竜とRPGと乙女と

紙縞コウキ

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はじまりはじまり。

幼女は装備してみた。

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 ”匣(ボックス)”、と呼ばれるものがある。
 それは空間拡張魔法を掛けられ、見た目よりも多くの物が入った。
 その為、移動の多い旅人や冒険者・商人達にとっては必須とも言えるのだが、空間魔法は本人の素養と資質に左右される希少な属性であり使い手も少なく、比例して匣自体も容量が大きい程に高価な代物となった。
 いつか容量の大きい匣を持てる程に稼ぐこと。それを夢見る者もいる。


 頭には黒いふわふわな三角形、背負った丸い袋はやはりふわふわで黒く、ゆらゆらと揺れる尻尾が付いている。
 後姿は黒い子猫と化した幼女に、その場の大人達は内心で親指を力強く立てた。

 ぐっじょぶ、古代竜!

「重くないか、リン?」
「大丈夫。軽くてもふもふー」
 リンフィスはその場でぴょんぴょんと軽く飛ぶ。その足元はやはり黒いもふもふに覆われていた。
 肉球ブーツである。見た目の破壊力に、数人が崩れ落ちた。
 なにあれかわいい。
「すごいね、この『こにゃんこセット』。リュックは空間拡張魔法の掛かった匣だしお耳には索敵機能付いてる。ブーツもこれ、もしかして身体補正機能とか軽い疲労回復魔法が付与されてるっぽい?」
 リュックには空間魔法だけでなく更に希少な属性である時空魔法まで掛けられている。
 匣の中では時間は経過せず、薬草や果物に肉や魚は鮮度を保ったまま。調理した食べ物すら出来立てをいただけるという優れ物だ。
「今リンが身に着けてるのは古代竜が遊び心満載で造ったものだからこういう形だが。現状存在しないとされていた倉庫程の容量の匣を、ダンジョンが生成することがあるそうだ」
「ダンジョンが……!」
「生成、ということはつまり、ダンジョン・コアのある上位クラスのダンジョンということですか」
「上位クラスに指定されているダンジョンは、面倒、こほん、複雑さと危険性の高さから未だ攻略の進んでいないものも幾つかあるとか」
「これは本腰を入れて調査をしてみるべきですな」
 少々本音が混ざりつつも、齎された情報に対して議論が進む。
 中には貴重で高価な装備を幼女が身に着けているのが気に食わない者もいたが、
「……かわいいから良いか」
 リンフィスはずっと、猫耳を触ったりリュックの尻尾を握ってみたり肉球ブーツの感触を確かめてみたりしていた。
 気持ちは分かるが、その舐める様な視線とにやにや笑み崩れた顔は大変気持ち悪いのでおっさん自重しよう。
 変態さんには気を付けましょう。
 変態さんは背後に気を付けましょう。南無。


 後日、下位のダンジョンでも容量の小さいものではあるが時空魔法の掛かった匣が発見され大騒ぎとなった。
「エーシェン、何かしたか?」
「儂じゃないぞ」
 古代竜は首を横に振る。
 彼処はその昔、別の古代竜が家出をした際に仮の塒だった。
「家出って」
「実験好きでな、うっかり宝を貯め込んだ山を吹っ飛ばして母に怒られたそうだ」
 時空魔法の得意な竜だったらしく、匣を最初に考案したのもその竜だという。
「まさか、ダンジョンで発見される匣って」
「彼奴の実験結果か忘れ物だろうな」
 リンフィスとリュートは何とも言い難い表情で互いの顔を見合わせた。
 その事実は、世間に公表したら駄目な気がした。




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