竜とRPGと乙女と

紙縞コウキ

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はじまりはじまり。

遠距離移動は大変なので。

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 アトレ王国の王弟を父として、ドラグナー皇国の王妹を母として、アトライア公爵家次女としてリンフィスは生まれた。
 アトレ王家とドラグナー皇家、どちらも直系の子に女児はいない。その為アトライア公爵家の姉妹は大切に育てられた。
 周りが過保護ゆえに姉が癒し系天然天使に育つのを見ていた妹は、持ち前の前世の記憶も手伝ってそこそこ常識的に育つ。
 が、やはりお嬢様育ちでマイペースなのは否めず、幼少の頃から幼馴染を兼ねた専属の次女と護衛騎士がさりげなくフォローをしていた。

 彼女が冒険者ギルドに登録したのは五歳の頃。
 古代竜・聖生龍に『再会』した後、竜皇帝自らが冒険者ギルドを設置した時だ。
 ギルドのルール制定にも裏で知識を提供し、竜皇帝と共に冒険者ギルドの有用性と合理性を実証。更にライターや水珠といった生活便利魔法具(一部は冒険者ギルド専売品)の創造した功績により、幼いながらもギルド内でも割と上位の地位を確立していた。

 最も、見た目的に功績よりもマスコットとしての地位の方が高いが。

「普通ならこんな子供、気味が悪いって嫌厭しそうだけど」
「竜族ってのは変わり者が多い。お前もその一人だと思われてんだろ」
 歴代の竜皇帝もやらかしている。当然、この男も。

 なお、最近で最もやらかしてくれたのは二人に加護を与えた古代竜である。
 アレの印象が強過ぎてリンフィスのやることなんて可愛らしいものにしか見えない。

「何やったの伯父様」
「まああれだ。若気の至り、黒歴史ってやつだな」
「海で泳ぐと言いながらクラーケンを採って食べる、焼き芋が食べたいと言った時は枯葉を燃やして同時に小火を起こしたな」
「風魔法を覚えたばかりの頃はご婦人方のドレスの裾を捲ってましたね」
「ちょっ、おい、スカート捲りはお前等だって同罪だろ!?」
『やったのは陛下ですから』
 側近達の言葉に慌てるも、姪は「男の子だねー」で軽く流した。
 クラーケンは美味しかったのかどうかは気になったが。
「伯父様の色々は今度母様に聞くとして」
「聞かんでいい!」

「やっぱり便利だね、転移魔方陣」

 リンフィスはたしたしと魔法陣の端を踏む。陣の中央には少女と同じくらいの背丈の猫の石像が立っており、其処に転移座標が組み込まれている。
 ちなみに向かって右の耳に触れるとアトレ王国にあるリンフィスの自室へ、左の耳に触れるとドラグナー皇国にあるリンフィスの私室へ転移する。
 これによって、リンフィスが両国を移動する時間が大幅に短縮された。
 製作者は古代竜、猫型なのはなんとなくだそうだ。
「何でもアリだよな、あのチートドラゴン」
「昨日ふらっと来たかと思えばポットの魔法具置いてったんだけど」
「あー、俺んとこにも来たわ。こっちには冷却魔法の掛かったジョッキ置いてったぞ」
 件の古代竜は、最近の趣味として地味にあったら嬉しい日用品的な魔法具を作成しているらしい。
「神竜様はご自分の加護を与えた陛下と姫君が大層お気に入りのようだ」
「こう言ってはアレですが、離れた所で暮らす息子と孫娘との交流を楽しんでいる祖父みたいですね」
『確かに』
 納得した。
「そういえば、一人は飽きるとか言ってたかも」
「良い暇潰しが出来た、とも聞いたぞ」
 一体あの古代竜はどれだけの時間を過ごしてきたのか。
 本来ならしんみりする場面だが、其処は古代竜との関わりが深くなりつつあるリンフィスとリュート、二人は知っている。
「他の古代竜のように太りたくないから、運動不足に付き合え、だったか」
「私、お勉強で忙しいから伯父様お付き合い頑張ってね」
「いやお前も付き合えよ」
「無理。何てったって私五歳児、アトレとドラグナー両国のしきたりとか作法とか、風土に歴史、貴族名鑑だって憶えなきゃいけないんだから」
 単純計算で倍の勉強量、しかも何方も座学だけでなく実地もあり。
 息抜き程度ならともかく、数日間ダンジョンに集中出来るような暇はない。
「子供の内から詰め込めば、きっとたぶん何とかなる」
「……そうだな。何とかなったな」
 言ってリュートは遠い目をする。
 目の前に何とかなった実例がいた。王様って大変だ。
 帝王学すげえ。
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