竜とRPGと乙女と

紙縞コウキ

文字の大きさ
8 / 15
はじまりはじまり。

兄弟は振り返る。

しおりを挟む
 王族というものは、責任重大で大変なものである。
 そういう認識は家庭教師がついて勉強する中で、周囲の大人達を見ているうちに、自然とできていた。
 だからこその問題もある。

「子供の内から化粧ってどうよ。白粉とか香水とかきつかったりして酔う」
「この間のお茶会に参加してた侯爵家の長女。あの我儘っぷりも引くよね」
「本人あれで『可愛いおねだり』とか思ってるんだ。手に負えない」
「僕らを見る目。ぶっちゃけあれ肉食獣の目だよ? 怖いよ」

 この日、アトレ王国第一王子ラインハルトと第二王子クラウディオはアトライア公爵家に来ていた。
 従弟であるデューク・レナート兄弟との慰労会と称して。
 思い出すのは先日アトレの王妃主催の茶会。
 この日は子供同士の交流という名目で貴族位の家の少年少女が出席、当然、王子2人と公爵家の兄弟も出席していた。

 要は王子達の側近及び婚約者候補の選別の為である。

「まあでも、あれで絶対に排除すべき存在が絞れたのは行幸かな」
「そうだね。僕等が溺愛していると知っててどうしてああも貶める言葉が言えるのか」
 あのお茶会の日、同じく招待されていたアトライア公爵家の上の娘は風邪で欠席をしてた。
 それを『姉妹揃って王家の招待を断った恥知らず』『わざとか弱いふりをして男にちやほやされるのが好きな令嬢』と嘲った者がいたのだ。
 よりにもよって、あの姉妹を溺愛する兄や従兄達の前で。
 だから少年達は笑顔で言ってやった。

「私達の前で、態々、王家の血を引く者を見下すんですから、きっと貴女はとっても素晴らしいご令嬢なのでしょうね。お顔に罅が入っている様ですが」
「それはまた、随分な教育をされていることだ。確か、西の侯爵家のご令嬢だったか。見目の良い男を選んで仕えさせるのが趣味と噂の」
「ああ成程、言われれば学生時代に数々の浮名を流されたあの方にそっくりだ。侯爵も可哀想に」
「そもそも下の妹はまだ5歳。社交界どころか公式な茶会に出席できる年齢になってないのですがね。その程度の常識も無いのですか、残念な頭です」

 それはもう綺麗な笑顔で毒を吐いた。
 当然、その少女とそれに同意していた一団はまとめて論外と見做す。

 保護者として出席していた夫人は抗議したが、その際に彼女の口から飛び出した言葉がそれはもう不敬で傲慢なものだったので、「自分以外を見下すその姿勢、まったくお変わりありませんのね?」と王妃の怒りを買った。

「あの家からはうちにも婚約の話を持ち込まれてたからね。良い断りのネタになったって父も喜んでたよ」
「うちもそうだな。侯爵自身は人柄良いんだが」
 招待状を隠され王妃主催のお茶会自体を知らなかった彼とその正妻は、アトレ王家とアトライア公爵家に謝罪した。
 両家は彼の家の事情を知っているので、大変夫妻に同情的である。
「あの女の息子も、良い噂を聞かないね」
「正妻の方の息子は礼儀正しいし頭の回転も良いぞ」
「知ってる」
 侯爵とその正妻の息子は、ぶっちゃけ第一王子の側近候補だ。彼を潰される訳にはいかない。

「……実はもう一つ対策建てなきゃならないかもしれないことがあるんだ」
 ちょっと困ったような顔で、デュークは溜息を落とす。
 ラインハルトは弟の方に視線を向けるが、レナートは知らないとばかりに首を振る。クラウディオも首を傾げた。
「デューク、どういうことだ?」
「うん。それが、」

 リンに、暗殺者が憑いたみたいなんだ。

『……はあっ!?』

しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

ゲーム未登場の性格最悪な悪役令嬢に転生したら推しの妻だったので、人生の恩人である推しには離婚して私以外と結婚してもらいます!

クナリ
ファンタジー
江藤樹里は、かつて画家になることを夢見ていた二十七歳の女性。 ある日気がつくと、彼女は大好きな乙女ゲームであるハイグランド・シンフォニーの世界へ転生していた。 しかし彼女が転生したのは、ヘビーユーザーであるはずの自分さえ知らない、ユーフィニアという女性。 ユーフィニアがどこの誰なのかが分からないまま戸惑う樹里の前に、ユーフィニアに仕えているメイドや、樹里がゲーム内で最も推しているキャラであり、どん底にいたときの自分の心を救ってくれたリルベオラスらが現れる。 そして樹里は、絶世の美貌を持ちながらもハイグラの世界では稀代の悪女とされているユーフィニアの実情を知っていく。 国政にまで影響をもたらすほどの悪名を持つユーフィニアを、最愛の恩人であるリルベオラスの妻でいさせるわけにはいかない。 樹里は、ゲーム未登場ながら圧倒的なアクの強さを持つユーフィニアをリルベオラスから引き離すべく、離婚を目指して動き始めた。

出来損ない貴族の三男は、謎スキル【サブスク】で世界最強へと成り上がる〜今日も僕は、無能を演じながら能力を徴収する〜

シマセイ
ファンタジー
実力至上主義の貴族家に転生したものの、何の才能も持たない三男のルキウスは、「出来損ない」として優秀な兄たちから虐げられる日々を送っていた。 起死回生を願った五歳の「スキルの儀」で彼が授かったのは、【サブスクリプション】という誰も聞いたことのない謎のスキル。 その結果、彼の立場はさらに悪化。完全な「クズ」の烙印を押され、家族から存在しない者として扱われるようになってしまう。 絶望の淵で彼に寄り添うのは、心優しき専属メイドただ一人。 役立たずと蔑まれたこの謎のスキルが、やがて少年の運命を、そして世界を静かに揺るがしていくことを、まだ誰も知らない。

生まれ変わったら飛べない鳥でした。~ドラゴンのはずなのに~

イチイ アキラ
ファンタジー
生まれ変わったら飛べない鳥――ペンギンでした。 ドラゴンとして生まれ変わったらしいのにどうみてもペンギンな、ドラゴン名ジュヌヴィエーヴ。 兄姉たちが巣立っても、自分はまだ巣に残っていた。 (だって飛べないから) そんなある日、気がつけば巣の外にいた。 …人間に攫われました(?)

悪役令嬢の騎士

コムラサキ
ファンタジー
帝都の貧しい家庭に育った少年は、ある日を境に前世の記憶を取り戻す。 異世界に転生したが、戦争に巻き込まれて悲惨な最期を迎えてしまうようだ。 少年は前世の知識と、あたえられた特殊能力を使って生き延びようとする。 そのためには、まず〈悪役令嬢〉を救う必要がある。 少年は彼女の騎士になるため、この世界で生きていくことを決意する。

没落ルートの悪役貴族に転生した俺が【鑑定】と【人心掌握】のWスキルで順風満帆な勝ち組ハーレムルートを歩むまで

六志麻あさ
ファンタジー
才能Sランクの逸材たちよ、俺のもとに集え――。 乙女ゲーム『花乙女の誓約』の悪役令息ディオンに転生した俺。 ゲーム内では必ず没落する運命のディオンだが、俺はゲーム知識に加え二つのスキル【鑑定】と【人心掌握】を駆使して領地改革に乗り出す。 有能な人材を発掘・登用し、ヒロインたちとの絆を深めてハーレムを築きつつ領主としても有能ムーブを連発して、領地をみるみる発展させていく。 前世ではロクな思い出がない俺だけど、これからは全てが報われる勝ち組人生が待っている――。

バーンズ伯爵家の内政改革 ~10歳で目覚めた長男、前世知識で領地を最適化します

namisan
ファンタジー
バーンズ伯爵家の長男マイルズは、完璧な容姿と神童と噂される知性を持っていた。だが彼には、誰にも言えない秘密があった。――前世が日本の「医師」だったという記憶だ。 マイルズが10歳となった「洗礼式」の日。 その儀式の最中、領地で謎の疫病が発生したとの凶報が届く。 「呪いだ」「悪霊の仕業だ」と混乱する大人たち。 しかしマイルズだけは、元医師の知識から即座に「病」の正体と、放置すれば領地を崩壊させる「災害」であることを看破していた。 「父上、お待ちください。それは呪いではありませぬ。……対処法がわかります」 公衆衛生の確立を皮切りに、マイルズは領地に潜む様々な「病巣」――非効率な農業、停滞する経済、旧態依然としたインフラ――に気づいていく。 前世の知識を総動員し、10歳の少年が領地を豊かに変えていく。 これは、一人の転生貴族が挑む、本格・異世界領地改革(内政)ファンタジー。

ただいま御褒美転生中!〜元召喚勇者は救った世界で、自作の自立型魔法創作物と共に自由を求める〜

いくしろ仄
ファンタジー
女神に頼まれ魔王を討ち倒したご褒美に、当人の希望通りの人生に転生させてもらった主人公。 赤ん坊から転生スタートします。 コメディ要素あり、ほのぼの系のお話です。 参考図書 復刻版鶴の折り紙・ブティック社

『異世界ガチャでユニークスキル全部乗せ!? ポンコツ神と俺の無自覚最強スローライフ』

チャチャ
ファンタジー
> 仕事帰りにファンタジー小説を買った帰り道、不運にも事故死した38歳の男。 気がつくと、目の前には“ポンコツ”と噂される神様がいた——。 「君、うっかり死んじゃったから、異世界に転生させてあげるよ♪」 「スキル? ステータス? もちろんガチャで決めるから!」 最初はブチギレ寸前だったが、引いたスキルはなんと全部ユニーク! 本人は気づいていないが、【超幸運】の持ち主だった! 「冒険? 魔王? いや、俺は村でのんびり暮らしたいんだけど……」 そんな願いとは裏腹に、次々とトラブルに巻き込まれ、無自覚に“最強伝説”を打ち立てていく! 神様のミスで始まった異世界生活。目指すはスローライフ、されど周囲は大騒ぎ! ◆ガチャ転生×最強×スローライフ! 無自覚チートな元おっさんが、今日も異世界でのんびり無双中!

処理中です...