ようせいテレビ

昔懐かし怖いハナシ

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「その子は?」
おじいちゃんはさちを見て、そう言った。
「さちっていうんだ。友達。」
さちは頭を少し下げ、広義の後ろに隠れた。それ以上なにも言えなかった。
 おじいちゃんは、たるんだほっぺを揺らしながら笑った。白い髪が、優しさを表しているようだった。
「ここに来なさい。ほら、寒いでしょ。」
足が冷たくなっていた広義はそれに気がつき、太陽の光がポカポカしている、おじいちゃんのところへ行った。さちは、立ったままだった。
「さちちゃんも来なさい。」
さちは、広義についていき隣に座った。
「どうして来たの?おかあさんは?」
おじいちゃんは、お茶を一口。その後に、そう言った。
「テレビの世界から来たんだ。」
「テレビ?」
おじいちゃんは首をかしげた。納得いかない様子だった。
「そうだよね。テレビに、入ってきたんだ。そしたらこうき君が、、」
さちは、広義の言葉に続けてそう言ったが、後から恥ずかしくなったのか話すのをやめた。
「そうか、テレビか。昔、そう言う話は聞いたことある。子供だけが入れる世界。そういう場所があると、言われている。」
「そうなんだ。でも、本当だよ。」
「そうだよ。本当にあるんだよ。」
「そうかそうか。疑っているわけじゃないんだ。でも、いいな。入りたいな。」
おじいちゃんは、お茶を飲みながら、空をながめていた。それは、雲ひとつない空だった。
 広義とさちも、いつもよりも大きい空を見た。温かい日だった。庭には見たことのない、きれいな花がたくさん咲いてあった。学校で上の学年が育てている花よりもきれいだった。
「さちちゃん。どうして、そんなにあざがあるのかね?」
「ころんだんです。気にしなくていいです。」
さちは目をそらせてそう言った。
「そうか。ならいいんだ。あ。足、汚れてるね。倉庫も掃除しなきゃならないな。」
おじいちゃんは広義の足を見て気がついた。
 さちも自分の足の裏を見た。黒い靴下だったが、広義が手ではらう様子をまねして、手ではらった。そして、靴下をひざまでのばした。
「おばあちゃんが、台所にいるから、あいさつしなさい。」
広義は、うんと応え、さちの手をひいて台所へと向かった。
「さちちゃん。ごめんね。来てもらって。」
「いいよ。私も、ここ好きだし。いなかっていいよね。」
「そうだよね。僕も好き。」
台所に来た二人は、古そうな食器を見ながら、おばあちゃんを探した。外へとつながるドアが開いていた。
「おばあちゃんいないよ。」
遠くで、おじいちゃんがこう言った。
「どこか、出て行ってしまったのか。ほら、冷蔵庫からアイス取りなさい。」
「ありがとう。」
広義は冷蔵庫を開き、アイスを二つ、その後また一つ取り出した。
「さちちゃん。あげる。」
「いいの?ありがとう。」
青色のアイスを袋から取り出し、すぐに食べたさちだった。
 広義はおじいちゃんのところへ戻り、アイスを一つ渡した。 
「ありがとう。」
「うん。」
広義は、その後自分の分も食べた。とても冷たくておいしかった。手は冷たくなってしまったけど、太陽が温めてくれるだろう。そう二人は思った。

    
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