ようせいテレビ

昔懐かし怖いハナシ

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来たよ二人

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「君の名前は?」
こちらの世界へ来てますます泣きそうな、女の子。広義は優しく名前を聞いた。
「ここどこ?ママは?」
戸惑う女の子。
「ここは、テレビの世界だよ。すべてのテレビとつながってるらしいんだ。僕と君以外、誰もいないけど。」
広義はなぐさめると、そう話した。
「それよりも、そのあざどうしたの?たくさん。顔にもある。」
「ころんだ。気にしないで。」
女の子は涙をこらえ、優しく笑った。その笑顔は、広義にとって久しぶりに見るものだった。
「僕、広義だよ。」
「私、さち。」
子供らしい短いあいさつをして、二人は手をにぎった。それは二人にとって、とても温かいものだった。
「学校いまなくてさ、おかあさん遊んでくれないの。だから、ここで一緒に遊ぼ。大丈夫。また帰れるから。」
「そうなんだ。いいよ。私も、家にいたくなかった。だって、私のママも遊んでくれない。外にも出られない。」
「だよね。僕も、一人では出るなって言われている。大人って勝手だよね。」
「うんそうだよね。」
すぐに二人は仲良くなっていった。
「ねぇ、僕のおじいちゃんのテレビ、探そう。」
「いいよ。こうき君について行く。」

 二人は歩き出した。周りから見ると小さな一歩だが、それでも二人にとってなにも変わらない。二人以外、誰もこのせかいにいない。

「休みだった日、いつも何してるの?」
そう他愛のないことが気になった広義はそう聞いた。
「いつもテレビ見ている。ママはいつもDVD借りてくれるから、いつも観てるんだ。」
「え?僕も見てるんだ。何観てるの?」
広義は好きな事が一緒だった事に驚き、うれしかった。
「一緒だ。面白いよね。日曜日にいつもあるから、毎週観てるんだ。今さ、、」
「うん。だよね。面白いよね。」
さちも、その話題でもりあがっていた。いつの間にか嬉しくなって、声を大きくして話すようになった。
「あれ?ここどこだ?」
二人はおしゃべりに夢中になり、来た道を覚えてなかった。それよりも、同じような場所に来てしまい、右も左も分からなくなってしまった。さちは困っていた。
「こっち。」
「道、分かるの?」
「なんとなくだけど。こっちな気がする。」
「え?」
広義は一つ緑のふちのある、画面の目の前に立った。
 その画面には、ある暗い部屋が映っていた。
「行くよ。」
広義はさちを置いて、その画面へと消えていった。
「待って、」
さちも同じように入りこんでいった。またその世界は、静かになった。

「ここ、知ってる。」
その部屋には、タンスや二人が来た古いテレビがあった。
「ここどこなの?」
周りを見渡すさちは、どこに来てしまったのか全く分からなかった。木の床で、素足で来た広義にとって足が少し冷たかった。
 広義は大きなトビラを横にひいた。太陽の光がその部屋にたくさん入ってきた。とてもまぶしく、二人は思わず目を細めてしまった。
「あれ?広義君じゃないか。」
庭にいるあるおじいちゃんはそう言った。
 そう。広義のおじいちゃんだった。二人が来たところは、遠くにあるおじいちゃんの家だった。
 そこは田舎で、来たことは何回かしかなかった。しかし、近くの川で遊んだり、バーベキューしたりと、思い出はたくさんあった。ここは、広々と遊べる場所がある。
 


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