ようせいテレビ

昔懐かし怖いハナシ

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異変

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 広義は、静けさの中でDVDを機械の中へと入れた。番組の笑い声。外から聞こえる、車の音。いつもならば、子ども達の声が聞こえるのに。最近は、そんな声も広義は忘れていた。
「あれ?テレビの画面、変わらないや。」
DVDを入れるとすぐに変わる画面は、ある場所を映していた。いや、普通の番組ではなかった。
「ここどこ?」
広義は、その画面を見ていた。その画面には、どこまでも続くような広い空間の中に、テレビのような画面がいくつもある世界が映っていた。
 その時、広義は思わず手を触れてしまっていた。あまりの不思議さを感じて。
「わぁー!!」
びっくりするくらい、画面は手を吸い込んでしまった。手だけじゃなく体もだった。 
 広義は恐くなって目を閉じてしまった。そして、しばらくその場でうずくまっていた。
「ここどこ?」
目を少しあけ周りをみわたすと、そこは家ではなかった。いや、現実とは思えないところだった。
 さきほどテレビに映ったあの場所と同じ。画面がいくつも空に浮いていたり、地面にあったり、そしてそれがどこまでも広がっていた。
 広義は、来た画面にもう一度手を触れた。帰れない、と思ったが、手は画面を通り、広義の家へとつながっていた。それを確認した広義は、ほっと安心した。
「良かった。帰れる。」
しかし、広義はある事を思いついた。
「家に帰っても、テレビ見るしかない。けど、ここなら、どこへでも行けそう。」
一つ一つ、その場所にある画面は、全て違うものが映っていた。寝ている人、こちらをずっと見ている人、また笑いながら昼ごはんを食べている人。
「あ、お母さんだ。」
広義はある画面を見つけた。それは、思いのほか広義の家のテレビの近くで浮いていた画面。
 そこに映っていたのは、スーツ姿の広義のお母さん。家にいる雰囲気とは全く違っていた。どこか、マジメそうな感じ。広義はそう思った。
 広義は覗きこみ、手を振ってみた。
「はい。次の企画、そうしましょう。はい。では…」
 母は、広義の姿は見えてなかった。時々、広義と目が合ったが、すぐに視線の向きを変えられた。
「おかあさん。」
広義の声も母に届かなかった。
「…。」
その場を離れた。
 
 広義は、どんどんと先へと進んでいった。他に何があるのか、知りたかったから。それに、家にいるよりも絶対に楽しいから。
 そして広義は、一つ赤いわくのある画面を見つけた。その赤さは、広義にみつけてほしいかのように、目立っていた。
 よくよく見ると、画面の中にある女の子が映っていた。しかし、様子がおかしかった。
 スマートフォンに夢中の母はいるが、その前には涙をこらえている女の子だった。その女の子だけ、広義が見えているかのような様子だった。
「手を触れて。テレビに。」
広義はそう言った。女の子が気になり、どうしても会って話したかったからだ。
「うん。」
広義にはそう聞こえたようだった。女の子は、テレビに手を触れたのだった。
「あれ?」


 
 

 
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