊き立てのご飯が食べたくなる訳よ。炊飯器が欲しいとは言わない、土鍋でも良いから炊き立てご飯食べたい」
 その為には幼女な自分でも安全に使える卓上コンロが欲しい。
 リンフィスはそう考えた。
「それで、エーシェンに協力を願ったと」
 呆れつつも、リュートの手にはしっかりと炊き立てご飯の入った茶碗があった。箸は小皿に取り分けられた漬物へと延びる。
「うむ、中々に開発は面白かったぞ」
 満足気に古代竜が己の口へと運ぶのは肉と卵のそぼろ飯。どうやら甘辛い味付けがお気に召したようだ。
 そしてリンフィスがほっこりと味わうのは茶漬け。その傍らには保温されたお湯の入ったポットが置かれている。
「お魚の切り身と海苔でお茶漬け、おいしー」

 彼女はずっとお茶漬けが食べたかったのだ。
 次の目標は梅干しである。

 リンフィスとエーシェンが開発した魔法具『卓上コンロ』と『ポット』。
『卓上コンロ』は円形のプレートの下へ均等に配置された火の魔法石に魔力を通すことで発熱する。その温度は弱火・中火・強火の三段階に設定され、弱火なら四十度前後、中火では七十度前後、強火なら百二十度程度である。プレート部分は炭化ケイ素セラミックス。高い熱伝導率と安定した耐熱性により、素材としてエーシェンのお眼鏡に適った様だ。
 一方の『ポット』は保温目的なのでステンレス製の容器であり、永続的な保温魔法が掛けられているに過ぎない。
「いやいや。セラミックもステンレスもこの世界には無いからな? 保温魔法だってまだ未確認の魔法だからな?」
「問題無い。商業ギルドには既に竜皇帝たるお前さんの後ろ盾があると申告した上で”エル”という名で商品登録しておいた」
「は?」
「ついでに私も『ライター』造って冒険者ギルドに使用者登録制の製品として納入してきました。勿論、伯父様の後ろ盾有りを申告して!」
「あ?」
 商業ギルドに登録された二つは高い登録開示料を払えば誰でも作製が可能となる。一般に普及し易いものと言えるだろう。
 対して冒険者ギルドに登録された物は安価ではあるが冒険者にしか現物を購入出来ず、一定期間の後に返却しなければならない。また所有者を明確にしなければならない義務が生じる。故意の破損・紛失は罰金が科せられその冒険者の信用問題にも関わってくるので、代理購入を引き受ける者はまず居ない。
「何で態々そんなこと」
「放火に使われたら嫌だし」
「ああ、成程」
 『彼方』のニュースでも放火犯がライターで火を点けていたというのはよく聞く話だったので納得した。

「しかし日常的な魔法具の作成というのは面白いな」
 何か他に造りたい物はあるか、と古代竜は楽しそうに幼女に聞いている。首を傾げつつ考える幼女を見守る様はまさしく孫を溺愛する爺。
 息子が居るとはいえ伯父はちょっぴりついていけずに疎外感。

 こうして古代竜は物創りにハマった。

「……あっ! お前等、面倒なことだけ俺に押し付けるなよ!」
 古代竜が商業ギルドに登録した商品は全てリュートに”お伺い”が回ってくると気付いたのは、炊いた米が彼らの腹に収まって暫くした頃だった。

『ちっ、流されなかったか』
「揃って舌打ちするな!」
「ああ、そうだ。セラミックとステンレスはあの辺の山から産出するようになってるから」
「あ、それは便利」
「あの辺の山って龍ノ背山脈……っておい、セラミックもステンレスもそのままの材質で産出するようなモノじゃなかったよな、確か」
「まあ深く考えるな」
「物理法則無視かよ、何なのこの世界!?」



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